ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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イジメられるようなヤワな奴じゃないんですよ。

……誰がとは言いませんが。

※8/10更新しました!


三話目 最弱? イジメ?

 

 

―――ハイリヒ王国 王立図書館―――

 

 

「……どうにも腑に落ちないなぁ……」

 

 

現在、ハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。

 

その手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑がある。

 

何故そんな本を読んでいるのか。

 

それはただ単純に、魔物に関する知識を収集して不測の事態に対応できるようにしているからに他ならない。

 

いくらフィジカルが凄かろうとそれだけを頼りにするワケにはいかない。

 

力の及ばぬ範囲を知恵でカバーできないかと訓練の合間に勉強しているのである。

 

……そんなわけでハジメはしばらく図鑑を眺めていたのだが、疲れてしまったのか溜息を吐いて机の上に図鑑を置いた。

 

ハジメはおもむろにステータスプレートを取り出し、頬杖をつきながら眺める。

 

 


 

 

ハジメ 17歳 男 レベル:2

 

天職:錬成師

 

筋力:1050

体力:1050

耐性:1050

敏捷:1050

魔力:12

魔耐:12

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・疲労耐性[+痛覚耐性]・整体術[+回復効果上昇][+浸透看破]・限界突破・言語理解

 

 


 

 

……これが、異世界〝トータス〟に転移してから二週間みっちり訓練したハジメの成果である。

 

どうやら自分には魔法関係の才能が全くないらしい事が良く分かったハジメ。

 

例えばの話になるが、〝限界突破〟を発動する事で本来の身体能力を三倍にまで引き上げて戦う事自体は可能だ。

 

使用後に並々ならぬ負担が身体を襲うが、〝疲労耐性〟によってその負担を大きく緩和できる事も実証済みだ。

 

……あまりにも心許ない魔力量によって、どれだけ長くても30秒しか持続しないが。

 

何度も魔力切れを起こしてぶっ倒れかけながらも根性一つで頑張り続けたおかげで〝錬成〟の技能もある程度派生させる事はできたワケだが―――……如何せん魔力があまりにも少ない事がハジメの頭を悩ませていた。

 

カオリに魔力を譲渡される度に自分の不甲斐なさを痛感するハジメ。

 

コウキのように有用で多彩な戦闘系技能に恵まれていないハジメでは前線に立って戦う事は難しい。

 

 

「(でも…その点については()()()()()()かもしれない。

材料を調達してもらうのに苦労させちゃったけど)」

 

 

ハジメの試み、それは完全異世界産の〝銃〟を作り出そうというものだ。

 

取り回しに多少注意はいるが、持って構えて引き金を引けば子供でも大人を殺せる現代兵器…銃を一から作ろうと模索していたのだ。

 

飛び道具を武器に戦うヒーローに憧れていた時期があり、拳銃程度のスケールであれば頭の中に設計図として記憶されている。

 

必要な材料を国お抱えの錬成師の皆さんに調達してもらい、型を造ったり何なりして失敗作の山を生み出した果てにようやく満足のいく代物が出来上がりつつあった。

 

動かない的…鉄製の鎧を撃ち貫くなどして既に効果は検証出来ている。

 

後は動く的…魔物などの生物相手に通用すれば文句なしである。

 

 

「(僕は、人殺しの道具を作ってしまったんだ……)」

 

 

カオリやクラスメイト達の足を引っ張りたくない……そんな()()()によってとんでもない兵器を生み出してしまった罪悪感を払拭していたが、やはり堪えるものがある。

 

しかも銃というこの異世界にない武器を発案してしまったばかりに王国に目を付けられ、全面協力と引き換えに技術提供を要求されるという非常に苦しい状況に陥ってしまっている。

 

今はどうにか煙に巻けているがそれにだって限度がある。

 

なにせ現在進行形で〝魔人族〟と戦っているのだ。

 

練度に関係なく持てば高い攻撃力を手にする事が出来る武器の製造方法がハジメの頭の中にしかないとあれば()()()()()使()()()()()聞き出してしかるべきだろう。

 

 

「(……根詰めすぎたな、ちょっと楽しい事でも考えよ。

……亜人の国には行ってみたいなァ。 獣耳(ケモミミ)を見ずして異世界転移は語れない。

……でも〝樹海〟の奥地なんだよなァ……。

被差別種族らしいから奴隷以外、まず外では見つからないらしいし)」

 

 

ハジメは()()()()()を、ここ二週間教わった座学知識を頭の中に展開しながら選び抜いていた。

 

ハジメの知識通り、亜人族は被差別種族であり、基本的に大陸東側に南北に渡って広がる〝ハルツィナ樹海〟の深部に引き篭っている。

 

……なぜ差別されているのかというと彼らが一切魔力を持っていないからだ。

 

神代において、エヒトを始めとする神々は神代魔法にてこの世界を創ったと言い伝えられている。

 

そして、現在使用されている魔法はその劣化版のようなものと認識されている。

 

それ故、魔法は神からの贈り物(ギフト)であるという価値観が強いのだ。

 

……聖教教会がそう教えているのだが。

 

そのような事情から魔力を一切持たず魔法が使えない種族である亜人族は神から見放された悪しき種族と考えられているのである。

 

……じゃあ魔物はどうなるんだよ、ということだが、魔物はあくまで自然災害的なものとして認識されており、神の恩恵を受けるものとは考えられていない、要はただの害獣らしい。

 

なんともご都合解釈な事だと、ハジメは内心呆れた。

 

なお、魔人族は聖教教会のエヒト様とは別の神を崇めているらしいが、亜人に対する考え方は同じらしい。

 

この魔人族は、全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。

 

数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国〝ガーランド〟では、子供まで相当強力な攻撃魔法を放てるようで、国民=戦士の国と言えるかもしれない。

 

人間族は、崇める神の違いから魔人族を仇敵と定め、神に愛されていないと亜人族を差別する。

 

魔人族も同じようで、亜人族はもう放っておいてくれといった感じだろうか。 ……どの種族も実に排他的である。

 

 

「(……樹海が無理なら西の海に出ようか? ……確か、エリセンという海上の町があるらしいし……獣耳(ケモミミ)は無理でも人魚(マーメイド)は見たい、男の浪漫(ロマン)だよ。

……あと海鮮料理が食べたい)」

 

 

海上の町〝エリセン〟は海人族と言われる亜人族の町で西の海の沖合にある。

 

亜人族の中で唯一、王国が公で保護している種族だ。

 

その理由は、北大陸に出回る魚介素材の八割が、この町から供給されているからである。

 

全くもって身も蓋もない理由だ。

 

壮大な差別理由はどこにいったと、この話を聞いたときハジメは内心盛大にツッコミを入れたものだ。

 

ちなみに西の海に出るには、その手前にある〝グリューエン大砂漠〟を超えなければならない。

 

この大砂漠には輸送の中継点として重要なオアシス〝アンカジ公国〟〝グリューエン大火山〟がある。

 

この〝グリューエン大火山〟は〝七大迷宮〟の一つだ。

 

〝七大迷宮〟とは、この世界における有数の危険地帯を指す。

 

ハイリヒ王国の南西、〝グリューエン大砂漠〟の間にある〝オルクス大迷宮〟と先程の〝ハルツィナ樹海〟もこれに含まれる。

 

……〝七大迷宮〟でありながら何故三つだけかというと、他は古い文献などからその存在は信じられているのだが、詳しい場所が不明で未だ確認はされていないからだ。

 

一応、目星は付けられていて、大陸を南北に分断する〝ライセン大峡谷〟や、南大陸の〝シュネー雪原〟の奥地にある〝氷雪洞窟〟がそうではないかと言われている。

 

 

「(……砂漠は無理かな。

……だとすると、もう帝国に行って奴隷を見るしかないんだろうけど、流石に奴隷扱いされてる獣耳(ケモミミ)を見て平静でいられる自信はないなァ)」

 

 

帝国とは、〝ヘルシャー帝国〟の事だ。

 

この国は、およそ300年前の大規模な魔人族との戦争中にとある傭兵団が興した新興の国で、強力な傭兵や冒険者がわんさかと集まった軍事国家らしい。

 

実力至上主義を掲げており、かなり()()()国のようだ。

 

この国には亜人族だろうがなんだろうが使えるものは使うという発想で、亜人族を扱った奴隷商が多く存在している。

 

帝国は、王国の東に〝中立商業都市フューレン〟を挟んで存在する。

 

〝フューレン〟は文字通り、どの国にも依らない中立の商業都市だ。

 

経済力という国家運営とは切っても切り離せない力を最大限に使い中立を貫いている。

 

欲しいモノがあればこの都市に行けば手に入ると言われているくらい商業中心の都市である。

 

 

「……ふぅ、訓練の時間だな……」

 

 

現実逃避終了。

 

そう自分に言い聞かせて足早に図書館から退室する。

 

王宮までの道のりは短く、目と鼻の先ではあるが、その道程にも王都の喧騒が聞こえてくる。

 

露店の店主の呼び込みや遊ぶ子供の声、はしゃぎ過ぎた子供を叱る声、実に日常的で平和だ。

 

 

〝いつまでもこんな当たり前の平和が続けば良いなァ〟

 

 

「(……()()()()()()()()僕そのものだ。

せめてこの平和だけでも守ってあげたいな……)」

 

 

ハジメはそんな事を切に願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。

 

どうやら案外早く着いたようである。

 

筋トレでもして待つかと、ハジメは腕立て伏せの準備をする。

 

 

ドンッ

 

 

「ぐえッ!!」

 

 

ドサッ

 

 

その時、唐突に後ろから()()()()()ハジメ。

 

まさかと思って振り返って見ると、そこには()()()()()()()()()()尻もちをついたヒヤマと、ヒヤマの取り巻きである三人組の姿があった。

 

 

「ちょ、ヒヤマ〜!

流石に蹴りが甘かったんじゃないの〜?」

 

「う…うるせえ!

なんだってんだ、全く動かせなかったぞ……?

 

 

……訓練が始まってからというもの、ことあるごとにハジメにちょっかいをかけてくるのだ。

 

蹴りを入れてきたのは初めてだったが、存外大したものじゃないなとハジメは判断する。

 

 

……チッ、よぉ、ハジメ。 なにしてんの?

お前ここに来ても意味ないだろが。

マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょ、ヒヤマ言い過ぎ!

いくら本当だからってさ~! ギャハハハ!」

 

「なんで毎回訓練に出てくるわけ?

俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ!」

 

「なぁ、ヒヤマ。

こいつさァ、なんかもう哀れだから、俺らで()()つけてやんね?」

 

 

一体なにがそんなに面白いのか嗤い続けるヒヤマ達。

 

 

「あぁ? ……おいおいナカノ

お前マジ優し過ぎじゃね? 

まぁ、俺も優しいし?

稽古つけてやってもいいけどさァ~!」

 

「おお、いいじゃん。 俺ら超優しいじゃん。

無能のために時間使ってやるとかさ~。

ハジメ~感謝しろよ?」

 

 

そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行しようとして―――……

 

 

バシッ

 

 

「毎回毎回飽きもせず―――……いい加減僕の事は放っておいてくれないか? ……ハッキリ行って迷惑だ」

 

 

……その手を強引に振り払い、キッパリと拒絶の言葉を口にするハジメ。

 

その顔にはありありと〝不快〟の二文字が表れており、さしものヒヤマ達もそのプレッシャーに完全に気圧されてしまった。

 

 

「な、な、な……!? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんだよッ!

マジ有り得ないんだけどォ! お前はただ、〝ありがとうございます〟…って言ってれb―――……」

 

「お前達! いったい何をやっている!!」

 

「ゲ……ッ! メルド団長……!」

 

 

……その後、メルド団長がハジメとヒヤマ達、双方の主張を聞き届け、最終的にハジメの主張に正当性があると判断した。

 

ハジメがあくまで正々堂々かつ淡々と事の有り様を言っていたのに対し、ヒヤマ達は我が身可愛さにその場しのぎの嘘だとすぐに分かるような話しかしなかった事が大きい。

 

ヒヤマ達はメルド団長からのキツ〜いお叱りを受けた後、ハジメに接近する事を固く禁じられる事となった。

 

ハジメのメルド団長に対する好感度メーターが急上昇したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。

 

何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

 

「明日から実戦訓練の一環として〝オルクス大迷宮〟へ遠征に行く!

必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!

まぁ、要するに気合入れろってことだ!

今日はゆっくり休めよ! ……では、解散!」

 

 

……そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。

 

喧騒に包まれるクラスメイト達の中でハジメは―――……

 

 

「(……もうあらゆる事が心配でしかないんだけど……。

が、頑張るしかないよなぁ……)」

 

「ハジメ君、ちょっと良いかな……?」

 

「ん? 何だいカオリ?」

 

 

明日の遠征に心配事が尽きないハジメであったが、こちらに近寄って来た気配…カオリに気付き、彼女を心配させまいと精一杯に気丈に、柔和に振る舞う。

 

そして、カオリは唐突にハジメの耳元で囁いた。

 

 

「明日、二人っきりで話がしたいの―――……良い、かな?」

 

 

人前でなければぶっ倒れるほどの凄まじい衝撃がハジメを襲った。

 




次回、月の下で語らうだけで終わるかなぁ……?
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