――“unknown”という存在が記録されたその翌日。
特異災害対策機動部二課では、臨時のブリーフィングが行われていた。
会議室の中央、投影されたホログラムには、映像解析が進む一つの記録。
銀色のノイズ群を、蒼白の装甲を纏った謎の存在が、一瞬で殲滅していく。
粒子の収束、質量の制御、未知のエネルギーパターン。
「ギアではありませんね」
オペレーターが呟くように言う。
「シンフォギアの制御波形とも違う。おそらく……外部技術か、未知の因子」
その言葉に、司令・風鳴弦十郎は腕を組み、目を細めた。
「力の源は不明、だが確かに“ノイズを排除”している。問題は、動機だな」
隣でモニターを見つめていた天羽奏が、僅かに目を細める。
「……この距離で、私たちに干渉しなかった。明確な敵意はなかったように思えます」
「むしろ、戦うことに“意味”を見出してるように見えたな」
と弦十郎が補足する。
風鳴翼は一歩前に出ると、鋭い口調で言った。
「いずれにせよ、放置はできません。正体不明の力は、時として最も厄介です」
「……ええ。でも」
奏が視線を落とした。そこに映る、蒼い装甲の背中。
「なんだか、あの子……私に似てる気がする」
⸻
その夜、奏はひとり屋上にいた。
夜風が吹き抜ける。遠くで、誰かの歌が聞こえるような気がした。
奏は空を見上げる。胸の奥が、少しだけ痛んだ。
“あの子”を見たからだ。
かつての自分と同じ、“壊れながらも戦おうとする何か”を感じたから。
――あの夜のことを思い出す。
幼い頃。まだ両親と暮らしていたころ。
平和だった日常を、ノイズは一瞬で踏み躙った。
銀色の霧。耳をつんざく音。爆ぜる肉体。
父も、母も、目の前で消えていった。
奏だけが、なぜか生き残った。
その時、胸の中で何かが“起きた”。
涙も出ない。叫びも出ない。
ただ、無音の中に、一つの響きだけがあった。
「復讐」――それは、彼女が“歌う”理由の原点。
「全部、壊してしまえばいいと思ったの」
彼女は呟いた。
“守る”ための力ではなく、“否定する”ための声。
生き残った自分への怒りと、虚しさと、願いがないまぜになった声だった。
⸻
その感情の奥底――
共鳴するように、何かが世界の狭間で蠢いていた。
ザインの力が封じられ、沈黙した今。
この世界に“存在の対”が残されたままなら――
それは、呼ばれる。
否定と虚無を内包する“もう一つの力”――マークニヒト。
その残響は、まだ名も持たぬ意志として、
天羽奏という器の奥で、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。
この主人公にヒロインはいる?
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乙姫
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響
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いらない