『現実換装!カードバトラーズ!』   作:学び手

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第8話になります。対戦よろしくお願いします。



8話「深淵を覗いて」

 

「それじゃまたね!」

「おう!明日は負けねーからなー!」

 

太陽の傾いた空の下。

俺は、キズナに別れを告げて帰路につく。

 

今日はすごいバトルの連続だった。

この街に来てから出来たライバル…キズナとの闘いはもちろん楽しかったが。

 

その後。カリンさんと海賊男の闘いは、格の違う闘いだった。

霧が深くて見えなかった部分もあったが、そんなのは関係ない。

 

デッキから、引き抜いた《現実加工》を眺める。

 

「『現実換装(リアリティコンバート)』かぁ…」

 

数年前。

カード研究所ごと、突如姿を消した親父が残した。幼い俺への入学祝い。

「夢追人なあの人らしいわ。」と寂しそうに笑う母さんの事は全然理解できなかったけど。

今日、初めてその夢のカケラを見ることができた。

 

「店長はあの調子だし、海賊のおっさんは気づいたらいなくなってたけど…親父は、きっと…このカードの先にいる。」

 

記憶にはわずかに残るだけの親父の面影。

いつも、カードに対しては真剣に向きあい。

時折、時間を見つけては俺にカードバトルを教えてくれた。

そんな親父だからこそ。このカードを巡る戦いの先に…きっといる。

 

「待ってろよ、俺がアンタをとっ捕まえてやる」

 

そう、心に決め。デッキにカードを戻したところで、弾かれる様に一枚のカードが飛び出してくる。

 

「おっと…ん?《ヒトダマ》!?」

 

見覚えのない、聞き覚えはあるカードに。

俺は驚きの声をあげるのだった。

 

ーーーー

 

「ただいま〜」

 

誰もいない家の中に、僕のこえが消えていく。 

 

…そっか、師匠。まだ帰ってきてないんだ…

 

いつもなら聞こえる「おかえり」がなく。

トボトボと家の中に足を踏み入れる。

 

「ごはん…これでいっかぁ」

 

冷蔵庫をチラリと覗き込み。

冷凍のオムライスとからあげをレンジに入れ。少し待つ。

その間にレタスや、ミニトマト。カット野菜をお皿に入れ。ドレッシングをかければ…OK。まあまあバランスよくなったと思う。

 

「いただきます」

 

食卓に1人分の食器の音が響く。

寂しさを紛らわす様にざっと食べ終え、何となく師匠のバトルバンドに視線を向けて…?

 

「うわっ!?煙!なんで!?」

 

モクモクと広がり始めた煙に、慌ててバトルバンドを持ち上げる。

 

…机は。焦げてない!ヨシ!

でも、何で…?

 

よくよく見てみると煙が上がっているのは、デッキ部分。

 

「カードが燃えてるの!?」

 

慌ててデッキ引き抜いてみた僕を、溢れ出た煙が覆い。急に眠気がやってくる。

 

「よかった…燃えてない…」

 

そんな言葉を最後に、僕は机に突っ伏すのだった。

 

ーーーー

 

「うーん…ここは…?」

 

パチリと目が覚める。

冷たい土の床を手で押して、ゆっくり起き上がった僕は辺りを見回す。

 

黒いモヤが立ち込める不気味な岩の洞窟。

間違っても家の中ではないこの場所に、思わず頬を引っ張った僕は、痛みを感じなかった事に安堵する。

 

…よかった。夢だ…

 

夢だとわかれば、問題ない。

胸の中へ生まれていた恐怖は、いつの間にか小さくなり。

それより、ここをもっと知りたいと言う冒険心が湧いてきた。

 

「武器は…あの枝とかいいね。」

 

そう決めて、歩き出す。

へこんだ地面に気をつけながら、ようやっとたどり着いた僕は棒を持ち上げる。

 

「ん?コレって…」

 

持ち上がったのはただの棒ではなく。松明。可燃性の塊が先端についた棒は、鈍器として使うには、少しもったいなく思えた。

 

「まぁ、せっかくだし。」

 

そのまま松明を手にした僕は、そのまま探索を開始した。

 

変わり映えのしない岩肌を歩く事数分。

徐々にモヤも濃くなり、崩れた柱らしき物が見えてきたところで。足が止まる。

 

「流石に、危ないよね…」

 

そう呟き、振り返る。

 

……そういえば、この夢。いつ終わるんだろ?

 

また、心の中で湧き上がる不安。

このまま戻ったとしても、目が覚める保証はなく。何かしないといけないんじゃないか。と思い始める。

 

「やっぱり、行こう。」

 

そうして、足を踏み出そうとした僕の、目の前を横切る小さな光。

暗闇の中であっても温かく、優しい蛍火がふわふわと浮かび。

まるで、ついてこい。と言っているみたいだった。

 

「案内してくれるの?」

 

僕の言葉に再び進み始める蛍火。

何処か無愛想だけど、隠しきれない人の良さを感じ、何となく。カリン店長が思い浮かべて、その後ろを慎重に歩く。

 

闇の中には様々な物があった。

壊れた人形。破れた海賊旗。鈍く輝く鉱石に、毒々しい色の水溜り。

それらに視界を向ける暇もなく、たどり着いたのは大きな篝火。

蒼く燃えるそれの根本にふらふらと飛んでいった螢火を追いかけて。気づく。

 

「きつね?怪我…してるのかな…」

 

耳と尻尾に小さな火を灯す、赤い小狐。

それが、うずくまる様にしながら、こちらを覗いていた。

 

「大丈夫?」

「クォン!」

 

気にするなと言わんばかりに頷く小狐。

どうやらここは、彼女にとっては外敵もいない安全地帯であるらしい。

 

じゃあ、なんで僕を呼んだのか…

首を傾げる僕に、小狐が小さくため息をすると、再び螢火が現れ、松明から篝火へ向けて飛んでいく。

 

「火を灯せって事?」

「クォン!」

 

返事は肯定。小狐はそのまま眠りにつき、パチパチと篝火が燃える音だけが響き渡る。

 

「よ、よーし。」

 

右手の松明をゆっくりと篝火に近づける。

先端が火に触れ。

ぼうっと一気に松明へ火が灯る。

 

「わー!ついた!」

 

緑色に灯る炎。

篝火とは違い、ゆらゆらと燃えるソレは少しずつ煙を吐き出し…。

パァンと弾け。花火の煌めきの後に、煙を纏った不思議な球体が浮かんでいた。

 

「わぁ!?な、何?」

 

球体がゆっくりと瞳を開く。

イタズラっぽく笑ったその子は、もう一度パァンと弾けると、もう一つ。同じ仲間を呼び出した。

 

「も、もう!びっくりするって!」

 

怒る僕に、首を傾げる球体たち。

もう一度。今度は小さくパチンと弾けた彼らを見ると、何だか可愛く思えてきて、苦笑いと共に彼らに近づく。

 

「しょうがないなぁ…」

 

ふわふわとした触感が手に伝わり。嬉しそうな彼らにこちらも嬉しくなる。

そうして、キラキラと手元が輝き。

一枚のカードを手にした僕は、そのまま現実へ戻るのだった。

 

ーーーー

 

「う、うーん…」

「キズナくん!大丈夫ですか!?」

 

寝心地の悪さに目を覚ました僕の瞳に、眼鏡をかけた可愛い女の子の顔が目に入る。

 

…あれ?サクラちゃん?また、遊びに来たのかな?

 

「ふぁ、おはよーサクラちゃん」

 

グッと背伸びをして目を覚ます。

今が何時かわからないけど、せっかく来てくれたならお菓子でも出さないと。

 

「ダメですよ!しっかりお布団で寝ないと!」

「わ、わかったよ。でも、サクラちゃんは何でここに?」

 

記憶が確かなら、さっきまで夕方で、いくらお隣さんとはいえ。出歩くには危なすぎるような…。

 

「なんで?って…もう登校時間です!また遅刻しちゃいますよ!!」

 

その言葉にハッとなり、時計に振り向く針はもうすぐ8時を示そうとしていた。

 

「えぇ!?なんでそんなことに!?」

「いいから!カードは入れておきました。行きましょう!」

 

慌てて立ち上がった僕に、手渡されるランドセル。既に準備は万端らしく。教科書の重みのするソレを、なんとか背負ってバタバタと玄関に急ぐ。

 

「いってきまーす!」

 

青い空に流れる雲の様に。

止まることなく僕たちは学校に向かうのだった。




「ようこそ、カードショップ『炎剣』へ」
「今回は…え?『シャール』について聞きたい?」
「…仕方ないわね。と言っても、語れることは多くないわよ」
「『シャール』は『サモン』可能な『ユニットカード』の一種よ」
「本来の持ち主は、神久のリーダー『    』」
「今回は私に合わせて『神久の焔ソルシャール』として幻界してくれたわ」
「本来なら私は…。…。」

「…?あら、何だったかしら。」
「まぁ、何にせよ。次回もバトルスタート!」
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