学園都市の解決屋録   作:三重知貴

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後編

 

 先輩は、優しいのだけれど強引なところがあるというの、まぁみんな見ればわかることだ。たぶん関わったことのある人なら常識とも言えるほどだろう。

 しかし、ついつい自分のしたい話を優先してしまうところは、あまりみんな見た事がないところだろうと思う。例えば急に呼び出したかと思えば、急に人を呼んでくれ、じゃあ帰ってくれていいみたいな。目の前の事に集中している先輩は、優しいけどそういうところがあるのは、カミサマじゃなくて人の部分なんだろうなとも思う。

 

「彼ら混乱していたね。まぁ素直に江ノ来間ちゃんを呼んでくれただけよかったかな。」

 

 なので今回もいつものことのように先輩は、江ノ来間さんを呼び出させるだけさせて、美術部の三人をあっさりと帰してしまっていた。

 先輩曰く、疑いが晴れたようなもので、ここからは事件と関わらずに済むようになるんだし、これ以上手間を取らせるのも申し訳ないらしい、だからといって何もわからないなか帰す事もないだろう。

 彼ら彼女らもこの事件について気になっていることは多いはずだ。なんなら化野すら仕事を頼むついでに追い出された。

 

「別に後から事件の真相は知れるだろう。私、探偵ものにありがちな人を集めて推理するの嫌なんだ。人間って追い詰めると暴れだすんだよ。それに赤裸々な事情を無暗に人に聞かせるものでじゃない。」

 

 と、そういった理由らしい。というか、その推理するって言い方からして犯人は江ノ来間さんと先輩は見ているんですか?

 

「別にそうは思わないね。確率で言うなら、1割もないんじゃないかな。さっきも言っていたけど、盗む動機がないんだよね。正直お金目当てなら、江ノ来間ちゃんは自分の絵を売りに出した方が安全に儲けられる。そもそも彼女がお金に困っている素振りなんて見た事もないし。協力者って線は、多少あるかもしれないけど。もっと言えばそもそもさっきの三人が偽物を描けない保証もないしね。話した感じは限りなく白だから、あの子たちが犯人じゃない証拠があればいいんだけどね。」

 

 それは同意するところですが、でも偽物描いてたとしてなにがあるんですかね。共犯じゃなかった場合の理由ってなさそうじゃないですか。

 

「さぁ、知ったことではないね。それこそ悩みでもあるんじゃないかな?解決してあげなよ。そう言ったんだろう。」

 

 言いましたかね。

 

 「『僕らは警察でも探偵でもなく、解決屋ですから。先輩のお悩みを解決しますよ。』と言っていたよ。」

 

 …………なんだか一言一句間違えなくそれを言った覚えがありますよ。

 

「ああ、聞いていたからね。一言一句間違えていないよ。だから、江ノ来間ちゃんの悩みを解決してあげないとね。解決屋だからね、私達。」

 

 そうですね。ならとりあえず、事件の方をさっさと解決してしまいましょう。

 

「そうだね。正直あと一歩って感じがするし、解決してしまいたい。とりあえず今の現況をまとめよう。まず切りつけられてた絵は偽物。描いた可能性が高いのは江ノ来間ちゃん。本物は行方不明。出てきた指紋は、あの三人は偶然ついた可能性がある。しかし被害者の独野さんもついていたけど、それも偶然かもしれないしそうじゃないかもしれない。あとは始業前に使われてた可能性のある美術室ってところか。これで全部かな?」

 

 全然あと一歩って感じはしませんよそれ。

 

「ならひとっ飛びってところかな?」

 

 スキップしないでください。

 

「いいじゃないか。私達は解決屋だよ。風紀委員みたいな警察達と違って、過程はそこまで重要なことじゃない、飛ばしてしまおう、謎は置いておこう、解決すればいい。」

 

 無茶苦茶ですよ。

 

 「むしろ私が正統派なことの方が少ないだろう。」

 

 それもそうですね。

 

「まぁ、最終的な解決は君にまかせることとしよう。」

 

 それも成長のためですか?

 

「それもあるが、単純に今回のは君の方が向いてそうだと思っただけだよ。安心してね、事件の解決までは私もしっかり働くからね。」

 

 そうですか、じゃあさっさと解決しましょうか。

 

 

 

 

 

 

「で呼ばれたけどなに?――っていうほど話は遅くないの私。完璧だからね。容疑者になったんでしょ私。予想はつくわよ。あと、化野ちゃんって子からある程度は聞いてるから。」

 

 呼ばれた江ノ来間さんはあっさりと答える。

 すごいものだ。何にがと言えばまた人攫いをさせられて部屋からも退場させられ、セリフの1つも貰えなかった化野の扱いのことだ。

 

「でも流石解決屋ね。風紀委員よりも呼び出し速かったわよ。」

 

 おや、あっちもあっちで気づいたのだろうか。というより、独野さんを見つけたというのが正しいかな。流石に被害者本人の話は聞きに行くよな。どうやって見つけたかと言えば、あいつらにも頭はあるし、なんなら人海戦術とかいうこちらに真似できない方法もあるし、自然なことではある。

 

「なら、江ノ来間ちゃん単刀直入に聞くけどあれを描いたのはあなたかな?」

「ええ、たぶんそうよ。保証できるのは独野さんだけだけど。」

 

 あっさりと――これは認めたと言っていいのだろうか。

 

「一応聞くけどなんで江ノ来間ちゃんは保証できないの。」

「それは私の絵が上手いからよ。」

 

 当然のことだろうと軽く肩をすくめる。どこが当然なのか。

 

「私が独野さんみたいなタイプの絵描きとは随分違うことはわかってるわよ。現に見破られたみたいだしね。だけどね、わたしはあれをそのまま描いた。ほらシンシくんも言ってたじゃない、私の絵は写真みたいって。だから私、自分でも区別付かないのよね、真似してると。流石に絵の裏にサインくらいはしてるから見ればわかるけど、シンシくんとお話しした時は確認できなかったから、とりあえず本物だと思って話してたのよね。一応気付かれないように保管室の奥の方に隠していたし。」

「なんで偽物を?」

「私は完璧主義だから。あとほんの少しの競争心かしら。どんな絵でも描きたいのよ。偽物じゃなくて私からすれば練習の模写よ。完璧なね。覚えてないシンシくん?まずは手の届くところから完璧に理解したいって言ったでしょう?まぁ独野さんにはこっぴどく、つらい評価をつけられてしまったけどね。」

 

 ため息をつきながら残念そうな顔をしてくる。

 手の届く独野さんの絵を理解する。手の届くってのはもう少し比喩的な意味でとらえていたんですけどね。

 

「それは君の勘違いだよ。私は悪くない。」

「はは、一本取られたね後輩くん。では続きだ江ノ来間ちゃん。本物を盗んだのは君かな?」

「それはハッキリと違うと言っておくわよ。完璧にね。証拠はないけど。」

 

 どや顔とでも言えばいいのだろうか。これほど一切無実を証明できていないのに自信満々そうに見えるのは、やっぱりこの人も天才という奇人変人の類なのだろうと理解できてしまう。

 

「じゃあ、聞きたいんだけど。いつあれを描いてたのかな?隠れて書くにはサイズ感的にも美術部の人口的にも難しく思えるんだけど。」

「こっそりとね。」

「朝に?」

 

 初めて、江ノ来間さんがすこし驚いたような顔をした。流石にそこまではバレていないと思っていたのだろうか。

 

「どうやったのかな?」

「どうやったと思う?」

 

 挑発するように返す江ノ来間さん。先輩は一度ため息をついてこちらを見てくる。江ノ来間さんもまたこちらを見る、俺に考えろということだろうか。

 鍵の貸し借りは管理室でやっている。返却するとこは一緒に行った他の部員も見ていたはず。記録は電子で学生証を利用しているのだから間違いない。タブレットでその情報も見えるはず。彼女が天才なことを考慮して、ハッキングでもしたという線も消せはしなが置いておこう。

 鍵が2つある、初めに考えた合いカギだ。作るとかじゃなく学校として1つくらいはあるはずだろう。それを使ったか。いやもっと単純だろうか。

 偽物というか描くのにそんなリスク取るだろうか。――偽物か。

 

「気づいた?完璧に説明できるかしら。」

 

 いやいや、ただの予想ですけど。適当な鍵を返したんじゃないですか?美術室のタグをつけて。

 そういえば、僕も鍵を見ましたけど、あれが本物かどうかはタグの部分でしか判断していませんでしたから。普通の鍵に「美術室」なんて書いてタグを張り付けたりしませんから。

 貸し借りは電子記録で正確だけど、鍵自体は職員が手渡しだ。そしてその鍵の保管自体も。ならそれっぽいカギにタグさえあれば大抵の人は気付かない。

 これで密室ではなくなる。

 

「素晴らしいね。正解、完璧よ。」

「後輩君よくやったね。私には気付かない点だったよ。」

 

 どうも、お世辞でも嬉しいですよ。では江ノ来間さんなんでそんな事をしたんですか?

 

「なに、部活中なら模写なんてできない。それにもうすぐ完成だと思ってたから、今は4月で入学式直後は事業で美術室も使わないだろうから鍵が無いのはバレないしね。春休みならこんなことしなくても24時間開放の時期とかはみんな帰った後しれっとできたんだけどね。始まってしまったからこういうやり方にしたわけよ。裏口から入れば管理室も通らなくて済むしね。完全に無人の美術室でお絵描きよ。なんだか学校の怪談みたいね。」

 

 なぜ隠れて描いていたということを聞きたかったんですけどね。

 

「君もよくわかってるし、言っていたじゃないか。特選組はプライドが高いと。本音を言うなら彼女に作品を借りたいし、部員の子達の目を気にしたくもないんだけどね。絵は比べるものじゃないと言ってたけど、結局比べて、競争心とプライドで隠していたのよ。完璧も難しいものね。本音を言えば彼女に教えを乞いたいわよ。」

「江ノ来間ちゃんが模写していたのを知っているのは誰かいないの?」

「いないんじゃないの?乾かす時も見られないように目立たないところに置いてたし。1人も知らないんじゃなかな。」

 

 なるほど1人も――そういえば、本物の鍵はどこに?

 

「私が今持ってる。なんなら今日は部活が始まる前に偽物も借りるふりして回収してるわよ。」

 

 流石にちゃんとしてますね。言動とは違って。

 

「ええ、どうも。他にはないの?もう答えることもなさそうだけれど。」

「そういえば、江ノ来間ちゃんの指紋がなかったんだけど、なにか指紋が出なかったんだけど、心辺りは?」

「おかしな事聞くわね。指紋があるならわかるけど、無いというのはおかしいでしょう?というか私のなかったのね。初耳よ、それ。」

 

 嘘は……ついていないのだろう。

 ここまでトントン拍子に、それこそ先輩の言っていたように問題点を飛び越えるように解決していたので、最後の1つだけが残るとなんだかむず痒い。

 

「まぁ後輩君に表情を見れば気持ちはわかるけど、これだけ色々と謎が解けてきたんだ。あとは犯人なんて消去法でわかるんじゃないかな?」

 

 それは出来るかもしれませんが、ちょっと情報が不足してませんか?

 

「言ってるだろう、私達は解決屋だ。証拠不十分で不起訴みたいな、そんなルールは不採用だ。犯人がわかればあとは風気委員にでも証を探させよう。それに私が言うんだ、犯人はわかると思うよ。」

 

 わかりましたよ。不渡くんには後で働いてもらいますか。

 

「そうしてもらおうか。じゃあ、後輩君推理してみようじゃないか。」

「いいね、私も聞きたいよシンシくん。」

 

 演目とかではないんですけど、まぁいいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずこの事件は最初の予想とは変わり盗難事件であり、切られた絵は偽物。江ノ来間さんが書いたものだ。ただし盗んだ真犯人ではない。

 指紋が出てきたのは4人で、岡崎、木原、篠原、独野。被害者を除けば三人。しかし、三人とも偽物は作れる技術はない。偶然ついた可能性は大いにある。

 犯行時刻は、今日の朝から部活が始まるまでの数時間。動機は――窃盗なら一旦はその価値だろうか。目撃証言や監視カメラで特に不審な人は浮かび上がっていない。

 現在の謎は、なぜ書いた本人の江ノ来間さんの指紋がないのか、といったところだろうか。

 

「なるほど、わかりやすい。シンシくん、続けてくれていいわよ。」

「後輩君、現況はそれであってるよ。でも1つ忘れてることがないかな?」

 

 忘れていることですか?なにかありましたっけ?

 

「私は宿題を出したはずだよ後輩君?」

 

 宿題…………ああ、盗んだならもう1つ不思議なことがあるってやつですか?

 

「ああそれだ。もしかしてやってないのかい?そろそろ提出期限だよ。」

 

 すみません、今やらせてもらいます。盗んだならある不思議な事、あの絵を。

 

「そうあの絵だ。」

 

 独野が書いた絵を思い浮かべる。正確に言えば書かれた偽物だが見た目だけなら変わらないはずだ。

 教室の後方に置かれた、彼女独特の絵柄、海が描かれていた。人間1人分くらいの大きなキャンバス。――大きなキャンバス?

 

「わかったかな。」

 

 大きなキャンバスを盗んで運んだのなら流石に目立つだろう。でも監視カメラで不審な人は写っていない。カメラに全く写らずできるか。

 不可能ではないかもしれないが、この学校のカメラの数はかなりのものだ、そんな簡単にできるものか。

 

「そう。流石にあのサイズ持ち運ぶのも大変なのに監視カメラにも映らないのは難しいよね。それにこの学園は島にあるんだ。どこかで見つかるだろう?ここまで本物が行方不明なのは不思議だよね。」

 

 確かにそうだ。ではどこに?

 

「それは推理していけばわかるんじゃないかな?」

 

 ――――そうですか。

 今不明なことは、江ノ来間さんの指紋がないことと、本物の絵が行方不明で手掛かりがないこと。これらが推理していけばわかるとして、どう犯人を推理するか。

 先輩はそういえば、消去法でわかると言っていたな。

 

 消去法、日の朝から部活が始まるまでの数時間の間に美術室に入り、偽物を壊して、本物を盗める……。あれ、でも鍵は確かずっと江ノ来間さんが持っていたはず。

 

「ええ、昨日から今日までずっとね。」

 

 それに、これ生徒は候補から外れるんじゃないのか?

 

「そうだね後輩君。そもそも、犯人が生徒、ましてや美術部と考えたのは、破損が嫌がらせだという前提だ。わざわざそんなことをする動機を持つのは犯人の周りの人間、つまりは生徒だという推理。今回で言えば決めつけかな。でもこれは窃盗事件だ。動機はいくらでもある。指紋があったのが生徒だけだからついつい忘れてしまっていたけどね。候補はあの時点でゼロベースになっていたんだ。」

 

 そういえば、決めつけというか思い込みというかで考えていませんでしたね。指紋はそれこそ、手袋でもあれば残らないだろうし、信頼のある証拠といえど、犯人を見つける絶対の証拠にはならない。

 

 「そう、だから犯人は指紋だけじゃ見つからない。」

 

 なら、犯行ができたのは職員か。いや、そう考えるのが自然だ。授業時間中に動けて、それに鍵がないはずの美術室に入れる。簡単だ、最初に疑ったスペアキー、作ったなら何かしら書庫が残りそうなものだが、そもそも学校で1つはあると考えるのが自然。

 

「うん、そうだね。もう犯人は決まったようなものだけど、最後までちゃんと理詰めしようか。推理だしね。」

 

 他の要素として、もう1つ。犯人だけが知っているだろうこと。それは偽物の存在だ。

 窃盗のカモフラージュのための偽物は誰でも思いつくことだ。でも、あの偽物は江ノ来間さんが隠れて制作していたものだ。

 誰も知らないはずだ。江ノ来間さんからすれば。

 

「もしかして三島ちゃん?」

 

 腕を組み、こちらをじっと見つめてくる江ノ来間さん。

 賢い彼女のことだから話の流れからして、うすうすわかってはいただろう。少し、目線を落として何かを考えて口を開く。

 

「そういえば、三島ちゃんもうすぐこの仕事やめるんだっけ。実家の方に戻るとか、それこそ今月末とかかしら。盗むタイミングとしてはまぁわかるわね。」

 

 残念だ、と言わんばかりの表情でそう言葉にする。

 残念なところ申し訳ないがこのまま続けると、あの絵の存在を知っている人物として、あの受付の人ほど考えられる人物はいないだろう。現にその言動が物語ってた。

 

「『春休みとか1日中頑張ってたし、描いてる時とかすごく集中しているのよ彼女。』たしかそう言ってたね、その三島さんという人は。管理人なら校舎の見回りもして、江ノ来間ちゃんが1人な時間に美術室の前を通っても不思議じゃないし、普段と違う時間に入れば確認するだろう。それで江ノ来間ちゃんは集中していて気付かないと。」

「たしかに、私描いてる時は集中してて、ドアが開くくらいなら気づかないかもね。」

 

 神経使うって言ってましたしね。それで模写の事実には気付いていたと。

 

「なら聞くけど、シンシくん。いや探偵さん。私の指紋が私の書いた方の絵にないのはなんで?」

 

 探偵じゃなくて、解決屋ですけどね。

 それはまぁ、予想にはなりますが、偽物とわかってるなら自然なことですが見分け方を探すじゃないですか?

 

「そうね。」

 

 でも、あれ素人、いや美術部の人でも偽物と気付かれないくらい精工なんです。それこそ本人でもわからないレベルです。流石だ江ノ来間さん。

 でも三島さんは偽物があるという前提がある。偽物を見つけたら色々と観察しますよね。自分のやっていることがバレないためにも慎重になるだろう。そしたら気付くはずだ、本人すらわからない精工なものを本人が見分ける方法。

 

「サインってこと?」

 

 ええ、サインです。一応聞きますが、サインってもしかして、キャンバスの裏の木枠の部分に書きませんでした?

 

「ええ、言ってなかったかしら。」

 

 言ってないと思います。まぁ、表側のサインは完成してから書くのはよくあることでしょうし、そこに書いてるのもわかりますよ。絵にサインと言われたらついつい絵の下の端とかを思いついてしましますが今回は違いましたね。

 

「なるほど、私でもだいたいわかってきたわよ。」

 

 流石ですね。そうです、偽物を区別できると困るんですよ。模写された絵が壊されとなったら捜査が別方向に行きますから。壊したのがかく乱なら、偽物とバレてはいけない。だからサインはあってはいけない。でもサインを消せば、それはそれで見られた時困る。

 

「キャンバスを張り替えたのね。」

 

 ええ、そういうことでしょう。最初に先輩が「キャンバスが少し形も崩れて汚れていた」と言っていたのを思い出しますよ。乱暴に扱われたからだと思っていたけど、1回切りつけて形が崩れるのは自然ですが、汚れてるのはすこし不自然ですから。恐らく張り替える時についたんでしょうね。

 

「でも、流石にキャンバス地の方には指紋がついてるんじゃないの?」

 

 そうですね。でも風紀委員の人たち、恐らくですけどそっちは調べてないんですよ。だって独野さんの絵って、壊れててもかなりの値が付くらしいですからね。指紋の採取っていくつか方法がありますけど、総じて薬品や粉末使いますから気遣ったというか一旦避けたんでしょう。本人がどこか行って許可も撮れないし、警察的組織といえど所詮は学生たちですから。強行もせず、それなりに指紋が出てくれば一旦はそちらを探せばいい。あの大きさなら木枠の方でもかなり指紋がつくとこはありますしそっちを優先したんでしょう。指紋の取りやすさとかもあるかもしれないですけど。

 

「そこまで狙ってたのかしら。」

 

 偶然かもしれませんね。一旦目くらましできればいいとかだったかもしれません。そもそも本来、指紋検出して照合するのは時間がかかりますから。別に生徒みんな指紋登録まで管理はされてないですし。こんな早く指紋照会ができたのは風紀委員に特別なやつがいただけですから。

 

「ああ、あの言ってた変態の子。常識外れなのね、その子。」

 

 見分けのつかない絵をかける先輩には言われたくないでしょうけどね。

 ですから、先輩の指紋が出てこなかったということになります。まぁ、このまま捜査が難航して絵の方も指紋取れば余裕で出てきたでしょうけど。

 

「なるほどね。確かにじゃあ、その本物はどこに?」

 

 まぁ木枠から外せば布ですから、折りたたんで持ち運ぶこともできそうですけど、価値あるものをそう乱暴には扱えないでしょうね。

 

「じゃあ、本物は結局どこに?」

 

 予想はできますが、まぁ犯人がほぼわかったんです、本人に聞きまいましょう。そしたら解決です。

 それより、解決屋としては、解決しなきゃいけないことがありますし。

 

「え?」

 

 もう美術部の再開問題は解決したようなものです。でも僕らが請け負ったのは解決は江ノ来間さんの悩みですよ。

 だからもう1つ、悩みも解決しますよ。サービスみたいなものです。

 

 

 

 

 

 

 

 これはまぁ後日談みたいなものだが、やはり犯人は三島さんだったらしい。

 動機は価値、でも金ではなく独野さんの絵が欲しいというブランドの価値だそうだ。まぁ実際はどうかは知らない。盗みを働くやつの言葉は信用できないしね。

 犯行の計画は立てていたようだけど、入念と言えるほどでもなかったし、今回は運も味方したという感じではあるだろう。

 処分についてはまだ決まってないけど、これほど大きな学校の信用を落とすものだ、優しい物にはなってないだろうね。

 江ノ来間さんはそれなりに元気そうだった、これから有名な芸術家になるなら邪な想いを持った奴はいくらでも現れるから経験だそうだ。

 解決屋としてはすぐ解決できて誇らしいばかりだ。そんな解決屋の僕たちは今、お寿司屋にいる。先輩と約束した解決したらご飯に連れていってくれるというやつだ。

 ただしまさかの、回らない奴。しかも何故か個室に案内された、店主自らね。

 

「好きなだけ食べていいそうだよ。私が払う訳じゃないからあんまり言えたことじゃないが、味わうといいよ後輩君。」

 

 誰が払うんですか?

 

「払うというより、今回はタダなんだ。約束でね。前に息子さんを誘拐犯から救ってそれのお礼だそうだ。大丈夫、もともと友達もつれてきてと言われていたからね。君の分の会計も大丈夫だよ。」

 

 店主の方に目を向けると、物静かな店主は包丁を持ち、真剣な面持ちのままこちらを向いてただ会釈をして、また調理に戻る。

 というか先輩いつそんなことをしていたんですか。

 

「少し前、休日にねちょっとね。」

 

 そんな日帰り旅行の感じで誘拐犯から子供救ってたんですか。

 

 「早起きした日だったから時間が合ってよかったよ。」

 

 誘拐事件はそんな早起き程度の誤差で解決できるものじゃいと思いますけど。

 

「まぁ、今回は後輩君もかなり早かったじゃないか。昼頃始まって、夕方には解決。十分な速さだと思うよ。」

 

 先輩の助けもあってのものですけどね。

 

「後輩君を助けるのは当然さ。つまりは実力だよ。」

 

 そうですか。まぁ本物の絵もあっけなく終わったしよかったですよ。

 

「ああ、まさか保管室にあるとはね。」

 

 そう、独野さんの絵についてだが、あっけなく見つかった。木を隠すなら森の中とは言うが、絵は保管室の奥の方にしれっと残されていた。

 なんでも犯人は、こんな大きなものを昼間に運ぶのはまずいと思ったようで、生徒たちがいなくなった後、見回りの時に回収して、不要な備品にまとめて外に運び出す算段だったらしい。

 あんな大きなものを証拠もなく運び出す大泥棒はおらず、まさかの盗んだものを盗んだ場所に置いておくコソ泥がいただけだったという結末だった。

 

「決めつけ、というより私達は今回は先入観でかなり手こずってしまったね。まぁどれも仕方ないというしかないものばかりだけれどね。」

 

 でも先輩は正直僕よりもかなりわかってはいましたよね。負けた気分ですよ。

 

「でも、江ノ来間ちゃんと独野さんの仲を取り持ったのは君にしかできない事だったと思うよ。」

 

 そう、あの後だが、僕の方から独野さんに掛け合って江ノ来間さんに絵を教える、というより一緒に書く機会を作らせてもらった。

 江ノ来間さんはプライドが、独野さんは孤高な人と相性はよくない。でも江ノ来間さんは独野さんに教えられたかったし、独野さんは孤高であっても優しい人間だ。

 僕みたいに部外者の人間が挟まれば、案外簡単に解決することだった。

 

「独野さんは木原さんを拒否はしたけど、絵の事についてアドバイスはしいたみたいだしね。感情はわからくても寄り添うことはできる。弟子入りを拒否した孤高の人間というからついつい、教えなんてさせない天才肌の芸術家と思い込んでいたら、話し合えばすんなりと。本当に決めつけはよくないね。」

 

 ですね。まぁこれで江ノ来間さんの悩みは解決。依頼達成できたって感じですかね。

 

「そうだね。まぁ後輩君、これからも私の元で頑張ってくれたまえよ。いや頑張ろうね。」

 

 先輩は上目遣いで楽しそうな声色と共にそう言ってくる。なんだろうか、可愛いすぎるなこの先輩。こんなにおいしいお寿司の味がわからなくなりそうだ。

 しかし、スマホが鳴りハッと意識が戻ってくる。

 

「後輩君こういう場では通知を切るのがマナーだよ。ご主人すまないね。」

 

 やってしまったと、店主の方に頭を下げようとする。

 すると店主は「今日は、くつろぎの場です。お気になさらず。」と優しい笑顔で伝えてくれる。流石、こんな店を持つ人だ。それは料理の腕だけではないのだろう。

 画面だけ一瞬確認し、マナーモードにしようとすると、メッセージの通知が目に入る。少しため息が出るような内容にがっかりしつつ先輩にそのメッセージを見せる。

 送信の主は化野だ。

 

「なんだい後輩君――『複数の校舎で7不思議が同時発生したらしいです。なお7不思議は現在34個まで確認済み。』――7不思議って学校ごとじゃなくて、校舎ごとに存在するのかい?」

 

 たぶん違いますけど、とりあえずお寿司食べちゃいましょうか。

 決めつけでなく、高いお寿司は美味しいのは事実ですから。

 

「はは、そうだね。」

 

 また、学校に行ったら解決してあげましょう。

 僕らは解決屋ですからね。




とりあえず、完結という感じです。展開駆け足すぎると思いますが、それもコンセプトですかね。

続きなり、設定なり考えてはいるんですがとりあえず形にしたのがこれなので、気に入っていただけるならそっちも書きたいですね。元は違う主人公の違う物語の設定なので、本当はこっちが番外編みたいなものなんですけど、気づいたらこっちができていました。

読者の方にはこの文字数どう思うのかお聞きしたいですね。
作者自身が続きが気になるのがストレスなので完成したものを2,3話に分けて書いてる感じなんですが、こういうの毎日投稿みたいに小出しの方がいいのかな。ミステリーとかとは相性悪そうなだけど。

とりあえず、お読みいただきありがとうございます。
よければ感想、お気に入り等よろしくお願いいたします。
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