今回は、主人公サイドではないので間話になります。
対戦よろしくお願いします。
※ゴールデンウィーク中は投稿頑張ります!
「全く…テルミも余計なことをしてくれる…」
白地に金のラインが入ったスーツを身につけた壮年の男が。
空中に浮かべたディスプレイから視線を切り、エンターキーを叩く。
彼の名は『ガウツ・C・マーデルング』
古くより続くマーデルング家の現当主であり、バトルカード市場に早々に目を付け。代々続く『マーデル社』をより強大な『ガウツ・コア社』へと躍進させた傑物である。
「少し休む。軽食を用意してくれ。」
「はっ!すぐにご用意いたします。」
そんな彼は、扉の側に控える秘書にそう告げると立ち上がった。
白髪混じりの歳を感じさせる頭髪をガシガシかきながら、タバコに火をつけ白い煙をただ楽しむ。独特の香りと清涼感が心地良さを運び…
ふぅ。と一息ついた彼は寄せた眉をもみほぐし。
手元の端末に文字を打ち込み始める。
「休むって言ったからには、休んだほうがいいぜ?オッサン。」
「…貴様。何処から入った。」
そんな至福のひと時を邪魔したのは一人の男。
雲を描いた深染の和服に、飾り気のない能面。漆黒の剣が鞘に納められ、時代錯誤な草鞋が乾いた音を鳴らしている。
「何処って、入り口からだな?」
カチャリと、鍔を弾いて音を鳴らした男が指したのは先程秘書が出て行った扉。
銀細工を施してある丈夫なそれが、真ん中から滑り落ち。ついに音を立てて床を傷つけた。
「ふざけたネズミだ。高く付くぞ」
「構いやしねぇさ、今日からここ。俺ん家だから。」
ーーーー
バトルも終盤。
エナジースフィアが赤く染まるコチラに対して、相手のスフィアは黄色。
しかも、その全てが、ライフコストによる自傷に過ぎない。
並のバトラーなら、ここから巻き返すのは不可能だろう。
だが…この私は違う。
「私は《コイン》に《電子の翼》を『
デジタルバンドを普及させ、集めたバトルエナジーにより、ようやく作り上げた新たなる『加工』カード。
コレにより、現実と電子の世界を繋げ…。
奴を呼び出す!
「ここに描くは我が世界。
コインが空中で金の光となり四散する。
それを包み込むのは、0と1からなる不安定なノイズの翼。
あくまで不安定な情報の塊でしかないそれは、一度大きく発光すると、光を中心に赤と青二つの天輪を顕現させ。
安定した金の光球に、一対の瞳が描かれる。
「《電子の双翼コア》!」
「『サモン』ユニットか…」
呼び出された電子の存在に、対面の男が警戒の色を濃くするのが見える。
当然の様に数週間前までは存在しなかったはずの『サモン』と言う概念を語る襲撃者に、やはり、コレが狙いかとあたりをつける。
「確かに貴様は強い剣士だ。その証拠に私のライフはレッドゾーン。」
コイツの狙いが、情報収集か、あるいはカードそのものかは分からない。
だがしかし、その獲物としてこの私を選んだのが運の尽きだ。
「しかし…!『コア』のエフェクト発動!」
宣言と共に、『コア』の翼から情報の渦が、私の方に流れ込んでくる。
赤、白、青、金…数えるのも億劫になる多彩な色彩が私自身に重なり、己の存在を情報の塊へと近づける。
「私は、20点のシールドを換装し、以降。コアの攻撃時にそれを復元する!」
それは、擬似的なライフポイント。
自らに重なる無数の情報が無限の残機となり、バトルカードと言うゲームの理を超えて、新たな世界を生み出した象徴。
世界は無数の情報に変わり、全ては情報によって支配されている!
「コレで貴様の攻撃は通らない!」
不確定で、しかし安定した電子の翼は、何より強い存在感でもって。この私を照らしていた。
「ハッ呆れてものも言えねぇな。それでアイツを再現したつもりか?」
対する男は、その輝かんばかりの存在を気にも留めず。
デッキから、カードを引く。
そのふてぶてしい態度に頭に血が上り、片手に持つステッキを地に打ち付け、辺りのホログラムをさらに書き換える。
「再現だと?ふざけるな、コレは私の世界だ!」
光脈が走る鋼の神殿。
姿を変えたここは、いつか生み出す現実であり。一から作り上げてきた努力の証。
私の人生そのものだ。
それをよりにもよって、再現。紛い物だと!?
「そうかよ。なら、一つ教えてやるぜ。」
男が、言葉と共に剣を振るう。
所詮は量産品に過ぎず、強度値もないそれが、『コア』の放つ光弾を弾き、逸らし。
男の前面に空間を作る。
「無限の盾程度なら地を這う獣すら止められないってな!」
地を滑るような前傾姿勢。弾かれた様に前進した男は。
飛び交う光弾の中、片腕を中身がない鞘に添えたまま。針を縫う様な正確さで駆け抜けてくる。
「『コア』!やれ!」
故に選択するのは、範囲攻撃。
空中に浮かぶ光を、全てコアの前に集約し。
虹の光彩が、あたりを照らし。見えなくなる。
…そして…
「換装《次元斬》」
放たれた極光を、一筋の線が両断した。
地を裂き、空を目指す様な斬撃は天使の片翼を切り捨て。宙に生まれた裂け目へと飲み込んでいく。
「バ、馬鹿な…」
視界を包むノイズ越しに『コア』を眺める。
少しずつ、存在ごと宙に溶けていく彼が。一矢報いんと、エネルギーの奔流である翼を男へと放つ。
対する男は無手…いや、違う。
ゾクリと言う悪寒が背筋を走り。
言葉より先に理解する。
アレをやらせれば全て終わる。
「っォオオオ!!」
カツン。と杖が地を打つ音。
ホログラムが歪み、世界があるべき場所。
すなわち狭い部屋の中に戻る。
そうして、振るわれた、霧纏う
ーーーー
「私です。…ええ、そうですか。さすがはリーダー」
霧に囲まれた静かな図書館に、男の声が響き渡る。
カード型の端末に言葉を落とす彼の前には、幾重かの円が描かれた魔法陣。
未だ輝きの無いそれを指でなぞった影の男は、手帳を開いてペンを走らせる。
「はい。…ほう、それは素晴らしい」
喜色の滲む声。
手帳には新たな名前が記入され、淡く輝いた魔法陣の上に、新たなカードが現れる。
「では、手筈通りに参りましょう」
『電子加工』
現実を書き換える力を持った新たなカードに。期待の眼差しを向けた男は、そのまま夜空へと視線を向けて、呟いた。
「ええ、深淵に祝福を。」
「ようこそ、カードショップ『炎剣』へ」
「なんか、久しぶりだな」
「今日は、俺が次元斬について改めて紹介しよう」
「次元斬は、ライフを半分支払い換装できる最強のアーツだ。」
「その効果は、盾となっているカードの全破壊」
「今回は盾となっていた『コア』トークンを全て破壊したわけだな」
「コレが仮に罠エフェクトを持っていても関係ない。」
「迎え撃ち、一撃でも接触したのが運の尽きってな」
「それじゃあ、次回も。バトルスタート!」