といっても、分かると思いますがね。
ルーカスとスカールのキャラバンが見えなくなるとすぐに、
四人は水が出会う場所の哀れな残骸に背を向け、トル川の岸辺へと下っていった。
そこで四人は、水面に少し突き出た小さな木製の桟橋に出会った。
柱には金属製の看板が掲げられていた。
「トル川のこの部分では客船が運航しているはずだ。
はばひろ川を下って、旅人や荷物をトル川まで運んでくれるんだ。
だから橋はこんなに高く架かっているんだ。デイン、聞いた事あるか?」
デインは首を振り、看板を疑わしげに見つめた。
「たまには歩く代わりに船で行くのもいいだろう。それに、もっと早く行けるし」
「待った方がいいですの?」
ヴァージニアが言うと、バルダは残念そうに首を振った。
「待たない方がいいと思う。
船は週に一度しか来ないかもしれないし、もしかしたらもう走っていないかもしれない。
この看板は新しいものではない。いずれにせよ、人目につかないようにする事にしたんだ」
リーフは渋々同意し、四人は重い足取りで歩き続けた。
歩いていくうちに、トル川は幅が広くなり、深くなり、曲がりくねりも少なくなった。
見た目も綺麗になり、腐敗臭も薄れた。
しかしリーフは、滑らかな水面の下で、暗い影、
そして青白い影もゆっくりと漂っているのを知っていた。
それらは消えたのではなく、ただ見えなくなるまで沈んでいっただけだった。
川幅が広くなるにつれ、ヴァージニア達が歩いている地形も変化した。
徐々に木々や茂みは姿を消し、葦は生い茂っていった。
四人が夜を過ごす頃には、足元の地面は湿地になっていた。
食事を終えると、デインはすぐに眠りについた。
明るい月が昇った。
リーフはルーカスから買ったキャラメルの袋を思い出し、
バルダとヴァージニアと分け合おうとした。
しかし、中の硬くて光沢のある茶色の包みを開けた途端、
それが何であれキャラメルではない事に気づいた。
酷い臭いがし、味もさらに酷かった。
こんな馬鹿げた間違いを犯してしまった事を恥じ、
リーフはそれを再び包み直し、ポケットの奥深くに押し込んだ。
リーフはバルダが気づいているかどうかちらりと見たが、
バルダは自分の買った刺繍入りのベルトをじっくりと見ていた。
(ジャスミンもワソも、無事でいられますように)
ヴァージニアは聖印を持って祈っていた。
リーフが誰への贈り物だろうと不思議そうに見守っていると、バルダが顔を上げて手招きした。
デインを起こさないように慎重に、リーフはバルダの傍に忍び寄った。
「リーフ、このベルトを買ったのは理由があるんだ。
布は二重で厚く、丈夫だ。デルトラのベルトを覆う布として使うべきだと思う」
「でも……」
リーフは抗議しようと口を開いた。
ベルトが布で覆われていたら、宝石に触れる事も見る事さえできなくなる。
心を研ぎ澄ますトパーズ、危険に怯えるルビー、
そして未来を予知するオパールの価値を失ってしまうのだ。
リーフはオパールの力を恐れていたが、何日も勇気を振り絞って触れようとしていた。
父親の地図には、魔物の洞窟がデルトラの西海岸にあると記していたが、
実際の場所は不明だった。
オパールが手がかりになるかもしれない。
「川は敵だらけだ。それに、少なくともトーラまでは、デインは俺達の味方だ」
「そうですの?」
「どんなに用心深くても、デインがベルトを見つけるのは時間の問題だ」
リーフは抗議の言葉を堪えた。
バルダの言う通りだった。
デインの事を心から気の毒に思ったが、リーフもバルダもヴァージニアも、
まだデインを完全に信頼する決心がつかなかった。
リーフとヴァージニアは頷き、バルダはすぐに刺繍の入ったベルトの縫い目を裂き始めた。
「これでいいんですのね」
「……ああ」
リーフは歯を食いしばった。
時間は限られていた。
もうこれ以上先延ばしにはできない。
服の下に手を滑り込ませ、宝石の上を指でなぞり、オパールに辿り着いた。
不気味な青みがかった光。
屋根から垂れ下がる巨大な石の槍。
煌めく壁からは乳白色の液体が流れ出ている。
そして、何か巨大な、白いもの。
尻尾を振り回し、血のように赤い顎を大きく開けている……。
「リーフ! どうしましたの!?」
息を切らしながら、リーフは両手を振りほどいた。
リーフは目をぎゅっと閉じ、恐ろしい光景を脳裏から追い払おうとした。
「……リーフ?」
バルダが苛立ちながら手を差し出していた。
リーフは震える指でベルトを外した。
バルダはそれを刺繍の帯の中に滑り込ませ、裂け目を縫い始めた。
縫い終わると、縫い合わせた跡は何も残っていなかった。
「うーん、ちょっとザラザラしてるな」
リーフは服の下、腰の布帯を留めた。
肌に触れると、ざらざらして違和感があった。
父親は16年間、革の作業用ベルトの中にベルトを大事に保管していたのだ、とリーフは思った。
これは賢明な計画だ。
しかし、それでもリーフは不安を感じていた。
リーフは焚き火に戻り、横たわり眠りについた。
ヴァージニアも、とりあえず眠りについた。
デインが自分達の前に現れなければよかったと、心から願った。
そして、それはこれが初めてではない。
翌朝、四人は苦労して進み続けたが、
正午には歩くどころかよろめき、一歩ごとに悪臭を放つ泥に膝まで浸かっていた。
「もう無理だ」
ほとんど地面を踏破できないままさらに1時間歩いた後、バルダは息を切らして言った。
「わたくしも……。川から離れなきゃいけませんわね……」
ヴァージニアがそう呟くが、今や葦原は見渡す限り広がっていた。
濃い霧が地平線を覆い隠していた。
四人は湿った悪臭を放つ泥の砂漠に囲まれているようだった。
その時、かすかな船の音と音楽が聞こえてきた。
一同は上流へと目を向けた。
煙突から蒸気を吹き出し、大きな外輪が水をかき回しながら、
赤く塗られた船が彼らの方へ近づいてきた。
「船ですわ!」
ヴァージニア、リーフ、バルダ、そしてデインは躊躇わなかった。
皆、腕を振りながら叫び始めた。
船は近づいてきた。
やがて船は間近に迫り船首に鮮やかな白い文字で書かれた「リバークイーン号」の名が見えた。
音楽の音に掻き消された、船長帽を被った髭面の男の叫び声が聞こえてきた。
男は船の舷側から身を乗り出し、こちらを睨みつけていた。
「乗ろうか、相棒!」
船が減速する中、男は叫んだ。
「ああ!」
「ええ!」
ヴァージニア、リーフ、バルダ、そしてデインは叫んだ。
「金はあるのか?」
「ある!」
男はニヤリと笑った。
「リバークイーン号が金を払った客を一人も追い返したとは、絶対に言わせないぞ。
ましてや四人なんて。ホー、チェット!」
それと同時に、小さな手漕ぎボートが水面に飛び込んだ。
長い腕とニヤリと笑う毛むくじゃらの顔をした、
猫背の奇妙な生き物がボートに飛び乗り、岸を目指して猛烈に漕ぎ始めた。
「あれは何ですの?」
「ポリパンだ」
デインは鼻に皺を寄せ、一歩後ずさりしながら言った。
「それに、この船長がポリパンを船員として使っているとしたら、悪事を企んでいる事になるな」
「こんな奴も脅威なんですのね……」
ヴァージニアは、自分の世界の狭さを知って溜息をついた。
「リスメアの市場で似たようなものを見たような気がする。
カップを持って人混みの中を歩き回り、
バイオリンを弾いている女性のために金を集めていたんだ」
「きっと、もっと密かに金を集めていたんだろう」
「ポリパンは泥棒の名人だ。知らない間に服を盗む事もあるらしい」
手漕ぎの舟が泥の上に乗り上げ、ポリパンが満面の笑みを浮かべながら手招きした。
リーフはポリパンが何か黒いガムのようなものを噛んでいるのに気づいた。
歯は茶色く染まっており、四人が葦の中を歩いてポリパンに近づくと、
ポリパンは川に茶色い液体を吐き出した。
ヴァージニアは辺りを見渡し、リーフとデインと共に舟に乗り込んだ。
バルダは泥の中からポリパンを押し出し、三人の後を追って舟に乗り込んだ。
ポリパンは再び唾を吐き、リバークイーン号へと漕ぎ出した。
乗員は四人増えていたが、小さなボートは猛スピードで水を切り裂いていった。
ポリパンの長く毛むくじゃらの腕は力強く、無限のエネルギーを持っているかのようだった。
大きなボートの舷側まで来ると、ロープのはしごが船べりに降りているのがわかった。
四人はポリパンの小さな黒い目が自分達に釘付けになっている事を意識しながら、
次々と上へと登り始めた。
きっと、服のポケット一つ一つ、鞄の留め具一つ一つに目を留めているのだろう、
とリーフは不安に思った。
(デルトラのベルトは隠れている)
唯一の心残りは、ボートの甲板に足を踏み入れた瞬間に襲い掛かってきた危険感が、
現実のものなのか、それとも想像上のものなのか、
ベルトが分からなくなってしまった事だった。
他の乗客達は、新しく来た者達を不思議そうに見つめていた。
縞模様のジャージを着た、とてつもなく太った男の一人が、
取っ手のついた大きな絵の具の入った箱を握りしめていた。
岸辺から聞こえてきた音楽を思い出し、リーフはオルゴールだろうと推測した。
「ホーディホー!」
太った男は、その体格にしては妙に軽やかで甲高い声で叫んだ。
「音楽愛好家の皆様、しましまロッキーがお役に立ちます!」
男の隣にいた女性がくすくす笑った。
女性もかなりふっくらとしており、ピンクのドレスとミトンを身に着けていた。
丸顔は、額と頬にまとわりつく大きなピンクの巻き毛で縁取られていた。
彼女は片手でヴァージニア、リーフ、バルダ、デインに少女のように手を振った。
もう片方の手で、隣に立っていた背が高く痩せた、片目に眼帯をした男の腕を軽くつついた。
男は重々しく頷いた。
他に二人の男が、トランプをしていたテーブルから顔を上げたが、口を開こうとはしなかった。
二人とも頭を剃り、額には幅広のバンドを巻いていた。
指には指輪を嵌めて、片方の耳には動物の歯のようなものが刺さっていた。
彼らは友好的とは思えなかった。
最後の乗客は、金色の紐で首を結んだ紫色の上質なマントを羽織った、
高慢ちきな若い女性だった。
金色のパラソルを持つ手には、輝くハイヒールに合わせた黒い手袋がしっかりと嵌まっていた。
紫色の絹のスカーフを頭にしっかりと巻き付けていて、
長い金色のイヤリングが耳から揺れていた。
顔には白粉が塗られ、唇は赤く塗られ、目には濃い黒の輪郭が描かれていた。
女性は新参者達を退屈そうに一瞥した後、背を向け、
パラソルをくるくると回しながら水面を見つめた。
(もしかして、あの女の人……)
ヴァージニアは見覚えのある人物に見えたが、口には出さなかった。
リーフは辺りを見回し、気楽な様子を装おうとした。
しかし、心は沈んでいくばかりだった。
ここにいる人物の誰かがオルかもしれない。
いや、全員がオルかもしれない。
自分とヴァージニアとバルダとデインは、
葦原に残っていた方が良かったのではないかと、リーフは考え始めた。
船長がニヤリと笑いながら、大股で近づいてきた。
背が低く、ずんぐりとした体格の男で、鼻は曲がっていて、
灰色の髪は太く三つ編みにして、ロープのように背中に垂れ下がっていた。
山高帽は額の奥深くまで被っており、目は深い影に包まれていた。
「ようこそ! どれくらい遠くまで行くんだい?」
「息子と娘と私が海岸で用事があるんです」
「そうなのか? 怪しいな」
男はバルダをわざとらしく軽く突くと、金を要求するために汚れた手を差し出した。
バルダが硬貨を数えている間、リーフは船長の小指が一本なく、
薬指だけが切り株になっているのに気づいた。
「大きな虫とちょっとした口論だ、坊や」
船長はリーフが自分の手を見ている事に気づきながら言った。
「乗船中は小指を水に入れないようにしろ。虫は海から上がってくるんだ。
そして、奥へ入れば入るほど、お腹が空くんだ」
船長はニヤリと笑うと、ピンクの服を着た女性は緊張した様子でくすくす笑った。
「下の息子がトーラに立ち寄りたいと言っているんです。お願いできますか?」
バルダは少し声を張り上げて言った。
「トーラ? いやいや、残念ながらあそこの若者の言う事は聞けない。トーラに行くのは無理だ」
デインはびっくりしたが、すぐに我に返った。
少なくとも今のところは、この船に留まるしかないと決心したのだろう。
バルダはデインを見て、肩を竦めて同意した。
「分かった。あと二つだけだ。一つは、わしが提供するのは護衛ではなく、乗せる事だ。
ここは過酷な川だ。お前らの安全はお前らの責任だ。
二つは、お前らがオルなら、それはお前の勝手だ。
オルを乗せるのは誰だって喜んでやる。金さえ払えばな。
だが、この船に乗っている間は手を出さないでくれ。
さもないと、ミミズに餌をやらされて海に落ちてしまうぞ。
オルには以前も対処した事があるし、またできる。分かったか?」
「ミミズ!? い、嫌ですわっ!」
「大丈夫だよ、ヴァージニア。こういう生き物がいたら、僕の後ろに隠れてくれ」
リーフ、バルダ、そしてデインは見つめ、頷いた。
しかしヴァージニアはミミズと聞いて、慌てた。
ヴァージニアはウネウネした生き物は苦手なのだ。
船長はニヤリと笑うと、踵を返して彼らの元を去った。
「大丈夫よ」
ピンクの服を着た女性が囁いた。
「私達にもそう言っていたわ。気をつけなきゃいけないんだろうけど。でも、本当に!」
船長は船室の舵輪に戻っていた。
彼が何か命令を叫ぶと、ポリパンが船長の命令に従って跳ね上がり、
汽笛が鳴り、ボートは再び動き出した。
しましまロッキーは唸り声を上げて座り込み、
塗装されたオルゴールを膝の間に挟んでハンドルを回し始めた。
笛のようなジギングの曲が始まった。
ピンクの服を着た女と細長い相棒は、荒い板の上で足を踏み鳴らしながら踊り始めた。
女は笑い、相棒は墓石のように厳粛な表情を保っていた。
他の二人の男はカードゲームに戻った。
紫色のマントを着た若い女性は日傘をくるくると回し、川を見つめていた。
四人は手すりの傍のベンチに腰を下ろした。
「変な奴らですわね。気を引き締めておかないと。……あの日傘を差した女性以外」
四人が顔を上げた。
紫色の服を着た若い女性が彼らの方に近づいてきた。
女性はまだ水を見つめていたが、明らかに話しかけたのは女性だった。
リーフは女性を見つめた。
誇らしげに首を傾げ、唇を塗り、黒く影を落とした瞳、そして長い金のイヤリング。
そして、リーフはその女性がジャスミンだと気づき、人生最大の衝撃を受けた。
「まさか、ジャスミン……?」
太陽は空に低く沈んでいた。
リバークイーン号はゴボゴボと音を立て、着実に川を下っていった。
しましまロッキーは、ついにオルゴールのハンドルを回すのに飽きてしまい、
デッキに仰向けに寝そべり、目を閉じていた。
ピンクの服を着た女とその連れは、互いに囁き合っていた。
トランプをしていた二人の男はまたゲームを始めていた。
ジャスミンは、彼らを知っているという素振りも見せずに、
再びヴァージニア、リーフ、バルダ、そしてデインから離れた。
今、ジャスミンはボートの反対側、パラソルの下に一人で座っていた。
「気づかなかったなんて信じられない! どうしてあの服を手に入れたの?」
「きっと友達のルーカスからだな。きっと葦原を避けて内陸へ入ろうとしたんだろう。
そしてついにはばひろ川沿いの道を引き返さざるを得なくなったんだ。
だから、俺達の前じゃなくて、後ろについたんだ」
「ジャスミンは本当に賢いね」
デインは、ジャスミンが手に持った小さな袋から、
ドライフルーツを優雅にかじっているのを見ながら、感嘆しながら呟いた。
「今さら『野育ちの少女』なんて誰が言うだろう?」
「でも、クリーはどこですの?」
リーフとヴァージニアは川岸に目をやり、葦の間を静かに滑っていく黒い影をちらりと見た。
クリーはそれをよく見張っていた。
日が沈むと、葦原はついに低い藪が点在する平らな砂地へと変わった。
月が昇ったが、すぐに雲に覆われてしまった。汽笛が鳴った。
リバークイーン号は速度を落とし、停船した。
「夜明けと共に出航するぞ」
船長が告げると、チェットは鎖をガラガラと鳴らしながら錨を投じた。
「ゆっくり休んでくれ。ただし、油断は禁物。
皆さんの安全は皆さんの責任であり、わしの責任ではない」
船長は船室にどさりと戻り、ドアを閉めた。
閂がしっかりと閉まるカチッという音が全員に聞こえた。
今、辺りは静まり返り、波の打ち寄せる音と木材の軋む音だけが響いていた。
ようやくジャスミンと再会した一行。
しかし、この船が安全であるはずもなく……?