存在と虚無の彼方に響く歌   作:のうち

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第10話 その歌は、かつての祈り

夜の帳が降りる頃、都市の外縁部――倉庫街の上空を、一機のヘリが低空で滑っていた。

 

 その腹部が開く。冷たい風の中、そこから一人の少女が飛び降りる。

 

 「Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 空中で展開された装甲が煌めき、彼女の身体を包み込んでいく。

 蒼の剣士――風鳴翼。

 ノイズ殲滅のために呼ばれた、“現役最後の装者”だった。

 

 翼の着地と同時に、ノイズの群れが動く。

 刹那、蒼い閃光が夜を裂いた。

 

 「蒼野一閃!」

 

 抜刀と同時に、五体のノイズが爆ぜる。

 群がるノイズを翻弄するように、翼の刃が風を巻き上げる。

 

 

 その数キロ離れた都市部。

 主人公・板羽弓美は、異変を感じて空を見上げていた。

 

 「また、ノイズ……か」

 

 体が疼く。胸の奥、眠っていたザインの力が微かに反応する。

 けれどそれは呼応ではなく――不快なざわめき。

 乙姫の気配は、まだ戻ってこない。

 

 「……今の私は、エルフしか使えないんだ」

 

 弓美は苦笑する。力を制限され、かつてのような爆発力はない。

 それでも、戦場に赴く理由が消えたわけではなかった。

 

 「行くしかないよね、結局」

 

 そして彼女は、夜の街へと歩き出す。

 

 

 舞台はリディアン音楽学院。

 私立ながら学費補助のあるその学校に、立花響は進学していた。

 

 孤独で苦しい響にも高校へと進学した時、嬉しい出来事があった。同じクラスに親友の小日向未来がいたのだ。

 

 「どうして……未来、あの時……」

 

 届かない答え。口にできない想い。

 響は、胸に押し込んだまま、ただ今は彼女との再会を喜んだ。

 

 

 放課後、響は未来と町へ出る。

 翼の新曲CDを買いに行く――それだけの、平凡な時間のはずだった。

 

 だが、町の片隅。

 そこに“炭化した死体”の山があった。

 

 「……ノイズ……」

 

 響の視界が揺れる。震える手で、唯一生き残っていた少女を抱き上げる。

 

 逃げなきゃ。

 この子だけでも、助けなきゃ。

 

 その一心で、響は街を駆け出した。

 

 

 一方その頃――

 

 ノイズ群の一部が逃走ルートに逸れ、リディアン方面へと流れ込んでいた。

 

 翼は追撃に向かう。

 その戦場に、すでに“もう一人の戦士”が立っていた。

 

 「unknown……!」

 

 蒼い装甲――マークエルフを纏った弓美が、すでに戦闘を開始していた。

 

 翼は目を細める。

 見覚えのある動き、見知らぬ力。

 

 「再び……共闘することになるとはな」

 

 言葉はなかった。けれど、刹那、動きが揃う。

 

 交錯する刃と拳。ノイズを挟み撃ちにし、動きを封じていく。

 

 「左、任せる!」

 

 「了解」

 

 会話は一瞬。

 けれど、それだけで十分だった。

 

 

 一方、逃走中の響は、追い詰められていた。

 

 路地裏。壁際。

 泣き叫ぶ少女。響の脚は震えていた。

 

 「ああ、もう……足が……動かない……」

 

 視界に浮かぶ、あの日の記憶。

 

 爆発。炎。歌声。

 

 「生きるのを――諦めるなっ!」

 

 奏の声が、耳元で響いた。

 

 “あの人は、命を燃やして私を救った”

 

 響の中で何かが、目を覚ました。

 

 「――歌が……聞こえる」

 

 ふらつきながらも立ち上がり、響は震える声で呟いた。

 

 「わたしを……わたしを、守ってくれた……その人みたいに……!」

 

 その瞬間、光が奔った。

 

 

 場面は二課の本部。

 

 オペレーターが叫ぶ。

 

 「アウフヴァッフェン波形照合――このパターンは……!」

 

 「ガングニールだとぉ!?」

 

 弦十郎の声が本部に響く。

 “失われたはず”のギアが、再び現れた。

 

 

 響の身体が、変わっていく。

 

 蔦のようなものが血管に絡みつき、神経が剥き出しになる。

 機械のパーツが皮膚を突き破り、装甲へと再構成されていく。

 

 その一瞬、背に現れかけたのは――黒き翼。

 まるで、マークニヒトのような“虚無の片鱗”。

 

 だが、それはすぐに砕け、

 代わりに、赤きギア――ガングニールが響を包んだ。

 

 「これは……!」

 

 翼も、弓美も、一瞬だけその光に目を奪われた。

 

 新たな装者の誕生。

 それは、“残された者たち”が新たな物語を歩み始める合図だった。

主人公とアニメの板羽弓美は別人

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