『現実換装!カードバトラーズ!』   作:学び手

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後編になります。対戦よろしくお願いします。


12-間話「ナルキアオイの華麗なる一日」後編

 

 

経年劣化で錆が見られる非常階段に、葛の葉が絡みつくボロボロのアパート。

バトルバンドに表示されている座標に赴いたボクは、失礼の無いように数度ノックをし…少し待つ。

 

「何?」

 

しばらくの沈黙。床が軋む音がかすかに聞こえ。

扉から出てきたのは、深くフードを被った女の子。

金メッシュの混ざる紫色の髪は、枝毛が目立ち、あまり手入れをしていないのが明白だった。

 

ーーもったいない!

 

「やぁ、こんにちは!可愛らしいお嬢さん。ボクは…」

 

これほどの原石を磨かなければ、世界の損失だ!と。

本来の目的も忘れて、ナンパ→美容室のコンボを決めるため、口を開くボク。

ソレを細い指が遮り。目を細めた彼女が口を開く。

 

「前置きはいい。何が欲しいの?」

「え?じゃあ、君という美しい宝石が欲しいかな」

 

思いもよらない問いかけ。

コレ幸いにとデートのお誘いをすると、頷いてくれた少女。

よし!と、美容師さんに連絡しようとバンドに視線を向けたところで…

 

…スルスルと布の擦れる音。

 

「?…!?」

 

バッと視線を上げれば、フードだけじゃ無く、スカートを落とし。

胸元のリボンに手を伸ばしている彼女の姿。

 

「ま!?ストップストップ!バトル!バトルのお誘いだから!」

「?なら、そう言って。」

 

ボクの言葉に、首を傾げながら服を正す少女。

あ、危なかった…この子。ちょっと素直すぎるかもしれない。

もし、バトルの方に軌道修正しなかったら、どうなっていた事か…全く、バトル様々である。

 

「はは…」

「いくよ」

「「バトルスタート!」」

 

ーー

 

古びたアパートの裏。

ただ広いだけの駐車場で、二人のバトラーが対峙する。

一人は青い髪を一房に束ねた王子様。

それに対するは、紫の髪に金混ざりのくせっ毛がフードから飛び出した。悪の魔術師然とした外装を羽織った少女。

 

「私は、『黄金の宝珠』を発動。」

 

その内、外装を羽織った少女が、淡々と金のバトルバンドにカードを換装すると、その手に黄金の水晶が現れる。

 

「効果により三枚の基本カードを『GR(ゴールドレプリカ)』として手札に加える」

 

宣言と共に、ふわりと浮かび上がる黄金水晶。

ほどほどの高さに落ち着いたソレは、大きくまたたくと、周囲に三つの光球が生まれ、少女の手札へと宿っていく。

 

「いきなり、三枚も補充しただって!?」

「欲しければあげるけど?」

「え、いいのかい?じゃあ。『GR(ゴールドレプリカ)キャノン』が欲しいかも」

 

そんな、いきなりの手札補充に驚愕するボク。

それを見て。こてんと首を傾げた少女の、冗談に乗っかってあげると。

心なしか嬉しそうな少女がそのままカードを発動させる。

 

「ん、了解。『黄金の贈り物』を発動。効果で『GR(ゴールドレプリカ)キャノン』をあなたに換装し、『毒の蓄積』を発動する」

 

そうして広がる金色の霧。

それがボクの腕に覆い被さると。

じわじわとバンド周辺に染み込み、金色のキャノンが換装された。

 

「へ?おお!キラキラでカッコいいじゃないか!」

 

なかなか見ることの無い金のキャノンに、テンションを上げ良さげな角度を探して太陽にかざす。

ずっしりとした重さがここちよく。じわじわとした痛みが……痛み?

 

「……ン!?だ、ダメージ!?」

 

バッと振り返りエナジースフィアを見る。

そこには、僅かに色が濁り、黄色へと近づく青の球体。

まだ、カードを発動していない為。

本来なら青いはずのエナジースフィアに困惑していると、少女が口を開く。

 

「『GR(ゴールドレプリカ)』シリーズは五点になるまで強度を上げる。そして『毒の蓄積』は強度が上がった時、その数値だけダメージを与える。よってダメージは三点。」

「さ、先に言って欲しいなぁ。」

「ん、今度からそうする?」

「いや、大丈夫さ。」

 

少女からの種明かしに、少しうなだれてみせると。静かに頷く少女。

ちょっと心配になるくらい素直な良い子である。

 

「二枚装填して、バトル」

「では、ボクも三枚装填!バトルだ!」

「…フッ!」

「な、早!?でもボクだって負けてはいないさ!」

 

そしていよいよバトルフェーズ。

ふわりとフードを置き去りに、陸上選手もかくやと言う速度で、蛇行しながら駆け抜けてくる少女。

 

ソレに向けてボクは黄金の銃を向けて撃ち放つ。

狙いは上等。輝く弾丸が真っ直ぐに少女の前に踊りでて…

 

「いいよ、ライフで。」

 

笑みを深めた少女の肩と腕に突き刺さる。

 

「ンン、換装『GR(ゴールドレプリカ)ソード』」

 

その僅かな弾丸は振り落とし、蒸気のように立ち上る黄金。

金毒の痛みすら笑みに変えた少女は金の剣を、上段に構え振り下ろす。

 

「換装!『リプレイランス』!」

 

それを受けるコチラは機械槍。

横手に持った槍が、強度差の影響もあってかガリガリと削られ。

へし折れる前に飛び退き。再びトリガーを引く。

 

「もう一度だ!『リプレイランス』」

 

僅かに広がったリーチ。

それを無くしてなるものか!と。

ジリジリとした毒の痛みを無視して振るった一撃は。

再度振るわれた金の剣に防がれ、お互いの武器が砕け散る。

 

「剣が…。」

「畳みかける!『コピーアームズ』!」

 

淡々と砕けた剣を見つめる少女に向けて、新たに換装した槍を振るう。

ボヤけたホログラムが再び槍の形を取り。

全身を蝕み、気化する黄金の霧に眉を顰めながら突きを放つ。

 

「ぐぅ!くらえ…!」

 

「罠。『黄金の循環』。効果により、墓地のカードを三枚。手札に戻す。」

 

ソレに対するは、黄金の霧。

槍にまとわりつき、渦の様に回転を始めた金色の粒子が収束すると、錆色に発光。

パラパラと舞い落ちると共に。

ボクの手元に二枚のカードが加えられる。

 

「!?バカな!ボクの槍が崩れて…」

「『リプレイランス』二枚があなたの手札に戻ったことで、その槍の強化値は失われた。」

 

『コピーアームズ』の弱点。

それは、対象となるカードがない場合。

強度値1の棒でしか無いと言うこと。

それはつまり、その状態を作ることが出来れば。

僅かな強度値でも、返り討ちにすることができると言う事。

しかも…その上で今回は……

 

「そして私は、『毒の蓄積』を加える」

「…!これほどの対策を即席で!?」

 

攻撃を防ぎながら、次ターンに繋ぐ起死回生の一手。

確かに、『リプレイ』シリーズは同名の数だけ強化される共通効果を持つカード群だ。

だからこそ、プロのバトラー相手なら簡単に対策されてしまう。

 

しかし見たところ彼女は、そういったカード知識は深くない。

その効果を2度の斬り合いと、毒の挙動から推測したのだとすれば。

凄まじい観察眼だ。

 

「どう?コレで満足?」

 

そんな風に驚愕するボクに対して。

手札の『GR(ゴールドレプリカ)ボム』のカードをコチラに見せ。

余裕はない事を示唆する少女。

確かにお互いのライフは、赤みがかった黄色であり、あのボムを喰らうことを考えると、発動できるカードは多くて三枚。

そこに毒による自傷ダメージを考慮すると、一枚しか発動できない可能性が大いにある。

 

ーーそんな状況で、十点近いであろうライフを削りきらなくてはならない。

 

「いや、まだだ。まだ一枚のドローが残ってる!」

 

面白くなってきた。と笑みを深め。

真っ直ぐに彼女へ視線を返し、デッキに手をかざす。

 

……ボクのデッキに、単品で火力が高いカードは多くない。

なんならそのまま『リプレイランス』を追加で発動した方が強いくらいだ。

しかし、ソレはあちらも理解している。

 

だからこそ。一つだけ。可能性がある。

 

「そう?いいよ、見てる」

「ドロー!!……よし!」

 

思わずガッツポーズ。

引いたカードをバトルバンドに読み込み、換装を宣言する。

 

「いいカードが引けた?」

「あぁ、最高のカードさ!換、装!」

 

そして、展開されるのは、天上より照らすスポットライト。

その下で決めポーズを取ったボクは、緊張を悟られない様に笑みを深める。

 

「…?変なカッコ。私は『毒の蓄積』を発動。」

 

ソレに疑問を持ちつつ、カードを発動する少女。

再び黄金の霧が彼女から滲み出し…。

緊張がほぐれたボクは声を張り。対戦相手へと笑顔を向ける。

 

「そのカードはキミのメインギミック…発動してくれると信じていたよ!起動せよ!『ネバーエンドアンコール』!」

 

顔に翳していた手を前に。ウインクをして指を弾く。

 

一気に広がり始める黄金の霧。辺り一面が、眩く毒々しい濃霧に囲われ。少女のエナジースフィアが、一気に赤色へと染まっていく。

 

「私のライフが…」

 

冷静に、しかし確かにその目を驚愕に染めながらエナジースフィアを眺める少女。

その手には次の一手だったのだろうカードが握られ。

少し悔しそうに装填すると手を広げて、ボクに声をかけてきた。

 

「見事…だね。いいよ。おいで」

「バトルだ!換装『リプレイランス』!」

 

なんの効果も発動しない機械槍。

その鋭い一撃が突き刺さり。試合終了のゴングが響いた。

 

ーー

 

「ん。」

「ん?あぁ、握手だね。」

 

バトルが終わり、静かに起き上がった少女が手を差し出す。

 

……実際、いいバトルだった。

 

お互いに知らないカードの応酬。

それゆえに、勝利へ向かうギリギリの接戦は手に汗握るいい戦いだった。

コレで握手をしないのは失礼なんて物じゃないだろう。

 

そう思って差し出された手を強く握る。…と同時に眩い光。

彼女のバンドに金塊の山の上に立つ枯れ木の紋様が現れ。

ボクのバンドに王冠の紋様が刻まれる。

 

「コレは…紋章?」

「契約成立。困ったら呼んで。」

 

驚きと共に視線をやると、頷く少女。

バトル中の痛みから、何か特別な力のある相手だとは思っていたけれど。

これはむしろ、『虚』関係ではなく『黄金』に由来するもの。

バトル中の様子からしても、コレは無駄足になったのかもしれない。

 

「キミはいったい…」

「私?ロマン研製造のバトルロイドE-07。」

 

「ナナコ。と、あの人はそう言ってたよ」

 

背後のボロアパートに視線を向ける少女。

その視線は、無表情な彼女らしくない寂しげな物で。彼女もまた、大切な人を失っているのだろうと思い至る。

 

「ねぇ、ナナコちゃん。ボクの家に来ない?」

 

自然と言葉が出る。

聞きたいことは山ほどあるのに、それらより優先してでた言葉に、慌てて訂正しようとして。

 

「?私が欲しいの?」

 

純粋そうな期待する瞳がコチラを覗く。

 

……あぁ、そうか…この子にとって。

誰かに必要とされることは、全て良い事。なんだ…

 

何かを差し出す事。ソレが彼女にとっての生きる意味であり、それをなせたのならどんな過程も価値ができてしまうんだ。

 

ーーそれは、危うい。

 

「人聞きが……。まぁ、でもそうだね。その通りさ、ついておいで。一人は寂しいからね」

 

少し強引に手を引く。

彼女を縛り付けるこの場所が、どんな場所だったかはボクは知らない。

それでもきっと、ボクといる方が幸せだと傲慢に信じて見せる。

 

「…敗者は従うのみ。いいよ。ついてってあげる。ここにはもう…居ないみたいだし。」

 

そうして共に歩き出したボクらは、街の喧騒の中に消えていくのだった。

 




「いらっしゃいカードショップ『炎剣』へ」
「今回は私が、『毒の蓄積』について紹介するよ」
「『毒の蓄積』は、1ターンの間。強度値の増加にコスト消費を追加するエフェクトカード。」
「基本コストに追加して、上昇値をそのまま追加コストにする」
「いわゆる。『バーン効果』なんだって。」
「それじゃ、次回も、バトルスタート」
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