不思議な感覚に、私は少しずつ慣れていった。
戦うたびに、夢を見る。
夢の中で、乙姫は言葉だけでなく、感情や記憶の断片さえ私に流してくるようになった。
“クロッシング”――乙姫はそう呼んだ。
存在と存在を繋ぎ合わせる現象。
元はフェストゥムと人との交信法だったはずが、今や私たちの間に常に流れている“線”のようなものになっていた。
たとえば、私が戦う時。
背中を預けるように、乙姫の気配を感じる。
たとえば、私が恐れを感じた時。
彼女の手が、心の奥でそっと私を支える。
「不思議だよね」
私はある日、夢の中でそう呟いた。
「貴女が、私の一部みたいになってる」
『私も同じことを思っていたの」
私生活に於いても最近は味覚までもが共有されているらしい。
美味しいものを食べたり一緒におしゃべりをして微笑んだ乙姫をみていると
優しくて、でもどこか脆くて――だから私は、彼女と一緒にいたくなった。
そして、それは現実でも形になっていく。
ある日、乙姫が言った。
『あなたが望むなら、一緒にお出かけしない?』
「え?」
『この世界を、あなたと一緒に見てみたいの』
私は驚いた。けれど、断る理由なんてなかった。
その日、私は「一人」じゃなかった。
頭越しに聞こえる乙姫の声。
交差点の雑踏、焼きたてパンの匂い、店先に並ぶ季節限定のパフェ。
映画館で人気のラブコメ映画をみたり、プラネタリウムで星をみたり
『……これが、人間の世界……』
言葉の一つ一つに、彼女の感動が滲んでいた。
私はその感情を“共有”している。まるで、隣で乙姫が歩いているかのように。
『これが――あなたが守ろうとした世界、なのね』
「うん。そう、思いたいんだ」
けれど、平和な時間というものはいつだって長くは続かないものだ
夕暮れ。帰り道の商店街。
空気が一瞬、重くなる。
遠くから、聞き覚えのある不快な警報音が届いた。
ノイズだ人を殺す為だけの存在、フェストゥムとにているようで違うもの
私は立ち止まり、ため息をついた。
「ああ、もう……」
背中に浮かぶ重み。乙姫の気配が強くなる。
『来るね』
「……やれやれ。せっかく良い気分だったのに台無しだよ。」
私はゆっくりと腕を上げ、胸の中心に手を当てた。
銀の粒子が踊る。
「展開――マークザイン」
光が走る。背中に展開する蒼いブレード。重力すら歪む気配。
もう、恐れはない。
乙姫の意識と共に、私はただ――敵を見据えて、歩き出す。
さあ、お前達、デートを邪魔された怨みをここではらすとしよう。
「さあ、私はここにいるぞ」
この主人公にヒロインはいる?
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乙姫
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響
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いらない