しかし、乱入者がいるようで……。
ジョーカーの言う通り、ネリダはヴァージニア達を説得して同行しようと尽力した。
ついにネリダは崩れ落ち、バルダの腕の中で泣き崩れた。
レジスタンスを離れたのはジョーカーに心を打ち砕かれたからだと嘆き悲しんだ。
「私、ジョーカーを愛しているのに」
ネリダはすすり泣いた。
「でも、ジョーカーは残酷で、私の事など気にも留めない。
毎日ジョーカーの顔を目にする場所に、このままではいられないわ。本当に!」
バルダはぎこちなくネリダの肩を叩いた。
しかしジャスミンは冷たく驚き、リーフとヴァージニアも見つめた。
リーフはネリダの欺瞞的なやり方をよく知っていたので、ネリダの涙が本物なのか疑っていた。
ついにバルダの説得で、ヴァージニア達はネリダを一日か二日、旅に同行させる事に同意した。
「でも、その後は別れなくちゃいけない、ネリダ。俺達の目的地は恐ろしく危険な場所だ」
バルダは優しく警告した。
「いましめの谷よね。知ってるわ。あなたがジョーカーと話していた時に、その名前を聞いたわ。
あなたは本当に勇敢よ。ジョーカーが思っている以上に勇敢よ」
リーフは再びネリダの事を不思議に思った。
ジョーカーと何を話しているのか、ネリダは聞いている様子を見せなかった。
ネリダはじっと座り、まるで物思いに耽っているかのように湖を見つめていた。
ずっと耳を澄ませていたのだ。
ネリダはずる賢い、とリーフは思った。
(くれぐれも、ネリダには気をつけよう)
結局、ネリダは一週間近くヴァージニア達と旅をした。
ネリダは夜行に強く抵抗し、不機嫌で文句ばかり言っていた。
しかし、ネリダの家へと続く道を何度も通ったにもかかわらず、
ネリダはヴァージニア達と一緒に行く事を拒否した。
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンがネリダと別れようとするたびに、
ネリダは泣きながらヴァージニア達を追いかけ、蜜のようにヴァージニア達にしがみつき、
ついにバルダの同情さえも失ってしまった。
「まったく、本当に迷惑ですわね」
ある日、寝袋の中でふくれっ面をしているネリダに、ヴァージニアは不満げに言った。
「家に帰りたいと言ったのに、どうして帰らないんですの?」
「分からない」
「でも、すぐに何とかしなくちゃ。
ネリダを信用していないし、いましめの谷に着くまで一緒にいてほしくない。
地図と計算によると、ここからそう遠くないはずだ」
「きっと、ネリダは私達なしで先へ進ませてくれないわよね」
ジャスミンは厳しい表情で言った。
「だから、選択肢は二つ。一つは、ネリダの頭を殴って逃げるか、
それとも、ネリダが寝たのを確認してからこっそり逃げるか」
「乱暴ですわね」
リーフ、バルダ、ヴァージニアが後者を選んだ時、
ジャスミンは少しがっかりしたようだった。
数時間後、ヴァージニア達は泥棒のようにキャンプ場からこっそりと逃げ出した。
ヴァージニア達は一日中、物陰に隠れながら足早に歩き、
日没時には急峻で木々が生い茂った丘陵地帯に到着した。
「谷はこの範囲内にあるに違いない」
リーフは丘を見上げた。
「長くて険しい登りになるだろう」
「それに、木々が生い茂ってとても暗いから危険ですわ」
「今夜は月が最も小さい。そして明日の夜は月が全く出ない。ラピスラズリが役に立たないな」
ジャスミンは焦りながら帽子を脱いだ。
「耳にこの厚い毛糸を被っていると何も聞こえないのよ!」
ジャスミンは不満げに言い、安堵のあまり髪を振りほどいた。
「ところで今頃は何を言っていたの? 今夜は暗いって? それに森が深いって? その通りよ。
今度こそ、一晩中寝て、朝になったら木々に隠れて登れるって分かったらどうかしら」
その計画は素晴らしいものに思えた。
三人はジャスミンの言う通りにした。
そして、翌日の暮れになってようやく、あの荒れた丘の頂上に辿り着き、
ギザギザの割れ目、つまりいましめの谷を見下ろしたのだった。
その頃、ネリダはヴァージニア達に逃げられた事を知り、落胆していた。
「何よ、あの修道女ったら、人の邪魔ばっかりして。
信じられないけど、あのダイヤモンドを狙ってるかもしれないわ」
ネリダが愚痴を吐いていると、角が生えた女性、ワソが姿を現した。
ワソの眼は相変わらず闇に染まっていたが、それを隠すようにワソは微笑んだ。
「一体どうしたのですか?」
「実は、森の中ではぐれちゃいまして……。
お願いです、私をいましめの谷に連れて行ってください」
「……はい、喜んで。行きましょう」
そう言って、ワソはネリダの手を引いて、歩いて行った。
しかし、ワソは心の中で、ある事を企んでいた。
(もし彼女が死んだら、その時は亡骸を利用しよう。もし彼女が死ななかったら……)
濃い灰色の霧が、谷底を陰鬱に這っていた。
その霧は、深淵に群がるぼんやりとした人影のゆっくりとした動きで揺れ、
木々の梢まで覆い尽くした。
緑の腐った木や、息絶えた生命の匂いを漂わせる、かすかな湿った温もりが、
霧のこだまのようにヴァージニア達の顔を撫でた。
ジャスミンはそわそわした。
フィリが耳元で何か話しかけてきた。
クリーはコッコッと一鳴いた後、ジャスミンの腕にじっと座った。
「フィリもクリーも谷が好きじゃないのよ」
「同じく」
「わたくしもですわ」
ジャスミンは肩を竦め、身震いした。
それから、何も言わずに振り返り、崖っぷちを取り囲む一番大きな木々のところに戻った。
リーフとバルダは驚き、ヴァージニアは感心する。
ジャスミンがフィリを肩から持ち上げ、届く限りの一番高い枝に乗せた。
クリーが傍を舞い上がった。
「きっとお互いを気遣ってくれるわ。気をつけてね」
ジャスミンは振り返り、振り返る事なく、ヴァージニア、リーフ、バルダのところへ戻った。
三人の問いかけるような視線を静かに受け止めた。
「言ったでしょ。クリーとフィリは谷が好きじゃないの。行ってはいけないの」
「どうして?」
リーフは思わず声を上げた。
彼はクリーとフィリがまだ枝に止まり、
寂しそうにジャスミンの後ろを見つめているのを見下ろした。
ジャスミンは肩を竦めた。
「もしあそこに行ったら、死んでしまうわ。
谷はどんな生き物のためにもなっていないの。霧が殺してしまうのよ」
リーフの背筋が震えた。
「僕達はどうなるんだ?」
「下に人がいるわ。霧の中に影が見えるの。彼らが生き残れるなら、私達もできるわ。
霧が立ち込めるところまで降りて、どうするか決めましょう」
突然、ジャスミンはくるりと振り返り、フィリとクリーに手を差し出した。
それからもう一度向きを変え、帽子を耳までしっかり被ると、
崖っぷちをよじ登って降りていった。
ヴァージニア、リーフ、バルダも後を追った。
足元の地面は急勾配で危険で、石が散らばって滑りやすかった。
半分歩き、半分滑り、常に転落の危険を冒しながら、リーフはどんどん下へと進んでいった。
ほんの数分後、リーフは自分が歩いているという感覚を失ってしまった。
滑りやすい石と斜面の急峻さが、リーフの代わりに全てをこなしてくれていた。
崖っぷちから見ると、谷底は遥か遠くに感じられた。
今、刻一刻と近づいてきていた。
一度、リーフは振り返った。
崖の頂上がヴァージニア達の頭上に高くそびえ立っていた。
信じられないほど高く、信じられないほど遠く。
ヴァージニア達がかつてそこに立っていた事など、信じ難かった。
下山するか、その場に留まるか、あるいは背を向けて谷から離れるか、
選択肢があった事さえ、信じ難かった。
今のところ、他に選択肢はないようだった。
這い上がる霧に近づくほど、霧はヴァージニア達を引き寄せ、斜面はますます急峻になった。
じっと立っている方が、進むよりも遥かにエネルギーを消耗した。
ヴァージニア達は互いに支え合おうとしたが、助け合う事はほとんどできなかった。
そして、気がつくと、霧はヴァージニア達を取り囲んでいた。
まるでヴァージニア達に会いに来たかのように、温かく湿った指で顔を撫で、目に霞をかけた。
ゆっくりと霧はヴァージニア達の口と鼻に忍び込み、甘すぎる香りと腐敗の味で満たした。
「まずい!」
リーフは歩みの途中で立ち止まろうとしたが、足を滑らせて転び、
目もくらみながら転げ落ち、息を切らしながら石の上をよじ登った。
ヴァージニア、ジャスミン、バルダが驚いて呼ぶ声が聞こえたが、どうする事もできなかった。
ようやく立ち止まった時、リーフは自分が谷底にいる事に気づいた。
周囲には濃い霧が渦巻いていた。
頭上には、カビが生い茂り、蔓が垂れ下がった影のような木々が伸びていた。
顔の脇には、ねじれた根から、赤黒いキノコの大きな塊が生えていた。
青々としたシダが彼の周りにアーチ状に広がり、
息を切らしながらよじ登るリーフの顔や手を撫でていた。
辺り一面から、木々を揺らす風のような、かすかな溜息が聞こえた。
しかし、風はなかった。
音はどこからともなく、リーフの周囲から、渦巻く灰色の闇の中から、
暗い影が滑るように動き、身をよじり、近づいてくるようだった。
「ヴァージニア! バルダ! ジャスミン!」
リーフは突然の恐怖に襲われ、叫んだ。
しかし、霧にかき消され、声はか細く甲高い声に聞こえた。
三人が返事をした時、三人の声は遥か遠くに聞こえた。
リーフは再び叫んだ。
苦痛の叫び声が聞こえたような気がして、胃がキリキリと痛んだ。
しかし、暗闇の中から三人がよろめきながらこちらに向かってくるのが見えた。
リーフはよろめきながら前に進み、ありがたく三人の腕を掴んだ。
「まあ、いずれにせよ、俺達はまだ生きている」
「霧はまだ、わたくし達を殺してはいないみたいですわね。……ジャスミン?」
しかし、ジャスミンは何も言わなかった。
ジャスミンは短剣を抜き、全身の筋肉を緊張させ、じっと立っていた。
溜息のような、ささやくような音がさらに大きくなった。
周囲の霧が渦巻き、うねり、影は深まり、迫り来る。
「下がって!」
「え、えっ?」
ジャスミンは短剣を威嚇するように掲げ、息を詰まらせた。
影は一瞬動揺したように見えたが、それはほんの一瞬だった。
そして再び迫り来る。
リーフはそれが人間だと分かった。
霧の中から四方八方からやってくる、男、女、子供達の群れだった。
彼らは不親切そうには見えなかった。
実際、青白い顔には、臆病ながらも熱意と歓迎の気持ちが溢れているように見え、
彼らはゆっくりと前に進み、細長い手を仲間に向かって伸ばしていた。
指は薄い灰色で、ほとんど透き通っているようだった。
彼らの体にはためく長い服も、背中に垂れた髪も透き通っていた。
彼らが霧の一部のように見えたのも無理はない。
彼らは動きながら囁き合っていた。
その声は風に揺れる枯葉のようだったが、
リーフには彼らの言っている事が全く理解できなかった。
それでもリーフは脅威を感じなかった。
彼らがすぐ傍まで来て、最初の一人が蛾の羽のように乾いて軽い指で、
リーフの顔、服、髪に触れ始めた時でさえ、リーフは恐怖の震えを感じず、
ただ身を竦めるような嫌悪感だけを覚えた。
そして、さらに多くの人々が、そしてさらに多くの人々がやって来た。
彼らが纏う色のないぼろ布は、皮と骨だけの手足にまとわりついていた。
彼らの姿は溶け合い、混ざり合い、押し寄せるにつれて重なり合い、
それぞれの手が十数本の手に触れ、撫でる……。
「邪悪め!!」
ヴァージニアが叫ぶ。
バルダとリーフは硬直したまま立っていた。
しかし、ジャスミンは震え、口を固く結んで目を細めた。
「耐えられない。奴らは誰? どうしたの?」
短剣はジャスミンの手にぶら下がっていた。
ジャスミンはそれを使おうとはしなかった。
そうする事ができなかった。
人々は明らかに無害で、明らかに何か深刻な窮状に陥っていた。
群衆がざわめいた。
それは風に吹かれた長い草むらのように揺れ動いた。
そして、はためく手は消え去り、人々は霧の中へと後ずさりし、
囁き合いながら、灰色の瞳は絶望的な憧憬に満ちていた。
空気中に恐怖が漂っていた。
ヴァージニアとリーフはそれを感じる事ができた。
ほとんど匂いさえ感じた。
そして、その源を見た。
燃える炭のように輝く二つの赤い光が貫く、背の高い暗い影が、
霧の中からヴァージニア達に向かって迫ってきた。
リーフは剣に手を置こうとした。
しかし、手は動かなかった。
後ずさりしようとした。
しかし、足は言う事を聞かなかった。
一目見ただけで、バルダとジャスミンが同じ魔法にかかっている事が分かった。
ヴァージニアだけは魔法にかかっていないようだが……。
影は形を成した。
今、リーフは赤い炭が目だと分かった。
長く暗いローブを纏った、背が高く髭を生やした男の、傷ついた顔に燃える目。
男は両手に二本の太い灰色の紐を持っていた。
それらはまるで何かに繋がれているかのように、
男の背後の霧の中へと伸びていたが、男は気に留めなかった。
男の燃えるような目はヴァージニア、リーフ、バルダ、そしてジャスミンに釘付けだった。
四人は何とか逃れようともがき、男の薄い唇は悪意に満ちた笑みを浮かべた。
「力を無駄にするな。私が望まない限り、お前は何もできない。いずれ分かるだろう。
ようこそ、いましめの谷へ。久しぶりに来客があった。そして今、五人も来てくれたのだ」
「五人? わたくし達だけじゃなくて?」
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンが驚いて顔を見合わせるのを、
男は喜びに溢れて見ていた。
「もしかしたら、仲間を分けてわたくしを騙そうとしたんですの?」
「ああ、そういうのを見るのは好きだ。ゲーム好きな来客。
そうすれば、皆にとってずっと楽しいだろう」
「ゲーム、ゲーム~♪ 久しぶりのゲームですわ~♪」
ヴァージニアが楽しそうに歌う中、男は骨ばった指を曲げた。
するとヴァージニア達が驚いた事に、霧の中からネリダがよろめき出てきた。
困惑した顔は傷だらけだった。
実はネリダはヴァージニア達がいない間に、ワソの手引きでヴァージニア達についてきたのだ。
今やヴァージニア達は、自分達だけでなくネリダの事も心配しなければならない。
怒りに歯を食いしばり、リーフは聞いた叫び声を思い出した。
きっとネリダは一人で急な坂を下りてきて躓いたのだろう。
「どうして勝手についてきたんだ!」
「だって……どうしても行きたくて……」
リーフは、よろめきながら隣に立ち止まったネリダを、苛立ちながら一瞥した。
しかし、ネリダはリーフを見なかった。
ネリダは恐怖と混乱で暗い目をしたまま、まっすぐ前を見つめていた。
四人を苦しめる男は両手をこすり合わせていた。
「お前は誰だ?」
リーフが問いただすと、男は嘲笑するように微笑んだ。
「わしか? 何故、お前は気づいていない? わしは、いましめの谷の番人だ」
ローブを振り回しながら、いましめの谷の番人は踵を返し、霧の中へと歩き始めた。
ヴァージニア達が番人を見失う直前、番人は不用意に片手を上げ、人差し指を曲げた。
そして、ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミン、ネリダは、どうする事もできず、
足を引きずりながら番人の命令に抵抗しようと戦い、よろめきながら番人の後を追った。
ヴァージニア達が歩くと、霧が渦巻いた。
シダやツタが足や顔を撫でた。
視界の端で影が揺らめいた。
谷の人々は見守っていたが、近づく勇気はなかった。
ヴァージニア達の前を、背筋を伸ばした背の高い番人が闊歩していた。
「この番人が洞窟か小屋か、住んでいる場所に連れて行ってくれるなら、なおさらいいわ」
「そこが番人のいる場所ですのね。でも、ネリダは……」
「ダイヤモンドの事は知っているわ!」
ヴァージニアはネリダを一瞥した。
ネリダは怒って首を振り、甲高い声で言った。
「どうして私があなたを追ってきたと思うの? あなたの素晴らしい仲間のため?」
ネリダは不安そうに番人の背中を見つめた。
「誰が失敗しても、あなたは必ず成功すると思っていたの。
谷に足を踏み入れた途端、捕まるなんて夢にも思わなかったわ!」
「私達は以前も捕まった事があるけれど、何とか助かったのよ。
またやってやるわ。武器はまだあるわ」
「あの番人はゲームについて話していたよ」
「どうやらゲームが好きみたいですわ。どういう意味だと思いますわ?」
「いずれにせよ、楽しい事じゃないな。でも少なくとも、番人が人間である事は間違いない。
オルとか、人の形をした魔物じゃない。ゲームが好きなのは人間だ」
「もし番人が人間なら、どんな魔法を使っても倒せるわ。倒して宝石を手に入れる。
後は待つだけ。弱点を突き止めるだけよ」
リーフは躊躇った。
彼もまた、番人が魔法の力を持った人間だと信じていた。
しかし、それがヴァージニア達の任務を少しでも楽にするとは思えなかった。
そして、何かがまだリーフの記憶を悩ませていた。
ダイヤモンドの事を考えるたびに、リーフの肌は警戒でチクチクと震えていた。
ヴァージニア達は長い時間のように感じられるほど歩き、
深い小川を渡り、ついに空き地へと入った。
突然、番人は立ち止まり、手を挙げた。
霧の中から光が輝き始めた。
ヴァージニア達が近づくにつれ、その光はドーム型のガラス宮殿の中で輝いているのが見えた。
ガラスの壁の外には霧が立ち込め、反射光に不気味に輝いていた。
何百もの灰色の影のような人影が、靄の中をうろうろと歩いていた。
しかし、宮殿の中は豊かな色彩で輝いていた。
多くの部屋には、上質な家具、鮮やかな絨毯や絵画、
金銀の彫像、絹のクッションや壁掛けが溢れていた。
全体が宝石のように輝いていた。
番人は、ヴァージニア達に宮殿の素晴らしさをよく見せるために脇に立っていた。
今、番人はヴァージニア達の驚いた顔に誇らしげに微笑んだ。
「王に相応しい住まいだ、お前達もそう思うだろう」
「そうですわね、美しい」
誰も答えないと、番人の笑顔は消え、しかめっ面が浮かんだ。
「中へ入ろう。そうすれば、お前達の口も軽くなり、もっと従順になれるかもしれない」
番人が手に持っていた紐を引っ張ると、背後の霧の中から四つの姿が重々しく現れた。
リーフはネリダが息を呑むのを聞いた。
そして実際、渦巻く灰色の霧の中から怪物達が現れるのを見て、リーフ自身も息を呑んだ。
この怪物もウネウネしていたのだが、ヴァージニアは何とか、視界に入らないようにした。
毛がなく、醜く、不格好で、傷と腫れ物に覆われ、ねじれた腕は地面に届きそうに垂れ下がり、
怪物達はヴァージニア達を見つめながらニヤニヤ笑い、よだれを垂らしていた。
主人が縛り付けていたゴムのような紐は、首の後ろの赤く膨らんだ中心から巻き付いていた。
「でも、あれって……」
ヴァージニアは紐が怪物の一部、肉片である事に気づいた。
「これがわしのペットじゃ。今まで奴らを隠していたのは、お前達を驚かせたくなかったからだ。
だが、お前もわしと同じように、奴らを愛するようになるだろう。
もしかしたら、お前は気づいていないかもしれないが、既にそうしているかもしれない。
奴らは立派で強い怪物だ。そうだろう? 奴らはわしを守り、わしに付き添ってくれる。
名前は、ウヌボレ、ワルヂエ、シット、ヨクバリだ」
そう言いながら、番人は怪物の頭を一つずつ軽く叩いた。
番人が触れた途端、それぞれの怪物は体を揺らし、喜びの声を上げた。
「だが、奴らの名前と性格は全く一致しない。
ウヌボレは自惚れが強くなく、ワルヂエも悪知恵が働かず、
シットは嫉妬深くなく、ヨクバリも欲深くない。
しかも、シットは自惚れが強くない。分かるか? 面白いと思わないか?」
「……へー、パズルみたいですわね」
ヴァージニアは小声でそう呟いた。
番人は振り返り、宮殿の壁の扉へと歩み寄った。
扉が勢いよく開くと、番人は後ずさりした。
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミン、ネリダはすぐに扉へと向かった。
たちまち五人は宮殿の中に入り、番人が後を追っていた。
怪物達は唸り声を上げながら、
首から恐ろしいほどに垂れ下がった紐を振り回し、番人の後を追ってきた。
その混雑の中、三匹は唸り声を上げ、互いに引っ掻き合うと、番人は怪物を叱った。
「子供のように、わしのペット達も時々意見が合わない事がある。
そういう時は毅然とした対応が必要だ。
悪知恵が働く奴と自惚れが強い奴はヨクバリを恐れている。
ウヌボレは欲深い奴と餌を取り合い、半殺しにしている。
結局のところ、奴らは繋がっていて、逃げる事はできないのだ」
扉はカチッと静かに閉まった。
リーフは明るい光の中で瞬きをしながら、辺りを見回した。
ヴァージニア達が入った部屋は広大で、あらゆる贅沢が備え付けられていた。
中央では噴水が水しぶきを上げ、煌めいていた。
輝く床にはビロードのクッションが山積みになっていた。
柔らかな音楽が流れていたが、リーフにはその音がどこから聞こえてくるのか分からなかった。
部屋の片隅には白いテーブルクロスがかかっていて、銀と水晶で飾った長いテーブルがあった。
湯気の立つ香り高い料理が盛られた皿の間を縫うように、
精巧な燭台に立てられた長い白い蝋燭が灯っていた。
番人は乾いた、しゃがれた音を立てながら両手をこすり合わせた。
「さあ、これで二人きりだ。これからは二人きりで過ごせる。
美味しい料理と飲み物。音楽。会話。そして、恐らく後で、ゲームも」
料理は見た目も香りも美味しそうだったが、
ヴァージニア達にとっては塵と灰のような味で、ほとんど食べなかった。
最初から、番人が求めているのは会話ではなく、謁見である事は明らかだったからだ。
番人はテーブルの頭に座り、醜悪なペット達が椅子の後ろにしゃがみ込み、声を響かせ続けた。
「あれ? 何かあるわ」
ジャスミンは、紐が番人の手首に繋がれているのに気づいた。
袖の下に隠れた何かで繋がっているに違いない。
こうする事で、ペット達を操りながら、両手を自由に使えるのだ。
「わしは大金持ちの家に生まれたが、しもべ達の悪意と嫉妬によって全てを失った」
番人は水晶のゴブレットに黄金のワインを注いだ。
「わしは家から追い出された。誰も手を差し伸べて助けてくれなかった。
孤独で、悲しみ、絶望し、軽蔑され、わしはこの谷に逃げた。
最初は鳥と小さな生き物だけが唯一の仲間じゃった。しかし……」
「この谷には鳥も小さな生き物もいないわ。私が見た限りでは、誰もいない」
番人は眉の下から男を一瞥し、邪魔された事に明らかに苛立ちを露わにした。
「奴らはもういない。
わしが番人となり、この谷がいましめの谷になってからは、奴らには居場所がなかったのじゃ」
男は身を乗り出し、赤い目が蝋燭の明かりに熱く輝いた。
「これがどのように起こったのか、知りたくないのか?
追放されたわしが、どのようにして新たな富と王国、
そして失ったものの千倍もの力を手に入れたのか、知りたくないのか?」
「さあ……」
男は、まるで邪魔が入らなかったかのように続けた。
「悲しみに暮れながら座っていると、声がわしに語りかけてきた。それは昼も夜も囁き続けた。
それは、わしがどれほど不当に扱われたか、どれほど裏切られたか、
どれほど失ったかを思い出した。最初は怒り狂うかと思った。しかし、それから……」
(十中八九影の大王ですわね)
煌めく目は虚ろになった。
そして番人が再び口を開いた時、まるで訪問者達がいる事を忘れていたかのようだった。
まるで、何度も何度も語ってきた物語を、自分自身に語りかけているかのようだった。
「その時、答えが見えた。光は私を裏切ったが、闇はわしに力を与えてくれる事を知った。
これまでの人生、わしはずっと間違った道を歩んでいた事を知った。
善が失敗したところで、悪が成功するのを知った。そしてわしは悪を受け入れた。
心の中に迎え入れた。こうしてわしは生まれ変わったのだ――番人として」
突然、番人の目は虚ろな表情を失い、テーブルを囲む見知らぬ人々に焦点を合わせた。
番人は硬直した無表情な顔と、ほとんど手つかずの皿に目を留めた。
「どうして食べないんだ?」
「わしを侮辱するつもりか?」
リーフはテーブルに一番近い壁越しに覗き込んだ。
霧に半ば隠れた、物憂げでやつれた顔の群れがガラスに押し付けられていた。
「気にするな」
番人は微笑み、群衆にさりげなく手を振った。
「わしの民は飲食をしない。奴らは肉体のありふれた関心事など超越している。
奴らが切望しているのは、温かい生活なのだ」
「やっぱり邪悪……」
ヴァージニア、バルダ、ジャスミン、そしてネリダはさらに身を硬くした。
リーフは唇を湿らせ、乾いた灰色の指が自分を撫でていた事を思い出して内心震えた。
「つまり、死者の霊魂の事か?」
リーフは息を詰まらせた。
番人は憤慨しているようで、背後の怪物達が身をよじり、唸り声を上げた。
「死者の霊魂か? 死者の王国を統治する気か?
わしの民は確かに生きている、ああ、そうだ、そして永遠に生き続けるだろう。
奴らは衰え、消えゆくが、老いる事も死ぬ事もない。
奴らはここで、わしの領土で、永遠に生きる。それが報酬だ」
「報酬?」
ネリダは思わず口を開いた。
皿を押しやりながら、ネリダの手は震えていた。
番人は頷き、思案するように髭を撫でた。
「実に豊かな報酬ではないか? だが、奴らは恩知らずだ。幸運を正当に評価していない」
「じゃあ、どうやって報酬を手に入れたんだ?」
「ああ……」
番人は満足そうに背伸びをした。
明らかに、これこそ番人が待ち望んでいた質問だった。
「わしの臣民の最初の者、最も多くの者が激しい風の中を駆け抜けてわしのところにやって来た。
奴らの没落の原因となった自惚れが奴らの中にまだ生々しく残っていたのだ。
お前のように、嫉妬深く欲深い者達が、その後もやって来た。わしの最も大切な宝を奪おうと。
わしの力の象徴。デルトラのベルトの、偉大なダイヤモンドを」
これを投稿する時、長く起動していたためかパソコンが重くなり、
やむを得ず強制終了するしかありませんでした。
なんでこんなくだらない仕様があるんですかね。