ありふれたヒーローオタクは世界最高を目指す【未完】   作:びよんど

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タイトル通り、かのメインヒロインの登場です。

※8/11更新しました!


八話目 吸血姫

 

 

―――〝オルクス大迷宮〟 奈落・50階層―――

 

 

「……何なんだろう、この扉………?」

 

「ス、スゴく異質だね………」

 

 

……石化の邪眼を使う〝バジリスク〟や気配遮断の〝タールザメ〟、毒の痰を吐き出す〝巨大虹色ガエル〟、麻痺の鱗粉を撒き散らす〝モ○ラみたいな蛾〟、身体の節ごとに分離する〝巨大ムカデ〟、メチャクチャ美味しい果実を落とす〝トレントもどき〟などを倒し喰らっていきながら、ハジメカオリは恐らく物凄いスピードで下へ下へと探索を進めていき、数えて50階層辺りで不気味な空間に存在する異質な扉を発見したのだ。

 

高さ3mの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その脇には二体の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

ハジメとカオリはその空間に足を踏み入れた瞬間、全身に悪寒が走るのを感じ一旦引いた。

 

無論、装備を整えるためで避けるつもりは毛頭ない。

 

ようやく現れた変化なのだ、調べないわけにはいかない。

 

ハジメは期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。

 

あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる―――……が、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。

 

 

「カオリ、準備は入念に整えよう」

 

「うん、分かったよハジメ!」

 

 

自分達のいま持てる武技と武器、そして技能―――……それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。

 

 


 

 

ハジメ 17歳 男 レベル:32

 

天職:錬成師

 

筋力:12500

体力:12500

耐性:12500

敏捷:12500

魔力:2400

魔耐:2400

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解][+構造把握]・疲労耐性[+痛覚耐性][+物理耐性]・整体術[+回復効果上昇][+浸透看破][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇]・限界突破[+覇潰]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪[+三爪][+飛爪]・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解

 

 


 

 


 

 

カオリ 17歳 女 レベル:33

 

天職:治癒師

 

筋力:11000

体力:12500

耐性:14000

敏捷:12500

魔力:6000

魔耐:6000

 

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適正[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・疲労耐性[+痛覚耐性][+物理耐性]・整体術III[+回復効果上昇][+浸透看破][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪[+三爪][+飛爪]・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解

 

 


 

 

奈落に落ちてからの自己流ではあるものの、ハジメは〝ドンナー〟による銃撃と蹴り技、〝錬成〟を織り交ぜた搦手を得意とする一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)戦法を確立させ、カオリは生身でも極めて頑丈(タフ)な殴れる回復役(ヒーラー)としてハジメを徹頭徹尾援護(サポート)する事でここまでやってこれたのだ。

 

……そうして全ての準備を整えたハジメとカオリは扉の前にまでやって来た。

 

近くで見ればますます見事な装飾が施されていると分かる。 ……そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのも分かった。

 

 

「? なんだろう、結構勉強したつもりなんだけど、こんな魔法陣の式見たことないぞ……?」

 

 

ハジメは座学にも力を入れていた。 ……全ての学習を終えたワケではないが、それでも魔法陣の式を全く読み取れないというのは些かおかしい。

 

 

「相当古いって事かなァ……?」

 

 

カオリは自分の推測を述べながら扉を調べるが特に何かが分かるという事もなかった。

 

如何にも曰くありげなのでトラップを警戒して調べてみたのだが、どうやら解読できるものではなさそうだ。

 

 

「……仕方ない、〝錬成〟でやってみよう」

 

 

一応、扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。

 

なので、〝錬成〟で強制的に道を作るためハジメは左手を扉に触れさせ、〝錬成〟を開始した。

 

しかし、その途端―――……

 

 

バチィイッッ

 

 

「「 うわッ!? 」」

 

 

扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。

 

ハジメの手からは煙が吹き上がっている。

 

カオリに即座に治癒してもらい回復するものの、直後に異変が起きた。

 

 

「「 オォォオオオオオオ!! 」」

 

 

突然、野太い雄叫びが空間全体に響き渡ったのだ。

 

ハジメとカオリはすぐさま後退して扉から距離をとり、〝ドンナー〟と〝シュラーク〟を構える。

 

雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

 

「……なんかゲームでもやっている気分だな」

 

 

苦笑いしながら呟くハジメの前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた―――……

 

 

ドパンッ

ドパンッ

 

 

―――その隙を狙うように放たれた二つの凶弾が二体の一つ目巨人の眼球を貫き脳内を乱雑にシェイクしながら破壊し尽くした。

 

やがて力なく倒れた二体の一つ目巨人の体内から拳大の魔石を取り出したハジメとカオリは、それを扉まで持って行き、窪みに合わせてみる。

 

ピッタリと嵌った直後、魔石から赤黒い魔力光が迸り魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。

 

そして、何かが割れるような音が響き、光が収まった。

 

同時に空間全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

ハジメとカオリは少し目を瞬かせ、警戒しながらそっと扉を開いた。

 

扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。

 

〝夜目〟の技能と手前の部屋の明かりに照らされて少しずつ全容が見えてきた。

 

中は聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。

 

そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

その立方体を注視していたハジメとカオリは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。

 

いざと言う時、ホラー映画のように入った途端バタンと閉められたら困るからだ。

 

しかし、扉を開けっ放しで固定する前にそれは動いた。

 

 

「……だれ?」

 

 

女の子の弱々しい掠れた声だ。

 

ハッとしてハジメとカオリは慌てて部屋の中央を凝視すると、先程の()()()()()()()がユラユラと動き出した。

 

差し込んだ光がその正体を暴く。

 

 

「「 人……? 」」

 

 

意外や意外、()()()()()()()は人だった。

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が貞○のように垂れ下がっていた。

 

そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗いている。

 

年の頃は12、3歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよく分かる。

 

 

「……おねがい……たすけて……ッ!」

 

「ッ!! 待ってて、いま助けるかr―――……」

 

待つんだカオリッ!!

 

 

金髪紅眼の少女が必死さの伝わる掠れた声で助けを求め、思わずカオリが少女の傍に近寄ろうとして―――……ハジメに制止された。

 

 

「……こんな奈落の底で、魔物も寄り付かない場所に封印されているなんて明らかにおかしいよ。

……封印されるって事は殺しきる事が出来ない程に強大で凶悪な魔物である可能性も十分考えられる。

下手に手出しすればとんでもない事になるかも……」

 

「で、でも……ッ!」

 

「ちがうッ! ケホッ……私…悪くない!

……待って! 私……裏切られただけッ!!」

 

 

少女のあまりに悲痛な叫びに流石のハジメもバツが悪くなってしまう。

 

そもそもこんなところで足止めを喰らっている場合ではなく、更に先に進んで早く脱出しなければならないのだ。

 

少女には悪いがここはスルーするとしよう―――……

 

 

 

 

『キングさんはどうしてヒーローになろうと思ったんですか? ……すみません、藪から棒に』

 

『ん? ……そうだねぇ、唐突だけど俺って奴は人一倍臆病だからさ、他人(ひと)より余裕のある人間になりたくて、そっから筋トレを始めたんだよねぇ……』

 

『臆病……? キングさんが……?』

 

『俺の事なんだと思ってたの? ……まぁそれは良いとして、筋トレをこなして自分の身を守れる程度には強くなれたから、無理しない範囲で他人(ひと)助けを続けていたら……ある女の子と出会ったんだよ』

 

『もしかして、戦慄のタツマキさんですか……?』

 

『そうだよぉ。 ……彼女の前で啖呵を切っちゃったからねぇ―――……もっと強くなって、色んな人を助けてあげられる〝最高〟のヒーローになるって……』

 

『〝最高〟の、ヒーロー………ッ!』

 

『俺は自分がヒーローに向いているなんて思った事はないけど、好きになった女の子の前ではちょっとくらいカッコいいところを見せたいからさ。

………だから、程々に頑張ってるよ!』

 

 

 

 

「……メ! ハジメ!!」

 

「ッ!? カオリ、どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたも……急にハジメが()()()を助け出したからビックリしちゃったよ……」

 

 

カオリが指差すところ…自分の懐を覗き込むハジメ。

 

そこには、ハジメにお姫様抱っこされ顔を赤らめた裸体の少女がいた。

 

先程まで()()()()()()()()とはいえ、抱き上げていた事に気付かない程に軽く痩せ細った身体ではあったが、それでもどこか神秘性を感じさせる程の美しさがあった。

 

どうやら考えるより先に行動に移していたらしい。

 

少女が顔を更に赤らめながら言葉を紡ぐ。

 

 

「……ありがとう。 その、見られると恥ずかしい……(////////)」

 

ハジメ〜!? そのくらいにしようか〜!!

 

 

……カオリの圧の籠もった笑顔を受けて反論する事なく速やかに少女をそっと地面に置き、爪熊の毛皮の上着をかけてあげるハジメ。

 

怒れる恋人に敵う筈もないと()()()()()()()()()()()ため当然の対応だ。

 

 

「……どうしてこんな場所に封印されていたかは追々聞くとして―――……君の名前を教えて貰える?

僕はハジメ、彼女はカオリだよ」

 

「……名前、付けて」

 

「え? ……まさか忘れたとか?」

 

 

見たところ長い間幽閉されていた感じがするためあり得ると聞いてみたカオリだったが、少女は首を振って否定する。

 

 

「もう、前の名前はいらない。

……ハジメとカオリの付けた名前がいい」

 

「そ、それは……」

 

 

恐らくこの少女は前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きるようとしているのだろう。

 

自分の意志で変わるための第一歩が少女にとっては改名。

 

少女は期待するような目でハジメとカオリを見ている。

 

ハジメはカオリを見やる。

 

カオリの顔にはハジメに全てを委ねると書いてあった。

 

ハジメは少し考え、仕方ないと言わんばかりに少女に告げた。

 

 

「……改名じゃなく、ヒーローネームの命名って事で良いのなら、ユエなんてどう?

……気に入らないなら別のを考えるけど……」

 

「? ……ヒーローネーム?」

 

「僕達が()()()()()に存在する英雄(ヒーロー)達の、二つ名みたいなものだよ。

……君がどれだけ辛い目に遭ってきたかは完全には分かってあげられない、あげられないけれど、僕の一存で君の過去を真っ向から否定するのは何か違うと思ったんだ」

 

「………」

 

英雄(ヒーロー)になれって言いたいワケじゃない。

いつしか君が自分の過去と向き合えるようになるまで、君を守り支えてくれる心強い名前(おまじない)になってくれると信じて考えたんだ」

 

「………ハジメ」

 

「ああそれと―――……ユエって言うのは僕の故郷で〝月〟を表す言葉なんだよ。

最初この部屋に入ったとき、君のその金色の髪や紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えてね……」

 

 

思いの外きちんとした理由がある事に驚いたのか、少女がパチパチと瞬きする。

 

そして、相変わらず無表情ではあるがどことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

 

「……んっ。 今日から私はヒーローのユエ。

……ありがとう、ハジメ」

 

「礼には及ばないよ。

気が向いたら本当の名前も教えてね?」

 

 

ハジメはユエに〝神水〟を飲ませようとして―――……

 

 

「ハジメ、上ッッ!!!」

 

 

……カオリの声に反応するように、ユエを抱えて瞬時にその場から飛び退いた。

 

 

ドッシィィイン

 

 

ハジメがその場から飛び退いたのと、()()が天井より降ってきたのはほぼ同時だった。

 

直前までいた場所に地響きを立てながら()()が姿を現す。

 

その魔物は体長5m程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。

 

そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

一番分かりやすい例えをするなら〝サソリ〟だろう。

 

二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。

 

明らかに今までの魔物とは一線を画するただならぬ気配を感じ、自然とハジメとカオリの額に汗が流れた。

 

部屋に入った直後は全開だった〝気配感知〟ではなんの反応も捉えられなかったが、今は〝気配感知〟でしっかり捉えている。

 

……ということは少なくともこの〝サソリモドキ〟は、ユエの封印を解いた後に出てきたということだ。

 

つまり、ユエを逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。

 

言い方を変えれば、ユエを置いていけばハジメとカオリは逃げられる可能性があるという事―――……

 

 

「「 うん、あり得ない 」」

 

 

ハジメは腕の中のユエをチラリと見る。

 

彼女は〝サソリモドキ〟になど目もくれず一心にハジメを見ていた。

 

凪いだ水面のように静かな、覚悟を決めた瞳。

 

その瞳が何よりも雄弁に彼女の意思を伝えていた。

 

……ユエは自分の運命をハジメとカオリに委ねたのだ。

 

無限とも言える地獄の苦しみを受け続けてきたであろうこの少女が、今一度誰かを信じようとしてくれたのだ。

 

これに答えられなければ―――……

 

 

「「 ……ヒーローを名乗れないッ!! 」」

 

 

ハジメは一瞬にしてユエの口に〝神水〟を突っ込んだ。

 

 

「うむッ!?」

 

 

水筒型の容器から〝神水〟がユエの体内に流れ込む。

 

ユエは異物を口に突っ込まれて涙目になっているが、衰え切った体に活力が戻ってくる感覚に驚いたように目を見開いた。

 

ハジメはそのままユエの身柄をカオリに預けると、改めて〝サソリモドキ〟に向き直る。

 

 

「ユエを頼んだよ、カオリ」

 

「任せて、ハジメ」

 

「ハジメ、まさかッ!?」

 

 

全開には程遠いが、手足に力が戻ってきたユエはギュっとカオリの身体にしがみついた。

 

ギチギチと音を立てながらにじり寄ってくるサソリモドキ相手に、ハジメは高らかに宣戦布告した。

 

 

「お前の相手は僕一人で十分だ。

……ヒーロー・()()()、参上!!」

 




いよいよヒーローとして活躍しだすハジメ君に乞うご期待!
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