ヴァージニアは何があっても仲間を信じる女の子なのです。
リーフとヴァージニアは慎重に立ち上がった。
グルーはとっくに去っていた。
遠くでグルーが動く音が聞こえた。
しかし、バルダとジャスミンが走る水しぶきの音はもう聞こえなかった。
二人はじっとしていた――グルーを混乱させるためか、それともただ休むためか。
いずれにせよ、二人はグルーをリーフとヴァージニアから遠ざけた。
二人は自分の役割を果たした。
今度はリーフが自分の役割を果たす。
「わたくしを……守ってくださりません……?」
「ああ、もちろんだよ。ヴァージニア、君は僕が守るから」
「……そうですわね……」
この時、ヴァージニアはリーフを一人の男性として見るようになった。
自分より年下なのに、自分を守ってくれると言ったから、
ヴァージニアは女性としてリーフを信じるようになった。
リーフはその声を頭から追い出した。
片手をデルトラのベルトに、もう片手を石の柱に置いた。
冷たく湿った表面に指を動かし、待ち続けた。
そして、リーフはそれを感じた。
宝石がどこにあるかを教えてくれる、紛れもない鼓動。
柱の3分の2ほど登ったところ。
リーフは短剣の先端で掘り始め、
空いている方の手をカップ状にして、落ちてくる破片を受け止めた。
石の表層は柔らかく湿っていた。
それは簡単に剥がれ、すぐに手全体が入るほどの穴が開いた。
しかし、柱の中心部に近づくにつれて、作業はより困難になった。
鋭い鋼鉄が硬い石に擦り付けられ、歯が痛くなるほどだった。
リーフは常に、あまりに速く、
不注意に作業すると宝石を傷つけてしまうのではないかと怯えていた。
ヴァージニアはリーフの後ろで、リーフを信じていた。
穴の中は何も見えず、何も聞こえず、何も匂いがしなかった。
だから、リーフは思った。
残されているのは触覚だけだ。
リーフは目を閉じ、短剣の先端が指先と一体になるまで、手を動かして下へ動かした。
優しくこすりながら、覆い隠された宝石を心の中で呼び起こし、
同時に指先で、何かを教えてくれる感触を探った……。
そしてそこにあった。
柱の内側にある、冷たく静かな中心。
指がそれに触れた瞬間、冷たさがリーフの手へと伝わり、周りの白い石が粉々に崩れた。
ゆっくりと、慎重に手を引っ込め、指を解いた。
そこには、白い粉の膜に覆われた、大きな紫色の宝石があった。
真実の象徴、アメジスト。
リーフは輝く表面の埃を払い、その美しさに驚嘆しながら、深い安らぎを感じた。
腰のベルトは燃えるように熱かったが、心は冷静で澄み切っていた。
リーフは『デルトラのベルト』に出てくるアメジストに関する言葉を思い出していた。
真実の象徴であるアメジストは心を落ち着かせ、癒す。
「僕に今、必要なもの……それは……」
この宝石をベルトに収め、安全に保管するための静けさ。
バルダとジャスミンが戻ってくるまで待つための静けさ。
二人が戻ってくると信じる静けさ。
リーフは水が辺りを漂う中、しゃがみ込んだ。
デルトラのベルトを外し、膝の上に置いた。
アメジストはエメラルドの横に滑り込み、そこでしっかりと輝いた。
リーフはベルトを腰に戻し、慎重に立ち上がった。
「さあ、後は待つだけだ」
「そうですわね」
リーフは濡れた手を服で拭こうと上げた。
その時、左手の甲に冷たい感触が走った。
背後から、柔らかな息吹が吹き込んでくるのを感じた。
リーフとヴァージニアは振り返った。
ゆっくりと、ゆっくりと。
手を前にかざし、風の流れに導かれるように、石柱の向こう側にそびえ立つ壁へと歩み寄った。
その上には小さな隙間があった。
石のひだのようだった隙間……だが、そうではなかった。
その隙間から、新鮮で潮風の香りが漂ってきた。
今、二人はそれを感じるだけでなく、匂いも嗅ぐ事ができた。
リーフはジャスミンの短剣を持ち上げ、その場所を削り始めた。
柔らかい石がもう一方の手に落ち、そよ風がそっと吹いた。
我慢を強いながら、リーフは緩んだ石をそっと足元の地面に下ろした。
リーフは立ち上がり、再び削り始めた。
今度は、より大きな石片が外れ、今度は隙間が大きくなった。
今度は風が顔に吹きつけ、水が勢いよく流れる空洞の音がそよ風の音に混じっていた。
リーフの胸は締め付けられる思いだった。
息を切らしていたリーフは、落ち着くためにアメジストに手を当てた。
急いだりパニックになったりしない事が、絶対に必要だった。
リーフは大きな石片を、最初の時と同じように優しく置き、また別の石片を手に取った。
最後の一枚は、多すぎた。
隙間から水がポタポタと流れ始め、壁の向こうのトンネルは半分水で満たされていた。
リーフは深く掘りすぎていた。
「……リーフ?」
絶望に襲われながら、リーフは小川が足元の水面に落ちるのを見た。
水しぶきの音は大きく、信じられないほど大きく聞こえた。
水は渦を巻き、波紋を作り、それを止める術は何もなかった。
まるで目があるかのように、グルーの皮膚の震える毛が硬直するのを見た。
グルーが向きを変え、頭をもたげ始めたのが見えた。
怪物が、リーフとヴァージニアに向かって動いているのが見えた。
遠くから、走ってくる音が聞こえた。
同時に、手首に結ばれた黄色い毛糸がきつく締まった。
二人は無理矢理待ち、見守った。
「リーフ! ヴァージニア!」
青白い影の中から声が聞こえた。
「リーフ、ヴァージニア! 何が起こっているの? リーフ、ヴァージニア、来るわ!」
バルダとジャスミンは黄色い糸を追って彼に向かって走ってきた。
リーフはもう待てなかった。
ヴァージニアを守りながら、リーフは壁の隙間に飛び込み、
氷のように冷たい水が腰まで押し寄せ、息を切らした。
足元にも頭上にも岩があった。
しかし、それは洞窟の岩ではなかった。
ずっと硬く、黒ずんでいた。
水は乳白色ではなく、澄んでいて、塩辛かった。
リーフは身を屈め、ジャスミンに腕を差し出した。
ジャスミンが近づくと、リーフはジャスミンを自分の横に抱き上げた。
次はバルダの番だった。
バルダは隙間の縁を掴んだ。
石はバルダの手の下で崩れ、バルダは後ろに倒れ、塩水が体に降り注ぎ、息を切らした。
「バルダ!」
グルーが迫っていた。
ゆっくりとではなく、猛烈な速さで迫ってきた。
その音は恐ろしいものだった。
口を大きく開けて唸り声を上げ、白い壁に赤い裂け目ができた。
白い糸が雲のように空中に噴き上がった。
ヴァージニア、リーフ、ジャスミンは筋肉を緊張させながら前屈みになり、
降り注ぐ水の中、バルダを引き上げようとした。
バルダの脚は必死に蹴り上げ、足場を探し回っていた。
「このままじゃ下敷きですわ!」
バルダはトンネルによじ登り、足を引きずり上げたが、
同時に糸の雨がバルダの下の壁に張り付いた。
息を切らしながらバルダは這い進み、隙間から抜け出した。
グルーの恐ろしい頭がもたげ上がり、空間を埋め尽くした。
「追ってきてるわ!」
ジャスミンは悲鳴を上げた。
しかし、グルーはトンネルに入ろうとはしなかった。
それどころか、頭は左右に揺れ始めた。
赤い喉から白い糸が流れ出し、隙間の縁に張り付いてしまった。
そして、ヴァージニア達は何が起こっているのかに気づいた。
グルーは穴を塞いでいた。
何世紀にも渡って築き上げてきた広大な隠れ家への危険は、食料よりも重要だった。
「ここは何なの?」
ジャスミンの歯がガタガタと鳴った。
トンネルの水が突然押し寄せ、ジャスミンは叫び声を上げた。
ジャスミンは前方に転がり落ち、息を切らし、何とか水面に上がった。
フィリは悲鳴を上げ、リーフはジャスミンの手を掴んだ。
「盗賊がいた洞窟の前の岩の下にいるはずだ」
バルダは髪と目についた水を払いながら叫んだ。
「潮が満ちている。掴まれ!」
「ええ!」
水が吸い込まれ、排水溝の水のようにゴボゴボと音を立てながら四人の傍を流れていく中、
リーフは両手で岩に体を支えた。
リーフは歯を食いしばり、ジャスミンが後ろへ流されないようにジャスミンの手を掴んだ。
ヴァージニアも必死で、岩を握りしめた。
「前へ進め! 次の波が来たら、それに乗れ! 逆らうな!」
再び水はうねり、うねり始めた。
またもや三人はなす術もなく押し流され、滑らかな壁に体を転がしかけた。
三人は水面に飛び出し、水が吸い上げてくる中、岩に体を押し付けた。
「波が大きくなってますわ!」
「トンネルが埋まってしまう! 溺れてしまう!」
リーフはジャスミンの手をぎゅっと握りしめた。
「溺れない! 死ぬためにここまで来たんじゃないぞ」
「ほら!」
バルダが叫んだ。
リーフは前を見て、光を見つけた。
「噴気孔だ!」
バルダは必死にヴァージニア、リーフ、ジャスミンを押し出した。
「行け! 早く! 今にも噴き出しそうだ。噴き出す前に逃げ出さなければ! 絶対に!」
リーフはそびえ立つ噴気孔を思い出した。
容赦のない岩に水が激しく打ち寄せ、そして誰も抵抗できない勢いで吸い上げていくのだった。
リーフは半ば這い、半ば泳ぎながら、もがき続けた。
ヴァージニアは必死で泳ぎ続けた。
ジャスミンはすすり泣き、リーフの前でよじ登っていた。
新たな波のうねりがリーフを襲い、目は塞がれ、耳は轟音で満ちた。
(僕達はここで死ぬのか?)
流されながら、リーフは思った。
それでもリーフはジャスミンの手を握りしめ、刺すような目を開けると、
ヴァージニア達の頭上には空が広がっていた。
夜明けの空、ヴァージニア達は噴気孔の入り口で浮かんでいた。
「やっと……やっと、抜け出しましたわ……」
ヴァージニアは何とか泳ぎ切った。
リーフはジャスミンを、そしてまた上に、そして外へと押し上げた。
ジャスミンは濡れた岩の上に崩れ落ち、リーフは水に抵抗しながら、
トンネルへと引き戻されそうになりながら、ジャスミンを追ってよじ登った。
バルダも息を切らし、水滴を垂らしながら、大きく息を切らしながら、後を追った。
ヴァージニアはリーフに手を伸ばす。
三人はジャスミンを抱き上げ、穴からよじ登り、岸を目指した。
クリーが急降下してくると、歓喜の叫び声が上がった。
そして背後から叫び声が聞こえた。
リーフは振り返った。
盗賊がいた洞窟から二人の人影が岩山を駆け抜け、こちらに向かってくる。
フィンとナックが剣を高く掲げ、怒りに燃えて吠えていた。
「短剣は一本しかない」
「もう、わたくし達はへとへとですのよ……」
リーフは走りながら、息を荒くしながら思った。
自分達は魔物の洞窟を脱出してへとへとだ。
このままでは盗賊に今度こそやられてしまうだろう……とその時、かすかな轟音がした。
「跳べ!」
バルダが叫ぶと、ヴァージニアとリーフは跳び上がった。
足が岸の砂にぶつかった。
息を切らして転がり、ジャスミンとバルダも彼の横を転がり落ちた。
ヴァージニアとリーフは岩を振り返った。
ナックとフィンは立ち止まっていた。
まるで歩きながら凍りついたかのようだった。
顔は恐怖の仮面のようだった。
そして、恐ろしくゆっくりと、剣を振り払いながら振り返り始めた。
一歩、また一歩と……。
しかし、遅すぎた。
噴気孔が轟音を立てて勢いよく噴き出し、二人は仰向けに投げ飛ばされた。
二人は一瞬、ひっくり返ったカニのように、なす術もなくもがき苦しんだ。
すると、激しい音と共に水が二人の上に吹きかかり、渦を巻いて捕らえた。
恐ろしい吸い込むような音と共に、水は勢いよく流れ込み、
岩だらけのトンネルへと戻っていった。
そして水は消え、滑らかな濡れた岩と、
昇る朝日に煌めく水たまりに横たわる二本の剣だけが残った。
四人は荒れ果てた魔物の洞窟から、盗賊の持ち物をかき集め、打ち寄せる波に背を向けた。
疲れ果て、空腹だった四人は、ただこの恐ろしい海から少しでも距離を置きたいだけだった。
太陽は空高く昇り、ようやく安全な場所を見つけた。
川辺にある、長い間、放置されていた小屋だ。
崩れかけた暖炉に火を焚き、安らぎと暖を求めた。
それから、ナッツやドライフルーツ、旅人のビスケット、
女王蜂の蜂蜜を貪るように食べ、恐怖の山の透き通った流れの水で流し込んだ。
最初はほとんど口を利かなかった。
誰も、自分が見たもの、生き延びたものについて考えたくなかった。
リーフの考えはデイン、ヴァージニアの考えはジョーカーへと向かった。
(デインはトーラに戻れるかな?)
(ジョーカーはどうなるんですの?)
ジャスミンがついに口を開き、二人の考えを奇妙に繰り返した。
「ジョーカーが裏切ったの? それとも、偽物の地図で、私達に疑わせようとしたの?」
リーフとヴァージニアは途方に暮れて首を横に振った。
二人には分からなかった。
「地図は全部嘘だったのよ」
「俺の姿になったあのオルが、死んだ盗賊に仕掛けたんだ。
君達を惑わせ、ついには冒険を諦めさせるためだ!」
バルダは嫌悪感を込めて首を横に振った。
「きっと百枚の地図があって、それを運ぶオルが百人も川にいたはずだ。
もし俺達を見つけたら、殺すのではなく、騙せと命令されたオル達だ」
ジャスミンとヴァージニアは身震いした。
「だからこそ、岸辺で敵が待ち伏せしていなかった。
今回の計画は、冒険を諦めさせ、絶望的だと広め、二度と試みないようにする事だった」
「殺すためのオル。騙すためのオル。敵には多くの計画があるようだ。
網のように織り合わさった計画」
「もしわたくし達が何かに捕まらなければ、別の場所で捕まるでしょうね」
リーフは川面を見つめた。
滑らかに滑るように流れるその水面の下で、怪物が漂い、身をよじっている。
「影の大王には計画があるのかもしれない。だが今回は失敗した。
何故か? 奴が過ちを犯したからだ。盗賊達の事を想定していなかった。
奴らはうっかり侵入し、影の大王の網をずたずたに引き裂いた」
「そして運が良ければ、少なくともしばらくは奴には気づかれないわよね」
「一体、誰が奴に告げ口できるんですの?」
ジャスミンはヴァージニア、リーフ、バルダを一瞥した。
「という事は、今のところは一緒にいられるという事か?」
リーフは再びシャツの下に隠したデルトラのベルトに指を置いた。
六つの宝石の形を順番になぞり、答えを知った。
「僕達は一緒にいなければならない。ベルトの宝石のように、僕達は互いを必要としている。
誠実のため、幸福のため、希望のため、幸運のため、名誉のため、そして真実のために」
バルダは力強く頷いた。
二人は軽く手を握り、それから体を休めた。
四人の前には、またしても長く危険な旅が待ち受けていた。
いましめの谷と呼ばれる場所への旅だ。
純潔と力を司る、デルトラのベルトの最後の宝石、ダイヤモンドを見つけるだけだった。
「今度こそ、見つけますわよ。ワソ!」
そして、洗脳されたワソも、そこにいるはずだ……と、ヴァージニアは信じていた。
その頃、ワソは影の大王とテレパシーで会話していた。
―オサよ、奴らを捕らえられなかったようだな。
「申し訳ございません。予想以上に抵抗が激しく……」
ワソの眼は、だんだんと闇に染まっていった。
まるで、影の大王のしもべそのものになるように。
「奴らの通る道と考えられる場所に、オル達を見張らせていますが……」
―黙れ。こうしているという事は、捕らえられなかったのだろう? もう信用ならん。
「……もう一度奴らを追いかけます。そして……始末します」
ワソは刀と銃を取ろうとしている。
無論、ヴァージニア達を自らの手で捕らえ、でなければ始末するためだ。
ワソの眼は闇に染まっているものの、真剣そのものだ。
―いいだろう。だが忘れるな。お前の耳は私の耳だと。
「……はい」
ワソはヴァージニア達を捕らえるために、再び歩き出した。
彼女の頭の中で、何かが蠢いているとは知らずに……。
アメジストを取り戻し、次が最後の魔境となります。
ヴァージニアが怖いもの知らずなのにウネウネしたものが苦手な理由は、
「ミスタードリラーのアタルがコウモリが苦手なのと同じ」とだけ言っておきます。
最後の展開は、いずれ来る冒険に繋がるとだけ言っておきますヨ。