ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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奈落、最終戦……ッ!!

※8/12更新しました!


十二話目 ハジメの実力

 

 

―――〝オルクス大迷宮〟 奈落・100階層―――

 

 

「クルゥアン!」

 

 

先手は〝ヒュドラ〟―――……銀頭による極光。

 

予備動作もなく放たれたソレは、即座にハジメに被弾―――……する直前にハジメの全身が紅くスパークしたかと思うと、なんと3()6()0()°()()()()()()()そのまま極光が銀頭に浴びせられる事となった。

 

 

ドパンッ

 

 

「クルゥアァン!?」

 

 

まるで当然のように自分の攻撃が()()()()()現実に流石の銀頭も激しく動揺したらしく、油断も相まって避ける間もなくマトモに極光を受ける事となってしまった。

 

轟々と爆煙が立つ中、銀頭の極光を()()()()()()()してみせたハジメは即座にカオリユエを抱きかかえて銀頭から距離を取った。

 

ハジメの覚醒ぶりに喜び混じりの驚きを見せていたカオリとユエであったが、ハジメの血の気の引いた顔色を見て別の意味で驚かされる事となった。

 

それと同時に得心した。

 

先程の銀頭の極光を弾き返した現象は、ハジメを以てしても使用後の負担が甚大であるという事を。

 

そのハジメは荒く息をしながらカオリとユエの耳元で語りかける。

 

 

「……僕の身に起こった事を簡潔に話すよ。

どうやら僕の身体は()()を流す事で磁石のような性質を帯びるようになったらしい。 ……ついさっき発現した僕の固有魔法、みたいなものかな?」

 

「それは、スゴいけど、ハジメの様子を見る限り……」

 

「……魔力の消耗が尋常じゃない」

 

「〝纏雷〟を最大出力にしてようやくさっきの攻撃を弾き返せるんだけど、ユエの言う通り消耗がヤバい。

もう一度同じパフォーマンスをしろと言われても無理としか言えないから、次こそは決着を着けようと思う」

 

「……勝算は、ある?」

 

「…事前練習したかったけれどね、今さっき思いついた()()()でなら、もしかしたら奴を倒せるかもしれない」

 

「ハジメ、()()()って……?」

 

 

「クルウゥゥアアァァン!!!」

 

 

……そうこうしている内に銀頭は復帰し、自分が放った極光を自分に喰らわせてきた侵入者への憤怒と憎悪を晴らすために辺り一帯に光弾を撒き散らしてゆく。

 

 

「クソッ、やっぱりあの程度じゃ死なないかッ!

カオリ! ユエ! 今だけは僕を信じてくれ!!

銀頭の意識(ヘイト)を引き付けて欲しい、頼む!!」

 

「分かったよ、ハジメ!!」

 

「ん! カオリの血を飲んで元気100倍……ッ!!」

 

 

……愛しの彼女達の頬に軽くキスをしたハジメは即座に〝気配遮断〟を使って銀頭の知覚領域から消え失せる。

 

無論、黙って見逃す銀頭ではなく、先程までハジメのいた場所めがけて光弾を放ち―――……

 

 

〝聖絶〟

 

 

……咄嗟にカオリによって神聖な輝きを放つドーム状のバリアが展開され、銀頭が放った光弾の悉くを無力化していった。

 

ならば守りの上から蹂躙すると言わんばかりに極光を放とうとして―――……

 

 

〝緋槍〟

 

「ッ!? クルゥアアァァ!!」

 

 

……開かれた口の中に寸分違わず炎の槍が突き刺さり、激しく炎上。

 

地獄の苦しみを味わう羽目になった銀頭はますます怒り狂い、その巨体を激しく動かして周囲の地形に致命的な破壊をプレゼントしていく。

 

 

〝錬成〟……ッ!」

 

 

……それを見逃すハジメではなく、〝錬成〟によって崩壊した地形を即席の拘束具に変え銀頭を雁字搦めにする。

 

 

〝縛煌鎖〟!」

 

「クルゥ、ァ……!」

 

 

……ついでとばかりにカオリが無数の光の鎖を伸ばし、銀頭を更に締め上げ身動きを取れなくさせた。

 

 

「「 ハジメ、今ッッ!! 」」

 

「散開しろ! 〝デュフテンダー・モント〟ッ!!!」

 

 

〝この機を逃せば次はない〟…ハジメの脳内が今までにない程加速し、冴え渡ってゆく。

 

ハジメの左腕に装着されていたガントレットが再び分解され、空間内の至るところに散っていった。

 

 

〝空力〟ッ!」

 

 

一瞬の内に銀頭の頭上にまで跳躍するハジメ。

 

〝天歩〟の最終派生技能〝瞬光〟をあらかじめ習得していた事で知覚領域は拡大されており、加えて〝天歩〟の各技能が格段に上昇している。

 

 

〝豪脚〟! 〝金剛〟! 〝覇潰〟!」

 

 

……空中でキックポーズを構えた後に、右脚を部分的に硬化させ、身体能力を5倍にまで向上させる。

 

 

()()弾き飛ばせ! 〝デュフテンダー・モント〟!」

 

 

……いつの間にか散り散りになっていた〝デュフテンダー・モント〟がハジメの後方…天井部分に集結し、ハジメを凄まじい勢いで銀頭めがけて弾き飛ばす。

 

銀頭は、回避ではなく極光で迎え撃つ選択を取った。

 

 

「クルウゥアアァァ!!!」

 

うおおぉおおぉおぉぉ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、ハジメの身に起こった〝変化〟について軽く説明しておこう。

 

最初、銀頭の極光を浴びたハジメの肉体は、かつてない程の生命の危機に晒された事で生存目的や理性を失いかねない程の急激な肉体の変異…俗に言う〝怪人化〟によって極光を超克しようと試みていた。

 

肉体を鍛え、魔物肉を喰らい、肉欲を満たしてきた事でハジメの心身は〝ヒュドラ〟の猛攻にも耐え切れる程に人間離れしていた。

 

つまり、自分のレベルに適した地獄を乗り越えられる段階にいたのだ。

 

結論から言ってその試みは()()成功しており、ハジメの肉体は電気を流す事で周囲の()()を引き寄せたり、あるいは弾き飛ばす特殊な力場を形成できるようになっていた。

 

磁石のS極やN極を想像すると良いかもしれない。

 

あらかじめ対象の魔力性質を身体に覚え込ませる必要こそあるものの、適応さえすれば銀頭の極光すら弾き飛ばせる事はハジメが実践した通り。

 

ちなみに〝デュフテンダー・モント〟は、〝シュラーゲン〟の残骸にハジメの血肉が絶妙なブレンドで染み込んだ事で生まれた奇跡のアーティファクトであり、ハジメ以外でハジメの異能力を発揮できる唯一の存在でもある。

 

〝纏雷〟によって蓄積(チャージ)された電気が枯渇しない限り、自律的にハジメを援護(サポート)するハジメの第三の手足と呼ぶべき代物なのだ。

 

……しかし、ここで一つ疑問が残る。

 

何故、ハジメは怪人になっていないのか?

 

 

〝人間としての意思が強固だったから〟

 

〝地球にいる両親と再開したかったから〟

 

〝ヒーローに倒されたくなかったから〟

 

〝単純に怪人になる気がなかったから〟

 

〝カオリとユエを悲しませたくなかったから〟

 

 

全て、紛れもなくハジメの本音である。

 

だが、最大の理由は―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……〝ジャスティスボンバー〟……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝ヒーローの技をヒーローっぽく言ってみたい〟

 

ただ自己満足したいだけのヒーローオタク極まれりな思考回路で、小さい頃テレビで見たラ○ダーキックを再現するハジメ。

 

ハジメの放った渾身の飛び蹴りは銀頭の頭部を豆腐の如く容易く粉砕し、勢いそのままに地面に激しく衝突。

 

綺麗さっぱり頭が無くなった〝ヒュドラ〟の胴体は、特にこれといった抵抗を見せる事なく倒れ伏し―――……

 

 

ドッガアァァァァァン

 

 

「「 ッッ!?!? 」」

 

 

……木っ端微塵に大爆発した。

 

念の為、感知系技能で周囲を確認するカオリ。

 

〝ヒュドラ〟の反応は完全に消えている。

 

次いでハジメの反応を確かめる。

 

 

「カ、カオリ、ユエ、助けてェ……ッ!」

 

「「 ッ!! ハジメッ!! 」」

 

 

あまりにも掠れたハジメの声のする方…いまだ土煙をあげる大きな穴の中へと駆け寄るカオリとユエ。

 

そして、いた。

 

全身ボロボロながらも確かに生きているハジメが。

 

 

「ハジメ大丈夫!? 生きてる!?」

 

「ハジメ! ハジメ!!」

 

「……カッコつけすぎたよ……。

流石に、もうムリ……(;´Д`)ハァ…ハァ…!」

 

 

カオリとユエの肩を借りながらゆっくりと立ち上がったハジメは柄にもなくカッコつけすぎた事を内心猛省しながら目前に広がる〝ヒュドラ〟の死骸を見やる。

 

……ここに〝オルクス大迷宮〟の完全攻略は成った。

 

 

「……僕達、勝ったんだね」

 

「うん、私達勝ったよ……ッ!」

 

「……ん、完全勝利……」

 

「うおぉぉ!!

勝ったぞおぉぉ!!!」

 

「勝ったあぁぁ!!」

 

「んー! …………ん?」

 

 

ギイィィィィィィィィィィッッ

 

 

……両手を挙げているとふと、奥の扉が独りでに開いた。

 

〝新手か!?〟…と警戒したものの、いつまでたっても特に何もなく、ハジメ達は意を決して何があるのかを確認しに扉の奥へ入った。

 

踏み込んだ扉の奥は―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここが〝反逆者〟の住処、なのか……?」

 

 

……先程までいた〝奈落〟が地獄なら、ここは天国かと錯覚する程に穏やかで広大な空間に出てきたのだ。

 

まず驚かされたのは〝太陽〟だ。

 

もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。

 

頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。

 

僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称したのである

 

 

「ハジメ、あそこに家がある」

 

「……あそこで休めると良いけれど」

 

「そうだね、私もクタクタ……」

 

 

ユエが指差す方向…ちょっとした球場くらいの大きさの家とそれに隣接する建築物の方へ歩を進める。

 

次に注目するのは耳に心地良い水の音。

 

奥の壁は一面が滝になっており、天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいっている。

 

滝のそば特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地良く、よく見れば魚も泳いでいるようだ。

 

もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。

 

今は何も植えられていないようだが、その周囲に広がっているのはもしかしなくても家畜小屋である。

 

動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜―――……と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。

 

緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

ハジメ達は川や畑とは逆方向の建築物の方へ歩を進めた。

 

……建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

 

「……カオリ、ユエ、油断せずに行こう」

 

「分かったよ」

 

「ん……」

 

 

石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。

 

全体的に清潔感があり、エントランスには温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。

 

薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。

 

どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。

 

取り敢えず一階から見て回る。

 

暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレ等を発見した。

 

どれも長年放置されていたような気配はない。

 

人の気配は感じないが―――……言ってみれば旅行から帰った時の家の様と言えばわかるだろうか。

 

しばらく人が使っていなかったと分かる、あの空気。

 

まるで、人は住んでいないが管理維持だけはしているみたいな……?

 

ハジメとカオリ、ユエはより警戒しながら進む。

 

更に奥へ行くと再び外に出た。

 

そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンっぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。

 

彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。

 

……試しに魔力を注いでみると、ライオンもどきの口から勢いよく温水が飛び出した。

 

どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。

 

 

「まんま風呂だね。

こりゃいい、何ヶ月ぶりの風呂なんだか……」

 

「ふふ、一番風呂しよっかなァ……」

 

 

思わず頬を緩めるハジメとカオリ。

 

最初の頃はあまり余裕もなく体の汚れなど気にしていなかったハジメとカオリだったが、余裕ができると全身のカユミやフケが気になり、大層な魔法陣を書いて水を出し、体を拭くくらいのことはしていた。

 

しかし、二人とも風呂は大好きである。

 

安全確認が終わったら堪能しようと頬を緩めてしまうのは仕方ないことだろう。

 

そんなハジメとカオリを見てユエが一言。

 

 

「……入る? 三人一緒に……?」

 

「……一人でのんびりさせて?」

 

「ユエは私と入ろ?」

 

「むぅ、ハジメも一緒がいい……ッ!」

 

 

素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿に、一緒に入ったら寛ぎとは無縁になるだろうと断るハジメ。

 

ユエは唇が尖らせて不満顔だ。

 

……それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。

 

しかし、書斎も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。

 

仕方なく諦め、探索を続ける。

 

三人は三階の奥の部屋に向かった。

 

三階は一部屋しかないようだ。

 

奥の扉を開けると、そこには直径7、8mの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 

いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。

 

人影は骸であり、既に白骨化して黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。

 

薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。

 

その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。

 

魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。

 

寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか―――……

 

 

「……怪しい、どうする?」

 

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。

 

おそらく〝反逆者〟と言われる者達の内の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

 

 

「……恐らく地上への道を調べるには、この部屋がカギになるんだろうね。

僕の〝錬成〟も受け付けない書斎と工房の封印、調べるしかない。

カオリとユエは待ってて、何かあったら頼む」

 

「……気をつけてね、ハジメ」

 

「ん、気を付けて」

 

 

ハジメはそう言うと、魔法陣へ向けて踏み出した。

 

そして、ハジメが魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

眩しさに目を閉じるハジメ。

 

直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。

 

やがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

 

『……この映像が流れているという事は、君は()()()()と同じ〝地球〟の出身者だね?』

 

「えッ!? ど、どうして分かって……?

……っていうか、ブラストって……ッ!?」

 

 

ハジメの疑問を置き去りに、黒衣の青年は話を続ける。

 

 

『試練を乗り越えよく辿り着いた。

私の名はオスカー・オルクス…この迷宮を創った者だ。

〝反逆者〟と言えば分かるかな?』

 




キリが良いのでここらで切ります。

……〝ワンパンマン〟ファンなら何処かで聞き覚えのある名前がオスカーの口から出た事かと思います。

詳細は次回―――……
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