存在と虚無の彼方に響く歌   作:のうち

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第6話 剣と歌と、銀の影

ノイズの群れが街を覆ったのは、放課後の帰宅ラッシュを直撃したタイミングだった。

 

 悲鳴。破裂音。街に満ちる銀の霧。

 大通りの交差点が、瞬く間に戦場と化す。

 

 私は制服のまま、影に身を潜めた。

 

 すでに呼吸が浅い。

 背中では、封じられたはずのザインが震えている。

 

 「……来るよね、やっぱり」

 

 『行ける? 同化の兆候、まだ抑えられてる』

 

 乙姫の声が脳裏に響く。

 私は短く息を吐き、目を閉じる。

 

 「展開――マークザイン」

 

 光が走る。銀の装甲が私の体を包み、背に六枚のブレードが展開される。

 

 時間はない。

 ノイズが人を襲うより早く、私が斬るしかない。

 

 

 跳躍。空を駆け、地面に突き立てるように着地。

 その衝撃波で数体が霧散する。

 

 左腕が変形し、衝撃波を放つ小型カノン砲へ。

 右脚で蹴り上げたノイズの核を、刃に変化した前腕で断ち割る。

 

 感覚が研ぎ澄まされていく。

 乙姫との意識が完全に重なり、まるで自分が自分でなくなるような錯覚さえ心地よかった。

 

 『後方、五体。位置修正して』

 

 「分かってる」

 

 それは戦闘というより、ただの流れだった。

 心と身体が一致し、余計な思考がいらない。

 

 ――けれど、その“流れ”は、次の瞬間に割り込まれる。

 

 「響け我が歌、斬撃にのせて!」

 

 響いたのは、鋭い剣戟と歌声。

 

 

 背後から銀色の刀閃が舞い、私の倒し損ねたノイズが一閃で斬られる。

 

 そこに立っていたのは、風鳴 翼――そして、

 その隣には、肩を怒らせてマイクスタンド型の武器を構える少女、天羽 奏。

 

 「unknown、か」

 

 翼が一歩前に出る。構えは、警戒と戦意を滲ませていた。

 

 「敵意は?」と問う視線。

 

 「今は、共通の敵がいるだけ」

 私は短く答え、再びノイズへと視線を戻す。

 

 奏が一瞬だけ、私の装甲に目をやった。

 

 「……アンタ、壊れそうな顔してるね」

 

 言葉に棘はない。ただ、鋭い直感。

 “過去の自分を見ている”ような眼差し。

 

 

 それ以上の言葉はいらなかった。

 

 ノイズの数がさらに増え、三人は即座に背中を預け合うような陣形になる。

 

 「翼、左から行くわよ!」

 

 「了解。後方支援、任せます」

 

 翼が疾走する。美しい剣舞。舞うような刃。

 

 奏のマイクスタンドが叩きつけられるたび、音波がノイズを穿つ。

 

 そして私は、その隙間を縫うように立体機動で敵の核を正確に斬っていく。

 

 戦いが、噛み合っていた。

 

 

 十分後、ノイズはすべて霧散していた。

 

 私は最後に変形した左腕を砲形態から戻し、静かに深呼吸する。

 

 目の前には、静かにこちらを見る二人の装者。

 

 言葉は、なかった。

 私は何も名乗らなかった。

 

 それでも、去り際に奏がぽつりと呟く。

 

 「名前、教えてよ。……別に、偽名でもいいからさ」

 

 私は振り返らずに、ただ答えた。

 

 「名乗るような名前は、もう捨てたよ」

 

 風が吹き抜ける中、私はその場から跳躍し、姿を消した。

 

 

 数時間後、二課の作戦会議室。

 

 「またしてもunknownとの接触……しかし、戦闘能力は間違いなく味方に等しい」

 

 弦十郎が映像を見ながら静かに言う。

 

 翼は口を結び、奏は少しだけ笑っていた。

 

 「でも、あの子――私たちと、似た匂いがしたよね」

この主人公にヒロインはいる?

  • 乙姫
  • いらない
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