『現実換装!カードバトラーズ!』   作:学び手

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お待たせしました。第7話前編になります。
対戦よろしくお願いします。


7話「引き継がれし光輪」前編

 

「こんにちは〜?カリン店長いる〜?」

 

『キャプテン・ファロー』とのバトルから数刻。

心配する子供達をどうにか帰して。

closeの表示を掲げた店内に、良く通る声が響きわたる。

 

「いないわ、帰って。」

「そうはいかないよ!闇のバトルで通報があったんだから!」

「そう…なら好きにしなさい。」

 

彼女は『土屋琴音(つちやことね)

学生時代の後輩であり、現在はバトルポリスに所属するカードバトラーだ。

 

そんな彼女は、椅子に腰掛けデッキを眺めている私を見つけると、わざわざ屈みこみ、机の対岸からひょっこり覗き込んできた。

 

「…。あれ?先輩?」

 

コレを天然でやるのだから、凄いものだ。

学生時代には、ファンクラブがあったのも頷ける。

学校机でやられてみなさい。飛ぶぞ(意識が)

 

「何よ。」

「今日は燃えてないんだね?」

 

そうして、偶に変な事を言う所も変わらない。

比喩表現だろうけど、私はどちらかと言えば静かな方だ。どっかの誰かの様に、暑苦しくなった覚えはない。

 

「?…理解できないわ。」

 

そう、言葉にして席を立つ。

思えば、夕食の時間だ。

せっかくだからこの子の分も作るとしよう。

あ、しまった。キズナのもウチで用意してあげればよかった。

 

「…。バトルバンドはつけないの?」

「…ええ。邪魔だもの。」

 

立ち上がり、台所へ向かう私を見て。そんなことを言うコトネ。

…おかしな事を言う。

バトルバンドをつけたままでは、洗い物もできないだろうに。

 

「本当にそれだけ?」

「ええ、いろいろやりづらいじゃない。」

 

しつこく問いを重ねるコトネに、首を傾げながら振り向く。

そこには…何故か鋭い目をした。

バトラーとしての彼女がーーいた。

 

「…わかった。なら、バトルしよっか。」

 

ーーーー

 

「行くわ、《ソード》を多重換装(トリプルコンバート)!」

 

お互いにカードを三枚装填し、バトルフェーズに入った途端。

先輩から聞こえてきたその宣言に、驚きが口をつく。

 

「速攻戦術!?」

「何を驚く事があるのかしら?」

 

至極当然と言った表情の先輩は、確かめるように風切り音を奏でながら剣を振る。

赤袴の裾を揺らしながら、流れる様な動きで舞う彼女は美しく。

慌てて撃ち込んだ《キャノン》の弾丸を切り払いながら。

確実にこちらへと迫ってくる。

 

「…そっか。懐かしいね!」

 

彼女が、店長となってからは見ることの無かった戦術だ。

 

ワクワクして、対する私も追加で換装。

《キャノン》を構えてその弾倉を指で弾く。

カチカチと響き渡る音に気づいた先輩が、こちらを見据え、ニヤリと笑う。

 

「あら、運頼み?」

「運頼み?違うよ!」

 

僅かな音の違い。

ソレを理解して回転を止めた私は、1発の空砲の後、踏み込んだ先輩の正面に弾丸を放つ。

 

「ッ、上手いわね」

「今日はなんでか、良く聞こえるからね!」

 

いくら先輩が優れた剣士だとして、銃弾を放たれてから対処するのは難しい。

ましてや、タイミングにズレがあるとなればなおさらだ。

続けて二度。空砲を放ち、1発の弾丸は正確に、先輩の前に飛び出していく。

 

「なら…!」

「被弾覚悟ってこと!?」

 

そうして迫る一撃に、木刀を後ろ手に隠した先輩が、弾丸を右手で受けながら前進してくる。

 

「そっちの一撃は、私の剣に及ばないもの!」

 

痛む片手を気にも止めず。勢いのまま、左手にて振るわれる一閃。

2枚もの剣が重なる一撃は、例えシールド込みでも止まる事なく、この身に食らいつくだろう。

…だけど!

 

「いくよ、換装(コンバート)!」

 

展開されるのは金の盾。

脆くて、しかし硬いその盾は。

破壊された瞬間にその効果を発揮する。

 

「な、盾が、増えた!?」

 

金の盾が木刀と共に砕け散ると共に。

遅延なく展開される先輩の剣と、私の盾。

思いもよらぬ障害物に、勢いの乗り切っていない木刀は、弾かれる様に宙を舞った。

 

「《朽ちた黄金》の効果により、キャノンを裏側で再換装させてもらったよ。」

「罠エフェクトか!」

 

驚愕する先輩に一つ種明かしをし、盾の解除と共にデッキへ手を伸ばす。

 

コレでお互いに1ターン目は終了。

先輩のデッキは《ヒバナ》や《ケムリ》を多用する。

このターン、三枚もの《ソード》を使用した以上は、

仮に《再装填》されたとして、加わる武器は2本が限界だろう。

 

「「チャージイン・ドロー!」」

 

そう、思考を走らせながらカードを引き、戦略を組み立てる。

 

静かな店内は夕焼けに染まり、黄金に輝いていた。

 

ーーーー

 

「私は《再装填》を発動!」

 

砕け散る手札。

《ソード》《ボム》を見ながら謎の違和感が脳裏に残る。

 

…武器を多重換装した速攻戦術。

昔から…『烈火』のチームメンバーであった時から行ってきた基本戦術だ。

 

間違いなく私の戦い方であり、その証拠に引きは上々。4枚ものアーツカードが加わり、後は、次のターンに『秘剣』を決めればゲームエンドだろう。

 

なのに、物足りない…。

バトルとは、こんなに単純な物だっただろうか。

 

「チャージエンド!換装(コンバート)!《キャノン》」

「ッ換装(コンバート)!《キャノン》」

 

ぼんやりとした思考を切り捨て、慌てて戦いに集中する。

いつの間にか、距離を取っていたコトネへ向けて放った弾丸は。

真っ直ぐにコトネへと飛んでいき。

鏡合わせに放たれた弾丸とぶつかり、火花のエフェクトか舞う。

思えば、コトネとバトルするのも、ずいぶんと久しぶりな気がする。

学生の時以来…いや、待て何でそんな久しぶりに?…

 

「まだ攻めてくる!?らしくないよ!先輩!」

「いつも通りよ!」

 

次の一手は《ソード》

仮に《キャノン》を撃たれても、

コレで道を切り開き、《ボム)の一撃を加える。

そのつもりで足を踏み出す。

 

「そっちは、攻めてこないのね?」

「先輩ほど、手札いっぱいじゃないからね〜」

 

言葉にしながら、こちらを見据える後輩。

確かに、ここで回避に専念すればデッキチャージを終える事ができるだろう。

そうなれば、枚数差のアドバンテージは失われ、こちらは再び攻めあぐねる事になる。

 

「甘く見られたものね!」

 

鋭く速く、剣を振るう。

回避などさせない。正確な一閃が彼女の胴に吸い込まれ…

 

あぐッ…っフゥー…つっかまえた♪」

 

輝く彼女のバトルバンド。

そこから伸びる黄金の鎖が私を絡め取り。

その両手両脚を縫い留める。

 

「く!?また罠エフェクト!?」

 

予想外の連続。

おかしい。彼女はこんなに絡め手が多い子だったか?

しかし、同時にいつか、誰かにやられた覚えもある。

この認識のズレはなんだ?

 

「えへへ!せーんぱい!」

「んな、放しなさい!」

「ダーメ!だって…」

 

突然抱きついてきた彼女に、狼狽え。

…一手が遅れる。

流れる髪からふんわりと、甘い匂いが漂い…

戦いの中で起こした致命的な油断は。

当然の事ながら、致命的な結果をもたらした。

 

「今の、凄い痛かったんだよ?」

 

腹の位置に添えられる銃口。

うなじを越えて視界に入るコトネのエナジースフィアが、青から黄色に切り替わるのを見て冷や汗と共に身を捩る。

 

ズガガン!と凄まじい衝撃。

砕け散る金の鎖と共に転がりながら。

腹を抱えてうずくまる。

 

グ…ァ…フ…ゴホッ…!!ハァ-ハァ-!

 

視界がチカチカする。

やっていいことと、わるいことがあると教えてやりたい。

いくら、ホログラムだからと言ってコレは

…ない。

 

「あー!先輩!?ゴメン!!ちょっと昂っちゃった!」

 

本当に申し訳無さそうに寄せられた眉毛。

対して、隠しきれない口元の笑み。

 

…そうだった、この子は……()()なるんだった…

 





「ようこそ!カードショップ『炎剣』へ!」
「コトネさんだよ!」
「今日はちょっと趣向を変えて、『デスクバトル』について紹介するね!」
「デスクバトルはカードだけで行うカードバトルだよ!」
「と、言っても基本ルールは通常のバトルとおんなじ!」
「違うのは、自分自身を示す『メインアバター』」
「これがライフを持ってるんだけど」
「動けないから、回避とかは出来ないんだよね〜」
「その分、セットしたアーツの殴り合いになるの!」
「簡単な分、迫力に欠けるのは難点かな。」
「最近は先輩。コッチでしか相手してくれてなくってね〜」
「あっと、それじゃ!次回もバトルスタート!」
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