※一人称視点を変更しない方が良いなど、ご意見ありましたらお気軽に感想にお書きください。
カードバトルの後。
結局負けてしまった僕は、コトネさんに連れられて公園のベンチに座りながら。
飲み物片手に、今のバトルを振り返っていた。
「《コイン》だよ?」
せっかくだから。と、キャノンを中心とした遠距離型のデッキを見せてくれたコトネさん。
その種明かしの言葉に首を傾げる。
…《コイン》確かにデッキに入っているコスト0のカード。
僕の《ケムリ》と同じ強度値0のカードが、あの《キャノン》の秘密だと聞いても納得ができない。
「でも、コトネさん。『
「うん、使ってないよ?」
そう、少なくともこのバトル。
コトネさんは多重換装をしていなかった。
たまに、《コイン》を指で弾く事があっても、ソレが特別な力を発揮したことはなかったはずだ。
ソレでも《コイン》が答えだと言うのなら…
「効果以外で…それこそ《コイン》自身が、弾の動きを変えた?」
「おお、やっぱりいいセンスだね。」
やるじゃん!と、わしゃわしゃ頭を撫でてくれるコトネさん。
流石に恥ずかしいからと、止めてもらい解説をお願いすると。
《コイン》と《ケムリ》のカードを手に、立ち上がった彼女は。
どこからともなく眼鏡を取り出し、キリッとしてから口を開く。
「では、キズナくん。戦ってる時、私が強度値0のカードについて、なんて話したか覚えてる?」
「えっと、ただのホログラムだけど、カードにとってはそうじゃない。ですよね?」
言葉にしながらも、首を傾げる。
確かにカード達はホログラムだ。
しかし、ホログラムと言っても、実体のあるホログラム。
カードと僕たちで見え方が違うなんて事ないはずだけど…
「その通り!簡単に言えばね、私たちにとってはそこに無い物だけど、《キャノン》にとってはそこに有る物。なんだよ。」
そこに無いけど、有る物…わかるような、わからないような…
「難しい?じゃあ、《ケムリ》で考えてみて?実際に煙がいっぱいあったら、キズナくんはどうする?」
「ハンカチで口を塞いで、姿勢を低くします!」
「うんうん、そうだよね。でも、カードの《ケムリ》ならソレはいらない。コレはそう言う違いなんだよ」
なるほど、と頷きカードを見る。
僕にとっては見えるだけの《ケムリ》だけど。
きっとそこには確かな煙があって。
匂いも、熱さも実際にはそこにあるんだ!
「…じゃあ、《キャノン》の弾が《コイン》にぶつかって、その動きが変わった?…でもそこで消えなかったのは…」
「「強度値が0だから!」」
「ふふ、すごいよキズナくん!こんなにすぐ分かっちゃうなんて!」
嬉しそうなコトネさんに、こちらも嬉しくなる。
…そうか、カード達には実際の形があって。
無理にソレを変えなくても、生かす方法がいくらでもあるんだ!
「ありがとうございました!僕、帰って煙について調べてみようと思います!」
「うんうん、そうするといいよー!あと、このカードもどーぞ!」
慌てて荷物をまとめる僕に、微笑んだコトネさんがくれたのは1枚のカード。
ーー『再挑戦』
使用済みとなっているカードを一枚装填できるエフェクトカードだ。
「一度がダメなら、何度でも!頑張ってみてね!」
「はい!」
ーーーー
ドタバタと慌ただしい音を立てて扉が開く。
「師匠!ただいまもどりましたー!」
「おう、キズナおかえり。ずいぶん
現れたのは、弟子であるキズナ。
今日は、授業で惨敗し、フィールド外に叩き飛ばされるほどの衝撃を受けたと聞いたから、急いで帰って家で待っていたのだが…
いつになく、元気いっぱいな様子に肩透かしをくらいながら、ニヤリと笑みを返す。
「そのバトルバンド!まさか、師匠が稽古を!?」
「の、つもりだったが…必要無さそうだしな〜」
「そ、そんな〜!?」
ガックリと肩を落とすキズナに、苦笑いをして口を開く。
「それよりキズナ。サクラちゃん来てるぜ?」
「え、も、もしかして忘れ物しちゃった!?」
小指を立てながらニヤニヤ笑ってやると、ハッとした顔で居間に駆け込む愛弟子。当然。ハンドサインの意味なんてわかっていないだろうが。
部屋に入るなり抱きつかれ、あわあわし始める辺り。
間違ってもないんだろう。
…若いねぇ…。
そのまま楽しそうにする子供達を背中に、お菓子でも持って行ってやるか、と振り返る。
確か右の戸棚にーー
ーー瞬間。禍々しい気配を背後に感じ、後ろ手に愛剣を換装。
不法侵入者の喉元に鋒を突きつける。
「おや、さすがはリーダー。鈍ってはいないご様子で。」
「誰だお前。」
聞き覚えの無い。
いや、ぼんやりと聞き覚えがある?声に振り返る。
霧を纏った黒い人影。
スーツの上に仮面と言ういかにも怪しい出立ちの男に。
脳裏に走り始めたノイズが、親近感を示している。
「お前…。」
「えぇ、誤魔化されはしませんよ。私も、彼もね。」
「…。わかった。」
言葉は短く。
しかし、言いたいことが何故かわかる。
きっと、来るべき時が来たのだ。
『出張が決まった。しばらく留守にする。』
と言う書き置きを残した俺は。バトルバンドをガントレットに付け替え、『次元流剣術道場』を立ち去るのだった。
ーーーー
「師匠!!ってあれ?」
「はぁ…やっぱり遅かったのね」
サクラちゃんも帰り、そろそろ師匠も買い物から帰ってくるだろう。と、玄関の開く音に駆け寄った僕の前にいたのは、珍しく焦った様子のカリン店長。
「こんな遅くにどうして?あ、師匠なら…」
「知ってるわ。」
めんどくさそうに眉をひそめたカリンさんは、遠慮なく道場に上がり込み、師匠の部屋の冷蔵庫(電源は入ってない)を開く。
…どうしたのかな?お腹すいたならご一緒するのは構わないけど…
「…たく。アンタじゃないんだから、一番にこんなところ開けないわよ。」
そんなふうにつぶやくカリンさんの手には、師匠のバトルバンド。
常に師匠の腕にあるはずのコレが、どうしてここに?
「キズナ。アンタの師匠、しばらく留守にするそうよ」
「え、えぇ!?そんな大事な事言ってくださいよ!?」
ほら、と手渡された紙を見せられて、ぐぬぬと唸り声を上げてしまう。
実際。師匠はよくやるのだ。
どこかで強い相手の噂を聞けばふらっといなくなるし。
大きな大会があれば、いつの間にか飛行機に乗ってる。
今日は、帰ったら居たから安心していたけれど。
そうはいかなかったらしい。
「もー!僕はどうすればいいんですか!師匠ーー!」
僕の情けない叫び声は、シンとした道場に響くのだった。
…あ、夕食はカリンさんが作ってくれました。おいしかったです。
「ようこそ、カードショップ『炎剣』へ」
「最近、留守にしてて悪かったわね。」
「今回は、『多重換装』について説明するわ。」
「コレは『換装』中に『換装』をする事で起こす一種の抜け道ね」
「先に発動したカードは実体化を進めてるから、ここに後から発動したカードのデータが混ざるわけ。」
「こうして、特徴を引き継いだカードの発動が行われるわ。」
「当然、2枚とも実体化する時間は短くなるし」
「ボムなんかは誤爆することもあり得る。」
「もし、やりたいなら気をつける事ね」
「それでは、次回もバトルスタート!」