ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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ハジメ君がハウリア族を助けるようですよ。

※8/13更新しました!


十八話目 ハウリア族と合流

 

 

―――〝ライセン大峡谷〟―――

 

 

悲鳴と怒号が木霊する。

 

ウサミミを生やした人影が岩陰に逃げ込み必死に体を縮めている。

 

あちこちの岩陰からウサミミだけがちょこんと見えており、数からすると20人ちょっと。

 

見えない部分も合わせれば40人といったところか。

 

そんな怯える兎人族を上空から睥睨しているのは、奈落の底でも滅多に見なかった飛行型の魔物だ。

 

姿は俗に言う〝ワイバーン〟という奴が一番近いだろう。

 

体長は3~5m程で、鋭い爪と牙、モーニングスターのように先端が膨らみ刺がついている長い尻尾を持っている。

 

 

「ハ、〝ハイベリア〟……ッ!」

 

 

シアの震える声が聞こえた。

 

あのワイバーンモドキは〝ハイベリア〟と言うらしい。

 

〝ハイベリア〟は全部で6匹はおり、兎人族の上空を旋回しながら獲物の品定めでもしているようだ。

 

その〝ハイベリア〟の一匹が遂に行動を起こした。

 

大きな岩と岩の間に隠れていた兎人族の下へ急降下すると空中で一回転し遠心力のたっぷり乗った尻尾で岩を殴りつけた。

 

轟音と共に岩が粉砕され、兎人族が悲鳴と共に這い出してくる。

 

〝ハイベリア〟は〝待ってました〟…と言わんばかりに、その顎門を開き無力な獲物を喰らおうとする。

 

狙われたのは二人の兎人族。

 

〝ハイベリア〟の一撃で腰が抜けたのか動けない小さな子供に男性の兎人族が覆いかぶさって庇おうとしている。

 

周りの兎人族がその様子を見て瞳に絶望を浮かべた。

 

誰もが次の瞬間には2人の家族が無残にも〝ハイベリア〟の餌になるところを想像しただろう―――……

 

 

〝ジャスティスクラッシュ〟!!

 

 

……しかし、それは有り得ない。

 

何故なら、ここには彼等を守ると誓った、奈落の底より這い上がってきたヒーローがいるのだから。

 

 

ギャリリリリリリリリリリッッッ

 

 

「グギャアァァァァァァ!?!?」

 

 

〝ライセン大峡谷〟に耳をつんざく音が響き渡る。

 

ハジメは勢いそのままに〝魔動自転車〟のタイヤを〝ハイベリア〟の顔面にぶつけペダルを高速回転させていき、あっという間に顔面を削り取ってしまった。

 

 

ドパンッ!!

 

 

次いで、一発の乾いた破裂音が響くと同時に一条の閃光が虚空を走る。

 

 

「ゲボアァァァァァァ!!」

 

 

後方で凄まじい咆哮が響いた。

 

呆然とする暇もなく、そちらに視線を転じる兎人族が見たものは、片方の腕が千切れて大量の血を吹き出しながらのたうち回る〝ハイベリア〟の姿。

 

すぐ近くには腰を抜かしたようにへたり込む兎人族の姿がある。

 

恐らく、先程顔面を削り取られた〝ハイベリア〟に注目している間に、そちらでも〝ハイベリア〟の襲撃を受けていたのだろう。

 

さっきの一発は、突撃する〝ハイベリア〟の片腕を撃ち抜くための一発だったようである。

 

バランスを崩した〝ハイベリア〟が地に落ちて、激痛に暴れている。

 

 

「な、何が……? あ、貴方は……?」

 

 

先程、子供を庇っていた男の兎人族が呆然としながら、目の前の顔面を削られ絶命した〝ハイベリア〟と、後方にてのたうち回る〝ハイベリア〟を交互に見ながら呟いた。

 

 

ドパンッ!!

 

 

「「「「 ひっ!? 」」」」

 

 

……すると、先程〝ハイベリア〟を削り殺したハジメはおもむろに〝ドンナー〟を取り出すと、のたうち回っていたもう一方の〝ハイベリア〟の頭部に一発を浴びせる。

 

〝ハイベリア〟は、最後に一度甲高い咆哮を上げるとズズンッと地響きを立てながら崩れ落ち動かなくなった。

 

 

「……驚かせてすみません。 兎人族の皆さんですね?

僕はハジメ、そちらのシアからの依頼で貴方がたを守りに来ました」

 

「シ、シアが……? あの子はいったいどこに……?」

 

「もうすぐ来ますよ。 ……ホラ」

 

 

「ギャアアァァァアオォォォォ―――……」

 

 

キィィイイイイイイイイイ!!!

 

 

「「「「 わわわわ!?!? 」」」」

 

 

上空の〝ハイベリア〟達が仲間の死に激怒したのか一斉に咆哮を上げる。

 

それに身を竦ませる兎人族達の優秀な耳に、今まで一度も聞いた事のない異音が聞こえた。

 

甲高い蒸気が噴出するような音だ。

 

今度は何事かと音の聞こえる方へ視線を向けた兎人族達の目に飛び込んできたのは、見たこともない黒い乗り物に乗って、高速でこちらに向かってくる三人の人影。

 

その内の一人は見覚えがありすぎる。

 

今朝方、突如姿を消し、ついさっきまで一族総出で探していた女の子。

 

一族が陥っている今の状況に、酷く心を痛めて責任を感じていたようで、普段の元気の良さがなりを潜め、思いつめた表情をしていた。

 

何か無茶をするのではと、心配していた矢先の失踪だ。

 

それでつい、慎重さを忘れて捜索し〝ハイベリア〟に見つかってしまった。

 

彼女を見つける前に一族の全滅も覚悟していたのだが、その彼女が黒い乗り物の後ろで立ち上がり手をブンブンと振っている。

 

その表情に普段の明るさが見て取れた。

 

信じられない思いで彼女を見つめる兎人族。

 

 

「みんな~助けを呼んできましたよぉ~!」

 

 

その聞き慣れた声音に、これは現実だと理解したのか兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。

 

 

「「「「「「「「「「 シア!? 」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオリは、〝魔力駆動二輪〟を高速で走らせながらシアの家族が無事である事に内心安堵の溜息を吐いた。

 

仲間の無事を確認した直後、シアは喜びのあまり後部座席に立ち上がりブンブンと手を振りだした。

 

それ自体はいいのだが、高速で走る〝二輪〟から転落しないように、シアは全体重をユエに預けて体を固定しており、小刻みに飛び跳ねる度にその巨乳がのっしのっしとユエを伝ってカオリに衝撃を与えていたのである。

 

そのせいで照準がずれ、〝ハイベリア〟を一撃で仕留められなかった。

 

 

「(……ともあれ、シアの家族に当たらなくてホントに良かったよ。 誤射なんてしようものなら―――……想像するだに恐ろしいな……)」

 

 

カオリは、未だぴょこぴょこと飛び跳ねるシアに注意しようと話しかける―――……

 

 

「……シアのおっぱいで狙いが外れた。

カオリの邪魔をするこのおっぱいに〝お仕置き〟する」

 

「ふぇ? 何を―――……ふにゃあぁぁ!?」

 

 

……前に、シアの前方にいたユエが前を向きながら頭上にあるシアの巨乳を乱暴に鷲掴み、揉みくちゃにしていく。

 

 

「……ッ(//////) や、やめてくださいユエさ〜ん!」

 

「……なら謝る。 カオリに〝おっぱいで邪魔してごめんなさい〟…って」

 

「お、おっぱいで邪魔して―――……ン!

ご、ごめんなさい―――……ですぅ!」

 

「……もっと艶やかに―――……」

 

「ユエ!? 私の事はいいからシアを解放してあげて!?

流石にちょっとエッチすぎるよ!?」

 

「……エッチさではカオリといい勝負」

 

「ッ!! そ、それは聞き捨てならない―――……」

 

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

 

「「「 ………あ 」」」

 

 

……〝魔力駆動二輪〟の上でわちゃわちゃしている間に、兎人族を襲っていた〝ハイベリア〟の群れはハジメによって掃討されてしまった。

 

こちらをジト目で見つめるハジメに何とも申し訳ない気持ちを抱いてしまう三人娘であったが、そんな微妙な空気を破るように一人の兎人族の男性がシアに声をかける。

 

 

「シア! 無事だったのか!」

 

「父様!」

 

 

真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シアと父様と呼ばれた兎人族の男性が互いの無事を喜んだ後、ハジメの方へ改めて向き直った。

 

 

「ハジメ殿……。 私は、カム

シアの父にしてハウリアの族長をしております。 この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。

しかも脱出まで助力くださるとか、父として、族長として深く感謝致します」

 

 

そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。

 

後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

 

「……礼は受け取っておきます。

ですが、あくまで樹海の案内と引き換えだという事を忘れないでくださいね?

……それにしても随分あっさり信用するんですね。

亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに」

 

 

明るくポジティブなシアの存在で忘れそうになるが、亜人族は被差別種族である。

 

実際、峡谷に追い詰められたのも人間族のせい―――……にも関わらず、同じ人間族であるハジメに頭を下げ、しかもハジメの助力を受け入れるという。

 

それしか方法がないとは言え、あまりにあっさりしているというか、嫌悪感というものが全く感じられない事に疑問を抱くハジメ。

 

カムは、それに苦笑いで返した。

 

 

「シアが信頼する相手です。 ならば我らも信頼しなくてどうしますか。 我らは家族なのですから……」

 

 

その言葉にハジメは感心半分呆れ半分だった。

 

一人の女の子のために一族ごと故郷を出て行くくらいだから情の深い一族だとは思っていたが、初対面の人間族相手にあっさり信頼を向けるとは警戒心が薄すぎる…というか人が良いにも程があるというものだろう。

 

 

「(……イヤ、一人の女の子のため―――……だからこそ決断する事が出来たんだ。

キングさんや無免ライダーさんのように……ッ!)」

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。

ハジメさんは女の子にとっても紳士的で、困っている誰かに躊躇なく手を差し伸べたり、交わした約束をしっかり守って私達を助けてくれた―――……英雄様なんですよ!」

 

「はっはっは…そうかそうか。

つまりスゴい人なんだな、それなら安心だ」

 

 

シアとカムの言葉に周りの兎人族達も〝なるほど、スゴい人なのか〟…と尊敬の眼差しでハジメを見ながら、うんうんと頷いている。

 

ハジメは何とも言えないむず痒さを感じつつ、いつまでも立ち止まっていてはまた魔物が襲ってくるかもしれないと兎人族の面々に移動を促そうとして―――……意外なところから思わぬ追撃を喰らう事となる。

 

 

「……ん、ハジメは(ベッドの上でも)スゴい」

 

「ユエ!?」

 

 

まさかのユエの口撃に口元を引きつらせるハジメだったが、何とか持ち堪えて出発を促す。

 

……新たに兎人族を引き連れる事となったハジメ達〝クリムゾン・ライトニング〟は、〝ライセン大峡谷〟の出口を目指して歩を進めた。

 




久しぶりの更新、短めで申し訳ありません。

ゆっくりではありますが少しずつ進んでいきたいと思います。
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