ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】 作:びよんど
今回はヒヤマ視点の話です。
白河上皇さん、誤字報告ありがとうございます。
※8/10更新しました!
―――宿場町〝ホルアド〟―――
「ナンデ? ナンデナンデナンデ?? ア、アイツを落とすためにやったのに……なんでカオリがアイツを庇って……クソッ…雑魚のくせに……キモオタの分際で……て、天罰だ。 ……俺は間違ってない……カオリのためだ……でもカオリが落ちて……ナンデ? どうして?……俺は間違ってない……ヒ、ヒヒ……ッ!」
……ハジメとカオリが奈落に落ちたその日の夜。
町の一角にある目立たない場所で膝を抱えて座り込む人影。
顔を膝に埋め微動だにしない。 ……もし、誰かが
……人影の正体は、意味不明な自己弁護で必死に
そう、
あの瞬間は今でも脳裏にこびりついている。
『ハジメがたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ!
前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな!
後衛組は遠距離魔法準備! ……ハジメが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!』
メルド団長のビリビリと腹の底まで響くような声に思わずビクッとするヒヤマ。
自分がトラップを作動させた張本人であるとはいえ、本気で恐怖を感じていたヒヤマは、すぐにでもこの場から逃げ出したかった。
しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。
それは迷宮に入る前日、〝ホルアド〟で宿泊していた時。
緊張のせいか中々寝付けずにいたヒヤマは、トイレついでに外の風を浴びに行った。
涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ、部屋に戻ろうとしたのだが、その途中ネグリジェ姿のカオリを見かけたのだ。
初めて見るカオリの姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、カオリはヒヤマに気がつかずに通り過ぎて行った。
気になって後を追うと、カオリは
その扉から出てきたのが―――……ハジメだった。
ヒヤマは頭が真っ白になった。
ヒヤマはカオリに好意を持っているが…自分とでは釣り合わないと思っており、コウキのような相手なら所詮住む世界が違うと諦められた。
しかしハジメは違う。
自分より
それなら自分でもいいじゃないかとヒヤマは本気で思っていた。
ただでさえ
カオリが見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなって表れたからだろう。
その時のことを思い出したヒヤマは―――……ついに悪魔に魂を売り渡す事を決意したのだった。
結論から言って、目論見は全て裏目に出た。
まず第一にカオリがハジメを庇ってしまった事。
それによってカオリが奈落に落ち、後を追うようにハジメも落ちてしまった。
第二に、自分がカオリを攻撃した場面を
『ヒヤマァァ!! 貴様ァァ!!!』
『ヒィ! 待って、殴らないでぇ!!』
『なんで……カオリを……ッ!?』
『ふぇ………?』
「うあぁぁあぁぁ!!! なんで、なんでえぇ!? カオリィィィ!!!」
「シズシズッ! 落ち着いてッ!!」
……
散々泣き喚いた挙げ句、電池が切れた人形のように突然意識を失った事で大事には至らなかったが、肌で感じられるほどにクラスメイト達から冷たい視線を受ける事となった。
『ヒヤマ、今は何も言うまい。
……逃げようなどと考えるなよ……!』
普段とは全く異なる恐ろしいメルド団長を前にして何も言えなくなったヒヤマ。
……現在、外には出させてもらっているが自由などとは程遠い状況に置かれている。
王国に帰還次第、カオリとハジメの死とともにヒヤマの犯した罪も報告されるだろう。
メルド団長曰く、恐らく極刑に科される事はないが当分外の景色を見る事はないだろうとの事。
「ふざけんじゃねえ!!! 俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くないんだああぁぁああぁぁ!!!」
……そして、ヒヤマは気付いた。
自分の身に降りかかる不幸の原因を。
「………アイツのせいだ。」
「そうだ……あのキモオタはカオリを洗脳してやがったんだ……でなきゃカオリが俺に振り向かない理由にならない……クソッ、あのクソ野郎……人間以下の下衆の所業じゃねえか……そう考えるとカオリが死んでいるとは思えねえ……きっとカオリは俺の助けを待ってるに違いねえ……あのキモオタから俺が解放してやらないと……ッ!」
――――お前は正しい
「ッ!? だ…誰だッ!?」
――――彼女はあの男の支配下に置かれている
「そ…そうだよなッ!? そうに決まってるッ!!
クソォ…あのクズ野郎がァ……ッ!!」
――――だが、今のお前ではあまりに力不足だ
「そ…そんな事は…イヤ……アイツどんな
――――お前に力を授けよう
「
――――その力で何をすべきかは…………
「こ…れが……力……ッ!!
グギャギャギャギャギャッッッ!!!」
――――知っているはずだ
「ハァァジィィメェェ!!!」
……翌日、ヒヤマは忽然と〝ホルアド〟から消えていた。
メルド団長はじめ、大人数で徹底的に捜索されたが、ついぞ発見する事は叶わなかった。
「どういう事だよ……ヒヤマの前にいた
……目撃者がいないワケではなかったが、
いったいどんな〝神〟に唆されたんでしょうね。
次回、ハジメ君sideの話です。