ヴァージニアとデルトラクエスト   作:アヤ・ノア

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文字通りの回です。
が、もちろん襲撃するのは盗賊だけではなく……。


第40話 盗賊の襲撃

 チェットはデッキを駆け回り、ランタンに火を灯したが、

 ボートの向こうの暗闇を照らすには程遠かった。

 ピンクの服を着た女性は仲間に寄りかかり、目を閉じた。

 テーブルの男達はカードを投げ捨て、鞄から毛布を取り出し、休もうとした。

 ヴァージニア、リーフ、バルダ、デインは少しずつ食べ、少量の飲み物を飲んだ。

 それから彼らも毛布を取り出した。

 夜は冷え込んできたからだ。

 リーフは船の揺れで眠くなってきて、ヴァージニアは酔いそうになった。

「俺が最初の見張りをする」

 暗闇の中からバルダの声がした。

「寝てもいいけど、準備はするんだな。長い夜になりそうだから」

 叫び声でリーフは目を覚ました。

 リーフはすぐに立ち上がり、剣に手をかけた。

 ヴァージニアも何とかメイスを構えた。

 どれくらいの時間が経ったのか、リーフには分からなかった。

 辺りは真っ暗だった。

 ランタンは消え、空は真っ黒だった。

「バルダ!」

「デイン!」

「ヴァージニア!」

 三つの声がリーフのすぐ傍で返ってきた。

 四人もまた立ち上がり、警戒していた。

 再び叫び声が聞こえた。

 リーフはそれがクリーだと気づいた。

 クリーは警告の叫びを上げていた。

(ジャスミン、どこですの?)

 ヴァージニアはジャスミンに呼びかけたかったが、できないと分かっていた。

 二人が知り合いだと誰にも悟られてはならない。

 他の乗客達が身動きをするにつれ、

 デッキのあちこちから眠そうなぶつぶつという声が聞こえてきた。

「ただの鳥よ、愛しい人。また寝なさい」

 ピンクの服を着た女は呟いた。

 一瞬、再び静寂が訪れた。

 波の音と船の材木が軋む音だけが響いていた。

 リーフは耳を澄ませた。

 きっと音は以前とは違う。

 以前より大きくなっていた。

 そして、かすかなぶつかる音が加わっていた。

(もしかして、別の船なのか?)

 リーフがその考えを思いついた途端、

 デッキの手すりの周りの暗闇が動き、濃くなったように感じた。

 荒い呼吸音と、甲板がガタガタと音を立てる音が聞こえた。

「しまった、盗賊だ!」

「気をつけろ!」

「そ、そんな……! 盗賊だなんて……!」

 怒りの叫びと足音が響き渡った。

 誰かが彼に突進し、激しく投げ飛ばした。

 甲板にドスンと倒れ込み、額を何かの角にぶつけた。

 チャイムが鳴り響く。

 オルゴールか、とリーフは混乱しながら思った。

 額に触れると、血が滴るのを感じた。

 

「はぁ、はぁ……」

 眩暈と吐き気で、リーフとヴァージニアは膝から這い上がった。

 しましまロッキーはパニックに陥り、悲鳴を上げていた。

 ピンクの服を着た女は叫び声を上げ、泣いていた。

 戦闘の音が暗闇を満たした。

 リーフは、衝突音と呻き声、血も凍るような叫び声、

 何か重いものが船底から落ちる水しぶきを聞いた。

 鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合う音も聞こえた。

「火をくれ、この馬鹿!」

 ランタンが一つずつ再び輝き始めた。

 ポリパンがランタンに火をつけ、ニヤニヤと笑いながら、

 ランタンからランタンへと揺れ動いていた。

 徐々に、恐ろしい光景が姿を現した。

 侵入者は少なくとも二十人はいたはずだ。

 男も女も、ナイフ、剣、斧を手にしていた。

 彼らは上等な服とぼろぼろの服を奇妙に重ね、乱れた髪は乱れ、目はきらきらと輝いていた。

 バルダは甲板の手すりに背を預け、二人と格闘していた。

 デインは彼の隣で三人目の侵入者をかわしていた。

 

「上等な女だなぁ」

「俺のものにしてやろうかなぁ」

「このケダモノ! 離れなさい!」

 ヴァージニアはメイスを振り回しながら、盗賊から必死に逃げていた。

 大切なものを盗賊に奪われるのは、我慢ならないからだ。

 

 しましまロッキーは甲板で縮こまっていた。

 ピンクの服を着た女は、無力に泣き叫びながら、

 彼女を振り払おうとする痩せた男にしがみついていた。

 男はまるで足の長い蜘蛛のように、隠れ場所を探すように這い去っていった。

 カードゲームをしていた男の一人は血だまりの中で死んでいた。

 もう一人は姿を消していた。

 きっと船外に落ちたのだろう、とリーフは水しぶきの音を思い出しながら思った。

 船長の気配はどこにもなかった。

 まだ船室に閉じ込められているに違いない。

 リーフは、数人の乗客のために船外に出るつもりはないと確信していた。

 四人は船長の条件を受け入れ、金を払い、運に任せたのだ。

 この危険な川で一生を過ごしたのも無駄ではなかった。

 

「早く、この盗賊を何とかしますわよ」

「その前に、バルダを助けなきゃ」

 リーフはよろめきながら立ち上がり、剣を探った。

 しかし、甲板が回転しているようだった。

 リーフは十分に素早く動けなかった。

 恐怖に襲われたリーフは、バルダが相手している敵の一人が近づいてきて、

 ランタンを掴み、バルダの顔に振り回すのを見た。

 バルダは炎から逃れようと、体を後ろに突き出した。

 甲板の欄干が軋み、裂け始めた。

「駄目だ!」

 リーフは叫び、よろめきながら前に出た。

 しかし次の瞬間、甲板の欄干が丸ごと折れた。

 バルダと盗賊、そしてランタンは水中に転がり落ちた。

 物凄い水しぶきと泡立ちが上がると、静寂が訪れた。

「「バルダ(さん)!」」

 ヴァージニアとリーフは叫び、裂け目によろめきながら近づいた。

 しかし、水面から顔を出した者はいなかった。

 ランタンは消え、辺りは暗闇に包まれていた。

「バルダ、ここは僕が……」

「ダメですわ! そんな危険な事をするのは!」

 リーフは飛び降りようとしたが、ヴァージニアが止めた。

 そしてそのヴァージニアを、男が見下した。

「この女は傷つけずに連れて行こうぜ~」

 頭上の男が笑った。

 顎まで届くほどの鼻と、ナイフのように鋭い歯を持つ男だ。

「きゃぁぁぁっ!」

「さぁ、俺の女になれ!」

「危ない、ヴァージニア!」

 ヴァージニアは慌てて男を突き飛ばそうとするが、効果はなかった。

 男がヴァージニアをさらおうとした時、リーフはヴァージニアを庇った。

 リーフの頭に、突き刺すような痛みが走った。

 背中のマントは引き裂かれ、剣と財布は奪われ、腰の刺繍の帯も引き抜かれた。

 リーフは呻き声を上げ、よろめきながら立ち上がろうとした。

 重い靴が彼の肋骨を蹴った。

「フィン、奴を仕留めろ、もう一人も」

 リーフはフィンという名前を聞いて身をよじった。

 水の交わる場所の壁に書かれた名前の一つだ。

「もう一人は貴重品だ。レジスタンスに所属している。ジョーカーと一緒にいるところを見た。

 衛兵は生きたまま金で支払うだろう」

「見て! 忍び寄ろうとしているのが!」

 赤毛をなびかせ、ニヤリと笑う大柄な女が小屋の角から現れ、

 たくましい腕でジャスミンを引っ張った。

 ジャスミンの足は地面から高く舞い上がった。

 彼女は足を蹴り、もがき、掴んだ手を噛みつこうとしていたが、女は気に留めなかった。

「最高のレディーには最高の服を! これを着たら、あたしも美しく見えるだろ?」

 紫色のスカーフを引き剥がすと、ジャスミンの絡まった黒髪が揺れた。

 女はジャスミンの首に巻いてあるマントを縛っていた金色の紐を引き裂き始めた。

 甲高い叫び声が響き、黒い影が彼女の頭に襲いかかった。

 鋭い嘴が耳のすぐ上を鋭く突き刺した。

 女は悲鳴を上げてよろめき、ジャスミンを掴んでいた力が緩んだ。

 一瞬にしてジャスミンは身をよじり、マントを女の手に残した。

 次の瞬間、短剣を手に持ち、靴を履いた足で致命的な力で後ろに蹴り飛ばした。

 女は叫び声を上げて後ろに倒れ、リーフの襲撃者に突進してリーフを転がした。

 ジャスミンはリーフを引っ張り上げ、2本目の短剣を渡した。

「後ろにいなさい! バルダはどこ?」

「海に落ちてしまいましたわ……」

 ヴァージニアが言うと、ジャスミンの目が暗くなった。

 クリーがジャスミンの腕に飛び降りると、

 ジャスミンは歯を剥き出しにして盗賊達に向かってくるりと振り返った。

 リーフは盗賊達が躊躇しているのを見た。

 いとも簡単に奪えると思っていた優雅な淑女は、

 盗賊達の目の前で、短剣が剣のように煌めく灼熱の戦士へと変貌を遂げていた。

 ポリパンさえも驚きで口を開けていた。

 

「まさか、あのピンクの服を着た女は……!」

 口を大きく開き、燃えるように大きな瞳はジャスミンを見つめていた。

 見つめるにつれ、女の顔に何かが起こり始めた。

 まるで燃えるような瞳がジャスミンを溶かしていくかのようだった。

 顔色が青白くなり、ピンク色の巻き毛は縮み、

 膨らんだ頭蓋骨に戻り、額の高いところにある傷跡が露わになった。

 腕と肩は泡立ち、ねじれ始めた。

 そして全身が上向きにうねり、冷たい白い炎のように揺らめいた。

「オルだ! 逃げろ!!」

 恐怖の叫び声が甲板に響き渡った。

 たちまち盗賊達は散り散りになり、デインと戦利品を引きずりながら手すりへと駆け寄った。

 そして、自分の船の甲板に足を踏みつけた。

 ポリパンは恐怖に駆られ、ガタガタと音を立てて唾を吐きながら、彼らを追いかけてきた。

 盗賊達が危険から逃れようと、下流へ逃げようと身を屈めると、

 オルがガタガタと音を立て、水しぶきを立てた。

 しかし、オルは彼らを気に留めなかった。

 燃えるような目はジャスミンに釘付けだった。

 歯のない口は貪欲そうに笑っていた。

 長く白い指がジャスミンの喉元に届くように突き出し、痙攣しながら前に伸びてきた。

 その先にオルの冷気が襲ってきた。

 息を呑むような寒さで手足は凍りつき、目は刺すように痛み、唇は氷のようになってしまった。

 息を呑み、よろめきながら後ずさりし、リーフを体で守ろうとしながら、

 ジャスミンは白い指に短剣を振り下ろした。

 寒さで意識が朦朧としたクリーは、その尖った頭に体当たりした。

 しかし、何もそれを止める事はできなかった。

 片手の指が蛇のように伸び、ジャスミンの首を掴み、地面から持ち上げた。

 もう片方の手は、ほとんど無造作に、リーフの短剣の腕を凍りついた鉄の力で掴んだ。

 短剣はガチャガチャと音を立てて甲板に落ちた。

 

「そんな……」

 リバークイーン号にオルが紛れ込んでいたなんて、とヴァージニアは愕然とする。

 可能性としてはなくはなかったが、

 たくさんの脅威に、ヴァージニアは思わず膝をつきそうになる。

 月が雲間から姿を現した。

 冷たく白い光が甲板を照らし、リーフとヴァージニアの顔を覆った。

 二人は、時間の流れがとてもゆっくりとしているように感じた。

 

(わたくし……ここで死にますの……?)

 ヴァージニアは祈りを捧げた。

 その時、オルが激しく身震いした。

 恐怖の夢の中で、リーフは大きく揺れる体を見上げ、

 鋭く光る何かが胸の右側から滑り出し、どんどん長くなっていくのを見た。

 腕を掴んでいた力が緩み、ジャスミンが倒れるのが見えた。

 オルは前に傾き始めた。

「どけ、この馬鹿!」

 リーフは必死に横に転がり、ヴァージニアも走る。

 オルは甲板に倒れ込み、背中には心臓を貫いていた長い釘の木の棒が突き出ていた。

 肉が膨らみ、うねっていた。

 ピンクの巻き毛と青い片方の目が、白さの中で恐ろしく泡を吹いていた。

 

「俺はオルって奴が大嫌いなんだよ!」

 船長は凶悪な笑みを浮かべ、釘を振りほどき、倒れる死体を川に蹴り飛ばした。

 

「た……助かりましたの……?」

「ジャスミン!」

 リーフとヴァージニアはジャスミンの元へ這い寄った。

 フィリが話しかけ、目を覚まさせようとしていた。

 ジャスミンは息をしていたが、首は火傷したように真っ赤に燃えていた。

 ヴァージニアはフラフラしながらも、ジャスミンに手を当てて、呪文を唱えた。

「光あれ!」

 ジャスミンの身体が光ると、身体の傷がみるみるうちに癒されていく。

 しかし、オルの攻撃は身体の芯まで凍らせるので、

 これでジャスミンが治るかどうかは、ヴァージニアには分からなかった。

 デインの鞄はまだ甲板に置いてあった。

 リーフはそれを破り開けて、蜂蜜の瓶を取り出し、

 その黄金色の液体をジャスミンの口に塗りつけた。

「唇を開けろ、ジャスミン。蜂蜜がバルダを助けたように、君にも効くだろう」

 名前を口にした途端、喉が痛みで詰まった。

 船長は頭を振りながら辺りを見回した。

 甲板には盗賊の死体が散乱していた。

「お前の親父も、船から落ちる前に、何人かのクズどもを始末したようだな」

「……やられちゃいましたわね」

 ヴァージニアの言葉に、リーフは息を呑んだ。

 何とか盗賊とオルを倒したが、どさくさ紛れでデインがさらわれ、ベルトも盗まれてしまった。

 船長は近づき、ジャスミンを物珍しそうに見つめた。

 フィリはシューと音を立て、小さな歯をむき出しにし、毛皮が逆立った。

 船長は飛び退き、板の山に倒れ込んだ。

 悲鳴が上がり、しましまロッキーが隠れ場所から這い出てきた。

「この川には耐えられない。二度とこんな目に遭わせるな! 引退するぞ。飢えても構わない!」

「お前はいつもそう言うな、この卑怯者め!」

 船長は無礼に怒鳴った。

「デッキレールはどうなるんだ? ポリパンは? 誰が払うんだ?」

「誰がそんな事を気にするんですの? 甲板を盗賊が襲ったんですのよ?

 お金の話なんて、できるわけがありませんわ!!」

 ヴァージニアは、怒りの涙が目にこみ上げ、焼けつくようにこみ上げてきた。

 船長はヴァージニアの方を向き、冷笑した。

「そんな気分なら、降りろ! お前と、お前の友達と、そのイカれた鳥だ。

 お前らとはもう終わりにしたい。あのオルがどうして襲ったのか、俺が分かっていると思うか?

 あいつの事が分かっていたんだ。あいつを捕まえろという命令が下っていた。

 お前も、俺が知る限りではね」

 船長は唸り声を上げながら、しましまロッキーの方を向いた。

「岸まで漕いで行け! 俺の前から消えろ! はばひろ川に戻って修理するぞ」

 

 すっかり意気消沈したロッキーが、ヴァージニア、リーフ、ジャスミンを降ろし、

 リバークイーン号へと漕ぎ戻った頃には、既に船の煙突から蒸気が噴き出していた。

 しばらくして、錨鎖がカタカタと音を立て、外輪が動き始めた。

 船は向きを変え、上流へとゴボゴボと進み、

 三人はデインの鞄と一枚の毛布だけを頼りに置き去りにされた。

 ジャスミンはヴァージニアの奇跡のおかげで回復したものの、ほとんど話す事ができなかった。

 彼女は蜂蜜をもう一匙飲み込み、苦しそうに飲み込んだ。

「どうしよう?」

「盗賊達を追ってベルトを取り戻すんだ」

 リーフは、自分が感じている以上に自信に満ち溢れた声で呟いた。

 ヴァージニアとジャスミンは頷き、頭を下げた。

「ベルトだけでなく、デインもさらっていったわ。デインを助けなきゃ。

 バルダも私達にそうしてほしいと思っていたはずよ」

 ジャスミンは全身が震えていた。

 リーフは毛布を取り、ジャスミンに巻き付け、温まるためにジャスミンのすぐ傍に座った。

「盗賊達がどこへ行くつもりなのか、分かっていたらよかったのに!

 夢の泉の水があれば、その答えが分かっただろう。だが、残っているのは鞄の中だけだ」

「わたくしの奇跡も、こういうのは使えませんし……」

 リーフとヴァージニアは空を見上げた。

 星は薄れつつあった。

 盗賊が乗った船はもう遥か遠くにあるに違いない。

「行かなくちゃ。逃げられちゃう!」

 ジャスミンは立ち上がろうともがいたが、すぐに後ろに倒れてしまった。

 リーフは再びジャスミンに毛布をかけた。

「バルダはいつも休むべきだと言うんだ。

 『敵に追いついても、戦えないほど弱ってたら意味がない』と言うんだ。

 そして、バルダはいつも正しかった」

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「バルダさん!」

 聞き覚えのある声が唸った。

 そして、影の中からバルダが歩いてきた。

 びしょ濡れで、震えていたが、生きていたのだ。

 あまりの衝撃に、リーフは一瞬言葉が出なかった。

 しかし、喜びと安堵が顔に表れていたに違いない。

 疲れた呻き声を上げながら座り込むと、バルダはニヤリと笑って肩を叩いた。

「俺がもう二度と戻らないと思ったのか? 正直に言うと、俺もそう思った。

 でも、俺と一緒に船から落ちた殺し屋を倒した。

 それに、もし虫がいたとしても、他の獲物で忙しかったんだろう」

「トランプをしていた男の事ね」

 ジャスミンは嗄れた声で言った。

 彼女は喉に手を当てながら話したが、

 明らかに女王蜂の蜂蜜とヴァージニアの奇跡のおかげで、既に痛みは和らいでいた。

 バルダが戻ってきた事で、ジャスミンの気分はすっかり良くなっていた。

「それでバルダさん、一体どうしてましたの?」

「岸に着いた時の事はほとんど覚えていない。ほんの数分前に我に返ったばかりだ。

 ボートの音が聞こえた。それから、岸辺で君達の声が聞こえた」

「バルダ、ベルトが奪われたんだ。僕の剣、持ち物全部、そしてデインもだ。

 ……何とかしなくちゃ」

「だが、まずは体を温めて乾かさなければならない。火をおこそう。いい炎だ。

 もしまた敵がそれを見て襲いかかってきたら、歓迎する。

 盗賊とオルが一緒になっても、俺達を仕留める事はできない。

 他の奴らが勇気があるなら、試してみろ!」

 リーフはよろめきながら立ち上がり、薪集めを手伝いに行った。

 バルダが戻ってきた事で、リーフを包み込んでいた絶望感は消え去った。

 しかし、夜明けと共に徐々に明るくなり始めた不毛の砂地を、

 リーフはまだ胸が締め付けられるような思いで歩いていた。

 盗賊を追跡し、追跡すると勇敢に語るのは良い事だ。

 しかし、四人が海岸に着く頃には、

 ボロボロの船はきっとどこかの隠れた入り江に隠されているだろう。

 岸に打ち上げられた古い板材を見つけ、リーフはそちらへ向かった。

 すると、森のすぐ先の浅瀬に何かが横たわっている事に気づいた。

 それはゴミとぼろ布の山のように見えたが、そうではなかった。

 それは、死体だった。

「バルダ! ヴァージニア!」

 リーフの言葉にバルダとヴァージニアは急いで駆けつけ、三人で遺体を砂浜に引き上げた。

 ヴァージニアは遺体を見ながら祈りを捧げた。

「これは俺と一緒に水に入った盗賊だ。どうやら奴は、俺ほど運が良くなったみたいだな」

 リーフはそのやつれた顔を見つめた。

 死後、盗賊は野蛮というより哀れに見えた。

 リーフとヴァージニアは、バルダが遺体の傍らにしゃがみ込み、

 服を引っ張り、ポケットに武器や金目のものがないか確認し始めるのを見ていた。

 かつては、死体から物を盗むなど夢にも思わなかった時代があった。

 しかし、そんな時代はとうに過ぎ去っていた。

 バルダは叫び、かかとを上げて座り直した。

 慎重に包みを開けると、中の紙は湿っていたが、まだ一枚の紙だった。

 バルダはそれを砂の上に置くと、リーフとヴァージニアは屈んだ。

 夜明けの薄暗い光の中でも、それが何なのかははっきりと分かった。

「魔物の洞窟への道だ」

「どうして盗賊達がこんな恐ろしい場所に行ったんですの?」

「そこに大きな宝石が隠されていると聞いていたら、奴らは気にしないだろう。

 どういうわけか奴らはそれを聞いていた。奴らはそれを探しに行くだろうな」




六つ目の魔境を発見しました。
そして次回は、ヴァージニアが活躍するでしょう。
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