「無事か!お前ら!」
痺れる足を無視して、背後にいるキズナ達に声をかける。
正面には、血の様に赫い結晶がこびりつく不気味な西洋人形。
辺りの煙を。更には結晶片を。
禍々しい色の光に換えて吸収するその存在は、唸り声を上げながらコチラへ粘着質な視線を送ってくる。
「コイツはなんだ!アオイ!?」
「わ、わからない。ただの『ウツシミ』のカードだったはず…グッ」
「アオイくん!大丈夫!?」
ダメ元で聞いてみた問いも煮えたぎらない様子。
そのまま頭を抱え始めたアオイにキズナが駆け寄り。
再びアオイに向けて飛びかかってきた人形を『グレートソード』で受け止める。
「ッ…!」
「 セ! ェ…!!」
腕力は、おそらく互角。
しかし、体重をそのままかけられる相手に対して。
コチラは大剣を使っての受け。
圧力がかかればかかるほど両手への負担が大きく。ジリジリと押し込まれる。
「マズっ…」
強度値を削られ、軽くなり始める大剣。
均衡が破られた事により、剣が歪み始め。
針の様に鋭い鉤爪が顔を守る装甲に接触。
金切音が響き渡る。
「『タネマシンガン』!」
ソレを救ったのは無数の弾丸。
一発一発は小さくとも、流れくる圧倒的な物量が。
余す事なく至近距離から叩き込まれ。
人形が、離れた場所に吹き飛ばされる。
「二人は休んでてください。私が代わりに!」
「上等!助かるぜ!サクラ!」
理解を拒む現実。
ホログラムの存在が襲いかかると言うソレに。
戸惑う事なく武器を手にした彼女へ、惜しみない賞賛を送る。
俺は一度だけ、こう言う事態に遭遇した事がある。
ソレは本当に幼い頃。
物の良し悪しもわからなかった俺が…
父さんの研究所で、装置に投げ込んでしまった一枚のカード。
そこから現れた粘着質な化け物と、研究所のバトラーが戦う。
ーーそんな記憶。
ずっと、夢だと思い込んでいた経験が。
あの時の、恐怖心や無力感と共に去来する。
…確かに怖ぇ。
だが…だからこそ俺がコイツらを守ってやる!
怯みかける己の膝に、拳を叩き込み。
手を前に、トリガーを引く。
「換装!『グレートソード』!」
「カ … マ …!!」
振るわれる鉤爪を、大剣の腹で受け。
今度は押し合いになる前に。
薙ぎ払う事で距離を取らせる。
狙いはやはり、アオイ。
襲いくるソレに焦燥し、頭を押さえて苦しむアイツを執拗に狙う人形は、まるで学習する事なく突撃を繰り返している。
「甘ぇよ!『戦力強化』!」
3合目。
単調な攻撃に合わせて、強度を上げた斬撃を放つ。
鉤爪が砕け、それでなお突き進もうとする人形に、躊躇なく蹴りを入れる。
「コレでッ…!」
そうして、次なる一撃。
全力を持って振るわれた斬撃が空気を震わせ…
「待、て!待ってくれ!」
ーーその瞬間。
遅すぎる静止の言葉が、グラウンドに響き渡った。
ーーーー
「あぁ!!そんな!嘘だ!ボクは!キミは!?」
錯乱した様子で駆け寄り、人形の手を取るアオイくん。
男の子にしては長い髪は、髪留めが壊れた事により滑らかに肩下辺りに広がり。
男の子にしては綺麗すぎる愛嬌のある顔が、涙でいっぱいになり。
自らと瓜二つの西洋人形を抱きしめる。
「アオイ!?危険だ!」
「その名前でボクを呼ぶな!!」
呼びかけたゴウジくんに、恨みを込めた鋭い言葉が返される。
…なんだ、なんでキミが怒って?
「いつから…いや、きっと最初から!現実が歪んだあの時から!!」
恨みを込めた鋭い瞳が、あちらこちらに殺意を振り撒く。
フィールド内にノイズが吹き始め。
アオイの周囲にズブズブと黄金の沼地が広がっていく。
ーー「助ける?」
そうして響く中性的な声。
怪しい、ローブを纏った人影がアオイくんと人形のそばに現れ。
金色に輝く手を前に、アオイくんに問いかける。
…不気味、不可解。
言い表せない不快感が心に生まれ。
思わず声を張り上げる。
「ダメだ!!!」
「ボクは!彼女を助けるために此処にいる!」
声が、響く。
黄金に、願いが届き。
上空に巨大な金時計が浮かび上がる。
クルクルと、古びた金時計は回り始め…
ーー存在の天秤が、再び入れ替わった。
ーーーー
穏やかに眠る青髪の少女が結晶に閉じ込められ約数分。
金の泥に染まる一本の花。
決して折れることの無い水仙の花を中心に、無数の結晶が浮かび上がる。
その力は、先程までアオイが使っていた『金皇』の力そのもので…
厄介さに舌打ちをする俺の背後。
何故か立ったまま意識を失っていたキズナが声を上げる。
「アオイ…君?」
その瞳が見つめるのは封じられた少女ではなく、ソレを守る一本の水仙。
人ですら無いソレに、声をかけたキズナへ。
反応した結晶槍が、凄まじい勢いで殺到する。
「馬鹿野郎!『グレートソード』!」
それに割り込み。剣を振るう。
遅れてサクラの花びらが旋回を始め。
なんとか、槍をやり過ごす。
「なんのつもりだ!キズナ!アオイはあそこに!」
「あの女の子が?」
「あぁ!そもそも君ってなんのつもりだよ!」
「いや、だって…アオイ君は…」
「構えてください!あのユニットを倒しますよ!」
「「おおー!」」
クラスメイト達が武器を片手に立ち上がる。
あそこに浮かぶフードの存在は言った。
「このユニットを倒せれば、この少女は解放する。」と。
すなわちコレは噂に聞く闇のバトル。
コレを勝ち残らなければ、次に閉じ込められるのは俺たちだ。
「まってよ!みんな!待って!」
「突撃ぃ!」「ガードは任せろ!」「へし折ってやるぜー!」
何やら騒いでいるキズナに、ソレを無視して殺到するクラスメイト達。
いくら強力な力を持つとはいえ敵は一体。
放たれた結晶槍は、見事なチームワークで破壊され。
そうして放たれた剣の一撃。
誰のものとも分からない、そんな雑な一撃を受け。
呆気なく、その花は光となって消えていった。
ーーーー
「既に均衡は破られている」
「仮初の停滞は終わりを迎え」
「二つの水は混ざり合う」
「あぁ、しかし…」
「きっと貴方は救うのでしょう」
「信じていますよ…」
「深淵に祝福を」
「カードショップ『炎剣』にようこそ」
「なんか、最近。お客さん少ないのよね…」
「アンタは大丈夫?」
「…そう、ならいいわ。」
「でも、そうね。」
「何かあった時のために、コレ。持っていきなさい」
「何かって?」
「お守りよ、お守り。」
「それじゃ、次回もバトルスタート!」
詳細が気になる陣営は?
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神久
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深淵
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烈火
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大海
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黄金