存在と虚無の彼方に響く歌   作:のうち

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第3話 その声は、虚無に届く

――“unknown”という存在が記録されたその翌日。

 

 特異災害対策機動部二課では、臨時のブリーフィングが行われていた。

 

 会議室の中央、投影されたホログラムには、映像解析が進む一つの記録。

 銀色のノイズ群を、蒼白の装甲を纏った謎の存在が、一瞬で殲滅していく。

 粒子の収束、質量の制御、未知のエネルギーパターン。

 

 「ギアではありませんね」

 オペレーターが呟くように言う。

 

 「シンフォギアの制御波形とも違う。おそらく……外部技術か、未知の因子」

 

 その言葉に、司令・風鳴弦十郎は腕を組み、目を細めた。

 

 「力の源は不明、だが確かに“ノイズを排除”している。問題は、動機だな」

 

 隣でモニターを見つめていた天羽奏が、僅かに目を細める。

 

 「……この距離で、私たちに干渉しなかった。明確な敵意はなかったように思えます」

 

 「むしろ、戦うことに“意味”を見出してるように見えたな」

 と弦十郎が補足する。

 

 風鳴翼は一歩前に出ると、鋭い口調で言った。

 

 「いずれにせよ、放置はできません。正体不明の力は、時として最も厄介です」

 

 「……ええ。でも」

 

 奏が視線を落とした。そこに映る、蒼い装甲の背中。

 

 「なんだか、あの子……私に似てる気がする」

 

 

 その夜、奏はひとり屋上にいた。

 

 夜風が吹き抜ける。遠くで、誰かの歌が聞こえるような気がした。

 

 奏は空を見上げる。胸の奥が、少しだけ痛んだ。

 

 “あの子”を見たからだ。

 かつての自分と同じ、“壊れながらも戦おうとする何か”を感じたから。

 

 ――あの夜のことを思い出す。

 

 幼い頃。まだ両親と暮らしていたころ。

 平和だった日常を、ノイズは一瞬で踏み躙った。

 

 銀色の霧。耳をつんざく音。爆ぜる肉体。

 父も、母も、目の前で消えていった。

 

 奏だけが、なぜか生き残った。

 

 その時、胸の中で何かが“起きた”。

 涙も出ない。叫びも出ない。

 ただ、無音の中に、一つの響きだけがあった。

 

 「復讐」――それは、彼女が“歌う”理由の原点。

 

 「全部、壊してしまえばいいと思ったの」

 彼女は呟いた。

 

 “守る”ための力ではなく、“否定する”ための声。

 生き残った自分への怒りと、虚しさと、願いがないまぜになった声だった。

 

 

 その感情の奥底――

 共鳴するように、何かが世界の狭間で蠢いていた。

 

 ザインの力が封じられ、沈黙した今。

 この世界に“存在の対”が残されたままなら――

 

 それは、呼ばれる。

 

 否定と虚無を内包する“もう一つの力”――マークニヒト。

 

 その残響は、まだ名も持たぬ意志として、

 天羽奏という器の奥で、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。

この主人公にヒロインはいる?

  • 乙姫
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