都市のフィクサー   作:くらんち

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前書きで自我を語るマン参上!(傲慢共鳴)

いつもより長めってマジ?
あと、これからはもっと不定期更新になります


02_初めての依頼

 

 

目が覚めたあなたは生まれて初めて天井を見た。

それからしばらくの間は、ベッドに寝転がったままコンクリートを眺めていた。

なめらかに整えられたグレーの空は規則正しく円や線が描かれており、いつも見ていた星雲とは異なった模様があった。

今のあなたが好きなのはこの天蓋よりもさらに上の場所なのだろう。

 

少し経っただろうか、これまでの住処にはなかった天井に少し窮屈さを感じたあなたは開放感を求めて毛布にくるまったまま窓のそばまでのそのそと動いた。

まだ朝日は見えずガラスから伝わる空気はひやりとしている。だが、夜は去ったようだ。

窓を開けると、朝早くから仕込みをしているのだろうか、とても美味しそうな匂いが漂ってきた。

あまりにいい匂いなのでたまらず涎が出てしまったあなたは、昨日は何も食べずにそのまま寝たこと思い出した。

空腹には慣れているはずだが、昨日のテストで予想より疲れていたのだろう。

下へ行けば食べ物があるだろうか。最悪、そこらの肉を狩って食べればいいか。

 

そんな事を考えながら1階へ降りると、黒髪の女が紙にペンを走らせていた。

見知らぬ女を警戒していつでも攻撃できるようナイフに手を添えるあなた。

だが女はこちらを一瞥すると

 

「おはようございます、少し待っててください」

 

とだけ言い、キッチンへ向かった。

あなたはその背をまだ警戒しながら、先程まで女が書いていた紙を見た。

 

 

第X次遺跡調査報告書 記入日時:xxx.xx.24

ランク:都市悪夢級へ昇格

説明:本報告書は―――

 

 

どうやら報告書を書いている途中だったのだろう。

あなたの知力で読み取ることができたのは遺跡について何か書かれている、ということだけだった。

"遺跡"という単語が何を指しているのかは分からなかったが、きっとろくでもない場所なのだろう。

そんなことを考えている内に料理を終えた女が盛り付けられた皿と箸をテーブルに並べた。

 

「あなたが起きるのを待っていました。さ、どうぞ」

 

いい匂いがするそれは、塩胡椒で味付けされた野菜炒めと白米。

出来立て故にほかほかと湯気が立ち昇り、あなたへ香りを届ける。

肉の脂と野菜の素朴さが混ざった優しい香りだ。

あなたは目の前に置かれた料理に釘付けになっている。

 

「安心してください。毒なんて盛りませんよ」

 

あなたが手を付けないことに別の理由を受け取った女は報告書の続きを書きながら気遣うように話した。

 

「今のあなたは毒なんて高いモノ使わなくてもすぐ殺せますから」

 

あなたの行動は早かった。

ホルダーからナイフを抜き、切っ先を向かいに座る女の眉間に突き付けた。

この状況でも女は笑みを崩さず薄目であなたの目を見つめている。

 

「あ、えーと、言葉を、間違えたかもです」

 

尻すぼみになっていく声に違和感を感じたあなたは女の表情に注目してみた。

どうやら、余裕そうな笑みにしては頬が引きつっていた。

矛を収めたあなたはとりあえずご飯を食べようとイスに座り直した。

 

「こほん、食べながらでいいので聞いてください。あなたには今日から依頼を受けてもらいます」

 

「この事務所はセンク協会の代理も務めていますが、本質は他の事務所と変わりません」

 

この空気のまま説明を始める女。

あなたはどの性格が本性なのか見極めることが難しく感じた。

さて、あなたはようやく食べることができると、野菜炒めを鷲掴みして

 

「金さえもらえればなんでも――って何してるんですか!?」

 

口に放り込んだ。

事前の香り通り、あなたがこれまで食べたことのない美味しさだった。

もう一口食べようとしたところでまた女に邪魔をされた。

 

「いいですか。これは箸と言ってですね、食べる時に使う食器なんです」

 

「私の後輩なんですから、きっちりとしたマナーくらい身に着けてもらいますよ」

 

あなたをすぐ殺せると 断言 失言しただけあってあなたの手を掴んでは強引に箸を握らせてくる。

手を振り解こうにも力が強くあなたの手はびくともしなかった。

 

「箸は、こうやって、握るんですよ!」

 

あなたは抗うことを諦め、この逆らうことのできない大きな流れに身を任せることにした。

 

 

000

箸を握らんとするあなた

全部、食べ尽くしてやる…涎が出る僕の空腹までもを。

 

 

何かが抽出された気もするが、箸の指導を受けているあなたにとっては些末なこと。

 

「ふう、ではやってみてください」

 

器用ダイス:8以上で成功 1d10=6

 

あなたは箸を使い白米を取ろうとした。

たどたどしい動きで米粒を挟むと、上へ持ち上げる。

第一関門は突破できたようだ。

 

「おぉ、おおぉ」

 

感嘆を漏らす箸女に苛立ちを覚えたところで、指が上手く動かず箸を机に落としてしまった。

 

「惜しい!その中指が変なんですよ、だから指が動かしにくいんです。指が変!」

 

この恨みは帳簿につけておかないとな……。

 

今日はどうやら厄日のようです。

腹が減ったからご飯が食べたいのに、食べやすいようにさせてもらえないなんてどれほど屈辱だろうか。

そろそろ胃も堪忍袋も限界になってきたあなたは、必ずどこかでこの箸女に一泡吹かしてやることを決意した。

 

 

000

 

 

さて、食事も終わりこれから何をしようかと考えたあなたはとりあえず事務所の外に行くことにした。

特に予定もないが、ただうろつくのもいいだろう。

 

どこに行こう?

1 外をぶらついていたらゴロツキに絡まれる

2 事務所周辺は平和だった

3 以前のあなたの住処へ行く

4 R社の巣に行く

5 外郭へ行く

6 事務所周辺は平和だった

 

 1d6=6

 

あなたは事務所周辺をぶらぶらと歩いた。

同じ裏路地でも人通りの多い比較的安全な場所と、建物によって日光が遮られた危険な場所が存在する。

あなたは地図頼りでこの事務所へ来たので、この辺りの土地勘がない。

裏路地で暮らす上で必要な技能のTOP5に入るだろう土地勘は、当然あなたも必要だ。

地形や特徴を把握しようとあちこちを歩き回る。

あなたは自身が裏路地の歩き方を知っていると考えているが、区によっては翼のタブーが裏路地にまで適用されている事もある。

何がタブーになるか分からない以上、迂闊な行動はさけるべきだ。

 

幸いにも、通りを歩く誰もがあなたのことを都市にいくらでもいる浮浪児だと捉えたのでチンピラ達に絡まれることはなかった。

また、あなたの事務所は治安維持にも力を入れているようであなたと同じ位か年下の子供たちも見かけた。

ごみ漁りを手伝ってあげたあなたは事務所で大人から可愛がられていたことを忘れ、少し年長になった気分だ。

粗方把握することができたあなたは一度事務所に戻ることにした。

 

 

「あ、代表。帰ってきましたよ」

 

「ああ、ありがとう。」

 

いつもの部屋へ向かうと箸女と代表がそれぞれの仕事をしていた。

代表は机の上で高く積まれている依頼書に判を押し、箸女がそれらの書類を内容ごとにまとめていた。

 

「おはよう、と言うには遅い時間か。朝食は食べれたか?」

 

あなたはとても美味しかったと伝えた。

隣でにやけている箸女には癪だが、感謝を伝えた方が良いことぐらいは判別できる。

 

「そうか、それは良かった。とても目を輝かせながら食べていたと聞いたよ」

 

「ちょっと、それは秘密にしといてって言ったじゃないですか」

 

やっぱり箸女は嫌いだ。あなたは自分の感謝を返して欲しくなった。

あ~あ、拗ねちゃったなんて言っている箸女を軽くつついた後に代表に向き合う。

 

「あぁすまんな、では仕事の話だ。これを君に」

 

代表は空気を入れ替えると一枚の契約書をあなたに渡した。

あなたは受け取るとすぐに目を通していく。

 

「君がそこらの人間より強いことは理解しているが、初陣から困らせるようなことはしたくなくてな」

 

その紙に書かれていた内容は、人と荷物の護衛の依頼だった。

 

「その人は私たちが懇意にしてる雑貨店の店主でな、顔合わせのためでもあるのさ」

 

「人と同時に品物を守るのは難しいので気を付けてください」

 

あなたの初仕事は護衛。

この紙によると移動ルートはあなたが今日見たゴロツキ達がいる中道を通っていくようだ。

わざわざこの道を通らずとも他にも安全なルートはあるはずなのに。

あなたはそう勘ぐりそうになり、頭を振った。

フィクサーに必要なことは依頼を遂行することであって、詮索することではないからだ。

 

「あとですね、店主さんは結構おしゃべりな方なので時折受け答えをしてください」

 

あなたが受けた依頼は護衛が目的なのだからその必要はないはずだ。

依頼内容を達成することを第一とするあなたは口を開き

 

「それは依頼には含まれてないって顔だな」

 

すぐに閉口した。

 

「間違いじゃない。カネにならねぇ事は無駄だ」

 

代表は懐から煙草を取り出すと火を点け吸い始めた。

言葉遣いがいつもの丁寧なモノから変わった。こっちの代表が素なのだろう。

先程までの優しい雰囲気から一変、重苦しい圧を感じた。

テストの時では触れることのなかった重圧に息苦しさから、あなたの額には汗が出始めた。

代表は大きく息を吸い込み、誰もいない方向へ煙を吐く。

煙は壁にぶつかるとゆらゆらと上へ昇っていく。

 

「だが、信頼を得ることができなければ二度と依頼は入らない」

 

緑色の目と視線が交わる。先に目を逸らしたのはあなただった。

 

「そういう訳でよろしく頼むよ」

 

 

000

 

 

あなたは先程のやり取りを反省していた。

あなたはあくまで雇われている側であることを忘れていたのだ。

雇われて依頼をこなすのであれば、雇われている事務所の指示に従うのも道理。

謝罪の言葉を考えながらあなたは歩く。

指定された場所へ着くと深呼吸をして気持ちを切り替える。

しばらく待っているとリヤカーを押した女に話しかけられた。

 

「へぇ、あんたが新入りか」

 

30代程度だろうか、顔に小じわが見られる女は今日は頼むよと言ってまた歩き始めた。

あなたもその隣を歩きながら周りを警戒している。

 

護衛の仕方にもたくさんの種類や方法があるが、あなたが選んだのは直接警護だ。

1人でできることには限りがあるのでこの判断は正しいと言えるだろう。

通行人に紛れて積荷を狙う不届き者がいるかもしれない。

あなたは全天周囲をその広い視野で見渡しながら行動している。

また、人を狙い動きが止まったところを狙うのかもしれない。

あなたが警戒していると、女が話しかけてきた。

 

「なんであの事務所にしたんだい?」

 

あなたは条件が良かったからだと答えた。

実際フィクサー免許を取ることができれば誰でも所属でき、個室があるなど待遇は良かった。

 

「あの事務所は確か、あまり大きくなかっただろう」

 

女はあなたの答えが不満だと言うかのように深堀りをしてきた。

 

事務所の大きさ

 6程大きい:1d6=3 小規模だが中堅くらいの実力

 

女はあなたが所属する事務所がセンク系列のなんでも屋と言われていることをあなたに教えた。

「センクからの依頼では金が足りない」や「決闘もすれば暗殺もする二枚舌」など。

挙句の果てには「シノギを建てては保護費を得ている」なんて言われているようだ。

 

あまりにひどい言いぐさに言い返してやりたくなったあなたはこう言った。

確かにフィクサーは3人だけの小さい事務所かもしれないが、それらの噂は嘘だ、と。

 

「へぇ、3人か。まあまあ、人間ってのは噂が好きなのさ」

 

女はリヤカーを押しながらあなたの話に相槌を打った。

あなたと女がしばらく無言で歩いていると、女が道を曲がり暗い道の方へ足を向けた。

あなたは本当にルート通りにここを通るのかと辟易しながら後を追った。

 

「なんだか不安そうな顔だね。あんたは腕に自信がないのか?」

 

またも話しかけてくる女にあなたは人並みには動けると答えた。

 

「ちょっとやって見せてくれないか?」

 

あなたはそろそろしつこさを感じる程度にはこの女のことを煙たがっているが、依頼は達成しなければならないし、代表には釘を刺された。

逃げ場のないあなたは仕方なしにナイフ捌きを見せてやった。

 

「へぇ、ナイフが得意なのかい」

 

女はあなたの機敏な動きに驚いたようだった。

あなたは誰が見ても子供なためこれまでは基本的に舐められていた。

だからその隙を突いてどんな奴でも噛み千切ってきたあなたは自身の腕にプライドがある。

 

「おっと、どうやら変な奴らが来たみたいだよ」

 

あなたのナイフ捌きを挑発だと受け取ったのか、複数のゴロツキ共がこちらへ向かって来る。

あなたの出番だ。

 

 

【戦闘開始・1ターン目】

 

 

一対多戦闘

それぞれが速度ダイスを振り、一が多の速度を上回った数だけマッチできる

最低でも速度が一番遅い敵に1回はマッチできる

同速度でもマッチできるとする

回避成功時続けて回避行動

 

 

速度ダイス

ゴロツキA.B.C.D.E:5d6=6.4.4.4.5

あなた:1d4=4 行動回数3回

 

あなたに向かってくる5人のゴロツキを捌かなくてはならない。

あなたはこれから行う仕事に興奮しつつも状況を冷静に判断する。

全員の狙いはあなたのようだ。女は上手く隠れているのだろう。

両端の2人には攻撃が届かないことを悟ったあなたは目の前の3人から片付けることにした。

 

マッチ

ゴロツキB.C.D:3d10=2.1.7

あなた:1d17=2

 

あなたは3人のゴロツキと切り結ぶ。

それぞれが違う武器を持っており弾く度に衝撃が体を走り抜けていく。

ナイフを持ったゴロツキと組み合いになり、自分の攻撃を通そうと必死にナイフで切り払うゴロツキ。

 

「この野郎!」

 

あなたは冷静に大振りを避けると顔面を拳で殴って吹き飛ばし、追撃のためにナイフを握り締めた。

 

ナイフ捌き

あなた:器用(3以下で成功)1d10=9

 

ゴロツキB:1d10=4

あなた:1d17=15

 

「喰らえオラ!」

 

続くゴロツキも金属バットのスイングを避け、心臓を狙って刺突する。

 

ダメージ

ゴロツキA.D.E:2×3+3d8=18=24

あなた(B.C):2+2d15=9.1=11.3

 

「隙だらけだぜ!」

 

その瞬間、残りのゴロツキによって挟み撃ちされたあなたは左肩を抉られ、右脚を強打された。

あなたの狙いは腹部へとずれてしまった。

挟み撃ちに対し、咄嗟に体をねじることで急所への攻撃は避けたものの受けたダメージは大きい。

あなたは撤退も視野にいれながらナイフを構えた。

 

HP

ゴロツキB:16-11=5

ゴロツキC:16-3=13

あなた:48-24=24

 

【精神減少ロール発生】

 

精神減少

これは以下の順番で処理される。

1HPが半分・3分の1・4分の1以下になる毎に2d精神ステータスだけ精神を減少させ

  精神状態を一段階下げる 

2精神状態は5段階あり、SPを最大SPから割合だけ減少させる

3HPが10以下はパニック発生ロールを行う  

知力・器用ロールにおいては知力・器用を割合だけ減少させる

SPが0になるとパニック

 

減少量:2d5=6

あなたの精神状態:緊張(SPを10%減少)

SP:10-1-6=3

 

 

【戦闘継続・2ターン目】

 

速度ダイス

ゴロツキA.B.C.D.E:5d6=3.4.1.6.3

あなた:1d4=3

 

深呼吸して落ち着け。そうすれば、できる。

そんな風にあなたは自身を励ましている。この緊張をほぐそうとしている。

あなたはゴロツキの1人にとどめを刺しに行こうとし、それ以外の攻撃は避けるつもりでいる。

肩の傷は深いのか、真っ赤な血が腕を伝って地面へ垂れていく。

態勢を立て直したあなたは痛みに歯を食いしばりながら傷を負っているゴロツキに狙いを定める。

 

マッチ

ゴロツキC:1d10=5

あなた:1d17=3

 

仕留めに行くはずが、急激に血を失ったことによる貧血であなたの体がふらついた。

あなたの体が徐々にひだりへ、かたむいていく。

 

すろーもーしょんに、なるせかいで

 

ごろつきの、もつ

 

ないふが、ひかって、みえた。

 

ダメージ

ゴロツキB.C.D:2×3+3d8=6.1.6=19

 

HP

あなた:24-19=5

 

【精神減少ロール発生】

 

減少量:2d5=5

あなたの精神状態:絶望(SPを60%減少)

SP:3-6-5=0

 

 

しんぞうのおとがうるさい。

 

あなたはすでに虫の息だ。地面に這いつくばり身体の全体から血が流れ出ている。

 

こきゅうができない。

 

肺が正常な働きをしておらず、しゃくりあげるような呼吸だ。

 

めのまえがくらい

 

あなたはもうすぐ死ぬのだろう。じきに何も見えなくなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

しぬ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやだ

 

 

 

 

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

 

 

 

【パニック発症】

 

 

パニック

あなたは勇気の持ち主だ

あなたのパニックタイプ:殺人 敵味方識別不可 目につく動物を攻撃する

上限速度+1d6=3 下限速度+1d6=5 パニック時速度7~6

 

 

ゴロツキ達は息を荒げながら倒れ伏した子供を見つめていた。

その顔はそれぞれ疲弊したようで、比較的マシな男は傷が一番酷い男に応急手当をしていた。

腹部に裂傷がある男は脂汗をかきながら布切れを当てられ、潰れたトマトみたいになっている子供を睨みつけて言った。

 

「はぁ、はぁ。おい、ちゃんと死んでるんだろうな」

 

「あれだけズタボロにしたんだから、生きてないだろ……」

 

大人5人がガキ相手にここまで粘られるとは思いもしなかったようで、確かに油断していた。

彼らも少なくはない血は流しており、この傷が癒えるか敗血症で死ぬかは五分といったところだろう。

彼らの内の1人が男の要望に応えるため、肉塊へと近づく。

この薄暗い通りでも分かるくらい赤い赤い鮮血はあちこちへ飛び散っており、死体に慣れている彼らもあまりに鮮度が良すぎて顔を顰めている。

 

男の手が死体に触れる。なんだ、脈なんて―――

男が仲間の方へ意識を向けたその瞬間に

 

 

赤が舞った。

 

「なん……生きて……」

 

突如立ち上がった子供に喉を切り開かれた男は何か言葉を喋ろうとしたが、自分の血液で喉が塞がり喋ることができない。

それはさながら血のうがいだ。

 

「ごぼぼがぉ、ごぼ」

 

痛みによる気絶で、自分の血に溺れる窒息でこの男は死ぬだろう。

 

「ひいぃ!!」

 

その様子を見ていた他のゴロツキはその死に様に恐怖を感じ、情けない悲鳴をあげながら一目散に逃げていった。

ただ一人、重症の男を置いて。

 

「お、おい!待てよ!俺も、俺を置いていくなよ!なあ!!」

 

遠ざかっていく背中に大声で叫ぶ。

患部に当てられた布が赤く染まるが、それでも大きな声で助けを求める。

 

「なぁ!誰か俺を!ッ!」

 

無理に叫んだことで傷口が開き、苦悶の表情を浮かべる男。

痛みと恐怖と見捨てられた事への憤怒でぐちゃぐちゃになっている男。

 

「い、いやだ!お、おお俺はまだしし死にたくない!」

 

立ち上がろうとして腹に力が入らず無様に這いつくばる男は、それでも諦めずに芋虫の如く手で地面を藻掻く。

当然、その場から離れることは叶わない。

涙で前が見えない。鼻水で呼吸がしにくい。恐怖でしゃくりあげるような身体。

 

 

 

 

それはあなたと同じだった。

 

 

 

一歩ずつたどたどしい歩みで近づいていく。

二の足で地面を踏みしめて。

 

「ひっ!」

 

ゆっくりと、これから行うことに思いをはせながら。

 

「お願いだ、殺さないでくれ。俺が悪かった。」

 

「そっそうだ、逃げたやつから追った方がいいと思うんだ。俺はほら、逃げられないから。な?な!?」

 

肉が何か喚いている。

必死に手足を動かして自身の鮮度をアピールしているのだろうか。

あなたにはわからない。

あなたはただ、殺すことさえできればそれでいいのだから。

あなたの動きが止まる。

ナイフを持った手を大きく上にあげ

 

「へへへ、ああはっははははうひっふへへ」

 

振り下ろした。

 

 

000

 

 

時は夕暮れ。そろそろあなたの依頼も完了したころだろう。

代表と箸女があなたの初陣を祝うためにパーティの準備をしていた頃だった。

パーレィのためにやることの残りは主役がやってきたあとにチキンを焼いたり、クラッカーを鳴らすことだから2人は談笑しながらあなたの帰りを待っていた。

どんな顔をして帰ってくるだろうか。開口一番にどんなことを言うだろうか。

我が子、というにはまだ繋がりが浅いがあなたのとこを思っているのは間違いないだろう。

 

2人が話していると外の方からずる、ずる、と何かを引きずる音が聞こえる。

音に気付いた代表と箸女は顔を見合わせ武器を手に玄関まで歩いて行く。

まだ夜には早いから、掃除屋ではない。

 

じゃあ何の音だ。

警戒する2人が外へ出るためドアを開けようとノブを握った時だった。

ドアがひとりでに開き、咄嗟に代表が飛び退き箸女が武器を構えた。

 

そこにいたのは、足を引きずった血だらけのあなただった。

 

「え!どうしたんですか。なぜそんな血だらけに」

 

箸女はあなたの体中の傷、特に酷い左肩を見て驚きの声をあげた。

それに対しあなたは何も答えずただシャワーを浴びたいとだけ言った。

だらりと垂れ下がった両腕に右脚を引きずって歩くあなた。

疲れ果てた身体とは逆に瞳にはすでに正気の色が見られた。

 

「とりあえず、部屋に戻ろう。そこで手当をするから」

 

2人は安堵のため息をついて、あなたを迎え入れる。

まさかこんなに重症になるなんて。

 

しばらくして、あなたには適切な処置が行われ武器の手入れも行われた。

今日でたくさんの血を浴びたナイフは固まった血に皮膚や砂がこびりついており、大変だったというのは代表の談だ。

 

「疲れているかもしれませんが、ご飯を食べませんか?食べないことには何も治りませんよ」

 

箸女。いいや、先輩はあなたを心配そうな目で見つめている。

あなたは今日で多量の血を失った。

人体は食べなければ血液は作られないから、食欲が湧くかはさておき、消化器官に致命傷がないあなたはご飯を食べることができるだろう。

 

「今日はあなたの合格祝いと初の依頼達成を兼ねてパーティを―――」

 

あなたは今は満腹だからいらないと答えた。

そして、また今度にでもお祝いをしてほしいと伝えた。

 

「そう、ですか」

 

「今日はお疲れ様でした」

 

あなたは代表にこれから寝るからしばらくは起こさないでほしいと言った。

代表は勿論だという風に深くうなずき報酬について話した。

 

「しばらくは安静にするように。それと今日の事は後日質問するからその時にな」

 

「おやすみ」

 

あなたは了承を示し、自室に向かった。

今朝何事もなく降りてきた階段は今のあなたには険しい山だ。

巻かれた包帯とギプスで固定された手足では獣のように這って登ることで精一杯だ。

 

ようやくベッドに寝転がることができたあなたは今日のことを振り返る。

今日は初めてだらけの一日だった。

その中でも特に印象に残ったことは何だろう。

 

成長

あなたの一日の経験から3つダイスを振りそれぞれのステータスを1d3だけ増加する

※この成長方法は試験的に導入しています。あまりにインフレが加速した場合

予告なく変更する可能性がございます。それに伴い展開の修正も発生するかもしれません。

ご了承ください。

 

 

印象に残ったこと

1 初めて食べた美味しいご飯と3日ぶりに食べたまずい肉(体力)

2 面白いが面倒くさい先輩と優しいが恐ろしい代表(感覚)

3 やかましい女と喚くゴロツキ(器用)

4 血に濡れた真っ赤な手とごみを漁る汚れた真っ白な手(幸運)

5 初めて掴んだ死の感覚とそれに対する恐怖(精神)

6 素早いゴロツキと防戦一方だったあなた(上限速度)

 

 

 

成長するステータス:3d6=1.1.5

成長量:体力 1d3=3

    体力 1d3=1

    精神 1d3=1

 

あなたの印象に残ったのは2つ

1つ目は先輩が作ってくれた野菜炒めだ。

あなたは今日初めて味付けがされた料理と呼べるものを食べた。

いつものあなたは焼くか水で血を流す程度しかしないので、味については人間の食べるものではなかった。

贅沢ができる環境ではなかったので生きるために雑食となり、まるで獣だったあなたは今日、人間に生まれ変わった。

味付けを知ったあなたの舌は久しぶりの主食を正常に判断したのだろう。

勿体ないので全部食べたが。

さて、2つ目は死に対する恐怖だ。

あなたはこれまでに恐怖を感じた経験はあっただろう。

しかし、これほどまでに強い死を意識したのは初めてなのだろう。

身体が勝手に動いたのか、朧気にしか覚えていないあなたはこれ以上考えるのを止めた。

 

 ステータス

 筋力:15           器用:10 

 体力:24→28 HP:56    感覚:10

 精神:5→6   SP:12    知力:9

 速度4~1           幸運:7 

 

現在のHP:5

 

 

000

 

 

「で、首尾はどうだ?」

 

「物品の心配はいらんね。今回輸送する荷物はすべて偽物だから」

 

「問題はゴロツキ共がこの辺りから消えちまったこと、か」

 

「カカカ!平和でいいんじゃないのかい?」

 

「馬鹿言え、ネズミから金を絞ってたやつらはご立腹だろうよ」

 

「……これからしばらくは忙しくなりそうだ」

 

 

 

 






第二話でキャラロストするのはどうかと思ったのでパニック後の戦闘は省略しました
これがフィクサーとかのある程度覚悟できてる人なら1人死んだくらいで逃げることはないと思います

明日は何をしよう(依頼は1日1回必ず受けます結果によって行動が変わります)

  • 代表の言う通り鍛錬
  • 料理を教えてもらう
  • しばらく安静にする
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