pixivにも同じものを投稿しています。
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これはある仲介人とプロキシのお話だ、、、
灰色の髪に空色の目をした青年があるカフェに入店した。その青年はカフェのテラス席で待ち人であったのだろうか、若葉色の髪をした女性を見つけて、その向かいの席についた。その様子を見てその女性は満足気に頷いた。
「相変わらず新人くんは仕事が早いね〜」
そう切り出したのは、この新エリー都でホロウレイダーやプロキシの仲介人を生業にしている『明けの明星』だ。彼女は主に新人向けの依頼を紹介してくれる、頼れるお姉さんだ。
「いやいや、そんなことはないさ。これも全て優秀なエージェント達のおかげだよ。」
とその青年、アキラが答えた。もっとも彼とその妹は、ひょんな出来事でインターノットアカウントを失うまでは伝説のプロキシ『パエトーン』として名を馳せていたのだから、この程度の仕事はすぐにこなせるのだ。
まあ、そのせいで難易度が悪夢のような依頼も混じっているのだが、、、
「そうね、いつもお姉ちゃんの心配なんか無視して、高難易度の依頼もすんなり解決しちゃうもんね。」
「まあいいわ、次の依頼の話をしよっか。本当はここで話したかったんだけど、人も多いし別のところに行こっか。」
「んー、そうね。映画館とかどう?秘密の会話にはピッタリじゃないかな?」
明けの明星はそう言って席を立った。
アキラも軽く頷いてその後を追った。
ーーーーーーー
「全く、映画好きとしては映画館で会話をするのは好ましくないのだけどね。」
とアキラはチケット売り場の前で、少しため息をつきながら話しかけた。
「予告編とエンドロールが流れている間に依頼は伝えるから、心配してないでいいよ〜」
「けど、他の人の迷惑になるかもしれないからカップルシートにした方ががいいかもね。そっちの方が映画好きとしても、プロキシとしても、安心できるでしょ?」
どこかおどけた調子で、ウィンクまでしながら答える明けの明星に、アキラは呆れた様に目を閉じて答えた。
「正気かい?僕はあなたの本名も知らないのにカップルシートだなんて。せめてバイト先のコンビニの場所とプライベートの連絡先くらい教えてもらわないと割に合わないね。」
「あっ、えっと、きになる?けど、それは言えないかな〜。なんて、、」
両手を擦りながら、照れたような反応をする明けの明星を横目に、アキラは追い打ちをかけるように券売機から出てきたカップルシートのチケットを明けの明星の手をとって握らせ、そのまま手を繋いで歩き出した。
「それじゃ行こうか。明星お姉さん?」
明けの明星は撃沈した。
それはもう、
なんなら、お姉さんらしく自分が2人分のチケット代を出す予定だったのに、さらっと支払いを済まされ、エスコートまでされていることに気がつき、終結スキルを食らったかのようなダメージを錯覚した。
明けの明星は赤面した顔を隠すように、握られていない手で必死に顔を扇ぎながらアキラの後をついて行った。
ーーーーー
「さぁ、依頼の話はこれで全てね。エンドロールもそろそろ終わるし、そろそろ行こっか。ほら、依頼書をしまって、しまって。」
映画を見終わり、依頼の話も終えた明けの明星はそう言って退席の準備を促していた。
カップルシートでエンディングを見終えたとある仲介人とプロキシは、エンドロールが始まるや否や仕事の話に入っていた。その片割れ、まぁ、プロキシの方は映画の余韻がとか何とか言っていたが、そこはシゴデキお姉さん。しっかりと主導権を握り、仕事の話を進めていた。
「ともかく期限は一週間後まで、よろしくね新人くん。」
「ああ、わかったよ。エージェント達にも声をかけておくよ。じゃあ帰ろうか。」
とアキラは席を立ちながら答えた。いつのまにかエンドロールは終わり、退席する人が通路で列を成していた。
「そうね。けどいつもアキラくんがガイドしているエージェントって誰なの?前に連絡先を渡してあげた邪兎屋だけじゃないよね?そんな優秀なホロウレイダーがいるなら紹介して欲しいな、、」
何気無しに明けの明星から飛び出してきた質問にアキラは一瞬歩みを止めるも、すぐに平然を取り戻し答えた。
「それは秘密だよ。もっとも、邪兎屋のメンバーはあまり招集してないのは確かだけどね。」
ーーどこかのトップ歌手とそのボディガードとか、H.A.N.Dの虚狩りとか、未成年の高校生とかです。
なんて答えられるわけがない。アキラは明後日の方向を向いて返事をした。
その様子が気になったのか、明けの明星は半眼を向けはするものも、追求することなく一緒に劇場から映画館のロビーへ出た。
ふと隣を歩くアキラが立ち止まった。明けの明星は振り向き視線の先を追った。アキラはあるパネル、そうアストラの等身大パネルを見ていた。
「へえ、アキラ君ってアストラさんのファンなの?」
「ああ、よくアストラさんが出演する映画のビデオを見ているよ。それに、今度アストラさん主演の映画があるみたいだ。どんな作品になるか楽しみだな。」
アキラは真剣な顔で、等身大パネルと映画の宣伝文句を見ていた。
ーーこれはチャンスでは?
かの明けの明星は忘れていなかった。映画の前にアキラにしてやられたことを。そして、ここでお姉さんとしての威厳を取り戻さなくては!この生意気な新人プロキシの頬を紅色に染めさせてやろう!と決意をした。
明けの明星はやや躊躇い、深呼吸をして、
「アキラ君。女の子とのデート中に他の子を見たらダメだよ。お姉さん悲しいな〜」
と言いながら、アキラの腕を取り、体に寄せ、引っ張った。そう、絡みつくように腕を組んだのである。並大抵の男はこれで動揺し、たじろいでしまうだろう。だが、この女誑しは経験値が他とは一線を画していた。
「ああ、すまない。じゃあ、お詫びにティーミルクでも奢らせてくれ。ここら辺で、いいお店を知っているんだ。案内するよ。」
アキラはゼロ距離なのを少しも気に留めず、腕を組んだまま映画館の外へ歩き出した。自然な流れで映画の次の目的地を定め、エスコートまでしてしまうさすがの対応力である。
つまり、明けの明星の目論見は達成されなかった。主導権を握れたのはわずか数秒。その後、アキラの流れるような女慣れした対応を分からせられてしまった。
ーーほんとに依頼の話し合いだったっけ…?これ、ただのデートになってない?
明けの明星は悶えながらもアキラと一緒に歩いていった。
Fin…
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