13話になります。対戦よろしくお願いします。
私はいつも取りこぼす、
いくら強いともてはやされても。
大事な時にはそこにいない。
いつも気づけば失っている…。
だからこそ、私は………
ーーーー
「キズナ。私とバトルしなさい。」
学校でみんなとバトルした後。
休憩をかねて、カードショップ『炎剣』に訪れた僕。
それを見てエプロンを椅子の背にひっかけると。
『炎剣』の店長。
カリンさんが、バトルバンドを手に声をかけてきた。
「か、カリンさんと!?」
思わず大きく出てしまった声に、口元を押さえる。
それを見て興味深そうに、ざわつき出すお客さん達。
慌てて頭を下げる僕を他所に。
まるで決定事項であるかの様に、強く頷いたカリンさんは告げる。
「ええ、貴方の獲得戦。次の相手は私が務めるわ」
「そ、そんなぁ!?」
おもわず情けない声が漏れるけれど、仕方ない。
いくら強いカードが増えたとは言え、カリンさんは師匠と競い合い、勝利することができる強者。
その上で、師匠の劣化版でしかない僕が、バトルを挑んだところで勝てるとは思えない。
ましてや、今は大会中。
普段のフリーバトルなら、喜んで受けるところだけど、今回は……
そんな僕の内心を見透かされたのか、ため息と共にヤレヤレと首を振ったカリンさん。
ショーケースに飾られる『次元斬』を見て、口を開く。
「逃げるのね。そんなんじゃ、アイツもがっかりするわよ」
「ッ…」
なんて事ない安い挑発。
でもその言葉は、僕の心に突き刺さり、息が詰まる。
…そうだ。師匠の教えは、『次元斬』で勝つこと。
たとえ負ける可能性が高くても。
一枚カードを信じ、諦めず戦い続けること。
そんな師匠の弟子の僕が、勝負から逃げる…?
そんなの……
「……わかりました。受けて立ちます!」
……そんなの認められない!
誇りを、信じるものを捨てたら…僕には、何が残る!
「そう来ないとね…!行くわ!」
「「バトルスタート!」」
ーー
「私はエフェクト『再装填』を発動。カードを五枚ドローするわ」
「初手からドローカード…!」
「そのまま、カードを五枚装填。チャージエンドよ」
「くっ、ドロー!」
緊張しながらカードを引き抜く。
引いた手札は…『ソード』『幻想加工』『再挑戦』の三枚。
正直なところ、悪くはない。
それどころか、限りなく最善に近い引きかもしれない。
このターン、カリンさんには最大5回のアタックチャンスがある。
対する僕は最大3回。
全てを受け切るのであれば、強度値の頑丈な武器が必要不可欠だ。
『幻想加工』で行う『次元斬』の擬似発動ができるこの手札は、その条件を充分に満たしてくれている。
問題は、『再挑戦』を盾として換装するか、だけど…
「…僕は、カードを二枚装填。チャージエンドです。」
おそらくソレはするべきじゃない。
計算した訳じゃないけど。
思い通りに戦えたとして一撃は喰らうはずだ。
それに合わせて盾として出した場合。
同数値で割れるならともかく、こちらの方が硬く盾が残ってしまった場合…次の換装まで、ワンテンポ遅れてしまう。
カリンさん相手にその隙は致命傷だ。
「行くわ」「行きます!」
「「多重換装!」」
そうして始まるバトルフェーズ。
鏡合わせの様に『ソード』を換装したカリンさん。
隙なく正眼に木刀を構える彼女に対して、僕は居合から少しずらした脇構え。
身体の陰に隠した暗い黒色の刀身に、カリンさんの眉がぴくりと動く。
ーー距離を測りかねて居るんだろう。
ただでさえ、判断をつけずらい脇構え。
さらに、陰に同化した黒色の刀身となれば、より見えにくいはずだ。
その上で、バトルカードは、換装時間が存在する。であれば、不確定でも攻め込むしかない。
「はぁあああ!」
…きた!
放たれたのは実直な真向斬り。
真っ直ぐ垂直に、振り下ろされる一刀は。
身長差も相まって最も、隙が生まれる一撃。
しかし、それは同時に。
最も勢いを持たせやすい強力な一撃であると言う事。
僕の方が武器が少ない以上、受けるのは既定路線。
その上で、僕自身の握力を消耗させ。
武器を奪おうと、言う事か。
「ならば…!」
さらに一歩、斜め前方へ足を踏み出す。
持ち上げた剣は地面と垂直に。
肩を守る様に受け流し、そこから腕を引き戻す。
至近距離からの斬撃。
当然防ぐ事は難しい斬撃を、多重換装特有の瞬間換装によって、間に剣を割り込ませたカリンさんが眉を顰め。
ーーパキパキと言うひび割れ音。
その小さな音に気づいたカリンさんが目を見開き、驚愕と共に背後へ飛び退く。
「んな、何よその強度!?…くッ!」
ソレを追って踏み込む僕。
少し焦りの見える表情でトリガーを引いた彼女は。
ガントレットを振るい、盾をぶつけてくる。
そして、接触。
ノイズと共に砕け散る盾。
それを見越してか斜め前方へ身体を倒す事で、斬撃の軌道上から消えたカリンさんは。
振り返ると面倒そうな表情で呟いた。
「…そう言うカラクリね。」
「さすがに、気づきますよね。」
三枚に及ぶ発動時間に、盾の効果破壊。
僕が何をしているかは明白であり、師匠はやらないであろう邪道。
一撃必殺の剣を無理やり、剣の形に落とし込んだ防御手段は、きっと思考の外にあった一手だったのだろう。
首を振り、改めて僕に視線を向けたカリンさんは、ニヤリと笑うと純粋な悪意を込めて呟いた。
「ええ。未熟者にはちょうどいいんじゃない?」
「ッ‼︎」
また、挑発。
思わず反射的に剣を振るった後に、ハッと失策を悟るも。
乱雑な一撃は、当たるはずも無く虚しくただ宙を裂く。
「やっぱり甘いわね、換装『天の下駄』!」
その上で放たれる痛烈な一撃。
暴風を纏った蹴りの一撃に、軽々と吹き飛ばされ、逃げ場の無い空中へと投げ出された僕目掛けて…
「がら空きね、『キャノン』!」
二発の光弾が放たれた。
「ッ!はぁ!!」
無茶を承知で身体を捻る。
確かにコレはピンチかもしれない。
それでも、この弾丸に剣を合わせる事ができれば。
少なくとも、落下の衝撃は減らす事ができる。
そんな僕を傍目に、カードを引き抜いたカリンさん。
「…そう、貴方も手伝ってくれるのね。」
小さく何かを呟き、軽く目を瞑った彼女は。
カードを掲げると、指のスナップを効かせて高く打ち上げ…宣言する。
「私は、『コイン』に『キャノン』を『現実加工』」
空中で『コイン』へと変わるカード。
その落下点で『キャノン』を構えたカリンさんは銃口に発生した光で一つの円を描き、てのひらを上に、舞い降りた金貨を掴み取る。
「絶えぬ思い出をこの手に込めて!」
途端、眩い閃光。
円が金の色彩を得て、サラサラとした金粉を生み出し、それが人型に集まっていく。
「『現実換装』いくわよ!『金朽兵アンバー』!」
それは黄金の兵。
ブリキの体には金のメッキがラインを作り、年季の入った赤の軍服と旗を靡かせながら、敬礼の構えをとったオモチャの兵隊が、カリンさんの元に現れた。
「ようこそカードショップ『炎剣』へ」
「今日は…特に話す事も無いわね…」
「まぁ、せっかくだし質問箱を置いていくわ」
「よかったらぜひ、コメントでも残して行ってちょうだい」
「それじゃ次回も、バトルスタート!」