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※ライフ周りの描写を、差し替えました。
キーンコーンカンコーン!
朝の始まりを告げるチャイムが聞こえ始め、あわてて靴を下駄箱に入れた僕。
『
…これもみんな師匠のせいだ!
わけあって、師匠の下で暮らしている僕は、当番制で朝ごはんの準備をしている。
今日は師匠の番で、朝は少し遅くに目覚ましをかけていたのに…
師匠は昨日帰るのが遅かった、とかで寝坊したのだ。
当然、朝食は無く。
仕方なく僕が用意したところで気づけば、時計は朝の8時。
…遅刻が確定してしまった!
ーーうらみますよ!師匠!ーー
なんて考えながら走っていたからか…
廊下の角を曲がったちょうどその時。
ドンっ!と言う音と共に前から衝撃…バランスを崩した僕は尻餅をついた。
「ご、ごめん!」
「いってぇな…。って大丈夫かよ」
ぶつかった衝撃でカードが散らばり、必死にカードを拾い集める僕の姿に、不機嫌そうな顔を心配に変えて手伝ってくれる男の子。
「こんくらいでコケるとか、肉食ってんのか?」
「え、あーひとなみには?」
「なら、トレーニングが足りねーよ」
力こぶを作って見せつけてくる彼は、眉間に寄った皺をもみほぐすなり、散らばったのがバトルカードだと気づくと、すっかり機嫌を良くしながらカードを拾って渡してくれた。
「あ、ありがとう」
「おうよ!気をつけろよ?」
「うん。」
同学年だと思う上ばきに、ガッチリした体格。見た事ない子だ。
それにぶつかったのは僕のせいなのに、気づかってくれるなんて…
「そ、そうだ。名前っ、!」キーンコーンカンコーン!
鳴り響くチャイムの音に声がかき消され、男の子の視線が、僕から時計の方に向けられる。
「っと、時間が…!またな!」
そうして、颯爽と立ち去った彼。
残された僕の手は空を切り、グーパーと手のひらを変えながら見つめるはめになった。
友達…。なりたかったなぁ…
「ハッといけない、ちこく遅刻!」
慌ててカードをまとめた僕は、全てのカードをデッキに戻して走り出す。
長時間デッキに入れてはいけないと言う師匠の言葉も忘れて…
22枚になったデッキは腕の中で頼もしい重さを僕に返してくれた。
ーーーー
あの後。無事に授業が進み。
3時間目、体育。
今日は隣の5年2組といっしょに、バトルカードの練習だ。
いつもなら数が余るからと先生の方に向かった僕に。
先生から予想外の言葉をかけられる。
「キズナくん。大丈夫ですよ?今日から転校生が来ましてね。ちょうど割り切れるんです。」
にっこりと優しい笑顔の先生に、絶望した表情の僕。
…知らない子と…バトル!?ただでさえ人見知りの僕が!?
「お願いしますね?」
「ぁ、ハイ…」
そんな僕の気持ちは知らないとばかりに背を押す先生。
小さな声で返事を返し、気分はドナドナされる羊である。
「うっし!待ってたぜ?」
そうして立たされた白線の向こうには、すでに準備万端の対戦相手がいた。
体操服の腕から覗く腕は丸太のようで、年上のようなガッチリした体は間違いなく…
「あれ?朝の?」
「おう、
「あ。うん!
朝の男の子。名前をゴウジくんと言うらしい。
ニカっと笑った彼は年季の入ったバトルバンド……騎士装甲みたいな特注品。を胸の前でグッと見せつけ、カードに指を置く。
「早速やろうぜ!」
「あ、うんやろう!」
慌てて僕も、バトルバンドのデッキに指を乗せ、声を張り上げる。
「「バトルスタート!」」
虹の光がふわりと広がり、服が戦うのに相応しい物に変わっていく。
ーー僕はこの瞬間が好きだ。迷いが消えて、本当の自分になれた気がしてーー
見に纏うのは動きを重視した軽装の鎧。
「しゃあ!ドローだ!」
対する彼は、
「ドロー!」
そして僕も後に続くようにカードを引き…
「あ、あれ!?」
《ケムリ》《ケムリ》《ボム》
引き抜いた、見覚えのないカード達に戸惑い。困惑のままバトルを始めるのだった。
ーーーー
俺は今。最高にキレていた。
何に?もちろん、ちょこまかと逃げる対戦相手にだ。
今日の朝、曲がり角で会った時からナヨッとした奴だとは思っていた。
だが、助け起こした時に握った手は剣士のもので、散らばった《ソード』の輝きからも、期待できるバトラーであるのは間違いなかった。
なのに…
「ァアア!ふざけんなよ!なんだよさっきから《ケムリ》って!!俺とは剣を合わせる価値もないってか!!」
両手剣《グレートソード》を乱雑に振るい、あたりの煙を吹き飛ばす。
そうして開けた視界から覗くキズナに向かって突撃すれば、再び《ケムリ》に隠される。
イライラする。
今だって、攻撃のチャンスはあったはずだ!
煙に隠れて切りかかるでも、距離を取って射撃するでも。どうとでもできたはずだ!
なのにコイツはしない。
俺の換装が解除されるのを待ち、ライフの消費を待ってやがる。
気に入らない。本当に気に入らない。
だから…
「もう、遊びはやめだ!チャージイン!」
《グレートソード》を換装したまま、このタイミングでのみ効果を発揮するエフェクトカードを装填し、宣言する。
エナジースフィアが黄色くなり、敗北にはいっぽ近づいたが。そんな事は百も承知だ。
「《
「っ!リ、リアリティ・コーティングだって!?」
煙の向こうから聞こえる驚愕の声に、ニヤリと笑う。
《
その効果は強力で、換装されている武器を対象に5点の強度値を加える事ができる。
使用するとアーツカードを発動出来なくなるが、それは問題ない。なぜなら…
「どうした?やりたいんだろ?消耗戦。」
「消耗戦?無理だ。だってもうその剣は消えないじゃ無いか!!」
コレにより、《グレートソード》は時間によって解除されなくなったからだ。
どれだけ逃げ回ろうと関係ない。あっちの弾切れまで追いかけて、一撃を叩き込む!
「覚悟はできたか?ぶっとばすぜ!!」
そうして振るった愛剣は、煙ごと対戦相手を吹き飛ばした。
ーーーー
木陰にて、スーツ姿の男がカードを見ながら一人呟いていた。
「ええ、私です。」
いや、正確には、カード型の端末に語りかけていた。が正しい。
落ち着いた様子で身を隠す男は、視界の隅で行われているカードバトルに目を向ける。
「次のターゲットが見つかりました。」
「10歳ほどの男の子です。」
彼の視線の先には、軽装甲と重装甲の二人の少年。
慣れない様子ながらも手を打つ少年に、ソレよりも強力な力で押し込む若い戦士。
そんな二人を無表情に眺めながら、言葉を続ける。
「すぐに分かりますよ。バトルガントレットなんて旧式の装備を使っていますから。」
「えぇ、頼みましたよ。「キャプテンファロー』」
そう言葉にして、連絡を終えた男の視界の先に有るのは《グレートソード』。
発動から、3ターン。いまだに消滅しないその剣を、静かに男は見定めていた。
「よ、ようこそ、カードショップ『炎剣』へ!」
「そうなんです。今日はお手伝いで…」
「あっ。」
「今日は、『バトルバンド』について紹介しますね!」
「『バトルバンド』は僕たちバトラーの基本装備です!」
「最初は全身をおおう鎧のようなものだったらしいんですが、だんだん小型化が進み。」
「今ではリストバンドにカード読み取り機能がついた、デジタルバンドが基本になっています。」
「さらに、最新型はAIが『換装』までしてくれるのだとか。」
「見てみたいですよね!」
「あ、ごめんなさい。それじゃ、次回も…」
「バトルスタート!」