ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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ハウリアは何を選び取るのでしょうか……?


二十二話目 生き残る道の一つ

 

 

―――〝フェアベルゲン〟 大樹近く―――

 

 

「ハジメ殿、軟弱な我らを強くしていただけますか?

……いえ、強くなりたいのです。 どうか、どうかお願いいたします……ッ!」

 

「お願いします、ハジメさん!」

 

「「「「 お願いします!! 」」」」

 

「……コイツは驚いた」

 

 

長老会議を無事終え、〝フェアベルゲン〟への滞在を許されたハジメ一行であったが、いまだ〝忌み子〟であるシアとそれを匿ったハウリア族への悪感情が亜人族全体に渦巻いている状況下では到底快適に過ごせるとは言い難く、周囲の目を敏感に気にするハウリア族に配慮して敢えて大樹近くの空きスペースに拠点を置いていた矢先の冒頭のカムの発言だ。

 

余談になるが、拠点といっても〝フェアドレン水晶〟を使って結界を張っただけ(長老衆から許可は貰っている)の簡易なものだ。

 

閑話休題。

 

カムをはじめ、シアや他の兎人族の真剣な眼差しを一身に受け、思わず作業の手を止めざるを得なくなったハジメは、なにゆえあって強くなりたいと思うに至ったのか、その心境の変化を聞く事とした。

 

 

「シアを通じてハジメ殿の言葉を受け取り、我らなりに考えたのです。 ……弱いままで良いのかと」

 

「……そんなものいいワケがない、弱いままでいればただ奪われるだけです」

 

「峡谷の魔物にも帝国兵にも―――……同胞である亜人族にすらも我らの生殺与奪を握られたらおしまいだ」

 

「……ジンさんの話しぶり的にシアとハウリア族は〝フェアベルゲン〟の名において大々的に保護されると思います、それでも?」

 

「ジンの言葉に嘘はないでしょう。 ……ですが、それはあくまでハウリア族の―――……()()()()()()()()()()()()()()()保護になるかもしれません、つまり―――……」

 

「……()()()()()()()()()()()、って事ですか」

 

 

カムは重苦しく首肯した。

 

シアは顔を俯かせている。

 

 

「……数ある選択肢の一つとしてなら、それも良かったかもしれません―――……ですが、弱い事を良しとしたばかりにそれしか選ばせてあげられないのは、あまりに、あまりに親として不甲斐なさすぎる……ッ!」

 

「父様、私は一向に―――……」

 

「イヤ、それではダメなのだシア。

危険と隣り合わせの自由に生きるか、安寧が約束された不自由に生きるか。 ……誰しも生まれ方は選べないが、どう生きどう死ぬかは選べると知ってほしいんだ」

 

「―――(……カムさん、貴方という人は)……」

 

「父様……」

 

「親が子の足を引っ張るなどあってはならんからな。

……大樹の元に行けるまでの10日間、シアも、私達も、出来る限り努力して強くなろう」

 

「ッッ ……うん、うん!」

 

「……カムさん」

 

「おっと、申し訳ないハジメ殿。

話を勝手に進めてしまって……」

 

「全くですよ―――……僕が提案しようとしていたのに、先に言われちゃったら何も言えないじゃないですか」

 

「ッ!! ハジメさん!!」

 

 

ハジメの言葉を聞き、花を咲かせたようにパァッと笑みが溢れ出すシア。

 

そんなシアに合わせるように周りの兎人族達もキラキラした瞳でハジメを見つめる。

 

カオリユエにも静かに見守られ、何とも気恥ずかしそうに頰をポリポリ掻きながらハジメは話を続ける。

 

 

「ま、まあ、大樹に案内させてはい終わりじゃあまりに無責任と思わなくもないというか、カムさんが言うように選択できる強さを手に入れてくれた方が後腐れがないというか―――……と、とにかく! アレコレ僕が言う前にやる気と覚悟を示してくれたのなら何も言う事はないです」

 

「ハジメ、照れてる」フフッ

 

「て、照れてなんかないよユエ!?」

 

「感謝いたしますハジメ殿。

……しかし、ここで問題があるのです……」

 

「? なんですか問題って?」

 

「……私達は兎人族です。 虎人族や熊人族のような強靭な肉体も、翼人族や土人族のような特殊な技能も持っていない〝無能〟な種族―――……要するに、強い自分達(ハウリア)を上手く想像できないのです……」

 

 

やる気は十分、覚悟も示した、あとは―――……強くなれるという明確な未来像(ビジョン)だけ。

 

 

「カムさん、無能って何なんでしょうね?」

 

「え?」

 

単純(シンプル)に身体能力が弱い人を指すんでしょうか? それとも特技がない人? もしくは頭が悪い人? あるいはシアのような異才を生まれながらに持ち合わせていない人?」

 

「そ、それは―――……」タジタジ

 

「……人によっては可哀想と思うかもしれませんね。

でもそれは無能とは違う気がします。 かくいう僕も無能とは一体何なのか常々考える事がありますが、僕が思うに無能というのは、()()()()()()()()を指すと思います」

 

「空気が、読めない……」

 

「分かりやすく言うと、周囲の状況を全く顧みない人の事ですね。 そういう人を何人か知っているんですけど、ハウリアの皆さんは少なくとも〝無能〟じゃありません」

 

 

ハジメは更に話を続ける。

 

道中見てきた兎人族のポテンシャルの高さなど、色々だ。

 

 

「聴覚や隠密行動に優れているのは立派な〝個性〟と言えます。 ……何も馬鹿正直に正々堂々と戦うのが全てじゃありませんし、卑怯な手を使ってでも相手を自分達の土俵に引き摺り下ろす事も立派な戦術の一つですから」

 

「ハジメ殿……」

 

「一族全体を一つの家族として扱うつながりの強さは円滑なコミュニケーションに直結します。

そして、円滑なコミュニケーションは見聞きした情報を正確に伝える上で極めて重要です。 ……身体的な強さも大事ですが、情報も制する事で常に相手より優位に立つ事だって出来るんですよ。

……対戦相手の下調べを入念に行い、自分達に有利な戦場に誘い込み、毒や罠を駆使して弱らせて、相手の意識の隙を突いて一撃で葬る―――……いわゆる暗殺者スタイルが合っているんじゃないかと思います」

 

 

ハウリアの面々は、ひたすら圧倒されていた。

 

自分達が目指すべき〝理想〟を容易に思い描くハジメに。

 

そして―――……線と線でつながった自分達の未来に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――(……え、なに、この光景……?)」

 

 

……その瞬間、シアの脳内に明瞭な景色(みらい)が映し出される。

 

〝フェアベルゲン〟に根差すどの大樹とも比較する事ができないほどに巨大で長大な〝箱状の物体〟が乱立する広大な集落?街?の只中で数え切れないほどの人間族が幸せそうに生活を営んでいる。

 

そんな数ある〝箱状の物体〟の中でも一際大きく存在感を放っていた()()()(恐らく家か何かか?)の頂点には、男女合わせて19人の集団がいた。

 

 

「―――(……もしかして、これは、未来の……?)」

 

 

その内の三人には見覚えがありすぎた。

 

なにせ自分(シア)と一族の恩人―――……ハジメとカオリ、ユエがいたのだから。

 

 

「―――(……凄い、何が何だかよく分からないけど、()()ハジメさん達、()()()ハジメさん達とは比べ物にならないくらい凄い……ッ!)」

 

 

S級6位 ナグモ

 

S級9位 カオリ

 

S級4位 ユエ

 

 

目の前にいるハジメ達の存在感に圧倒されていると、ふと背後からハジメ達とは比較にもならない存在感を放つ絶対王者が近づいてくるのが分かった。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

慌てて振り返るとそこには―――……魔物の背びれみたいな髪型が特徴的な巨人が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()聳え立っていた。

 

 

S級1位 キング

 

 

「(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!?

も、もしかして、この人が、ハジメさんの話にちょくちょく出てきたキ―――……)」

 

『あ、ゴメンねフューチャー兎氏。

怖がらせちゃった?』

 

「―――(……ふぇ?)」

 

『もう、ダメじゃないですかキングさん! シアを怖がらせないでください!』

 

『いやはや、怖がらせるつもりはなかったんだけどねぇ』

 

『……キング殿、そのずば抜けた巨躯と強面は一種の凶器なんじゃよ……』

 

『そ、そんなぁ……』

 

 

……ふと、シアは気が付いた。

 

周りばかりに目を奪われて、自分の存在を勘定に入れてなかった事を。

 

 

『……ともあれだ! ソロライブ氏の厳正な審査を潜り抜けてS級入りを果たしたワケだし、俺達は君を歓迎するよ―――……』

 

 

……周りのシアを見る目が、()()を見る目であった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……フューチャー兎氏!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S級20位 フューチャー兎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君ならすぐにでもサイタマ氏を(順位で)超えられるよ。

……あ、ヒーローネームが気に入らなかったら変更も出来るからねぇ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……シア、シア!!

 

ふぁ!? な、何でしょうカオリさん!?!?」

 

「何でしょうって―――……急にボーっとして何の反応も返さないんだから心配したんだよ?」

 

 

……我に返ったシアは、自分を心配してぐるりと取り囲んでいるハウリアの面々を見渡し、ここが現実である事を確認する。

 

傍らには自分を心配そうに見つめるカオリと―――……何ともご立腹な様子で仁王立ちしているユエがいた。

 

 

お昼寝ウサギ―――……ハジメが話している途中で眠りこけて、カオリに介抱される気分はどう……?

 

「え、あ、その、別に眠っていたワケでは……」

 

……言い訳ウサギには〝お仕置き〟が必要。 ()()()()()、どちらを舐めたいか選ばせてあげる……♡

 

「……冗談はそのくらいにしておこうね、ユエ?」

 

「「 むぅ…… 」」

 

 

何とも妖艶で悪い笑みを浮かべながらジリジリとシアに近づくユエの行く手を遮るようにハジメが立ち、何とか事なきを得たシア。

 

……〝何でそこで邪魔をしたんですか?〟…と言わんばかりな雰囲気を醸し出すシアに内心頭を抱えながら、ハジメは一体どうしたのかと問うた。

 

 

「……今さっき、未来が見えたんです」

 

「その様子だと自動的に未来が見えたみたいだね。

……どんな未来を見たの?」

 

「……ハジメさん達のいる、()()()()()というところに私も入るという未来です」

 

えッ!?

 

「私の近くには20人近くの人達がいて、その中には特徴的な髪型をした大きい男性もいました。

……ハジメさんのお話にあったキングさんかと……」

 

ええッ!?

 

「カオリさんとユエさんもいました」

 

えええッ!?

 

「「 え、私も? 」」

 

「ええ、放たれている存在感の凄まじさたるや、とんでもないものでした。 ……私の見た未来の光景にはイヤに高い〝箱状の物体〟が沢山あって、それはもう圧巻でしたよ?」

 

「故郷だ……ッ!」

 

「……はい?」

 

僕とカオリの故郷だよ!! 僕達が旅をしているのは、故郷に帰るためなんだよ!!

 

「ッ! という事は……」

 

 

ユエの無表情に笑みが咲き誇る。

 

あまりの急展開に思わず泣き笑いになるカオリ。

 

ハジメにいたっては、涙を流しながらカオリとユエに抱きつき喜びを爆発させていた。

 

 

僕達が地球に帰れる未来があるって事だ! それに、それにヒーローになれる未来もある! う、うわぁぁぁぁ!! やったぞぉぉぉ!!

 

「うん、うん……ッ!!」

 

「んーッ!!」

 

 

あまりのハジメ達の喜びようにさしものハウリア達も面食らってしまうが、それを窘めたりする者はいなかった。

 

ハジメ達の現在に至るまでの境遇の全てを知っているワケではないが、成人を迎えていないうちにたくさんの苦労を背負い込んでいる事はハウリアの子供達ですらなんとなく雰囲気で察していたくらいだ。

 

きっとあの三人は、誰にも甘えたり頼ったりせず死に物狂いで頑張り続けてきたのだろう。

 

そんな三人が見せる年相応の無邪気な笑顔を見て、窘めたりする者がいれば逆に見てみたいものだとハウリアの面々は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すみません、はしゃぎすぎました……(///////)」

 

「ハッハッハ、何の事かサッパリですな!」

 

「……そろそろ本題に入りましょうか」

 

 

結局、30分も経たないうちに正気に戻ったハジメは、カムの大人な対応に内心感謝しつつ、本題である〝ハウリア強化訓練〟の内容に移った。

 




……『ワンパンマン×〝RE〟Y』でのみ適用される、作者の偏見が入り混じった独自設定ですが、超能力を始めとした〝異能〟を生まれつき持ち合わせていないものの、才能と努力によって限界を極めた人間(シルバーファング、アトミック侍、超合金クロビカリ、閃光のフラッシュ等)を基準にし、基準を超えていない者をコッチ側、超えた者をアッチ側としたいと思います。

☆アッチ側一覧

・キング
・戦慄のタツマキ
・サイタマ
・ミュージカル劇場ソロライブ etc……

ちなみにハジメ君はまだコッチ側です。

弛まぬ努力を続けていけばあるいは、って感じですね。

次回からハウリア訓練回です!
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