ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】 作:びよんど
※8/10更新しました!
―――〝ハイリヒ王国〟―――
ハジメとそのクラスメイト達が異世界〝トータス〟に転移してから翌日、早速訓練と座学が始まった。
……イシュタルとの話し合いの結果、戦争への参加はあくまで志願制となったが、兎にも角にもまずは訓練を受けてから判断して欲しいという結論に落ち着いた。
座学については元々向こうも予定していたのもあって、現状は何とか最良の結果に収まったと言えるかもしれない。
まず、集まった生徒達に12cm×7cm位の銀色のプレートが配られた。
不思議そうに配られたプレートを見るクラスメイト達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
……騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った一同だったが、対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるワケにはいかないという事らしい。
メルド団長本人も、〝むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由ができて助かった!〟…と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。
もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが。
「よし、全員に配り終わったな?
このプレートは〝ステータスプレート〟と呼ばれている。 文字通り自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。
最も信頼のある身分証明書でもある。 これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルド団長。
彼は豪放磊落な性格で、〝これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!〟…と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。
ハジメ達もその方が気楽で良かった。
遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。
……その気さくさ、頼りがいのあるところが何処となくキングに似ている気がしたのもあるが。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。
そこに一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。 それで所持者が登録される。
〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。
……ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。 神代の〝アーティファクト〟の類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語にコウキが質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。
まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。
そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。
普通はアーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。
……身分証に便利だからな」
なるほど、と頷きクラスメイト達は、顔を顰めながら指先に針を刺し、浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。
……すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ハジメも同じように血を擦りつけ表を見る。
すると―――……
ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:900
体力:900
耐性:900
敏捷:900
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・疲労耐性・整体術・限界突破・言語理解
……まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、ハジメは自分のステータスを眺める。他のクラスメイト達も自分のステータスに注目している。
メルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ?
まず最初に〝レベル〟があるだろう?
それは各ステータスの上昇と共に上がる。
上限は100でそれがその人間の限界を示す。
つまりレベルはその人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。
レベル100ということは人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。
そんな奴はそうそういない」
どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がるワケではないらしい。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。
また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。
詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。
それと、後でお前ら用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。 なにせ
国の宝物庫大開放だぞ!」
……途端にメルド団長から目を逸らすクラスメイト一同。
クラスメイト達は全員が全員コウキのように戦争への参加を表明しているワケではない。
クラスメイト達の殆どが
メルド団長もすぐに自分の失言に気付いたらしく、何とも気不味そうに頬をポリポリと掻くと謝罪を口にする。
「……すまん、お前達の苦労も知らずに責任ばかり押し付けてしまって……。 お前達も元々はただの一般人だと言うのに無責任すぎた」
「いえ、メルド団長が謝る事じゃありません」
「……せめてお前達がこの世界で不自由なく生きられるよう教えられる事は出来る限り教えると約束しよう」
……この人は信用できる、確かな根拠はないもののハジメはそう直感した。
「……続けるぞ。 次に〝天職〟ってのがあるだろう?
それは言うなれば才能だ。
末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。
……天職持ちは少ない。 戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は1,000人に一人―――……ものによっちゃあ10,000人に一人の割合だ。
非戦系も少ないと言えば少ないが―――……100人に一人はいるな。10人に一人という珍しくないものも結構ある。 生産職は持っている奴が多いな」
ハジメは自分のステータスを見る。
確かに天職欄に〝錬成師〟とある。
どうやら〝錬成〟というものに才能があるようだ。
「(ん? でも僕、地球にいた頃から錬成なんて使えなかったけどな……?
……案外、エヒト様っていうのが適当に決めた後付けの才能だったりしてね……)」
〝錬成〟や〝言語理解〟を除けば心当たりのあるものは幾つかあった。
〝疲労耐性〟というのは、朝の筋トレの日々によって疲れにくくなった事を指すのだろう。
〝整体術〟…キングの我流のマッサージ術をカオリとともに教わり、ある程度使いこなせるようになった事を表しているのだろう。
……カオリとお互いの身体を揉み合う事で技術向上を目指しているが、それはまた別の話―――……
〝限界突破〟…恐らく自分の限界を度外視して筋トレに励み続けた結果だろう、たぶん。
「(こうして見てみると―――……人って変わろうと思えば変われるものなんだな……。
無免ライダーさんやキングさんに会っていなければこういう技能に恵まれる事はなかっただろうし……)」
メルド団長は更に話を続ける。
「後は……各ステータスは見たままだ。
大体レベル1の平均は10くらいだな。 ……まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!
そうそう、ステータスプレートの内容は報告してくれ。
訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
この世界のレベル1の平均は10らしい。
ハジメのステータスは見事にフィジカルに偏重していた。
「(〝錬成〟が魔法に依らない力業である事を祈るよ)」
「ハ、ハジメ君」
「ん? どうしたのカオリ?」
「……私のステータス、変なの……」
カオリ 17歳 女 レベル:1
天職:治癒師
筋力:800
体力:900
耐性:1000
敏捷:900
魔力:70
魔耐:70
技能:回復魔法・光属性適正・高速魔力回復・疲労耐性・整体術III・言語理解
「……スゴく頼りがいがある! スゴい!(棒読み)」
「なんでそこで棒読みなのハジメくぅ〜ん!?」
……着痩せしていて分かりづらいが、カオリ
公園の鉄棒を誤って握り潰したところを目撃され、ハジメとキングにからかい半分・敬意半分で姉御呼ばわりされ、物凄く憤慨したのは余談である。
コウキがステータスの報告をしにメルド団長の元へ来た。
そのステータスは―――……
コウキ 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
「ほお~流石勇者様だな。
レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ、三つなんだがな―――……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~あはは……」
団長の称賛に照れたように頭を掻くコウキ。
ちなみに団長のレベルは62。 ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。
しかし、コウキはレベル1で既に三分の一に迫っている。
成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。
ちなみに技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。
唯一の例外が〝派生技能〟だ。
これは一つの技能を長年磨き続けた末に、
簡単に言えば、今まで出来なかったことがある日突然コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。
「(……〝疲労耐性〟とかも派生技能だったりするのかな? メルド団長に聞いてみよっと)」
ハジメは自分のステータス欄にある〝錬成師〟を見つめる。
一見戦闘に向いていなさそうな天職だが、
報告の順番が回ってきたのでハジメとカオリはメルド団長にプレートを見せた。
規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしている。
なんだかんだ言いながらも、強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。
その団長の表情が(^o^)……と笑顔のまま固まり、ついで〝見間違いか?〟…とでも言うようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。
そして、ハジメとカオリを凝視した後、凄い剣幕で両者に詰め寄った。
「どどど、どうなっとるんだお前達ィ!?
魔力や魔耐以外のステータスが軒並みコウキの8〜9倍以上はあるじゃないか!!!
カオリは希少な〝治癒師〟、ハジメの〝錬成師〟自体はありふれているが―――……む? 〝整体術〟?」
〝ハジメの〝錬成師〟自体はありふれている〟
その言葉にハジメを目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。
その口ぶりからして恐らくは非戦系天職だろう。
殆どのクラスメイトが戦闘系天職を持ち、その中で来たる戦争において役立たずの可能性が大きい。
ヒヤマがニヤニヤとしながら声を張り上げる。
「おいおいハジメ。 ……もしかしてお前、非戦系か?
そんな
メルドさん、その〝錬成師〟って珍しいんっすか?」
「……イヤ、鍛治職の10人に一人は持っている。
国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、ハジメ~。
お前、そんなんで戦えるわけ?
いくらステータスが高くても非戦系じゃ意味ねー!」
ヒヤマが実にウザイ感じでハジメと肩を組む。
見渡せば周りの男子達はニヤニヤと嗤っている。
「……出来る限り頑張るよ」
「じゃ〜ステータスプレートを見せてみろっての!
せめて技能くらいはマトモなのが揃ってんだろうなァ?」
……わざわざ執拗に聞くヒヤマ。
本当に嫌味な性格をしている。
強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。
事実、隣にいたカオリは不快げに眉をひそめている。
……カオリに惚れているくせに、なぜそれに気がつかないのか。
そんなことを考えながら、ハジメはプレートを渡す。
ハジメのプレートの内容を見て、ヒヤマは爆笑―――……しようとしたが、あまりに周囲と隔絶したステータスを見てフリーズしてしまった。
内容が気になった取り巻きのサイトウは、ヒヤマから無理矢理ハジメのステータスプレートをその奪い取り中身を確認する。
「は、え……? 六分の四のステータスが900……?」
「こ、壊れてねぇか? このステータス―――……っていうかハジメが!」
「イヤでも、魔力と魔耐は一般人並だから……」
……それを言ったらカオリも十分フィジカルモンスター、なんて言おうものならカオリの詰問が待ち受けているのは目に見えている。
ハジメはそこら辺はしっかりしているのだ。
「こらー! 早くプレートをハジメ君に返しなさい!」
ちっこい体で精一杯怒りを表現するアイコ先生。
その姿に毒気を抜かれたのかプレートがハジメに返される。
そうしてアイコ先生はハジメに向き直ると励ますように肩を叩いた。
「ハジメ君、気にすることはありませんよ!
先生だって非戦系?とかいう天職です。
ハジメ君は一人じゃありませんからね!」
そう言ってアイコ先生はハジメに自分のステータスを見せた。
アイコ 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
「……先生のは非戦系は非戦系でも
「…………ふぇ?」
……確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろう事は一目でわかるのだが―――……魔力だけならコウキに匹敵しており、技能数なら超えている。
糧食問題は戦争には付きものだ。 ……ハジメのようにいくらでも替えの利く職業ではない。
つまるところ、アイコ先生も十二分にチートだった。
「……ところでメルド団長、〝錬成師〟ってどんな事が出来るんですか?」
「……あぁ、簡単に言えば鍛冶職みたいなものだな。
鉱物を加工して武器なんかを作るぞ」
「なるほど……」
……あまりにも初めての事が多い異世界生活だが、とりあえず自分の強さを知れて良かったハジメであった。
次回、イジメなんて起こるかなぁ……?