『現実換装!カードバトラーズ!』   作:学び手

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本日分、第10話後編になります。
対戦よろしくお願いします。


10話「求められしカード達!」後編

 

教室の黒板前でバトルバンドに手を添えながら考える。

今回は室内。限られたスペースである以上。

発動できる《ハナビラ》の量も制限され、距離も取りづらくなっています。

正直なところ、運動が苦手な私が強く戦うには遠距離から物量で押し切るのが望ましかったのですが…

 

それを見越してこの場でのバトルを仕掛けて来たのでしょう。

つまり、実力は落ちていない。

となれば彼女が未勝利に収まる理由など明白。

実力者に挑み続けたが故の未勝利…それに違いありません。

 

「私は二枚装填します。」

 

その上で手札を確認し、二枚装填。出方を伺う。

キズナくんとの戦いとは違い、手札が悪い。

少しへきえきとした気持ちを抑える為。目を瞑り考える。

あったのは《ブロッサムボンバー》に、《フルールカッター》。

そして、《虚栄加工(ホロウコーティング)》。

それぞれ、数値変動型の罠と攻撃アーツである以上。

《虚栄加工》は残すのが得策、これ以上の手は存在しないはずです。

 

「えっと。ごめんなさい。行きますね?」

 

そんな私の気を知ってか、知らずか。

おずおずとカードを引き抜いた彼女は、一枚を装填。そのまま換装する。

すると、私の目の前にひし形の鏡が浮かび上がる。

 

「私は《真実を写す鏡》を発動…サクラさんは二枚カードを引いて公開してください。」

 

相手に二枚も引かせるエフェクトカード?

間違いなく、なんらかのコンボカードでしょう。

ですが、これで助かります。

まだスタンバイフェーズである以上、追加装填は可能。

…ここでアーツカードを引ければ!

静かにカードを引き抜き、確認。鏡に向けて提示する。

 

「…《花吹雪》と、《タネマシンガン》です。」

「あっ…コンボカード…。じゃあごめんなさい。《タネマシンガン》は私の手札に加わります。」

 

彼女の宣言と共に、鏡の中へ消えていく《タネマシンガン》。

私は苦虫を噛み潰したような気持ちのままそれを見送りつつも、《花吹雪》を盾として装填する。

《花吹雪》と《ブロッサムボンバー》は強力なカードである分、コストが共通でデッキの《ハナビラ》を必要とします。

効果はそれぞれ。フィールドへの《ハナビラ》展開と、《ハナビラ》消費の高火力罠。

つまり仮に、ここで《花吹雪》を発動してデッキを削った場合。罠の火力が無くなる事を意味している。

であれば、私はこのカードを使うわけにはいきません。

 

「カードのピーピング!?…すごいなぁ。

 

遠くでキズナ君が、関心したような声を上げている…それも当然でしょう。

コントロールと呼ばれるデッキタイプにおいて多用されるあの戦術は、お世辞にもあまり強くありません。

自分では無く相手の手札に対して、干渉できる。と聞けば聞こえはいいですが。

この戦術は、とにかく隙が大きい。

盾にも、武器にもなる筈だったカードの代わりにそれらを入れるとなれば、バトルフェーズでのダメージは必須。

デスクバトルならともかく、通常のバトルでその戦術を取っている方はほとんどいないでしょう。

 

「わっと、と。それじゃ…《思い出の空写真》も発動します。」

 

しかし、それは。通常のバトラーが相手の話。

私の様なコンボデッキの使い手に対しては、話が違ってくる。

 

「効果で…《ハナビラ》を宣言させてください!」

 

コンボパーツに対する宣言。

ありがちなのは、発動制限か。あるいは追加のピーピングか。

どちらにせよ。今回の手札には関係しないはず…

 

「この効果によってお互いは、デッキから可能な限りそのカードを除外します!」

 

その言葉により、デッキから吹き上がる《ハナビラ》達。その全てが、上空に現れた巨大な鏡に飲み込まれ。見てわかるほどデッキが薄くなる。

 

「な!?」

「だ、大丈夫です。次のターンには手札に加わりますので!」

 

……そう言う問題ではありません!

そう叫べばいくらか気も楽になるのでしょうか…

 

しかし、コレはバトル。劣勢を悟らせるのは悪手。

いくら、このターンが無意味なものになろうと、冷静にあるべきです。

 

表情を取り繕い、ミナミさんへ視線を向けて続きを促す。

彼女は一度深く息を吸うと覚悟を決めた様にカードを掴みとる。

 

「そして、スーッ。行きます!」

 

こちらと反比例する様に、調子を上げていく対戦相手。

一枚のカードを掲げた彼女は、高らかに宣言した。

 

「除外されている《ハナビラ》に墓地の《真実を写す鏡》を『反転加工(リバースコーティング)』!」

 

言葉に反応したのか、彼女を囲う様に現れる4つの鏡。

そこから、中心のカードに向けて無数の《ハナビラ》が放たれると、それぞれが合わさり花弁を作り上げる。

まるで巨大な梅の花。

くるくると回りながら、天高くへと上がっていくソレは。

天上に広がる巨大な鏡を目指して舞い上がり…

 

「空に映る一瞬の花。ここに真実を照らし出さん!」

 

巨大な鏡に飲み込まれると、入れ替わる様にガラス質な球体が現れる。

 

…それは種殻。新たな芽吹きを示す象徴…

 

ゆっくりと下降を始めたソレは、空中に現れた無数の鏡に反射光を集められ白熱し。そのまま空中で、芽吹きの瞬間を待ちわびる。

 

「『反転換装(リバースコンバート)』お願いします《花の鏡影(ミラーシャドウ)プラム》!」

 

そうして彼女が呼びかければ、ヒビが広がると共に弾け飛ぶ種殻。

ガラス質は宙へと消え、真っ白な光の中から、桜色の影が舞い降りる。

ソレは小さな雛鳥。

花弁で翼を構成したソレは、楽しそうに空を舞うと、自らの主人であるミナミさんの肩へと舞い降りた。

 

「『加工』で呼び出す生きたカード!!?」

「プラムは、『サモンユニット』。破壊されるまで場に残り、バトルを支援してくれる特殊なカードです!」

 

誇らしげに肩に乗せた雛鳥を指で撫でるミナミさん。

その指を突かれ、「あぅ…すみません」と言葉を漏らした彼女は再びこちらへ向き直り、そのカードの効果を説明してくれる。

 

「そしてその効果は…デッキの《ウツシミ》を《タネ》か《ハナビラ》に変換する効果!」

「って、ことは…まずいよサクラちゃん!」

 

その説明に、真っ先に反応したのはキズナくん。

それと同時に私も駆け出し。未だ残っていた教卓の裏に滑り込む。

 

「ワタシは《タネマシンガン》を換装します!」

 

そして、数秒後。

雨あられの様に吹き付ける大量の種子弾丸。

障害物で時間を稼ぎ、換装切れを待つ私のもとに。

ぶつかり続ける轟音が響き続け…数十秒後。ようやく静寂が訪れる。

 

その静寂に安堵して顔を出せば、歩いて近づいてくるミナミさん。

彼女と目と目が合い…そして、気づく。

 

「ごめんなさい!『プラム』の加護によって…」

 

その彼女の手には未だ換装されたままなガトリング銃。

慌てて転がるように抜け出せば、教卓に大量の種子弾丸が穴を開ける。

 

「このターン《タネマシンガン》は換装切れしないんです。」

「くっ!!換装!!」

 

盾を打つ大量の弾丸。

ピンク色の盾は数秒の時間を稼ぎ…

爆発する事もなく砕け散ってしまった。

 

ーーーー

 

「やっぱスゲェよミナミは…」

 

隣で腕を組みながら感嘆をあげるゴウジくん。

それとは対照的に、心配の表情を浮かべた僕は、万が一に備えて目が離せなくなっていた。

 

…教卓を破壊する火力…

アレは多分ホログラムなんかに収まっていない!!

 

「ゴウジくん…この戦い止めちゃダメかな」

「ん?馬鹿なこと言うなよ。いいバトルじゃねぇか」

 

思わず口をついた言葉に、否定を被せるゴウジくん。まぁ、当たり前だ。

コレが、エリアバトルに則った公式戦である以上。

試合中断は両者敗北となり、チーム権が遠退いてしまう。

 

それでも、危険なものは危険だ。

今も、なんとか盾で凌いでるサクラちゃんだけど。換装されているのは、上限ギリギリの《ハナビラ》五枚分。

先程のターン開始時に加わった大量の《ハナビラ》のせいで攻勢には出れず。力の源とも言える《ハナビラ》自体を浪費させられている状況は、勝敗が決した様にも見える。

それなら、危険を冒してまで戦いを続ける理由は無い。

 

「サクラちゃん!もう…

「いいえ!ここからです!」

…え?」

 

宙を舞う《ハナビラ》で弾丸の勢いを削りながら回避に専念するサクラちゃんから聞こえてきた叫びに目を見張る。

だってそうだろう。彼女の手札は、《ハナビラ》4枚に《虚栄加工》。

枚数的に、ドローできるのは1枚のみで、仮にあの『プラム』が強度値が低いユニットだとしても、あの弾丸の嵐を抜けて破壊するのは現実的じゃない。

それこそ盾となってくれる仲間でもいないと……まさか!?

 

「チャージイン!私は、《ハナビラ》に《ハナビラ》二枚を『虚栄加工(ホロウコーティング)』!」

 

彼女の宣言と共に吹き荒れる《ハナビラ》のホログラム。

触れられる程度の強度値すらない幻影が。

教室内を埋め尽くし、僕らの視界を遮り始める。

 

「虚を染めるは花彩り。安らぎの日々を描くため!」

 

そうしてふき始める強い風。

開けた視界の先に立つサクラちゃんは、その背後に現れた桜の木に手を置きながら宣言する。

 

「『虚栄換装(ホロウコンバート)』私に力を!《虚の華ソメイヨシノ》」

 

瞬間。サクラちゃんの衣装が、桜の着物へと変わる。

その周りを半透明な球体が旋回し、飛来する種子弾丸を正確に飲み込むと。共に消滅し、辺りに『花』を作り出す。

 

「さ、『サモンユニット』!?なんでみんな出せるんですか!もう!!」

 

泣き言を漏らしながら、《タネマシンガン》を放つミナミちゃん。

その弾丸は正確にサクラちゃんを狙うけれど、ことごとくが宙に消え…

ついにその時がやってくる。

 

カチッと、軽い音が響き、止まる弾丸。

慌てて彼女が墓地を確かめれば。数えるのも億劫なカードの山。

そう、端的に言えば…

 

「た、弾切れ〜!?」

 

狼狽えるミナミさんに、そそくさと鏡の中へ帰り始める雛鳥。そんな彼女の周囲に桜の(ハナビラ》が浮かび始め、指揮棒を手にした少女が笑顔で歩み寄る。

 

「対戦ありがとうございました♪」

「はぃ…」

 

無数の花が少女に殺到し、試合終了の合図が鳴り響いた。

 




「あ、こんにちは…カードショップ『炎剣』へようこそ。」
「今日は、ワタシが『反転加工』について…」
「あぅ…ごめんなさい!『虚栄加工』のが知りたいですよね…ヘヘ…」
「『虚栄加工』は手札のカードの強度値を倍にするカードです。」
「当然。1ターン持続も付与されていますが…」
「きっと、そっちより『サモン』について知りたい感じですよね?」
「さすがに持ってないのでわからないですけど…」
「たぶん。場のカードと同名のカードを手札から使用して『サモン』してます。」
「ひぇ、適当でごめんなさい!!」
「それじゃ、次回もバトルスタート!」
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