時間が作れそうなので、ひさびさに投稿再開いたします。
対戦よろしくお願いします。
「フフン、聞いたよキズナクン。チーム権を取得したんだってね!」
いつも通り騒がしい教室。
授業終了のチャイムが鳴り、帰り支度を始めようと自分の席に座っていると。
いつも通り髪をはらってポーズを決めたアオイくんが話しかけてきた。
「あ、アオイくん。…実はそうなんだ。」
「しかも相手はあの『深淵』のメンバーだったとか!よければ、聞かせてくれないかな?」
軽い世間話に見えて、キラリと光る真剣な眼差し。
…アオイくんもかなり強いバトラーだし、強い相手の情報は集めておきたいのかな…?
「うん…対戦相手はミストさんって言って…」
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「と、こんな感じで…」
僕の話を聞いていたアオイくんは、ほぅと一息付くと、肩の力を抜いて口を開く。
「噂に聞く『サモンユニット』か…よく手に入ったね?」
彼の視線の先には、公式戦のリプレイホログラム。
真っ黒な煙でかなり見にくい画面から、目ざとく『スモークボール』を見つけ出したアオイくんは興味深そうに画面を眺めていた。
「あはは…いつの間にか入ってて。そう言うアオイくんこそどうなのさ?」
「ボクかい?ボクは…」メールダヨ!
僕が話題を変えたタイミングで、鳴り響く通知音。
一瞬だけ映ったホログラムには、「重要!」の赤文字が踊り、ソレをサッと閉じた彼は、申し訳無さそうな顔をして立ち上がった。
「むぅ…ごめんねキズナくん、今日こそは君とバトルするつもりだったんだけれど、予定が入ってしまった」
「あ、うん。そうなんだ?…がんばってね」
一瞬見えた真剣な眼差し。
引き留めるのも悪いかと僕が頷くと、笑顔を返してくれるアオイくん。
彼はバトルバンドを一度深くはめ直すと、軽くポーズを決めて言葉を紡いだ。
「そうなのさ。じゃあ、キズナくんも頑張ってくれたまえ。ここからが、正念場だよ?」
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「武櫂キズナ!アンタにバトルを申し込むわ!」
アオイ君が去っていき、荷物をまとめ終わった僕のところに。
活発な女の子…ミサキちゃんが駆け寄ってくるなり、綺麗な仁王立ちを決めビシッと指を差し宣言した。
「ええ!?ミサキちゃんが!?」
我らが学級委員のミサキちゃんは、僕の反応に眉を顰めると、念のためキタヤマくんに確認しに戻ると、改めて僕の方へ向き直る。
「そうよ!アタシ様の情報網によればアンタ…チーム権を取得したらしいじゃない!」
「そ、そうだけど…」
僕の言葉にホッと一息。
その後ニヤリとした表情に改めた彼女は、『エリアバトル』の公式パンフレットを掲げると言葉を紡ぐ。
「チーム権は取得後、防衛が必要。ならその一戦目はワタシ様が勤めてあげるわ!」
「さすがミサキ様〜」「怖いものなし!」「チャレンジャー!」
「アンタ達!それ褒めてる!?」
すかさず声援を送る三人にツッコミを入れるミサキちゃん。相変わらず楽しそうな彼らを傍目に、さっきアオイくんが言ってたのはコレか…と納得する。
…と共に少しの緊張。
ーーチーム権の防衛戦。
チームの旗印になろうと言うのだから当然だけど、負けは許されない戦いは。精神的にも、体力的にも、厳しいものがある。
それでも…やるしかない!
「いいよ、楽しいバトルにしよう。」
ーーーー
「いくわ、ドロー!」
学校に設けられたバトルスペース。
その芝生の上でシャキッとドローをしたミサキちゃんが、カードそのまま此方に翳し装填する。
「なるほどね、まずは一手!《財宝の山》を発動!」
「そのカードは!?」
彼女の前に現れたのは、さまざまな武器が積まれたホログラム。
……深淵のバトラーである『キャプテンファロー』が使用していた《財宝の山》だ。
確かその効果は、5枚のカードをめくり、その中の一枚を装填するサーチ効果。
必要なカードを加えた上で、不要なカードを墓地へ落とす事ができる。とても強力なカードだったはず…
「へぇ?よく勉強してるじゃない。アタシ様は《ブロンズアックス》を装填し、残りを墓地に送るわ」
そんな彼女の言葉と共に、砕け散る財宝の山。その中から選ばれた斧を肩に担ぎ、一歩進んだ彼女が、バトルバンドを前にかざすと小さな泉が現れる。
「続いて二手!《正しい選択》を発動!装填された《ブロンズアックス》を墓地に送り、デッキから《ゴールドアックス》を換装!」
そのまま豪快に、泉に斧を叩きつけるミサキちゃん。
揺らいだ水面は眩く発光し、手元の斧が金色に覆われる。
「キタ〜!」「ミサキ様エフェクトコンボだ!」
ギャラリーの盛り上がりに自慢げに笑みを深めるミサキちゃん。
実際上手い…。今彼女はカードエフェクトによって武器の換装を繰り返した。当然コストはエフェクトカードの分のみ…
つまり、あの斧は本来払うべきコストを全て踏み倒して換装されている。
それほどのコンボとなれば、あの斧は、間違いなくコスト3以上の強力なアーツカードなのだろう。
「手の内は見せてやったわ!足掻いて見せなさい!」
「く、ドロー」
自慢げな彼女に急かされるように、僕が引き抜いたのは、《ボム》《キャノン》《ケムリ》の3枚。
基本カードばかりだけど、見事なまでの中距離札。
相手が高火力な近距離武器であるなら、これ以上ないカード達だ。
「いくよ!多重換装《ボム》《ケムリ》ッ…?」
その一手目として、多重換装によるケムリの応用。
様子見としても、ケムリの活用としても。
これ以上ないはずの一手に。僕の心のどこかが、これが最善では無いと告げていた。
ーーしかし、換装は止まらない。
僕は、迷いを消して。
ケムリ纏う灰色のボムを彼女に向け、投げつけようと腕を引き戻したところで……響く真の通った声。
「ふぅん?悠長なこと、ね!」
言葉と共に、斧を肩に乗せたまま重心を滑らせる少女。
重く豪快な風切り音に嫌な予感がしつつも、
投げ放った《ボム》が、煙をばら撒きながら少女へと接近し…
「シャォラィ!」
目にも止まらぬ速さで、ソレが放たれる。
投げ飛ばされた金の斧。
ボムを両断し、爆発の勢いも乗せた一撃が惚ける僕の方に飛んでくる。
…撃ち落とす…無理だ!
「ぐっ!?」
迷いは一瞬。しかし回避を選択した僕よりも、彼女の一撃は大きく、早く。
弧を描いた斧の軌道に掠り、肩口に重い衝撃が走る。
青色の変化を通り越し、一気に黄色に染まるエナジースフィア。
愕然とする僕を他所にギャラリーが盛り上がる。
「相手プレーヤーにシュゥッ」「超エキサイティング!」「イカれてるぅ!」
「ふふん!その程度ならアタシ様が勝つわよ」
三人の声援に、余裕を持ってミサキちゃんはバンダナを締め直した。
…本当にイカれてる。
散々サーチした強力な武器を、
一回限りの弾丸として使うなんて正気ではない。
……でも、その姿はまるで……
「師匠みたいだ…」
バトルスタイルも、性格もまるで違う。
それでも、自分のバトルを信じ。
戦略的価値以上の何かを、魅せてくれるその在り方は、間違いなく師匠と同じものだった。
そのままクラウチングスタートの構えをとった彼女は、ケムリの幕を突き破り、グンと距離を詰めてくる。
…惚けてる場合じゃない!
「させない!換装《キャノン》!」
迫り来る彼女に照準を合わせ、光弾を放つ。
距離はまだある。彼女の最後のカードがわからない以上、せめてデッキチャージが終わるまで、距離は保たなくては!
ーーそうして放たれた弾丸は
「読めてたわ!これで三手目、罠エフェクト《異なる選択》!」
掴み取る様に、前に振るわれた腕から放たれた水色の盾に拒まれたーー
水面に水滴が落ちる様に歪む盾。
それをそのまま掴みとったミサキちゃんの手に、光が集約し白銀の斧が現れる。
「このターン墓地に送られた《ゴールドアックス》をデッキに戻し、墓地から《シルバーアックス》を換装する!」
「そんな!?」
完璧に計算し尽くされた速攻戦術。
対するコチラは残り一発のキャノンのみ、デッキチャージも間に合わず、この一撃は受けるしかない!?
「くっ!なら一点は受けてもらう!」
「ハッ!かすり傷ね!」
「ええ…」「こわ…」「危ないからやめなよ…」
少しでも怯ませるために、正面に放たれた光弾を頭突きで受け止めた彼女。
あまりの度胸に、ドン引きする三人の声援に激しく同意しながら。
その強力な振り上げによって僕は吹き飛ばされたのだった。
「ようこそ!カードショップ『炎剣』へ!」
「今日はアタシ様が『正しい選択』について紹介するわ!」
「『正しい選択』は装填されたカードを墓地に送り」
「そのカードよりコストが1高いアーツを換装するエフェクトカードよ!」
「ふふん、気づいたわね?」
「そう、このカードはサーチだけでは無く、発動ができるカード!」
「そのコストは『装填状態』。つまり、コストを払う前の段階を参照する。」
「つまり…強い武器を更に強い武器にして換装できるわ!ほとんどタダでね!」
「…あ、斧しか対象にできないけど大丈夫そ?」
「大丈夫。ならよし!」
「ソレじゃ。次回もバトルスタート!」