大の字に寝転がって夜空を見上げる。
この世界はこんなにも美しかったのか……。ばあちゃんにはどう見えたんだろう。
ばあちゃんは死んだ。いや、私が殺した。
でも、仕方ない。だって私を閉じ込めようとしたから。『
それだけだったのに。邪魔をした。
だから殺した。
けれど、生きとし生けるものはどうせいつか死ぬから、それが少し早くなっただけ。そう教えてくれたのはばあちゃんだからきっと文句はないはずだ。
…………。
とある異端思想では死んで肉体を離れた魂は星になるらしい。この星空を見ているとあながち間違いじゃないとも思える。
皆は空の空、多分宇宙のことだけどそれを虚しいと言う。だからきっと虚しいものなのだろう。
でも、こんなにも美しく見えるのはきっと、天からばあちゃんが微笑みかけてくれているからなのかもしれない。
安心してよばあちゃん。私が貴方の遺志を継ぐ。
その遺志がいつか無くなる虚しいものだとしても、私がそのいつかを出来るだけ遠いものにしてみせる。
だから、このキヴォトス中で歌うんだ。『Vanitas Vanitatum』って。
人殺しの『私』はもう生徒じゃいられない。
そう考え、ばあちゃんを殺した夜にこっそりとアリウスを抜け出してブラックマーケットへ向かった。
ここで、伝道師として新しい『私』として生きるんだ。
手始めに、覆面でも手に入れよう。取り敢えず身バレ防止の為レジ袋を被っているが、もう少しマシなものにしたい。
そう考え、何か良いものが落ちていないかと路上を見渡し始めた。
「いたぞ!覆面水着団だ!捕まえろ!」
しかし、何故か此方を指差して襲い掛かってくる人形共とエンカウントしてしまった。
身なりからして銀行員のような彼らは私をその覆面水着団とかいう推定銀行強盗犯と勘違いして此方に向かっているようだ。
こいつらも水着の変態も傍迷惑な奴等だ。
「あの〜大丈夫ですか?」
「っ!?」
どうしようかと逡巡していると、警戒していたはずの後ろから気配もなくトントンと肩を叩かれた。
咄嗟に振り向くとそこには何処か怯えたような苦笑いをする身なりの良い子がいた。
「あはは、大丈夫ではなさそうですね。でも安心してください。このまま見過ごすのも胸が痛みますからね」
彼女はそのままスタスタと歩き、警備員らしき人の耳元で何かを囁いた。
すると彼らは驚いたように肩を跳ねさせ、スコスコと撤退していったのだ。
「いったい何を……?」
「少しお話をしたら分かってもらえましたよ。いい人達でしたね、私みたいな平凡な女の子の話を聞いてくれるなんて」
「……なんで助けて……いや、助けていただきありがとうございました」
聞きたいことはあるが、それよりも礼をしなくては。彼女のおかげで穏便に済ませられたのだ。
「当たり前のことをしただけですよ」
「いやいや、助けてくれたのは貴方だけ……」
そう言って食い下がろうとすると、彼女は顔を私の耳に近づけて囁いた。
「覆面水着団のリーダー、ファウストとしてね」