でも今は、第1部を全部投稿し終えないとという気持ちでいっぱいです。
太陽は地平線に沈み、光は薄暗くなった。
「彼を安全な場所に連れて行かなくちゃ。また寒い夜を……」
「要塞は近いと言っていた。残りの道は俺が背負って行く」
バルダは意識を失ったデインをそっと抱き上げた。
そして、四人は再び登り始めた。
まもなく、四人は岩の深い割れ目に出会った。
狭い通路のような割れ目だ。彼らはそれをよじ登ると、そこにはデインが言った通り、
三本の茂みが一列に並んでいて、岩盤に寄りかかって横たわる巨石を指し示していた。
その岩はまるで自然のままのように見え、まるでそのまま落ちてきたかのようだった。
しかし、四人はそれが要塞の入り口を隠しているに違いないと気づいた。
「うまく隠されているな。どこを探せばいいのか分からなかったら、通り過ぎていただろう」
バルダは大きな岩に近づき、じっと見つめ、脇へどかす方法を探した。
「見張りがいないなんて奇妙ね」
「ここがレジスタンスのアジトですのね」
ジャスミンは短剣に手を添え、周囲を見回しながら呟いた。
ヴァージニアも辺りを見渡している。
「きっとデインの帰りを待っていたんだろう。どうやって入ってきたのだろう?」
リーフも周囲を見回し、最後の茂みの下に紙切れが落ちているのに気づいた。
きっと風で飛ばされて小枝に引っかかったのだろう、とリーフは思った。
リーフはそれを引き抜いて見た。
「誰かの不注意だ」
リーフは厳しい口調で言い、メモをヴァージニア達に見せた。
「どうやら、奴らは危険を予想しているようだ」
「もしかしたら、私達が来るかもしれないわ」
「ここがレジスタンスの拠点だというのは、デインの言葉だけですわ。罠かもしれませんわ」
「どうなるか見てみよう」
リーフは頑丈な棒を掴み、岩へと歩み寄った。
鋭く叩きながら、同時に叫んだ。
「こんにちは! 僕達は仲間です。入れてください」
岩の向こうは静まり返っていたが、誰かがいるという強い予感がした。
リーフは再び棒を叩いた。
「ジョーカー、聞いてくれ!
僕達は、リスメアの近くで影の憲兵団に襲われていたけど、あなたが助けてくれた。
デインも一緒だ。デインは怪我をしていて避難所が必要だ!」
「合言葉は?」
低くくぐもった声が聞こえた。
リーフは驚いて後ずさりした。
まるで岩そのものが何かを語りかけてきたかのようだった。
しかしすぐに、その音が岩の右側にある小さな裂け目から聞こえてきた事に気づいた。
恐怖の山のグノメ族ように、レジスタンスの壁に覗き穴が開いていた。
「ジョーカーと話したい!」
「ジョーカーはここにはいない。合言葉は? 答えろ、さもなくば殺す」
バルダは岩に寄りかかった。
「正気か? 俺達は敵じゃない! ジョーカーの知り合いだ。
もし俺達の姿が見えたら、君の仲間がここにいる事も分かるはずだ」
「見えるぞ、信じろ」
岩の背後から声が答えた。
「今、お前に十数個の武器を向けている。動くな」
四人は驚いて周囲を見回した。
誰も見えなかった。
ジャスミンは一歩後ずさった。
炎の玉がジャスミンの傍らの地面に叩きつけられ、火花を散らした。
ジャスミンは必死に火花を叩き消した。
「動くなと言っただろう! もう一度やったら、危険だ」
「ネリダとグロックを呼んで!」
ジャスミンは驚きの声を上げた。
「二人はあなた達の味方よ、分かってるわ。
ジョーカーが私達を助けたように、彼らを影の憲兵団から助けてくれたの。
きっと私達の顔を覚えてくれるわ」
虚ろな笑い声が聞こえた。
「そうかもしれない。だが、この辺りでは外見で判断するべきじゃない。
だから合言葉がある。知ってるのか?」
「もちろん!」
「リーフ!」
「もし僕が『分からない』と言ったら、殺されていたよ。僕達をオルだと思っただろうね」
「どうせ殺されるわ、あなたが嘘をついていると気づいたら!」
ジャスミンは苛立ちと怒りで拳を握りしめていた。
ヴァージニアも、ジャスミンと同じように怒っていた。
「こんなのおかしいですわ!」
ヴァージニアの言葉に、リーフは必死に首を振った。
「デインが合言葉を言っていた。でも、この合言葉は知らなかったはずだ。ずっと離れてたから。
ここに着いたら見つけようと計画していたに違いない。
デインにできたなら、僕達にもできるはずだ! 何か暗号、サインがあるはず……」
「どこ?」
「もしかしたら、みんなリストを持ってるのかもしれないな。毎日一つずつ単語を書いてね」
「それはきっと危険すぎるよ。それでも……」
リーフはデインの鞄を地面に放り投げ、慌てて中身を探し始めた。
しかし、予想通り何も印刷されていない。
あるのは旅行用品、着替えが数着、そして空の蜂蜜の瓶だけだった。
「……これは……?」
リーフは瓶を掴み、じっと見つめた。
突然、ある考えが浮かんだ。
リーフは茂みの下で見つけたメモをポケットから探し出した。
「10数えるまでに、返事をしろ! 一、二……」
岩の後ろから声がした。
「待て!」
リーフは叫び、指をメモに握りしめた。
彼はそれを取り出し、望み薄ながらも正しい事を願いながら、急いでもう一度読み返した。
印刷された文字がリーフの目の前で踊った。
テキガ イルトキ ココヲ ウゴクナ
(僕がここで見たものは、きっと単なる偶然ではないはずだ)
リーフは深呼吸をして、紙を落とした。
「合言葉は『テイコウ』だ」
「よく分かりませんわ」
「どうしてですの?」
バルダとヴァージニアが言葉を切ると、要塞の入り口を覆っていた岩がゆっくりと崩れ始め、
洞窟の隙間から光が差し込んできた。
光の中に、虹のあらゆる色の奇妙な衣装を身に纏った、筋肉質の小柄な男が立っていた。
縞模様の毛糸の帽子の下には、羽根飾りで編まれた灰色の髪が腰まで垂れ下がっていた。
リーフはバルダがぎょっとしたのを感じたが、どうしたのか尋ねる暇はなかった。
小柄な男はニヤリと笑い、二、三本の曲がった歯と、ピンク色の歯茎を広げていたからだ。
「よくも間延びしたな!」
男は、その風貌には全く似合わない、深く力強い声で叫んだ。
「死と踊るのが面白いのか? もう少しで発砲命令を出すところだったのに」
男はバルダの腕の中でぐったりとした姿を、近眼で見つめた。
「それで、あの坊やは冒険をして、悲惨な目に遭ったのか!
まあまあ。誰がそんな事を想像しただろう? いつもあんなに用心深いのに!」
四人が躊躇うと、男は苛立たしげに手招きした。
「おい、そこに突っ立ってるんじゃないぞ! 冷気を吹き込んでいるぞ。
サルガス! ペトロンヌ! 大丈夫だ。武器を置いて降りてこい。デインの面倒を見てくれ。
可哀想な坊やは、まるで腕に抱かれた赤ん坊のように家に運ばれたんだ」
ヴァージニア、リーフ、ジャスミンは入り口を抜けた。
バルダはもっとゆっくりと後を追った。
彼が明るいところへ足を踏み入れると、小柄な男はバルダの顔を見上げ大きな声で笑い出した。
「バルダ! 誰が信じたというんだ? こんなに長い年月が経ったのに!
まさか、お前は死んだと思っていたぞ! 俺を知っているのか?」
「もちろんジンクス、お前の事は知っているよ」
バルダは、ややぎこちなく微笑んだ。
「でも、こんな場所でお前に会うとは思わなかった」
ジンクスという男は言葉を止めた。
戸口の高いところから、粗末な身なりの男と、
同じようにぼろぼろの服を着た女――恐らくサルガスとペトロンヌ――が地面に飛び降りた。
ジンクスは二人にデインの僅かな重みを腕から降ろしてもらった。
それからヴァージニア、リーフ、ジャスミンの方を向いた。
「ジンクスはデル城の曲芸師の一人だったんだ。俺が城の衛兵だった頃、よく知っていたんだ」
「城の衛兵だって? 誰よりも強くて勇敢だと言われていた!」
サルガスとペトロンヌがジンクスに付き添い、デインをより大きな洞窟へと運んだ。
洞窟からは、たくさんの声が聞こえてきた。
「でもバルダ、影の大王が来た日に衛兵は皆殺しに遭ったと聞いた。どうやって逃げたんだ?」
「たまたま、始まる前に城を出て行ったんだ。お前は?」
ジンクスは鼻に皺を寄せた。
「あいつらは曲芸師なんか気にも留めなかった!
奴らにとって俺達は飼い犬以下だった。奴らは俺達を好き勝手にした。
俺達は城壁を転げ落ち、その間に奴らは立派な貴族人の血を流し、城の衛兵を倒し、
金の靴を履いて震えながらどこかに隠れている勇敢な王と王妃を探して城を荒らしたんだ」
ジンクスは再びニヤリと笑った。
今度はその笑みには、からかうような悪意が少し混じっていた。
「それで! 間一髪で逃げて助かったのか、バルダ! よくやった!
仲間は皆、城を守って死んだのに、お前は生きて帰ってきた! 誇りに思うべきだな」
リーフはバルダをちらりと見て、バルダの顔が苦痛で引きつっているのに気づいた。
「バルダはあの日、何が起こるか知らなかったんだ! 前の晩に城を出たんだ。
母が殺されたから、次は自分が殺されるかもしれないと恐れたんだ!」
「気にするな、リーフ」
バルダはジンクスの方を向いた。
リーフはバルダが無理矢理礼儀正しく話しているのが分かった。
「ジンクス、俺の過去を誰にも話さないでくれると、とても助かる。秘密にしておきたいんだ」
「もちろんだ、バルダ! お前の気持ちはよく分かるよ。たとえお前の仲間がそうでなくてもな。
今は厳しい時代だし、誰もが英雄になれるわけじゃない。
だって、俺こそが世界一の臆病者なんだからな!」
二人は大きな洞窟の入り口に着くと、後ろに下がり、優雅に二人に入るように合図した。
「念のため言っておくが、俺は他の何者かのふりをしているわけではない」
バルダが通り過ぎると付け加えた。
洞窟は広く、揺らめく松明の明かりに照らされ、様々な人でいっぱいだった。
既にいくつもの火で料理を炊き、壁には藁の布団が敷かれていた。
「どうして、ジンクスが臆病者呼ばわりするの?」
ジャスミンはバルダに怒りながら言った。
新参者達をじっと見つめる顔を無視した。
「だって、あいつが今、まさにやっていることだもの!」
「あいつが何をしているかはよく分かっている」
バルダは正面を見つめながら、厳しい表情で言った。
「ジンクスの事は昔から知っている。素晴らしい曲芸師だったが、
あれほど噂好きで、嫉妬深く、意地悪で、悪戯好きな奴は生まれなかった。
ここであいつに会うなんて、本当に不運だ。
あいつが何を約束しようと、朝までにはここにいる全員が俺の事を全て知る事になるだろう」
「デインは既に君の名前を知っている」
「名前なんて大した事じゃない。他の事は?」
ジンクスが慌てて四人のところにやって来て、
洞窟にいる全員の注意を引こうと手を叩いたため、リーフは言葉を切った。
「仲間が来たぞ! 可哀想なデインを家に連れて帰ったんだ。
冒険に出かける事に決めたみたいで、手に負えない事をしてしまったようだ」
ジンクスはくすくす笑い、隅の藁敷きに寝かされ、
ようやく動き始めたデインの青白い姿を一瞥した。
何人かが笑い返し、リーフは苛立ちで顔が綻んだ。
リーフは口を開こうとしたが、ジャスミンが目の前にいた。
「デインが二人のオルから私達を救ってくれたのよ」
「ああ見えても勇敢でしたわ」
「そうなの?」
群衆の中から声が上がった。
「ブッシュタウンの奴に、勇敢さを語る資格があるのか?」
そして群衆の中から、威勢のいい、重々しいグロックの姿が現れた。
グロックはジャスミンとヴァージニアを冷笑したり睨んだりしながら立っていた。
力強い腕は両脇にぶら下がり、小さな目は煌めいていた。
力強い体のライン一つ一つが、彼が喧嘩を売ろうとしていることを示していた。
「こんにちは、グロック。
最後に会ったのは、リスメア闘技場から運び出される途中で、ぐっすり眠っていた姿ね。
決勝戦まで起きていられなかったなんて、本当に残念ね」
何人かが笑った。
明らかに、彼らはその話を聞いていた。
グロックの重々しい顔が曇り、腫れ上がったように見えた。
彼は危険な唸り声を上げ、指がぴくぴくと動いた。
リーフは視界の隅でジンクスがこちらを見ているのに気づいた。
その顔は悪戯っぽい興味に満ちていた。
ジンクスはトラブルを起こしては、ただ傍観するタイプだった。
危険な男だ――グロックと同じくらい危険な男だが。
ちょうどその時、洞窟の外から何かがぶつかる音がした。
ゆっくりと三回叩き、続いて素早く三回叩いた。
ジンクスは一瞬がっかりした表情を見せた。
それから振り返り、ペトロンヌとサルガスを従えて急いで出て行った。
「合言葉は?」
「テイコウ!」
声はくぐもっていたが、リーフは聞き覚えがあると思った。
ジョーカーが戻ってきたのだ。
グロックは全く気に留めなかった。
ジョーカーはまだジャスミンに釘付けだった。
「俺は優勝するべきだったんだ、このちっぽけな奴め!」
「もし戦っていたら、あんたのダンスやジャンプの技に騙される事はなかったわ。
片手を背中に縛って、あんたを粉々に叩き潰してたわ!」
ジャスミンは嫌悪感を込めて見つめた。
「幸いにも、あんたの強欲のおかげで、試す機会はなかったわね」
グロックは吠え、ネリダを掴んだ。
グロックがよろめき、大きな手で空を掻きむしるのを見て、
ネリダは軽蔑の笑みを浮かべながら脇に飛び退いた。
「もうたくさんだ!」
ジョーカーは顔をしかめ、入り口に立っていた。
顔は疲労困憊で、長く絡まった黒髪と髭には埃が舞い、
深く日焼けした肌にはギザギザの傷跡が青白く浮かんでいた。
「この場所で戦うな! グロック、前にも警告しただろう。
もう一度暴言を吐いたら、要塞から追い出すぞ。
そうなったら、影の憲兵団が来た時に、もう我々は守らないぞ」
グロックは踵を返し、ぶちまけながら肩越しに不満げな視線を向けながら重々しく立ち去った。
誰も物音を立てなかったがリーフは長身の女性が口元に手を当てて笑みを隠しているのを見た。
その女性はネリダだった。
リーフがこちらを見ているのに気づいたネリダは、
より大きく、よりからかうような笑みを浮かべた。
「……あまり目を合わせたくないな」
リーフは目を反らした。
リスメアの闘技場で、ネリダがリーフを騙した事を思い出し、顔が熱くなった。
ジョーカーの怒りの目は今、ジャスミンに釘付けになっていた。
「そしてお前も。自分の身の安全を考えて、その辛辣な言葉には気をつけろ」
その後の沈黙の中で、ジョーカーは急に向きを変え、デインが休んでいる布団へと向かった。
デインはもう起き上がっていた。
「それで、やっと戻ってきたな、デイン。何日も前から待っていただろう。どこにいたんだ?」
デインは真っ赤になった。
「ジョーカー、Cオルが二人いるのを見たんだ」
「お前は一人で後を追った。命令に背き、予定の時間にはここに来なかった」
デインは頭を下げた。
しかしジョーカーはまだ言い終えていなかった。
「そして聞いた話だが」
ジョーカーはジンクスを一瞥した。
ジンクスは平静を装おうとしたが、上手くいかなかった。
「お前は、この未熟な余所者に合言葉の秘密を漏らす事で、
我々全員の命を危険に晒そうとしたと聞いている」
洞窟内に怒りのざわめきが広がった。
ようやくデインは言葉を取り戻した。
「まさか? ジョーカー、ボクは彼らには教えていないよ」
「では、奴らはどうやって侵入したんだ?」
ジョーカーの声は冷たかった。
「今日のメモさえ見ていないようだな。それでも彼らは合言葉を伝える事ができた」
「解読は難しくなかった」
リーフは急いで前に出て言った。
「メモには『テキガ イルトキ ココヲ ウゴクナ』と書いてあった。
その単語の頭文字を並べると、合言葉は『テイコウ』だ」
ジョーカーがリーフを睨みつけると、リーフは肩を竦め、警戒心を捨てた。
デインのようにグダグダ言われる事はなかった。
「もちろん、手がかりは持っていた。デインの蜂蜜の瓶のラベルはもう見ていたよ。
『ジカセイ ヨイアジ オレンジ ウメ バラ チカラノモト』って。
どうして、女王蜂の蜂蜜を使っていると知られるのを恐れているんだ?」
群衆から再び大きなざわめきが上がった。
ジョーカーが命令を叫ぶと、ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンの背後から、
何組もの力強い手が現れた。
彼らは抵抗したが、無駄だった。
「はぁっ!? どうしてわたくし達を捕まえたんですの!?」
「そうだ、悪気はなかった! ただ興味があっただけだ」
「だったら黙っておけばよかったのだ」
ジョーカーは石のように冷たい目で言った。
「お前は我々が守ると誓った秘密に躓いた。レジスタンスと取引してはならない。
そして女王蜂の蜂蜜は女王蜂のアップルドリンクよりもさらに希少で価値がある。
驚くべき治癒力がある。あの女はそれを我々に供給する事で多くの危険を冒している。
自分の命だけでなく、息子達の命も危険に晒しているのだ」
今度はヴァージニアがじっと見つめる番だった。
ネズミの街から脱出した後に出会った、
あの野蛮な老婆が母親だというのは、とても奇妙に思えた。
「女王蜂が蜂蜜をくれるなら、我々には関係ない。誰に話せばいいんだ?」
「ご主人様だろう」
ジンクスは小さな目を興奮で輝かせながら言った。
「だから城からの脱出を許されたのか、勇敢な衛兵、バルダ?
その時、既に影の大王に身を売ったのか?」
バルダは激怒して突進したが、バルダを掴んでいた手がバルダを引き戻した。
「黙れ、ジンクス!」
ジョーカーが怒鳴った。
彼はしばらく考え込むようにバーダを見つめた。
「それで、お前は城の衛兵だったのか。本名はバルダ。
それで、そんなに長い間、どこに隠れていたんだ、バルダ?
若い仲間達と田舎を旅するようになる前は?」
「それは俺の問題だ」
バルダはジョーカーの目をまっすぐに見つめながら言った。
「俺は秘密にしておく事にした。ジョーカー、君も若い頃の居場所を秘密にしていたようにね」
「居場所も? それに本名もね」
ジョーカーはジャスミンをちらりと見た。
まるで、自分の家族のように。
そして口元が引き締まり、再びバルダの方を向いた。
「トーラにいたのか?」
ジョーカーはぶっきらぼうに尋ねた。
布団に倒れ込み、頭を下げていたデインは、熱心に顔を上げた。
しかしバルダは呆然とした表情だった。
「トーラか? お前達は何故トーラにこだわるんだ?
いや、俺は生まれてこの方、一度もトーラに行った事がない」
ジョーカーは唐突に背を向けた。
「奴らを監視室に連れて行け。三日経ったらまた話そう」
「何するんですの~!」
洞窟の扉まで引きずられながら、ヴァージニアは叫んだ。
「俺達を監禁する理由はない! 俺達がオルじゃない事は分かっているだろう!
分かっているだろう!」
「……ならば、その証拠は?」
「……ない」
ジョーカーは顎を上げた。
ジョーカーが「監視室」と呼んだ、明るく照らされた小さな洞窟に閉じ込められた四人は、
三日間を倦怠感に満ちた日々を過ごした。
重厚な木製の扉には鉄格子の窓がはめ込まれ、
常に何者かが窓越しに四人の一挙手一投足を監視していた。
所持品は手元にあった。
武器さえ奪われていなかった。
食料を盛ったトレーは扉の下に押し込まれ、水も十分にあった。
しかし、プライバシーも、暗闇も、安らぎもなかった。
三日目には、バルダでさえ絶望的な状況に陥っていた。
ジャスミンは寝台の上で体を丸め、両手で顔を覆っていた。
クリーは翼を垂らして牢獄の隅に座った。
リーフは焦燥感に苛まれ、刻々と過ぎていく時間を感じながら歩き回っていた。
ヴァージニアはイライラしながらメイスをつついていた。
リーフはデインに会った日を呪った――そして、もしデインがいなかったら、
自分もバルダもジャスミンも、そしてヴァージニアも皆、死んでいただろうと思い出していた。
彼はジョーカーの疑念を呪った。
そして、可愛らしいマリーが殺戮に燃える怪物に変貌した時の衝撃を思い出した。
しかし、デインはジョーカーがオルの存在を感知できると言っていた。
もしそうだとしたら、ジョーカーはリーフ、バルダ、ジャスミン、ヴァージニアが、
見た目通り、人間である事を十分に理解していた事になる。
「……もしかしたら、僕達を保護したいのかもれない」
「保護?」
「三日間も待つのは口実に過ぎない。洞窟にいる他の人達が受け入れ、理解してくれるだろう。
ジョーカーは僕達が何を企んでいるのかを知りたいんだ。
そして、この後、僕達がジョーカーに話してくれる事を望んでいる」
「冗談でしょう?」
ヴァージニアが笑いながら言う。
しかし、リーフはそれが真実だと分かっていた。
「ジョーカー、君は間違ってるよ。君の本名が何であろうと、僕達は決して君に目的は教えない。
だって、まだ君が味方なのか敵なのか分からないからね」
ジョーカーは疑り深いけど、逆にそれが、この世界ではいいのかもしれませんね。