とある道場の前。そこで一人の少女が手をつきうなだれている。
…誰か?ですか?
ーーアオイさんに無様に負けた私です。
…なぜか?
ーー今日はキズナくんのチーム権防衛戦の初日だからです。
「はぁぁ…私のばかぁ!」
ポカポカと、自分の手で自分を殴り、頭を抱える。
…なんで私はここにいる!そもそもいっしょに帰ればよかったのに!!…
今朝からなんだか、落ち着かない。
キズナ君の事が気になるのに、何故だか避けてしまうし。
よくわかんないイライラもあるし!
こうして今も、なんだかわからない涙が、目元に溜まっている感じがする。
「…よ!サクラちゃん元気か?」
そんな時。
ぽん。と、頭に乗せられた手に視界が上がる。
「へ!?ショウヤさん!?」
そこには、着流し姿の一人の剣士。
何故かいちご飴を片手に現れた、この道場の指南役…キズナ君のお師匠さんは、「うまいぜ?一個食べな?」と笑顔で飴を差し出すと、縁側の方に歩いていく。
「しばらく帰らないんじゃ…あ!キズナ君も心配してましたよ!」
慌てて追いかけて声をかける。
草鞋が砂で擦れるしゃりしゃりと言う音が、辺りに響き。
縁側に座ったショウヤさんが、意外そうに目を丸くしてコチラを見る。
「そうなん?心配性だなぁ、アイツも。」
「そうなんです!昔は…寂しそうにするだけだったのに…」
「男子3日あわざれば…って奴?」
「です!最近は、色んな人とバトルする様になって!隣のクラスのゴウジくんとも、しょっちゅうお話しをしてて!」
「へぇ、友達も増えたか。」
なんだかすごい口が回る。
おかしいな…
本当は、この人が帰ってきたら。
キズナ君の為に、説教してあげるつもりだったのに。
安心したような、すごく優しい表情のショウヤさんを見ていると。
そんな気持ちが削がれていく。
…嬉しいのかな?誇らしいのかな?
きっとそうだよね。大事なキズナ君の事だもん。
「最近なんか…。」
「?」
対する私は。
真っ直ぐに自信をもって戦う彼を思い出すと
…嬉しいはずなのになんだか…
「…サクラちゃん。バトルしようぜ?」
「え?」
再び俯きかけてしまった私に、声をかけるショウヤさん。
草鞋を踏み石に置き、代わりに置きっぱなしのスニーカーに足を入れた彼は、ガントレットを指でトントンと叩き口を開いた。
「そっちの方が、気兼ねなく吐き出せるからさ?」
ーー
斬撃が宙を裂く。
ピンク色の『ハナビラ』の波が、『ケムリ』に呑まれ、舞い上がっては消えていく。
そんな暴風の先端に立つのは、一人の男。
前へ前へと突き進む男の頬には僅かな切り傷が広がり。
しかし、致命的なダメージは負っていない。
ーーまさに獅子奮迅
これこそ、ショウヤさんの戦いだ。
決して引く事はなく…前のめりに剣を振るう。
キズナ君とは、少し違う。
勝利を目指した攻めの剣舞。
そんな剣が、私の花を消し去らんとばかりに、次々と振るわれ…。
……なんだか、無性に腹が立った。
「なんで。」
「ん?」
「なんで、そんな戦い方をするんですか。」
「なんでって…これが一番早いし…カッコいいだろ?」
心底不思議そうに、当たり前だと言葉を紡ぐショウヤさん。
それを聞いて、指揮棒を乱雑に振るった私は進路を閉ざす様に『ハナビラ』を動かす。
「わかりません!どうして、男の人ってそうなんですか!!?」
記憶の端に、見覚えの無い誰かが映る。
炎を宿す白い学ランが揺れ、その背で守る。そんな誰かが、脳裏に浮かび、消えていく。
それが、どうしても気に入らなくて。
ショウヤさんには、全く関係ないとわかっていても。
そんなカッコ良さを、否定したくて仕方なくなる。
「勝負上等、ケガ上等…別にそんな危険なところに向かわなくたっていいじゃ無いですか!」
放たれる幾重もの花びらの刃。
一本の『祈り木』から、供給され続けたそれは、過剰にも思えるほどの総量で。今も辺りを覆い隠し、ショウヤさんの姿も見えなくなる。
「なんだ、サクラちゃん。わかんないのか?」
それを前に、休みなく剣を振るう青年。
疲れに腕が重くなり。されど加速する剣舞。
数ターンに及ぶ経験の蓄積から無駄が省かれ、最早残像と化した太刀筋によって。
次々に『ハナビラ』は煙へとって変わられ…
ようやく止まる。
「…『三の型 雲捲り』」
凄まじい暴風。と同時に、『ハナビラ』が一気に舞い上がる。
中心には、刀と言うには長すぎる一刀。
ソレを天上に掲げ、ニヤリと笑った青年が空中に斬撃を放ち、天を指す。
「サクラちゃん。花火は好きか?」
「好きですけど…」
見上げた先には舞い上がった『ハナビラ』と『ケムリ』。
儚く散っていくソレは、ホログラムの残光もあって。
花火のように見えなくもない。
「そうかい?でもありゃ爆弾だ。ホログラムでも無い危険な爆弾。なんなら環境にだって優しくない。無駄なもんだろ?」
「…」
…聞いといてその言い草。何を言いたいのでしょうか?…
意味の無い質問に、ピクリと眉が動き。拳に力が入る。
再び、武器を構えようとして…
「それでも夏になりゃ打ち上がる。誰かの笑顔に繋がると知ってるからだ。」
確信を持った断言の言葉が、私の耳に届く。
力強い真っ直ぐな視線。
男の人特有の根拠もない言葉に、無言で続きを促す。
「俺の剣も同じだ、この太刀筋に憧れる奴がいる。」
彼の瞳が、剣を見る。
美しく波打つ刀身が、太陽に照らされ。
光の反射が地面に線を描く。
「馬鹿正直に対策する奴が。この剣で超えたい奴がいる。」
キラキラとした少年の様な瞳。
掲げた長剣が限界を迎え。
刀身が、光の粒となって空高く昇っていく。
それは星のカケラの様で…
しかし、太陽の光の中では、すぐに溶けて消えてしまう。
「男ってのはそう言う、想いに向かって無茶をするもんだ。」
それを見て、そのまま太陽に手を翳し。
強く握り込むショウヤさん。
そんな彼の瞳は、カッコ良い大人そのもので…。
やっぱり。ーー気に入らなかった。
「わかりました…でも、私は。誰かが傷つく姿は見たくない!『虚の夢花』を発動!」
ハナビラの残骸が、一斉に燃え上がる。
青白い弔いの火が、辺りに散らばり。
地を走るように、燃え広がる。
残るは灰骸。
白く積もったそれが、砂原のように積もり。
その上に、色を失った『ハナビラ』の幻影が舞い落ちる。
「フィールドから『祈り木』『ハナビラ』を全て除外し。フィールドを『虚の花園』へ『
そうして生まれた枯山水。
辺りを彩る無色の色彩に、なんとなく頬が緩み…
「誤魔化すなよ」
彼の言葉に、その笑みが消える。
「何がですか」
「傷ついて欲しくない。…確かにそうなんだろうさ。」
「ええ、戦いなんて野蛮なもの。続ければいずれ…」
「だから、誤魔化すなって…」
「何を」
「お前、そんなこと気にしてないだろ?」
男の真っ直ぐな瞳が、私を見据える。
頬の切り傷を手で拭って。
腰の鞘に片手を添えた万全の戦士が、私と。
背後の桜の幻影に眼差しを向ける。
「お前は…ただ。」
「『ヴァニティ・プラント』!行け!」
「寂しいだけ…だろ?」
私の言葉を受け、辺りの空間が歪む。半透明な。
触れた物を消滅させる力を持った触手が四方八方から発生し。
這い出た虚無の花が、剣士に殺到する。
それを見据える剣士は、怯む事なく。
その手のトリガーを引き、一本の剣を鞘に納める。
ーーそれは、全てを断ち切る剣。世界を別つ一本の剣。その名は…
「『
黒の斬撃が、世界を断ち切る。
灰骸が、花の幻影が黒に呑まれ。
私はそのまま空高く吹き飛ばされる。
…あぁ、でもそっか…
そうして飛ばされながら。
花びらの様に宙に舞いながら。
私は、モヤモヤの正体に気づき、笑みをこぼす。
…私。キズナ君が、みんなに取られた気がして…
「さみしかったんだ…」
ぽつりと呟き、玄関の方へ落下する。
受け身を取る技量も、余裕も無い私は、そっと目を閉じ。
「サクラちゃん!?」
優しく抱き止められた衝撃に、意識を失ったのだった。
「よっ、カードショップ『炎剣』へようこそ」
「今日は俺が『次元斬』について…」
「聞き飽きたぁ?そうか…」
「じゃあしゃあない。」
「『フィールドエフェクト』について説明しよう。」
「『フィールドエフェクト』はフィールド全体にかけるサポートカードだ」
「基本的にテーマデッキのサポートである事が多く。」
「強力な効果が多いな。」
「特に、 のサポートである場合は」
「サモンする効果がついてる事が多く。注意が必要だ」
「まぁ、戦う事はないと思うけどな。」
「それじゃ次回も、バトルスタート!」