インフィニット・ストラトス ─蒼狼と黒鉄の霞─ 作:ダブスタ親父
プロローグ
「届かなかったか......戦友───────」
戦友と呼び、慕い、友情の様な
戦友と呼んではいたが、この世界を脅かす危険因子ならば容赦無く排除する。そう心に決めて相対したが、戦友にも背負っているモノがあったようだ。
大人しく負けを認め、未来を
「すまない。何も悪人という訳じゃ無いんだ。いつの間にかここに............」
取り敢えず謝罪の言葉と弁明を試みる。女性はと言うと面白そうにこちらを舐め回すように見てくる。良い気分では無かったが、ここで彼女の機嫌を損ねると面倒な事になると自分の勘が告げていた為、大人しくスルーする。
そこで我に返り、名乗らずにいた事を反省して取り敢えずは名前を名乗ってみる。
「私はアーキバスのヴェスパー第四小隊の隊長を務める
「私は篠ノ之束。そのアーキバスとかヴェスパーとか何? 軍人?」
「軍人では無いな、ただの傭兵だ。それで? 束と言ったか。ここは君の家か何かかな?」
どうにも話が噛み合わない。ここがルビコンでは無いどこか別の場所である事を認識して聞き返す。
すると彼女は首を横に振りながらさも当然と言いたげな様子で答えてみせた。
「ううん。ここはセーフハウスの一つだよ。ISなんて物を生み出してしまった私位の人間になるとね、命を狙われるのも一度や二度じゃ済まないからこんな感じのセーフハウスを世界各国のありとあらゆる場所に持ってないといけないワケさ」
「なるほど。......信じられないが、私はどうやら別の星か別の時代...もしくは別の世界に来てしまった訳か......」
彼女の『IS』と言う言葉は一度も耳にした事が無い単語。そしてそれほどまでの有名人であれば彼女の名前も聞いた事があっただろう。アーキバスやヴェスパーの名を聞いた事が無いという事もここが別の世界である可能性を示唆していた。
「へぇ〜そんな映画みたいな事有り得るのかなぁ。まぁでも私も科学者の端くれ。結果だけが真実。有り得ると納得するしかないね。良し、この世界の事を一から説明したげるよ」
「助かる」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後、束からこの世界の歴史とある程度の常識を教えて貰ったラスティ。ゆっくりと長く息を吐いて天井を仰いだ。
「なるほど......この世界にはACとは似て非なる兵器が存在していると言う訳か。どの世界も考え至る場所は同じという事だな」
「ISは兵器じゃない。宇宙開発用のパワードスーツだ」
束は怒りを混ぜた声でラスティに訂正を求める。しかしラスティは受け流して淡々と語った。
「初めてACを生み出した人間もきっと同じ事を言っていただろう。初めは平和利用の為に良かれと思って生み出した物を人類は皆全て戦火に焚べる。人類と言うものは本能が...身体が闘争を求めるものだ」
「............」
「だが、そんな世界であっても平和を唱える者は居る。そんな彼らに見せてやろう。灼けた空の向こうには未来があるとな」
ラスティはそう告げて束に手を伸ばす。彼女はそんな彼の行動が理解出来ない様子で怪訝な表情を浮かべて聞き返す。
「何の真似?」
「何、なんて事ない話さ。私は未来の為に戦い、敗れてこの世界に来た。その事にもきっと意味があるのだと私は思いたい。だから君の言う世界平和の力になろう。今は根無し草の傭兵だしな。君に雇って貰えるのなら幸いなんだが......どうだろうか?」
「良いの? 今度は争いとは無縁の生活を送る事だってできるだろうに」
「私...いや、オレにはその生き方しか思い付かないからな。そうするしか道がないんだ」
束の良心から出た最後の忠告を受け止めながらも戦いの中でしか生きれない事を語る。
それを聞いた束は悲しそうな表情を浮かべ、彼の手を取った。
「悲しい生き方だね......。でもありがとう。助かるよ」
「選んでしまったものは仕方が無い。こちらこそ、というやつだ」
こうして一人の傭兵は別世界でも戦い続ける道を選んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
束の私兵としての生活を新たに始めたラスティに待っていたのは今までの戦いに満ちた日々とは程遠い家事に追われる生活。
彼女は生活力が皆無であった。傭兵でまともと呼べる生活環境に居なかったラスティでさえもドン引きするほどである。食事は食材をミキサーで磨り潰したもので済ませているし、洗濯は半月に一度すれば良い方だった。かつてはACで戦場を駆けた彼であったが、今はそんな彼女の世話係が彼の仕事となっている。
ラスティは彼女に食後のコーヒーを渡しながら向かい合うように座ると溜め息を零した。
「まさか私が家政夫になるとは思わなかった。てっきり戦場をISとやらで駆け回るばかりだと......」
「最初はそう思ってたよ。でも君の専用機がなかなか完成しなくてさぁ~」
束の言葉に対して興味有り気に関心を向けたラスティ。束は彼の関心を更に引き付けるように言葉を続ける。
「お、興味がおありでぇ?」
「まぁな。これでもパイロットだ。私をどんな機体に乗せるのか...気になるよ」
「と言うと思って完成させましたとも! 君の専用機!」
束は自信満々に答えるとラスティの腕を引っ張ってズカズカと廊下を進んでいく。なすがまま、腕を引っ張られ続けているラスティは嬉々とした表情を浮かべた彼女を見て、何かを察して諦めた様子で溜め息を吐いて、彼女の後を追う。
「さて、この布の向こう側に君の専用機が待ってるよ。どう感想は」
「感想か......そうだな。楽しみだよ」
ラスティは短く感想を告げる。そんな彼の感想に対して束はフッと小さく納得したような笑みを溢して答えた。
「そのクレバーな感想と表情が一気に崩れるのが楽しみだよ」
「そんなに自信があるのか?」
「自信無く誰かに預けるISなんてない。全部自信作だとも」
彼女の表情は先程までの子供っぽさが無くなり、一人の技術者としての顔をしている。そうして剥がされたISを隠していたシートを剥ぐと中から姿を表したのは過去の自分の
驚きのあまり声を失ったラスティに束はニヤニヤと笑みを浮かべながら彼の顔を覗き込む。
「どう? 君の話を元に再現してみたんだけど......シュナイダーだっけ? 凄いねぇ、どんな脳みそしてたらこんな事思い付くんだろ」
「さぁな。空戦効率のみを追求していたとしか私も聴いていない。もしかしたらパイロットすらもパーツの一つと考えていたのかもしれないな」
そこでラスティはもう一つ。描かれているべきものがそこに確かに描かれていた事に気付いた。
自分の
「まさかパーソナルマークまで......」
「話に聞いたところは全て再現したよ」
驚きから声を失ったラスティに束は疑問に思っていた事を問いかけた。
「でも、なんで口輪を嵌めた狼なの? 普通はもっと色々あるよね」
「...........本性を隠した人間だと自分自身に戒める為だ。私はそういう人間なのさ」
懐かしむような声音で束の問いかけに答える。彼の答えに対し、それ以上は踏み込むべきではないと判断した束はそこで言葉を止めて黙った。
彼女は未だに黙っている男に向かって言葉を続けた。
「それじゃあ、君にはこれから戦場に出て戦って貰うからね」
彼女の言葉に対してニヒルに笑って答えてみせる。
「あぁ。任せてくれ」
別世界に来てしまった一匹狼はまた闘争に身を焦がす。己が求めた平和な未来の為に。
ありがとうございました。
お気に入り登録とか感想とか色々お待ちしております