“あの夜”から、二年が経った。
ツヴァイウィングは死んだ。
天羽奏の絶唱と共に、ノイズの群れも、光に溶けた。
――でも、何も終わっていなかった。
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立花響は、駅前の広場に立っていた。
その手には、供花と線香。
花束は、わずかに風に揺れていた。
誰も話しかけない。誰も、近づこうとしない。
かつてあれだけ愛された少女が、今や“忌み子”として噂されていた。
「ノイズ災害の生き残り」
「あの夜、一人だけ生き残った少女」
それはもはや、同情ではなく恐怖と差別の対象だった。
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響の祖母は、ある日突然倒れた。
明確な原因はなかった。ただ、街で“あの子の家族”と指をさされ続けた結果――
身体よりも、心が折れてしまった。
祖母は、響にだけ言った。
「響。あんたは悪くない。だけど、世間は……そうは思ってくれないんだよ」
最後に残されたその言葉が、
響の心を、深く沈めていった。
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一方――弓美は、夕暮れの街を歩いていた。
ザインの力は、乙姫の眠りと共に沈黙を続けている。
マークエルフの制限された力でさえ、今は必要なかった。
ノイズの出現は、ここ最近、嘘のように減っている。
「……何も起こらない。何も守れない」
ぽつりと呟いた言葉に、返ってくる声はなかった。
弓美もまた、あのライブ事件の直後、
人知れずその場から姿を消していた。
“unknown”は、忘れ去られた。
誰にも必要とされないまま。
守りたかった世界に、居場所を失ったまま。
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そんな弓美が、通学路の途中で目にした光景。
歩道橋の上、響がひとり、立ち尽くしていた。
見下ろす視線の先にあるのは――祖母の葬儀後、火葬が行われて埋葬された墓。
響の目には、涙も、光もなかった。
ただ、空を見ていた。
そこに誰もいないと知っていて、それでも“届いてほしい”と願うように。
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(私だけが、生き残ってしまった)
(どうして、私だったんだろう)
心の奥から、黒いものが湧き上がる。
優しさも、祈りも、もうどこかへ消えていた。
代わりに残ったのは――
他者を拒み、自分さえ信じられない、
空っぽの器。
それでも叫びたいと思ってしまう自分が、心底気持ち悪かった。
⸻
弓美は、それを感じ取っていた。
響から溢れ出す“共鳴”のようなもの。
言葉を交わさずとも伝わる、苦しみと怒り。
それは、かつて自分が感じたものと同じ。
存在を拒まれ、力を封じられ、それでも心に“叫び”が残ってしまった少女。
――立花響。
彼女の中にある“何か”が、確かに“目覚めようとしている”。
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その夜。
弓美はノイズの気配を感じた。
久しく忘れていた感覚――だが、それは確かだった。
街の片隅で、再び霧が立ち上る。
「来る……か」
弓美は、ポケットから展開機を取り出す。
胸に手を当て、力を呼び起こす。
ザインの声は、もう聞こえない。
乙姫の囁きも、風のように遠い。
それでも――
「まだ、私には……“やるべきこと”がある」
この主人公にヒロインはいる?
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乙姫
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響
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いらない