『現実換装!カードバトラーズ!』   作:学び手

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お待たせしました。第11話になります。対戦よろしくお願いします。

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11話「霧に潜む者」前編

 

「そういやよぉ、キズナ」

 

まだまだ日の高い、学校からの帰り道。

 

教室で行われた、ミナミちゃんとサクラちゃんのバトル。

新たなユニットカードの創造と言う信じられない出来事に、ワクワクを隠しきれず、浮ついた気持ちでサクラちゃんに話しかけていると。

一緒に歩いていたゴウジくんが話しかけてくる。

 

「俺はカリンさんに負けちまったんだけど。お前はまだ連勝記録残ってんのか?」

 

…連勝記録。

今回の予選において重要視されている要素だ。

今大会では、3連勝するとチームの仮作成ができる様になる。

最も、そこから維持できるかは、自分次第だけど…

僕の場合は、積極的にはバトルをしてないので、実は2戦2勝。リーチのかかった状態にある。

 

「あー、うん。昨日ゲンジさんとやって二勝目かな。」

「そうか…なら、次はランダムマッチだな。」

 

ゴウジくんの言葉に首を傾げる。

ここまでは、参加者同士が公式戦としてバトルを開始すれば、それで良かったはずだけど…

 

「ランダム?選べないの?」

「あぁ、バトルバンドに通知が来て、対戦相手がわかるぜ?見てみたらどうだ?」

「うん。」

 

その言葉に、バトルバンドのホログラムを展開し、通知を確認する。

数秒のローディングの後、若干のノイズ。

首を傾げて少し高く上げると画面が切り替わり、『コア社』のロゴがついたデジタルメールが、表示される。

 

ーーそこには2連勝についてのお祝いの言葉と、大きな文字で対戦相手の名前が表示されていた。

 

「対戦相手は…ミストさん?誰だろう?」

「んー?なんか聞いたことあんだけど…誰だっけな」

 

画面を覗き込むゴウジくんと首を傾げる。

このタイミングで対戦相手に選ばれた以上。

この辺りのバトラーには違いないけど…

 

「深淵のメンバーですよ。二人とも。」

 

そんな僕らとは反対に、確信を持って告げるサクラちゃんの方を見る。

彼女は、使い古したノートを閉じると興味深そうに僕の画面を覗き込んでくる。

 

「へーさすがサクラちゃん。詳しいね!」

「この町屈指のバトラーの事ですから。でも…意外です。」

「ん?なんでだ?強いなら二勝くらいしてるだろ?」

 

首を傾げるゴウジくん。

彼の言う通り。漆黒のメンバーならランダムマッチまで勝ち進んでいてもおかしくはない。

 

「いえ、それが…。彼は公式戦には現れないバトラーなんです。裏方に徹して情報を集めるのが常で、前エリアバトルでも、二戦ほどしか出てこなかったとか…」

 

パラパラとノートを捲るサクラちゃんに思わず目を見合わせた僕達はそのまま宙に浮かぶ対戦相手の名前に視線を直し、そして気づく。

 

「じゃあ、なんで対戦相手に……。あっ」

「そうか、ランダムマッチ…。て事はあっちも本意じゃねぇのかもな。」

 

ランダムマッチ。

つまりは、運営側の人選だ。

もしかしてだけど、連勝記録以外にも判断材料があって、ミストさんはそれで指定されたのかもしれない。

 

「ぇえー!?じゃあ、向こうから戦いに来てはくれないかもしれないって事!?」

「まぁ、安心しろよ。ランダムマッチは一日更新。明日には相手も見つかるさ」

 

ガックシと肩を落とす僕に、気楽そうに頭の上で腕を組むゴウジくん。

慌てて彼に駆け寄ろうとして…

 

"その心配はありません。"

 

ーー声が聞こえ。急な立ちくらみを覚えた僕は。霧の中に一歩踏み込んだ。

 

「…ん?なんだ、急に霧が…」

「あれ?ゴウジさん!キズナくんは!?」

「んな、消えた!?おい何処だキズナ!」

 

ーーーー

 

「こ、ここは…」

 

一瞬の目眩に似た違和感を抜けた先。

辺りを囲う霧に目を凝らしキョロキョロとしていると、背後から落ち着いた男性の声が聞こえる。

 

「『霧の森(ミストフォレスト)』。私のホームへようこそ。」

「貴方は…?」

 

鬱蒼とした森の中。

振り返った僕の目の前に立つスーツ姿の男。

霧を纏い、目元の仮面が浮かぶように存在感を放っている。

 

そんな彼はバトルバンドをコチラに見せながら告げた。

 

「私はミスト…チーム『深淵(しんえん)』の参謀にして、君の対戦相手です。」

「よ、よろしくお願いします。」

 

片足を下げた優雅なお辞儀に、慌ててお辞儀を返す。

 

「あ、あの…僕はどうしてここに?」

「私がお呼びしたのです。」

 

困惑する僕に、変わらず丁寧に返してくれるミストさん。

その穏やかさから、少しずつ不安が安らぎ、改めて向き直る。

 

「それは…バトルの為に?」

 

サクラちゃんの話では、彼はほとんど表に出てこないバトラー。

その彼が出てきた以上。何か別の理由があるはず。

 

「ええ…ですが、一つ条件があります。」

「それは…?」

「簡単ですよ。君の持つ『加工』カードをかけてほしいのです。」

 

……『加工』カード?

僕は《現実加工(リアリティコーティング)》なんて…いや、違う。

 

「僕の…《幻想加工(イマジナリーコーティング)》を?」

「ええ、私はコレクターでもありましてね…」

 

一枚だけあった。

いつの間にか僕のデッキへ入っていたカード。《幻想加工》だ。

でも、どうしてこのカードを?

 

「不服ですか、では。コチラはコレを賭けましょう」

「それは!…《次元斬(リアリティスラッシュ)》!?」

 

《次元斬》とあるバトラー…師匠が愛用する激レアカード。

そのクセの強さから、ほとんどコレクター用のカードになっているソレを持っているなんて…

 

「ええ、正真正銘《次元斬》です。どうですか?」

「わかりました…やります!」

「ふ、いい返事ですね。では…」

 

思わず前のめりになりながら了承する。

実は、師匠のデッキからあのカードは見つけられなかったのだ。

もちろん。まだ早いだろうからと諦めはついていたけれども。手に入ると言うなら話が別だ。是非とも手に入れたい。

 

「「バトルスタート!」」

 

ーーーー

 

全てを包み込む濃霧の中、男は三枚のカードを装填し宣言する。

 

「それでは参りましょう。私は《ケムリ》に《霧の短剣》を《現実加工(リアリティコーティング)》」

 

その言葉と共に空中に浮かぶ短剣。

薄い青銅の、どちらかといえば儀礼剣と言ったほうが正しいようなソレが宙を斬り。

開いた空間に勢いよく集まった霧が、不恰好な人型を作り出す。

 

「濃霧に誘う第一の(ともがら)。《現実換装(リアリティコンバート)》現れよ《霧の尖兵ヘイズ》」

 

静かに剣を掲げた霧は男を守る様に、僕の前に立ち塞がった。

 

「さ、『サモンユニット』…」

「ええ。ではお先にチャージエンドです。」

 

そう宣言すると、こちらの準備を待ってくれるミストさん。

慌ててドローをすれば、手札に加わる《ソード》2本に、《キャノン》。

打点としては頼りないけど、相手の戦術がわからない以上。手に馴染んだこのカード達が来てくれるのはありがたい。

 

「僕はカードを三枚換装してチャージエンド、バトルです!」

 

宣言と共にまずは、『ヘイズ』と呼ばれたユニットへ斬りかかる。

 

「換装!《ソード》…はァアア!」

 

一歩、重心を前にずらし、そのまま引き抜く。

全力は必要ない。様子見を兼ねて丁寧に、剣の軌道にどう対応してくるのか見極める。

そんなこちらの考えに反して、ゆっくりと防御の姿勢を取る霧。

隙だらけな動きに、軌道を変え肩口を斬り上げる様にすれば、四散する片腕。

あまりの手ごたえの無さに飛び退いた僕の元に、ミストさんの声が聞こえてくる。

 

「無駄ですよ。『ヘイズ』は『加工』されていない攻撃で破壊されません。」

 

そうして再び集まりだす霧。

斬ったはずの腕は元通りとなり、青銅の切先がふらふらと、僕に狙いを定めている。

厄介だ、でも速度はそうでも無い。

この分なら無視しても問題ないはず…

 

「な、なら!」

「来ますか?相手になりましょう」

 

身体を45度旋回して、駆け出す。

視線の先には片足を後ろへ下げ。片手を前に出す構えを取ったスーツの男。

その構えの隙のなさに、一瞬迷いが生まれるが、相手は無手。

ダメージは無いと、迷いを捨て僕が上段から打ち込むと。

流れるように伸ばされた腕が、想定以上の勢いを持ってコチラの手首を裏拳で弾き半歩横へ。隙だらけの懐に拳を叩き込まれた。

 

うぐッ!?

「まずは一撃…とはいえ、ダメージはありませんがね?」

 

お腹に走る鈍い痛み。

思わず歯を食いしばり、意識が逸れた手元から剣が滑り落ちる。

 

…。上手い…

大人だから。

リーチが長いからと言うだけじゃない。

隙を突くために最適化された動き。

剣に対して恐れなく踏み出せる覚悟。

その迷いのなさが、彼は師匠に匹敵する戦士である事を告げていた。

 

「…換装《キャノン》!」

「おや、いいですね。私好みの戦い方だ」

 

ならばと、霧の中に身を隠し。

中距離からの射撃を狙う。

 

このフィールドは、『霧の森』の名の通り、木々が多い。

大人ならともかく、小柄な僕であれば。

低木に身を隠すこともでき、霧の視界の悪さは中距離戦に有利に働く。

 

一見隙だらけにネクタイを直すミストさん。

そこへ向け、可能な限り音を消し、死角から放った光弾は宙を駆け…

 

ーー射線上に現れた『ヘイズ』に命中し、その身体を四散させた。

 

「瞬間移動!?」

「この子は霧ですから、何処にでも現れますよ?」

 

驚く僕の声に改めて、視線をコチラに向け。

四散した事で宙を舞う《霧の短剣》を逆手にキャッチするミストさん。

彼の隣には、再び不安定な人型が並び立ち。まるで隙が見受けられない。

 

「…なら!」

 

残る一発を放ち、ソレを追う様に駆け抜ける。

ただでさえ技量で負ける以上。僕にできるのは、あちらのペースに呑まれないこと。

つまり、攻め続ける事だけだ!

 

再び行う居合の構え。

逸らしやすい上段斬りでは無く、横凪の一撃。

であれば、相手が選ぶのは後退か…?

いや、違う。相手は格上の戦士。

僕との身長差、重さを考慮すれば、受けてくる。

その上で斬り返してくるだろう。

 

…だからこそ!

 

「換装!」

「ッ!?『シールド』!?ガ、ッ!?」

 

居合の勢いで振るわれる小さな壁。

想定以上の衝撃がお互いの腕に伝わり、弾かれる様に腕ごと衝撃を逃したミストさんに、頭突きを決める。

 

「チャージイン!換装!」

 

一瞬の隙。ソレを逃さないように、デッキから弾き出されたカードを確認せずにそのまま装填する。

賭けでしかない、ソレでも。この一撃は止めたくない!

 

そうして換装されたのは《キャノン》。

ゼロ距離で放たれた二発の光弾が衝撃となり、ミストさんが吹き飛ばされるように吹き飛び、距離を稼がれる。

 

…さすがに、連続では受けてくれないか…

 

「…さ、さすがは次元流剣術の使い手…型破りな事をする…」

「そんな。僕なんてまだまだですよ」

 

ミストさんの賞賛に、装填されているカードを確かめながら言葉を返す。

 

…実際、このくらいなら。間違いなくゴウジくんはやってくる。

むしろ、やられた事があるから出た一手と言ってもいい。

僕はソレを真似しただけ。基本の型は師匠の動きだし、何もすごい事はしていない。

 

「いえ、謙遜はいりません。おかげで私も『深淵』のバトラーらしく戦いたくなった。」

 

そう言葉にし、短剣を『ヘイズ』に預けるとデッキに指を置くミストさん。

ソレを見届けた『ヘイズ』は霧に溶け、彼が高らかに宣言する。

 

チャージイン!

「ユニットを捨てて、ターンチェンジ!?」

 

驚愕に動きが止まる。

正直な話。

あのまま、遠距離は『ヘイズ』によって受け。

短剣でダメージを与えて来るのだと思っていたからだ。

いや、そもそもソレができるのが、ユニットカードの強みと言ってもいい。

 

「カードを装填し、エフェクト《戦闘加工(バトルコーティング)》を発動!」

「バ、バトルコーティング!?」

 

その上で、新たに発動された『加工』カード。

見たことのないそのカードは、虹色の輝きを天頂へ打ち上げ。

雷の様に真っ直ぐに、再びミストさんの元へ舞い落ちる。

 

「このカードはライフを半分払い、その数値分。自身に強度値を与えるエフェクトカード」

 

キラキラと光る虹色の虹彩。

霧の中を反射し、彼を彩るソレは銀の紋章となり彼の戦闘着であるタキシードに宿っていく。

 

「ここからは。私自身が貴方を葬る武器となります。」

 

一気にオレンジ色へ変化するエナジースフィアを気にも留めず、そう宣言するミストさん。

彼は、懐から仕込み杖を取り出すと振るう事で引き伸ばし、その流れのまま片腕を前に。挑発のジェスチャーをしながら薄く笑った。

 

「さぁ、踊りましょう」




「いらっしゃいませ、カードショップ『炎剣』へようこそ」
「今回は私が『戦闘加工』について紹介いたしましょう。」
「『戦闘加工』はバトルカードを再定義し、自身に強度値を与えるカード」
「ライフポイントを半分。自身の強度値として戦うこの効果は」
「『ヘイズ』の様なサモンユニットと戦う力にもなります。」
「とは言え、武器を扱うより危険であるのは事実…」
「覚悟を持って使ってくださいね」
「それでは次回も、バトルスタート」
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