対戦よろしくお願いします。
「バトルの特訓に来たわ!」「ぜ!」
「いや、危なくね…」「わかる()」
寂れた港そのはずれにある倉庫街。その一角。木箱の積み上げられた古びた倉庫を前にして、芯の通った少女の声が響き渡る。
「アァ?テメェらここがどこだかわかってんのか?」
ソレを受けて面倒そうに上から見下ろしたのは、片目の古傷を眼帯で隠した大男。
穴の空いた黒い水兵帽子に、ボロボロの髑髏旗を背にどかんと座るその姿は、歴戦の艦首といった風貌だ。
「よくわかってるわ!兄貴に見捨てられた馬鹿共の吹き溜まりよね!」
「んだとッ!ぶっ潰グボァ!!!」
ミサキのその言葉に、男の眉がぴくりと動き。ソレに気づかない子分が挑発を買おうと、いきり立ったのを、近くの木箱を蹴り飛ばすことで乱雑に止めた大男は静かに口を開く。
「テメェ…ファローの妹か?」
親指を海賊旗へ、静かに向けた男は。
首を傾げる者達を他所に、ミサキへ向けてバトルバンドを翳して見せる。
そこに描かれているのは、亀甲の紋章に鏡池
、そして宝玉。
最新ではチーム『大海』のリーダーの証として。
古くは。『中宮家』の家紋として使われていたものだ。
「従兄妹よ、ソレが何か?」
ソレを聞いた男は、何を悟ったのか。
一瞬顔を曇らせると、渇いた笑みで吐き捨てる。
「ハッ。お優しいアイツの代わりに敵討ちってわけだ」
ザワザワと、その言葉にイキリ立つ子分たち。
対象的に静かに、後悔を滲ませ男に対して、
少女は…
「?違うわよ。」
…こてん。と首を傾げて言葉を返した。
「は?」
惚ける男。
理解できず。少女を見つめる男に、腰に手を当てていつもの仁王立ちを決めたミサキは、挑発的な笑みで楽しそうに告げる。
「言ったじゃない。バトルの特訓って。兄貴が選んだメンバーなんだもの。強いんでしょ?」
「!」
男の目がハッと瞬く。
背後の海賊旗が吹き込んできた風にバサバサとたなびき、隠された窓から光が差し込んだ。
そうして、弾かれる様に立て掛けられた棒を掴み取った男は。グッと水兵帽を後ろに回し、大声を上げる。
「当たり前だ!吠えずら掻いてもしらねぇからな!」
ソレは旧式の
戦いに重きを置いたが故に。
ホログラムと実体の融合を可能としたオーダーメイド品は、その機能を開放し。
男のバトルバンドと共鳴する。
「悪いけどこっちのセリフよ!アタシ様強いもの!」
「「バトルスタート!」」
ーーー
「俺は『財宝の山』を発動!」
男の宣言と共に立ち昇る黄金の燐光。
その場で手にした棒をくるり回した男が、その鋒を斜め下に。片脚を下げて構えを取るとそこに被さる様に黄金がまとわりつく。
「効果によりクイックランスを装填する」
「最初に換装するとコストが無くなるカードね?」
「あぁ、そして2枚装填。バトルだ!」
宣言と共に、こちらに駆け寄ってくる男に眉根を寄せる。
戦闘準備と言うには、あまりにもせっかちすぎる。
「バカね、最初のバトルフェーズは相手もバトルフェーズじゃないと換装できないわ!」
「悪ぃが、俺にそんなルールは適応されねぇのよ!『クイックランス』!」
「ッ!ミサキ躱わせ!」
こちらの言葉に、ニヤリと返した男。
金の閃光に合わせて、シロウから聞こえてきた警告に、慌てて身を捩ると、服の裾を破く槍の一撃。
「!あっ…ぶな!?」
慌ててバックステップ。
「オラオラ!じっくり見てる暇はねぇぞガキ!」
「み、たいね!なら!2枚装填!バトル!」
喰らい付く男の連撃に、乱雑に2枚選んで装填。
そのまま、裏で換装する。
「な、めんなッラァ!」
両腕で支え、撃ち放ったシールドバッシュに、槍を弾かれた男が距離を取る。
なるほど、武器が実体を持つと言うことは、通常以上に衝撃を受けるという事。
ソレは敵、味方関係ないと言うわけだ。
「チィ!…だが、高コストを無駄にしたなぁ!」
「必要経費よ!」
固く棒を握り直した男の言葉に、軽口で返す。
楽しいバトルだ。
兄貴が家を出る前のバトルを思い出す。
「なら、コイツはどう凌ぐ!『海面薙ハルバード』に『昇海ダイナミックウェーブ』を多重換装!」
続いて放たれたのは豪快な薙ぎ払い。
鉾が過ぎ去った地面に、巨大な溝が生まれ。
ーー次の瞬間。
勢いよく水が溢れ出す。
「馬鹿な!」「水の無いところでこれほどの水遁を!?」「あぁりえない!」
こんな時もおちゃらけた三人の声。
水圧に後方へ押し込まれながら、その声に笑みを浮かべたアタシは。
盾を地面に突き刺し、無理矢理に空間を生み出す。
そして生まれた数秒の猶予。
体勢を立て直したアタシは、盾が砕けると同時に、バトルバンドをつけた手を前に伸ばし宣言する。
「罠発動!『唯一の選択』!このターン破壊されたアーツを除外し、デッキから同名カードを換装する!」
襲いくる水面を掴み取る。
波が水色の波紋に収束し。
荒ぶる力の奔流に押し込まれそうな手を、もう片方の手で支え。掌握する。
「『シルバーアックス』を換装!」
確かな手ごたえ。
少しずつ水流が手元で変換され。
イメージが明確になると同時に、腕を振り抜く。
四散し、破れる水の波。
白銀が光に照らされ、倉庫の外壁に光の影をつける。
…気づけば倉庫の外に押し出されていたらしい。
軽く息を吐き、濡れたバンダナを投げ捨てる。
風に乗り。
ふわりと浮いたバンダナが、倉庫内のシロウの手に渡るのを見て頷く。
「ッ…リーチはこっちが上だ!」
コチラの武器を見て、警戒しながら駆け抜けてくる男。
確かにその通り。
斧と槍ではリーチが違う。
打ち合いなどしようものなら、斧は届かず。
ダメージは避けられないだろう。
「本当にそうかしら?」
…打ち合いをするなら、ね?
ザッと足を後ろに下げ、身体を捻る。
グッと力を貯め、肩にかかる頼りになる重さに笑みを深め、先程のバンダナの動きを脳内で再生する。
「風向きヨシッ!シャォラィ!」
「んなッ!??グゥ、!」
勢いを乗せて空を斬る。
遠心力と共に加速しながら飛翔する斧に、思わず縦に突き立てられた薙刀の鋒が、白銀と衝突し。
ーーその両方が甲高い音と共に弾け飛ぶ。
「ストライッ!」「さすがミサキ様!」「ナイッシュー!」
盛り上がる三人に髪を払い、笑みで返す。
…油断はしない。
すぐさまカードを引き、攻勢に出なければチャンスを失うだろう。
「チャージインよ!」
「チャージインだ!」
同時の宣言。
動揺を飲み下し、武器を拾いに駆ける男を視界の端に捉えながら、カードを装填。
発動する。
「私は『財宝の山』を発動!『ゴールドアックス』を装填!」
「悠長だな!3枚装填。バトル!『クイックランス』を換装!」
突き刺さった槍を引き抜き、そのまま後ろに強く引く男に対して。
アタシは金の斧を選択。
金の燐光が集まる腕を後ろに構え、新たなカードを発動する。
「冗談!追いつくのはアンタの方よ!『正しい選択』を発動!『飛翔斧トマホーク』を換装!」
そして同時にかかる重心の変化。
手の中の重さを認識し、最適な軌道を計算したアタシと男は、腕を振るい。体重を乗せて武器を放つ。
「シッ!」
「ラァ!」
空中でぶつかる槍と斧。
弾かれた斧が天高く打ち上がり、換装の切れた鉄の棒が、私の背後に広がる水たまりに突き刺さる。
ーーそして
「想定済みだ!追加換装!『潜突槍シーピアース』」
「足元からッ!?きゃあ!?」
「ミサキ様!?」「あんなん反則だろ!?」
その水面が一つに収束。
巨大な水槍となって、突き刺さる。
ーーぐんぐん離れていく地表。
今度は無理矢理に倉庫へと押し込まれ。
天井に設置されたクレーンにぶつかりそうになる。
「へ、井の中の蛙にはちとキツかったか?」
「いや、アレでいい」
「なんだと?」
地上の喧騒。
ソレすら耳に入らない極限状態の中。
経年劣化から天井に開いた大穴に意識を向ける。
…コレは賭け、ただし。全ての条件は整った確率の高い賭けだ!
「角度や良し!ッシャァ!」
「クレーンを!」「掴んだ!?」
じゃらじゃらと鎖の伸びる音。
ソレと共に軌道が変わり、大穴と。
そこから落ちてくる一本の斧が、迫る。
同時に腕を前に、カードを装填し、トリガーを引く。
「いくわ!『
「馬鹿な!お前は、バトルフェーズ…いや、違う!?」
驚愕の声が聞こえ、手から放たれた『加工』の光が『トマホーク』に突き刺さる。
「そう、アタシ様は…効果で換装しただけ!そして…」
「チィ!換装!」
光が膨張。
勢いそのままに、そこに突っ込んだ私は、浮かぶ白金の飛翔斧を掴み取る。
「『トマホーク』はまだ破壊されてない!『
光を集め、姿を変える戦闘衣。
赤緑の彩色が染める翼が背に広がり。
一気に地表へと加速する。
「『海抜槍ヴァルナーガ』!」
迎え撃つは、蒼色の三叉槍。
辺りに残る『スイテキ』を全て収束したソレは巨大な槍となり、その鋒で天を突く。
…でも、アタシの方が強い!
「叩ッ斬る!『
回転しながら振るう、重力+推進力の一撃が水の槍を縦に割り…
「グッ…ウァアア‼︎?」
男の手に換装された三叉槍を叩き割った。
ーーー
「いいバトルだったわ」
バトルも終わり。
伸ばされた手を取り立ち上がる。
ファローとも違う熱いバトル。
仲間を信じて戦うアイツとは違い、自分を信じ抜く少女に、焦がされる。
「あぁ、強いな。お嬢。名前は?」
自然と口をついた言葉に、我ながら苦笑い。
流石の少女もムッとしている。
一族の敵と言ってもいい相手に。
名乗る訳はない、か…
「礼儀がなってないわね!名前を知りたいなら。まずは自分から名乗りなさい!」
ーーお前は礼儀がなってねェな。まずは自己紹介からするもんだぜェ?ーー
少女と、親友の姿が重なる。
哀れな俺を憐れむでもなく、真っ直ぐに。
向き合ってくれたアイツの姿が…
「ふかみ…『深御龍馬』だ!」
「そ、私は……」
夕焼けの中。
固く交わした握手に、今度こそ。
裏切らない事を決め、俺はガントレットの紋章を見つめるのだった。
「ようこそカードショップ『炎剣』に」
「あん?あぁ、悪ぃな船長じゃなくて」
「いまは、俺が『大海』のリーダーやってんだ」
「だが、責任持って戦闘武装は管理してるぜ?」
「ん?戦闘武装が何かって?」
「ソレはお前…バトルガントレットのリンク武装だろ。」
「ん?最近はあんまり使わねぇのか…」
「まぁ普通に戦う分には、扱いやすいってなだけだから気にすんな」
「そんじゃ次回もバトルスタート!」
詳細が気になる陣営は?
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神久
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深淵
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烈火
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大海
-
黄金