死んでからが本番なコナン世界の転生者   作:たるたる

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第四話

俺が宮野明美とAPTX4869の話をした後、一度俺たちは米花町へ戻ることにした。

俺的には米花町へ元々帰るつもりだったけれど、彼女はすぐにでも研究所に行こうとする勢いがあった。

だが、今の時間はほとんど車が通っていないし、宮野志保がいる研究所の場所を聞いたところ、米花町と比べてあまりにも遠すぎた。

 

それに彼女はまだ幽霊になったばかりだ。

俺が習得していった物体移動も彼女はまだ試してもいない。

研究所でいきなり動かすのはかなり無茶だと思う。ほかの人に見られでもしたら大惨事になってしまうかもしれないし。

 

俺も研究所に行くので物体移動自体はできるのだが、彼女に教えていた方が何かと都合は良くなるだろう。

研究所に行ってしまえば練習する場所も時間も限られるだろうし。

 

彼女は俺の説得に渋々といった様子で受け入れてくれたが、条件として俺の家で練習をするとのことだった。

まあ、今米花町へ帰ってもすぐに住める家が見つかるわけではないから仕方がないだろう。

 

俺が渋々了承すると、彼女はすこぶるご機嫌になっていた。

 

「実はね、別にすぐに志保のところへ行くつもりはなかったのよね。……でも、米花町に行くにしても今から住むところを探すのは嫌だし、あなたはこうでもしないと家に泊まらせてくれなさそうだしね~」

 

彼女の言っている内容……特に最後の方に心当たりしかなくて度肝を抜かされてしまった。

実際、泊まらせるつもりはなかったので完全に図星を突かれた。

 

あぁ……俺のぷらいべーとが……

 

ていうか、なんでそんなに俺の性格知ってるんだよ。俺の考えがドンピシャに当てられすぎている。

まさか幽霊になったことで読心術でも習得できたのか?と馬鹿なことを考えながら、自然と俺は肩を落としてしまう。

 

彼女はそんな俺の様子を見ると、ケラケラと笑っていた。

完全にからかわれている……。

 

 

 

そんなこともあって、俺たちは米花町へ向かっていく車を何とか見つけて乗り換えながら俺の家へ帰っているところだ。

辺りはもう真っ暗でみんなもう寝静まっているころだろう。車ももうほとんど通っていない。

 

今は何時だろうか? 幽霊になってから睡眠は必要なくなったがさすがに疲れたので休憩はしたい。

幽霊になっても精神的に疲れはするのだ。

 

……今日は本当にいろいろなことがあった。幽霊になってから一番忙しい日なのは間違いないだろう。

死ぬ前はこんなに忙しい日なんてなかった。そう思うとこの世界の俺の人生はなかなかに奇妙なものである。

 

(……はぁ、死んでからが本番な人生なんて聞いたことないな)

 

まあ、人生という言葉が適切かどうかはいったん置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しま~す!」

「……何にもない部屋ですが、ゆっくりしてください」

 

……あぁ、家に人を上げるのはどうしてこうも抵抗感があるのだろうか?

 

俺の部屋に誰かが入るのは殺人事件が起きてからは初めてだ。幽霊になってからも誰かを家に上げるなんて考えてもなかったから少し緊張してしまう。

それに、もうそこそこ長い間話していたから忘れていたが、彼女は『名探偵コナン』の重要人物だ。緊張しない方が無理とだろう。

 

彼女はひとしきり俺の部屋を見た後、俺の方へ向かってきた。

 

「……それでは、そろそろ物を動かす練習をしましょうか」

「わかったわ。……それで、何を動かせばいいの?」

 

……まあ、幽霊になってから愛用の空き缶でいいかな?

 

俺はいつも動かすのに使っている空き缶を持ってきた。

 

「いつも俺はこれを動かして練習してます。……大体のやり方は今から教えていくんで、とりあえずやってみましょう」

 

まだ俺もうまく動かせれるわけではないが、さすがに彼女よりかはコツを知っているので俺が知っている限りのうまく動かせるコツを彼女に話していく。

 

彼女は初めてにしてはものすごい上手だった。

最初に俺が幽霊になって物を動かしたときのように、わずかな力しか入らないということもなく、比較的スムーズに缶を動かせている。

 

……なんでこう、この世界の住民は手先の器用な奴ばっかりなんだろうか?

原作でもそれ無理じゃね?って思うトリックを本番で一発で成功している連中ばかりなのだ。最近麻痺してきたが考えてみるとやっぱりおかしい。

 

「……上手いですね。正直、このまま練習していくだけで俺よりも動かせれるようになると思いますよ」

「そう言ってもらえるとやる気も出てくるわ。……とりあえず、朝まで練習しようかしらね」

 

それに、長いこと練習を続けられる忍耐強さもある。

勝ち目がない。

ぜひ、この世界の住民は俺が転生する前の世界で活躍してもらいたい。

 

……あ、でも駄目だ。こいつら最大の欠点が犯罪率の高さだった。

元居た世界が血塗れになるのはさすがにごめんである。

 

 

そのまま俺たちは雑談もしながら、物を動かす練習を続けた。

彼女の上達速度はなかなかのものであり、新たにコツを見つけてもいた。

そして、あっという間に俺が持ちあげられる重さと同じくらいの重さのものを動かすのにも成功していた。

さすがはコナン世界の重要人物。なにからなにまで優秀すぎる。

 

これだけ上手だったら、いつも俺が動かすのに使っている空き缶よりももっと良いものがあるだろう。

俺も今日の出来事があって、今までよりもかなり重いものを動かすことができるようになったので、そろそろ新しい何かを見つけるべきだな。

 

そして、なんやかんやで時間が過ぎて行ってようやく朝になった。

外を見てみるともう車も往来しているため、研究所に行くのも容易くなってきただろう。

 

「そろそろ研究所に行っても良いかもしれないですね」

「あら、もうそんな時間になったの? ……夢中になりすぎていたわね」

 

今では彼女のものを動かす能力は俺をはるかに超えており、俺が持ちあげられない重さのものを動かすこともできていた。

これで研究所に行く準備は万全だろう。

 

「……さて、そろそろ行きましょうか」

「えぇ……志保……」

 

彼女の表情はさっきまでとは一転、物憂げで心配そうなものになっていた。

 

 

 

研究所の場所はもちろん俺は知らないので、宮野明美に付いていく形で研究所に向かっていった。

それにしても……研究所か。

なんとなく……懐かしいような……。

 

おかしいな。前世の俺、別に研究職ってわけじゃなかったんだけど……。

まあ、いいや。

 

「ついたわ。……でも、この中のどこにいるのかは私は知らないのよね……」

「この製薬会社すべてが黒の組織と関わっているわけではなさそうですし、情報を集めるにしても手当たり次第ってのは効率が悪そうですね」

 

原作では書かれていなかったはずだが、この製薬会社すべてが黒の組織の目的のための薬品開発に携わっているとは考えづらい。

カモフラージュのための開発、そしてもしも足が付いた時の被害の最小化を含めると、そこまで黒の組織関連の研究は大規模化されていないはずだ。

 

つまり、調べても大した情報を得ることができない場合も多い。

事前にどこにいるか目安をつけるのは必要だろう。

 

「まずは、マップを探しましょう。もしかしたら研究内容や主要研究者名が書いてあるかもしれません」

「確かにそうね。……とりあえず、中に入りましょうか」

 

……はぁ、入るだけなのに少し緊張してくるな。

 

俺たちは研究所の入口から中に入った。もちろん、自動ドアは開かなかった。

中に入ると単調というよりは整然としていて、よく掃除もされていそうで居心地は良い。

 

さてと、マップはどこにあるかな?

多分この入り口の近くにはあると思うんだが……お、見つけたぞ。

 

俺はマップに近づいて詳細を見てみる。

よしっ、当たりだな。宮野志保の名前が書かれている。

 

「見てください。マップによると妹さんは第4ラボにいるっぽいですね」

「本当だわ!…… あぁ、志保……やっと会えるわね」

 

……大丈夫だろうか?

会っても話せるわけじゃないし、落ち込んでしまわないだろうか?

 

まあ、それを心配していては何も始まらないか……

 

彼女は宮野志保がどこにいるかが分かったから、すぐにその方向へ向かってしまっている。

俺も置いて行かれないように早くいかないとな。

 

 

第4ラボに俺が着く前に、宮野明美がもう入っているのが見えた。それに続いて少し遅れる形で俺もラボに入る。

 

「…………」

 

宮野志保だ。

 

灰原哀になる前の……宮野志保だ。

 

なんだろう?

すごく懐かしいような……よくわからない変な感情が浮かんでくる。

前世で『名探偵コナン』を見ていたからなのか?

 

俺がそんな風に戸惑っているさなか、宮野明美は宮野志保の近くに行って手を握ろうとするがすり抜けてしまっている。

 

「……やっぱり駄目なのね」

 

彼女は残念そうな表情をして、こちらの方へ振り向いた。

 

「……? どうしたの? 顔色悪いように見えるけど……何かあった?」

「っ……いや、なんでもない」

 

だめだ。

ものすごく心に引っかかるような気がしたんだが……今はとりあえず考えるのをやめよう。

 

ていうかまずいな。焦りすぎて敬語を忘れてしまっていた。

宮野明美は確か25歳。俺よりも年上なのである。

 

「ホント? ……いったんここから出て休憩してもらってもいいのよ?」

「いや……大丈夫です。それより妹さんの様子はどんな感じですか?」

 

何とか彼女に大丈夫であることを分かってもらったが、正直今も動揺してしまっている。

本当に、なんなんだこれは。

 

俺自身のことに精一杯だったせいでこの実験室のことも、宮野志保のことも気にすることができなかった。

表情はこっちからは見えないけど、どうなんだろう?

 

「志保の様子は……ものすごく、ね。イライラしているかな?」

「……まあ、無理もないですね」

 

当たり前だろう。

おそらく宮野志保は宮野明美が死んでしまったことはもう知っているだろう。そして、これも推測にはなるが、おそらく組織からの連絡も今のところない。

 

姉を殺されたことの莫大な怒りが、今の彼女を支配しているはずだ。

俺だったら……耐えれる自身はない。

周りを見てみると荒れてる様子はないし、こんな怒りが腹の底に煮えたぎっているというのに、物に当たってはいないんだろう。

さすが、組織有数の頭脳の持ち主だ。

 

「あっ、持ってるマウスが軋んでるわ! 押す所がすごいへこんでる!」

 

……まあ、怒りで手が力むのは誰でもあることだろうし──

 

「あっ! 引き出しから取りだしたボールペンを折ったわ!」

 

前言撤回。どうやら宮野志保も耐えれてなかったみたいだ。

しかも、よく見たら折れたボールペンが4本。……いや、5本だ。

 

パソコンなどの緻密機器に当たらないところから察するに、越えられないラインは守っているんだろうが、こうも冷静に怒りを何かにぶつけているとわかるとちょっとビビる。

 

俺は宮野志保の表情がはっきりと見える位置に移動する。

 

「………」

 

……やはり、どこか引っかかるんだよな。

宮野志保の表情は宮野明美が言っていたようにとんでもないほどの怒りが見て取れる。

だが、俺が気になるのは今の表情というよりかは……だめだ。よくわからない。

 

「……やっぱり、休んできたらどう? さっきから変よ?」

「……そうですね。ちょっと休憩してきます」

 

別に疲れているわけでもないけれど、はたから見ても俺はどこかおかしいように見えたのだろう。

さっきから動揺しっぱなしだ。

さすがに心を落ち着けさせる必要があるだろう。

 

仕方なくではあるが俺は宮野明美の提案を受け入れ、実験室の外に出ていく。

近くにベンチがあったのでここで休憩をしようか……

 

「はぁ……なんなんだ一体? こんなこと、幽霊になってから一回もなかったぞ」

 

それとない焦燥感と、謎がつっかえる気持ち悪さを感じる。

 

俺は幽霊になってから、当たり前だが痛みを感じたことはなかった。

この体だから傷がつくことなんてないし、どこか温かいローブをずっと被っているような……そんな感覚がずっとする。

 

だからこそ、違和感がある。

 

「……っ、頭が……痛いな」

 

こんなこと、今までなかったはずだ。

頭が痛くなるなんて……まるで人間じゃないか。

 

……このままじゃ、さすがに調査というわけにはいかないな。

宮野志保に関しては宮野明美が何とかしてくれるだろう。おそらく少しの間も離れることはないから。

 

彼女にも一応休憩する旨は話しているし、少し横になろう。

 

……眠れるとは思わないけど、目をつむってみるか。

頭痛に効果があるのはいつだって睡眠だ。

生物じゃない今、できるかどうかはわからないがやってみるのもありだろう。

 

痛む頭に手を当てたまま、俺は意識を段々と朦朧とさせていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ったわね」

 

彼は私の提案を渋々ではあるけれど受け入れてくれて、このラボから出て行って休んでくれている。

どこからどう見ても様子がおかしかったから、もっと早く休ませるべきだったかもしれない。

 

「それにしても……この声は届いてくれないのよね?」

 

志保は他の人が見ればものすごくイライラしているだけで、ほかの感情は感じられないかもしれない。

でも、私ならわかる。

志保は今、怒りはもちろんあるけれど不安と悲しさの方を多く抱えている。

 

どれだけ志保自身をだまそうとしても無駄よ? 私はお姉ちゃんだからわかるの。

 

志保は悩みとか、悲しみとかを一人で抱え込んじゃう癖がある。それはこのラボに私以外にだれもいなくてもそうだ。

悲しみとか弱さを出来るだけ知られたくないみたい。

それは私にだってそうだった。

 

「…………ふぅ」

 

志保はとめどなくキーボードの上を動かしていた指を休ませて、机の上にあったあるものを手に取った。

 

「これは……! ……やっぱり志保はどこまで行っても志保なのね」

 

志保が手に取ったのはお守りだった。

それを志保は両手で大事そうに握り、顔の前に押し当てて俯いている。

 

それにしても……このお守り、大事にしてくれていたのね。

 

私たち二人で作ったのをよく覚えている。

今でも身に着けてくれているのは素直にうれしかった。

 

「ふふっ、本当に素直じゃないんだから」

 

私はその事実に微笑んでいると、突如として扉が勢いよく開く音が聞こえた。

私と志保はどちらも空いた扉の方向へ視線を向けると……奴がいた。

 

ジンだ。




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短くはあるんですが完結までどうしても辿り着きたいので私のモチベのためにも……!
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