ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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人生が懸かった大勝負、引くワケにはいきません。


二十三話目 一世一代の大勝負

 

 

―――〝フェアベルゲン〟 大樹近く―――

 

 

モタモタするなッ!! 魔物は待っちゃくれないぞッ!!

 

「「「「 はいッ! リーダーッッ!! 」」」」

 

パル君は前に出すぎるなッ!! 逆に大人達は後ろに下がりすぎッ!! 魔物との間合いを見極めろッ!!

 

「「「「 はいッ! リーダーッッ!! 」」」」

 

 

……樹海に野太い声が響き渡る。

 

主な声の発生源である白髪の少年…ハジメは、複数の魔物相手に四苦八苦しながらも真剣に実戦訓練を行っている〝ハウリア〟の面々を見守りながら、拙いところがあれば容赦なくダメ出しを行うなどして指導していた。

 

 

「―――(……今日で訓練二日目、僕の素人感丸出しの指導でここまで連携が形になるとはね……。

やっぱりハウリアの人達には()()があるんだ。

最初は不安だったけど、もしかしたらなんとかなるかもしれない―――)……」

 

 

覚悟を示したハウリアであったが、ハジメとしては一抹の不安も拭えなかった。

 

知り合ってから日は浅いものの、ハウリア族の人となり…心根の優しさに嘘偽りがない事は十分理解できた。

 

……だからこそ、その優しさが戦いにおいて命取りになるのではないかと危惧もしていたのだ。

 

 

「―――(……正直、見くびってた。

彼らの覚悟はそんな生温いものじゃなかったんだ)」

 

 

ウサ耳を生やした少年…パルが、あわや魔物に喉元を食い千切られる―――……直前に三人の大人が横合いからこぞって魔物にのしかかり、深々と刃物を突き立てトドメを刺す。

 

どうやら自ら囮になる事で魔物を誘い出したらしい。

 

凄い胆力だと呆れ半分に感心してしまう。

 

……ハウリア族を訓練するにあたって、ハジメは〝宝物庫〟から〝錬成〟の練習用に作った装備一式を彼らに渡していた。

 

護身用に渡していたナイフのほかに、反りの入った片刃の短剣…小太刀などがそうだ。

 

これらの刃物は、ハジメが〝精密錬成〟を鍛えるためにその刃を極薄にする練習の過程で作り出された代物で切れ味は抜群。

 

〝タウル鉱石〟製なので衝撃にも強く、その細身に反してかなりの強度を誇っている。

 

 

「―――(……武術の心得なんてないからどうしようもなかったけど、彼らの自主性に委ねたのは正解だったな。

家族(チーム)で生き残るための行動が、結果的に戦闘における最適解を導き出してる気がする―――)……」

 

 

……ハウリアに教える事が出来たのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた合理的な動きだけ。

 

無駄を削ぎ落としたそれを叩き込みつつ、適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。

 

ハウリア族の強みは優れた聴覚による索敵と隠密だ。

 

ゆくゆくは奇襲と連携に特化した集団戦法…それこそ暗殺者スタイルを身に付けられればいいと思っていた。

 

 

バキッ! バキッ! バキッ!

 

 

「ギャヒィィィィィィィですぅぅぅ!!!」

 

 

ちなみに、シアに関してはユエが専属で魔法の訓練をしている。

 

亜人でありながら魔力があり、その直接操作も可能なシアは知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔法が使える筈だからだ。

 

 

ドッガァァァァァァァンッッ

 

 

「死んじゃう! 死んじゃうよォォォォォォ!!!」

 

 

……時折、霧の向こうからシアの悲鳴が聞こえるが。

 

カオリは負傷したハウリア族の治癒を担当している。

 

いまはユエとシアのところにいるのだろう。 ……ある意味、一番大変な役回りだ。

 

 

「……よし、30分休憩! みんなお疲れ様!」

 

「「「「 はいッ! リーダーッッ!! 」」」」

 

 

ほぼ全員が泥だらけの傷だらけであったが、五体満足で襲い来る魔物を倒すというノルマを達成する事は出来た。

 

しかし、ハウリアの面々の表情は明るくない。

 

 

「……すみませんリーダー、せっかく()()()()()()()()()()()()()()()手間取ってしまいました……」

 

「最初は皆そんなもんですよカムさん。 どうぞ水です。

……突然手に入れてしまった〝力〟を完璧に使いこなすなんて、時間をかけて鍛えるか死にかけるほどの危機に瀕さない限り難しいですから」

 

 

昨日より()()()()()()()()()()()()()ウサ耳達を眺めながらハジメは鷹揚に頷く。

 

カムは自分の手をグーパーしながら、自分達に与えられた〝力〟を再確認する。

 

 

「……確か、〝纏雷〟〝天歩〟…でしたかな?

リーダーがくださった魔物の肉を食べた時は、亡くなった妻の姿を垣間見ましたが―――……なるほどコレは凄い。 気力どころか未知の力が漲ってきますぞ」

 

「……それら〝固有魔法〟を実戦でも使いこなせるようにドンドン訓練で慣れておきましょう」

 

「「「「 はいッ! リーダーッッ!! 」」」」

 

 

……ハジメは、以前キングが言っていた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体能力(フィジカル)はあくまで生まれつきの才能だけど、後から努力で補填できるのが技術(テクニック)のいいところなんだよねぇ』

 

『そう、ですか……。 それじゃあ僕は技術(テクニック)を磨いた方がいいワケですね!』

 

『でもね』

 

『でも?』

 

『生きるか死ぬかの瀬戸際…地獄のような状況に自分を追い込み()()()()()()()()乗り越えられれば、人は人のまま限界を打ち破る事ができる。 ……限界を取っ払った身体能力は努力した分だけ青天井に伸びていくんだよ』

 

『限界を、打ち破る……』

 

『理性を保ったままっていうのがミソでね。 ……ここから先は俺の推測になっちゃうけど、理性…人間性の有無こそが人と〝怪人〟を明確に区別化するラインになるんじゃないかなーっと思ってるよ。 ……俺の持論ね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……訓練初日、ハジメはハウリアの面々に〝纏雷〟と〝天歩〟の固有魔法を宿す魔物の肉を差し出し、改めて彼らの覚悟を試した。

 

魔物の肉を食べると死ぬほど痛い思いをする事、その魔物の肉の毒性を中和する〝神水〟もセットで出す事、そんな神水の力をもってしても魔物の肉を食べる事は苦痛でしかない事、そして―――……苦痛を耐え切る事で魔力と固有魔法を宿せる事などを詳細に説明した上で。

 

ハジメの説明を聞いた上で、ハウリアは迷いなく魔物の肉を貪り食った。

 

当然、阿鼻叫喚の地獄絵図になったのは言うまでもない。

 

だがしかし、神水やカオリの治癒、ハジメの〝整体術〟の助けがあったとはいえ、ハウリアは誰一人欠ける事なく魔力と固有魔法を宿す事に成功したのだ。

 

……おかげで、というか、そのせいで華奢だったハウリアの身体が人一倍以上筋肉膨張(パンプアップ)し、可愛らしいウサギから筋肉ウサギへとジョブチェンジを果たしてしまった。

 

ついでに全員白髪になった。

 

17年生きてきた中で取り返しがつかないと言っても過言ではないレベルのミスを犯してしまったのではないかとハジメは内心罪悪感を募らせる。 ……主にシアに対して。

 

 

「……その、皆さん、流石に〝リーダー〟呼びは恥ずかしいですって……」

 

「カオリ殿がたまにそうおっしゃっていたので……。

ですが似合っておりますぞ! よっ、リーダー!」

 

「「「「 よっ! リーダーッッ!! 」」」」

 

「……もうそれでいいです」

 

 

……どこかリュウタロウを感じさせる体育会系の熱いノリを受けて、分かった分かったと言わんばかりに深い溜息をつきながら筋肉ウサギ達を落ち着かせるハジメ。

 

 

「―――(……そういえば、クラスメイトの皆はどうしてるのかな? ちょっと気になるけど……。

ああでも、シアになんて説明すれば―――)……」

 

 

ハウリアに地力を持たせるために100%善意で行った魔物の肉の提供は、予想より斜め上の結果を出すに至った。

 

……ただ、現在進行形でユエにしごかれているであろうシアが、変わり果ててしまった家族を見てどんな反応を示すのかあまりに未知数であった。

 

ハジメの苦悩は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ハジメとハウリアの面々とは別行動を取っていたユエとシアは―――……

 

 

「……今日もボロ負け、私から一本も取れずに。

……そんな無様な姿を晒して、恥ずかしくないの……?」

 

「こ、この格好はユエさんが無理矢理―――……

アヒィィィィィィィィィィィィ!?♡?♡!!♡

 

 

……百合の花を咲かせていた。

 

 

「……フフ♡ ちょっと指で小突いただけで痺れた。

……可愛い♡」

 

「ンハァ、ハァ、ハァ♡??♡♡?♡

な、何なんですか、この感じ? 身体の内から込み上げては引っ込む、この、もどかしい気持ち……?!」

 

「……それが〝快感〟♡ ……さあ、委ねて♡」

 

「ユ、ユエさぁん……♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を見せられてるの私は……」

 

 

……その場に居たのはユエとシアだけではない。

 

鬱蒼とした樹海の只中で二人だけの世界に浸っているユエとうつ伏せになっているシアを呆れた目で見ながら、カオリは努めて冷静にユエに尋ねた。

 

カオリの胸中を一言で表すと〝やる気あるのかお前?〟…と言ったところだろう。

 

 

「……カオリ、これはとっても大事なこと……。

……カオリの〝整体術〟を習得するために、ね?」

 

 

……まずはこの状況に至った経緯を軽く説明しておこう。

 

ハウリアの面々とは別の場所でシアを鍛えるようハジメに言われたユエは、シアの適性を見極めるために模擬戦を幾度か行った。

 

結論から言って、魔法の適性自体はハジメと同レベルとお粗末もいいところだったが、代わりに〝身体強化〟に長じている事が判明した。

 

最大出力を開放すればハジメとカオリに次ぐレベルと言えばその強力さが分かるだろう。 いっそ異質である。

 

……だがしかし、年端のいかない戦闘経験皆無のウサ耳少女と戦闘経験豊富な吸血姫では実力に開きがあるのは当然であり、必然、シアの負傷度合いはそれはもう酷いものであった。

 

だからこそカオリの出番なのだが、シアのほかにもハウリアの面々の治癒も兼任しており、ユエ視点で見るとそれはもう行ったり来たりで大変そうだった。

 

故に、ユエは決意した。

 

〝回復〟は苦手だっだがそうも言ってられないと。

 

自分が、カオリの負担を少しでも軽くするんだと。

 

 

「私はあくまで肉体の治癒力を活性化させるツボを教えただけなんだけど……。

ユエは何ていうか、イケないツボを押してる気がしてならないよ……」

 

 

カオリとしても、ユエの苦手を克服しようとするその気概自体は非常に買っていた。

 

かつての自分も戦う事に―――……もとい、強くなる事に少なからず抵抗感を覚えていたがために。

 

〝けどこれは何か違う〟…などと思っていると、ふいにユエが小悪魔的な笑みを浮かべながら近付いてきた。

 

 

「……ならもっと教えて。

私のイケないところを矯正して……♡」

 

「ちょ、ちょっと、シアが見てるって……ッ!」

 

「……構わない、むしろ見せつけよ?

……私達の〝絆〟を♡」

 

「わ、私にはハジメが……」

 

「……大丈夫、ハジメも私のものだから……。

……ほら、何も問題はない」

 

「あ、あのゥ―――……ここに複雑な気持ちでいる私がいるんですが……。

……も、もしかしてコレがユエさんの言っていた〝放置プレイ〟…って奴ですか?」

 

 

シアの儚くも切実な呟きが虚しく樹海に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――9日目―――

 

 

「見学したいならそう言ってくれればいいのに。

……ジンさん」

 

「ッ!? 小僧、いつの間に……」

 

 

ハウリアがハジメの指導を受けてから9日が経った。

 

ちょっと前までぎこちなかったハウリアの面々の動きも劇的に良くなり、大量の魔物相手に常に優位を保ちながら立ち回っている。

 

魔物といえど命を奪う行為に一抹の抵抗を抱きながらも、決して躊躇する事なく処理していく様は控えめに言って暗殺者そのものだ。

 

……そんなハウリアの訓練風景を木の陰から監視するように見つめていた熊の亜人…ジンに一切悟られる事なく近付いたハジメは、なんてことはないと言わんばかりに気軽に声をかけジンを驚かせた。

 

 

「……ふんッ、いらぬ世話だ小僧。

ハウリアがどこまで足掻くのか様子を見に来ただけだ」

 

「そうでしたか。 ……ジンさんから見て今のハウリアはどう映りますか?」

 

「あの〝忌み子〟…シアのように魔法を使えている。

……小僧、お前の仕業だな?」

 

「ええ、非力なままでは出来ない事が多いですから。

……一つ聞いてもいいですか?」

 

「……なんだ」

 

「さっき〝どこまで足掻くのか〟…って言いましたけど、ハウリアを受け入れてくれるのならそんな言い回しはしないですよね?」

 

「……奴らが国に留まる事は認めたが、対等に扱うワケがないだろう。 まあ、それ自体は昔と変わらん。

……変わるのは忌み子への対応だ」

 

「魔法を使える亜人を差別するんじゃなくて、保護するって事ですか?」

 

「平たく言うとそうだ。 ……これからは忌み子ではなく〝救世主〟と呼ばせる―――……が」

 

 

ジンの表情には、それはもう抜けきれない疲労感が張り付いていた。

 

 

「反対意見が根強いんですね」

 

「当然だな。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()、真実を伝えられたところで良くて混乱するか反発されるのがオチだ。 グゼゼルがその筆頭だな」

 

 

再度、ジンの表情を見やるハジメ。

 

自分だけが知っている解答に〝拒絶(NO)〟を突きつけたいのに、その解答の正しさを誰よりも理解()()()()()()()()がために葛藤する―――……あまりに複雑怪奇な面持ちであった。

 

 

「うちの一族は実力で黙らせた。

……少なくともお前達には危害は加えん」

 

「……他の部族がどう出るかは分からないと。

わざわざそれを伝えに?」

 

「そんなワケないだろう。 本当だったらそのまま帰るつもりだった―――……が、誰でもないお前自身が直接会いに来たのなら都合がいい」

 

「僕に用事ですか? ……何です?」

 

「なぁに、そう難しい話じゃない。 俺を―――……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラスト!! オレも一緒に連れてってくれよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ジンさん?」

 

「……イヤ、何でもねえ。

……用があるのは、会いたいのは、()()()()()()……」

 

「……ジンさん」

 

「……夢を見てたんだ。

……待っていれば必ず、何十年経とうと必ず、いつか必ず、俺を連れてってくれる〝英雄〟が現れるって……」

 

「………」

 

「だがアイツは一度も俺の前に姿を現さなかった。

……だから忘れようとした。 アイツとの思い出全て」

 

「………」

 

「〝忌み子〟が魔物と同類でない事など薄々分かっていた。 ……分かっていて今まで見殺しにしてきた。

俺にはない〝力〟を持っていた奴らを……」

 

「……ならどうしてシアの肩を持ったんですか?」

 

「お前がここまで導いてきたからだ。

大迷宮を攻略するほどの強者であるお前が、亜人を連れて樹海にまでやってくる―――……正直運命を感じた。

だから助け舟を出したんだ」

 

「……僕とブラストを重ねていたんですね」

 

「だが、お前はブラストじゃねえ。

第一、アイツはお前なんかより遥かに強かったんだ。

俺が言うんだ、間違いねえ……ハッハッハ」

 

「……でしょうね。

僕ももっともっと強くなりたいですよ……ハハ」

 

 

樹海に乾いた笑いが二つ響き、即座に溶けていった。

 

 

「……コイツはあくまで独り言だが、大樹に向かう道中は大変な事になるだろうぜ。

……襲いかかる同胞達を生かしたまま長老(おれたち)に突き出せば面倒も少ないし恩も売れる」

 

「ジンさん―――……中々悪い人ですね」

 

「ハッ! 俺は悪くねえ、弱い奴が悪いのさ。

……で? お前はどうするんだ?」

 

 

ハジメは軽く思案する。

 

ジンの話を鵜呑みにするならば、熊人族を除いた亜人族が明日にでも襲撃を仕掛けてくるという事になる。

 

返り討ちにする事自体は簡単、なんならハジメ一人で〝フェアベルゲン〟を地獄絵図に変える事ができる―――……が、そんな事をすれば目指すヒーロー像から最もかけ離れた存在…〝怪人〟に認定されるのは目に見えている。

 

必要なら人を殺す選択肢も考慮の内に入れるハジメだが、怪人にだけはならないよう常に心にブレーキをかけているのだ。

 

それに、前もって襲撃計画を知れた―――……それならばいくらでも対応のしようがある。

 

 

「……分かりました。 ええ、いいですとも。

ジンさんの話に乗りましょう」

 

 

ジンと向かい合いながら、今なお訓練に励んでいるハウリアの面々を遠目に見やるハジメ。

 

その表情には、ジンのように悪い笑みが浮かんでいた。

 




……ハジメがハーレムを築いているワケじゃなく、ユエがカップルごと寝取っていると思ってください。

本作のユエはかなり、かな〜〜〜りスケベです。

……投稿速度が遅くてすみません。

バナンザが楽しくってつい……。
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