ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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ハウリアが生まれ変わったって話です。


二十四話目 豹変したハウリア

 

 

―――〝ハルツィナ樹海〟―――

 

 

ズガンッ ドギャッッ

 

バキッ バキッッッ バキィィッッッ

 

ドグシャッッッ

 

 

……樹海の只中で凄まじい破壊音が響く。

 

野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

 

このバリエーション豊富な自然破壊はたった二人の女の子によってもたらされていた。

 

 

でぇやぁああ!!

 

 

そして、これら破壊活動は現在進行形で続いている。

 

裂帛(れっぱく)の気合とともに撃ち出されたのは直径1mほどの樹。

 

半ばから折られたそれは豪速を以て目標へと飛翔する。

 

確かな質量と速度が何の変哲もないただの樹に凶悪な破壊力を与え、道中の障害を尽く破壊しながら目標…ユエを撃破せんと突き進む。

 

 

「……〝緋槍〟」

 

 

それを正面から迎え撃つのは全てを灰塵に帰す豪炎の槍。

 

巨大な質量を物ともせず触れた端から焼滅させていき、砲弾と化した丸太は相殺され灰となって宙を舞った。

 

 

まだです!

 

 

〝緋槍〟と投擲された丸太の衝突がもたらした衝撃波で払われた霧の向こう側に影が走ったかと思えば、直後に隕石の如く天より丸太が落下し、轟音を響かせながら大地に突き刺さる。

 

バックステップで衝撃波の範囲からも脱出していたユエは再度、火炎の槍を放とうとする―――……

 

 

はぁぁァァァァァァ!!

 

 

……しかし、そこへ高速で霧から飛び出してきた影が大地に突き刺さったままの丸太に強烈な飛び蹴りをかましてみせた。

 

一体どれほどの威力が込められていたのか―――……蹴りを受けた丸太は爆発したように砕け散り、その破片を散弾に変えてユエを襲う。

 

 

「……〝城炎〟」

 

 

自らに飛来してくる即席の散弾を城壁の名を冠する炎の壁で完全に防ぎ切ったユエ。

 

ただの一発とて届きはしなかった―――……

 

 

もらいましたぁ!!

 

 

……しかし、隙は作れた。

 

 

「……まだまだ甘い」

 

 

ユエの背後に影が回り込む。

 

……即席の散弾を放った後、ハジメカオリほどではないにせよ見事な気配遮断により再び霧に紛れ奇襲を仕掛けたのだ。

 

大きく振りかぶられたその手には超重量級の大槌が握られており、刹那、豪風を伴ってユエに振り下ろされる。

 

 

「〝風壁〟」

 

 

大槌によってもたらされた激烈な衝撃が大地を文字通り爆発させる。

 

砕かれた石や砂利が衝撃で散弾となり四方八方に飛び散ったが、当のユエはそんな凄まじい攻撃の直撃をやすやすと紙一重で躱す。

 

余波を風の障壁により吹き散らし、同時に風に乗って安全圏まで一気に後退した。

 

後は、技後硬直により死に体となっている相手に魔法を放てば終わる―――……

 

 

〝凍柩〟―――……ッッ!?」

 

どらぁぁあ"あああ!!!

 

 

……その判断が命取りとなった。

 

まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()と言わんばかりに躊躇なく大槌を手放した影…シア・ハウリアは、驚異的な身体能力でユエに急接近するとその右の拳を握り固め弓弦の如く振り絞り、ユエの鳩尾を貫いた。

 

 

でやぁぁあ"―――……ああァ!?

 

 

〝ここから更に畳み掛ける!!〟…初めての勝利を確信し一瞬だけ気が緩んでいたシアの熱意を冷気が襲う。

 

……まだまだ試行段階とはいえ、シアは自らの〝未来視〟をどうにか戦闘でも扱えるよう必死で努力を重ね、2秒先の未来を先読みできる〝天啓視〟に開眼している。

 

だからこそユエが回避する場所をあらかじめ知る事が出来たし、自分が()()()()()()()()()()()()あらかじめ知る事が出来たのだ。

 

ユエがやった事は至極単純。

 

自分の鳩尾に魔法を()()、シアの拳が直撃するのを待つ。

 

後は、直撃するタイミングを見極めて魔法を発動すればいいとはユエの談だが、控えめに言って神業である。

 

 

「づ、づめたいぃ~。

早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

 

 

一瞬で発動した氷系魔法がシアの右の拳を起点に一気に駆け巡り―――……頭だけ残して全身を氷漬けにした。

 

……ユエはシアのように未来を視る事は出来ない。

 

だが、積み重ねた経験と勘によってシアがどのように自分を無力化してくるか、具体的にどの箇所を攻撃してくるか等を予測する事は出来る。

 

常日頃から不測の事態に備えて戦術を拡充させ続けており、故にこそハジメ達の隣にいられるのだ。

 

 

「……カオリ、判定お願い」

 

 

……そう、問答無用で自然破壊を繰り返していたこの二人は訓練を始めて10日目の今日、最終試験として模擬戦をしていたのだ。

 

シアがほんの僅かでもユエを傷つけられたら勝利・合格という内容だ。

 

審判を任されたカオリの判定は―――……

 

 

「シアの勝ちだよ」

 

「あはは~、やりましたぁ! 私の勝ちですぅ!」

 

「な……ッ! どうして……ッ!?

カウンターは見事に決まった筈なのに……ッ」

 

「ユエ、頰に傷が付いてるよ?」

 

 

カオリの言う通り、ユエの頬には確かに小さな傷が付いていた。

 

おそらく最後の方―――……散弾と化した石礫が一つ、ユエの防御を突破したのだろう。

 

本当に僅かな傷ではあるが、これはシアの勝利である。

 

カオリの指摘を聞き、顔から上だけの状態で喜びを表現するシア。

 

体が冷えて若干鼻水が出ているが満面の笑みだ。

 

ウサミミが嬉しさでピコピコしている。

 

無理もない、何せこの戦いには訓練卒業以上にユエとした大切な()()()がかかっているのだから。

 

 

「……傷なんてな―――……」

 

誤魔化しちゃダメだよ、ユエ?

 

「うっ……」

 

 

〝自動再生〟により傷がすぐに消えたのをいい事にしらばっくれようとしてカオリに咎められるユエ。

 

拗ねたようにプイっとそっぽを向きながらも自らの敗北を素直に認めた。

 

 

「……まさかシアに負けるとは思わなかった。

……ここはカオリの顔を立てて、敗北を認めてあげる」

 

「うわぁ〜い、やったぁ〜。 ……ていうか、いい加減魔法解いて下さいよぉ~。

さっきから寒くて寒くて―――……あれッ、何か眠くなってきたような……? 母様……?」

 

「あッ、まずい! シアが凍死しかけてる!!

ユエ早く魔法を解いてあげて!!」

 

 

先程よりだーだーと鼻水を垂らしながらうつらうつらとし始めるシア。

 

完全に〝寝たら死ぬぞ!〟…の状態になりつつある。

 

その様子をチラッチラッと見て、どこか愉悦に浸っているような表情を一瞬浮かべた後、ユエは割と素直に魔法を解いてあげた。

 

カオリが自分に被せてくれたタオルに身を包みながら、シアはいつもの調子で軽口を叩く。

 

 

「ぴくちっ! ぴくちぃ! あうぅ、寒かったですぅ。

危うく帰らぬウサギになるところでした……」

 

 

可愛らしいくしゃみをし、近くの葉っぱでチーン!と鼻をかんだシアは、その瞳に真剣さを宿してユエとカオリを見つめた。

 

ユエは、特に何か思うでもなくその視線を受ける。

 

カオリは、微笑みながらユエとシアを見やる。

 

 

「ユエさん、カオリさん。

……私、勝ちました」

 

「……ん」

 

「うん」

 

「約束しましたよね?」

 

「……ん」

 

「そうだね」

 

「もし、10日以内に一度でも勝てたら―――……御三方の旅に連れていってくれるって。

……そうですよね?」

 

 

……そう、ユエとした約束事とはつまるところ、ハジメ一行の仲間入りを果たす事。

 

弱さを理由に断るのなら強くなって見返してやると意気込み、10日間の過酷な訓練を乗り越え、ちょっと前までとは比較にもならないほどの化け物レベルの戦闘能力を手にしたシア。

 

そんな心身共に逞しくなったシアだが、約束をもし反故にされたらどうしようとその胸中はいま不安に満ち溢れている。

 

 

「……そういえば、まだ言ってなかった」

 

「え、何をですか?」

 

「10日ぶりだね、シア」

 

「ハ、ハジメさんッッ!?」

 

 

……まさかまさかの樹海の奥からハジメ登場。

 

あまりのサプライズにびっくり仰天してしまうシア。

 

そんなシアのリアクションを苦笑いを浮かべながら見つめるハジメは、意を決したかのように口を開く―――……

 

 

「……カオリから話は聞いてるよ。

ユエ相手に凄く頑張っているって」

 

「そう! そうなんですよハジメさん! 聞いて下さい!

私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ!」

 

「おぉ、そりゃ凄いね。 ……ホント?」

 

 

目線だけをカオリとユエに向け確認するハジメ。

 

カオリとユエは無言で首肯した。 ……ユエはなんとも渋々といった感じだったが。

 

ハジメも、ユエとシアが何かを賭けて勝負している事はカオリを通じて聞き及んでいる。

 

シアのために超重量の大槌を用意したのは他ならぬハジメであり、シアが真剣な表情で〝ユエさんに勝ちたいです、武器を貰えませんか?〟…と頼み込んできたのは記憶に新しい。

 

ユエ自身も特に反対しなかった事から、何を賭けているのかまでは知らなかったし、聞いても教えてもらえなかったが、ユエの不利になる事もないだろうと思い作ってあげたのだ。

 

 

「―――(……よほどユエが油断しない限りは9.5:0.5の割合でユエが勝つ、そう予想してたけど―――)……」

 

 

奈落の底でユエの実力は十二分に把握しているし、いくら魔力の直接操作が出来るといっても今まで平和に生きてきたシアとは地力が段違いだからだ。

 

 

「―――(……三人の表情を見る限り、シアは一割にも満たない勝利を掴み取ったワケだ。

ルールを設けた上とはいえホントに凄いな。

イヤ、カオリの話だと強化していない僕の三割くらいの身体強化を使いこなせるらしいから十分強い―――)……」

 

 

〝ユエが不覚を取るのも仕方ないかもしれない〟…そう考え込んでいるハジメの元に、急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情で歩み寄るシア。

 

背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。

 

これから一世一代の頼み事をするのだ。

 

イヤ、むしろ()()と言っていいだろう。

 

緊張に体が震え、表情が強ばるが、不退転の意志を瞳に宿し、一歩、また一歩と前に進む。

 

そして、自分を見つめるハジメの眼前にやって来るとしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

 

「ハジメさん、私を皆さんの旅に連れて行って下さい。

お願いしますッ!!

 

「いいよ」

 

「ありがとうございます!

…………………………………………え? ( ゚д゚)ポカーン」

 

 

断られる可能性だってあるかもしれない、そう思っていたばかりにあまりにもアッサリと自分の告白を受け入れてくれたハジメを放心した顔で見つめるシア。

 

()()()()()()()()()()()()()、シアは不思議で不思議でならなかった。

 

 

「ほ、本当にいいんですかハジメさん?

イヤまぁ、仲間にしてくださるのはとても嬉しいんですが、こんなアッサリ……」

 

「君の頑張りは僕なりに理解しているつもりだよ。

ユエ相手に渡り合える実力があるんだから、むしろ僕の方から仲間になってほしいって言おうと思ってたんだ。

……それでも一本取るとは思ってなかった、凄いよ」

 

「ッッ!! あ、ありがとうございます……ッ」

 

「……カオリとユエにはその旨を言っておいたんだけど、その様子だと言ってなかったっぽいね……」

 

「ごめんねシア。 あなたの決意に茶々を入れる気がして言わないでおいたの」

 

「……言うまでもなく、シアは私の……」

 

「それで、カムさん達はどうする?

流石に全員は連れていけないけど……」

 

「こ、これは私だけの話です!

父様達には修行が始まる前に話をしました。

一族の迷惑になるからって理由だけじゃ認めないけど、その―――……」

 

「その? ……何?」

 

 

何やら急にモジモジし始めるシア。

 

指先をツンツンしながら頬を染めて横目に()()をチラチラと見る。

 

 

「―――(……あざとい、なんてあざといんだこの娘は。

っと、いけないいけない、カオリとユエ以外の女性に欲情するなんてそんなはしたない真似はしないぞ。

三股なんて僕はしない、うん、絶対)」

 

 

〝二股までだったらいいのか〟…第三者がいればそんなツッコミが入りそうな自問自答を行い理性を保つハジメ。

 

 

「その、私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

 

「? じゃあ何で付いて行きたいの?」

 

「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

 

「……?」

 

 

モジモジしたまま中々答えないシア。

 

どうしたものかと頭を捻るハジメであったが、意を決したのか〝女は度胸!〟…と言わんばかりにシアは声を張り上げ思いの丈をぶつけた―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()の傍に居たいからですぅ!

大しゅきなのでェェ!♡!!♡

 

「……は?」

 

 

〝言っちゃった、そして噛んじゃった!〟…などと言いながらあわあわしているシアを前に、ハジメは鳩が豆鉄砲でも喰らったかのようなポカンとした表情を浮かべる。

 

まさに何を言われたのか分からないという様子だ。

 

 

「―――(……え、え、な、何を言って……?

なんでここでユエの名前が出るの……?

しょっちゅうセクハラを受けてた気がするんだけど……?

ダメだ、理解が、追いつかない―――)……」

 

 

……しかし、しばらくしてようやくシアの言った言葉の意味が脳に伝わったのか、思わずといった様子でハジメはツッコミを入れる。

 

 

「いやいやいや、おかしいでしょ。

一体どこでそんな百合フラグが立ったんだよ?

ずっと傍観していた僕が言うのも何だけど、ユエの君に対する対応はなんていうか、かなり大胆というか、やり過ぎだったと思うんだけど。

……まさか、そういうのに興奮するタイプ?」

 

誰が変態ですか! 私はいたって健全ですッ!!

 

「……ハウス、シア」

 

♡!!♡!♡?♡ はいユエ姉様♡♡

 

 

……怒りで興奮していたシアを一瞬で落ち着かせたユエ。

 

〝待て〟の状態で待機しているシアの喉元を優しく撫でながら、ユエは妖艶にハジメに微笑みかける。

 

さながら〝やってやりましたぜ旦那!〟…と言わんばかりにドヤ顔しているようにも見えたハジメは、現在自分を取り巻くあらゆる感情をどうにか飲み込み、努めて冷静にユエに経緯を問いただす事にした。

 

 

「……何か言う事があるね、ユエ?」

 

「……10日以内に私好みの女の子に調教できるか心配だったけど、なんとかなった」エッヘン

 

ブチッ「エッヘンじゃねえよ……ッ!」

 

 

悪びれるどころかどこか誇らしげに胸を張るユエに、少々乱暴な物言いをするハジメ。

 

 

「……ごめんなさいハジメ。 私の責任だよ」

 

 

どういうつもりだと問い詰めようとしたその時、ハジメの隣に立っていたカオリがなんとも申し訳なさそうにハジメに声をかけてきた。

 

 

「ユエのシアに対するスキンシップの激しさは理解していたし、その場にいる時は注意なんかも出来たけど……」

 

「……四六時中一緒にはいられないもんね。

ごめんカオリ、君を責めてるワケじゃないんだ。

……シア、なんで君がユエを好きになったのか、説明お願い出来る?」

 

ユエ姉様は私に全く新しい未来(せかい)を魅せてくれたんですぅ!♡!

 

「お、おぅ……」

 

ユエ姉様に()()()()だけでも良かったんですが、慈悲深くもユエ姉様は、賭けに勝てば私を愛人にしてあげると言ってくれたんですぅ!♡♡!!

 

「へ、ぇ……」

 

えへへ♡ うへへへ♡ くふふふ〜♡♡ そ、そんな事を言われちゃったら、誰だって頑張っちゃうじゃないですか〜?♡ わ、私だって、一人の女の子、なんですからぁ♡♡♡

 

「   」

 

 

……身体をくねくねさせながら、瞳にハートマークを浮かべ、完全に()()()表情でヤバい事を口走るシア。

 

ムキムキになったシアの家族達の事をどう説明すればいいだろうかと頭を悩ませていたハジメであったが、そんな悩みがちっぽけに感じるほどの特大の爆弾を投下され、その思考は完全に真っ白に染まってしまった。

 

 

「―――(……カムさんに、どう謝ればいいんだろ)」

 

 

シアにご褒美ディープキスをかますユエ。

 

ユエの超絶テクニックによって全身を痙攣させるシア。

 

なんとか阻止しようと試みるカオリ。

 

その様子を、他人事のように遠い目で見つめるハジメ。

 

 

「……とりあえず、カムさん達と合流しようか?」

 

「……ん」

 

「は、はいぃ……♡」

 

「うん、そうだね……」

 

 

〝神〟殺しの旅は前途多難である。

 




……嘘はついてませんよ?

(シア・)ハウリアが生まれ変わった、それだけの話です。

これぞユエハーレム!
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