インフィニット・ストラトス ─蒼狼と黒鉄の霞─ 作:ダブスタ親父
初任務
束から自身の専用機であるスティール・ヘイズを与えられたラスティ。
彼女の言葉通りにラスティは現在、ドイツの北方に位置するISの研究機関へと向かっている。ステルス性に特化した航空偵察機の中で彼は束に言われた事を頭で反芻させる。
......今から向かう施設ではISに関する違法な実験が行われていると言っていたな......
「どんな世界であろうと隠れて違法行為に手を染める人間は居ると言う事か」
悟るように呟いたラスティの耳に入ったのは、目的地へと接近した事を告げるアラーム。ラスティは座っていた椅子から腰を上げると出撃準備を始めた。
ISを展開し、出撃用のハンガーにISを固定。扉が開いてハンガーから落下するのを待つ。出撃する際にスラスターを吹かせば熱感知に引っ掛かる可能性がある為、自然落下での侵入を試みる。
事前に予測された投下ポイントに到着し、ラスティは落下。迎撃される事も無く、無事に落下地点へと着地した彼はISをすぐさま戦闘形態へと移行させた。
「さて、任務開始と行こうか」
右手にはバーストハンドガンのMA-E-211 SAMPU。左手にはレーザー武器であるVvc-774LSを装備。右肩にプラズマミサイルのVvc-703PM。左肩にはバーストライフルのMA-J-200 RANSETSU-RFをそれぞれ装備している。かつてラスティが愛用した武装を再現した数々にラスティは心躍る。その気持ちを押し殺しながら施設を破壊する為のプラスチック爆薬を仕掛けつつ奥へと進んでいく。
奥へと進んでいく途中、ラスティは不思議な感覚に襲われると進める足を止めた。
......変だな。何故会敵しない? 結構奥へと進んだと思うんだが......
不気味な程に会敵しない事を疑問に思いながらも進んだ先で見た物がそれの答えであった。
狭い通路の先に待っていたのはドーム状の広場。まるでコロッセオの様な作りになっているそこに被検体と思わしき子供達が集められて戦わされており、勝った方は更に奥へと続いているであろう通路へと連れていかれていた。
その状況を録画、束へと送信した後にラスティは小さく息を吐くと束に通信を入れる。
「こちらラスティ。目的地への侵入は成功し、仕掛けは順調に進んでいる。今そちらに送った映像は見れるな? これはどうする? 迂回する事も出来なくは無いだろうが、殲滅して突っ切った方が速そうだ」
『最強の兵士でも作ろうとしてるのかな、とんでもなく非効率だけど。迂回するのは面倒臭いだろうし、そのまま突っ切っていいよ。
「......了解」
通信を切ったラスティは左手を
銃弾の雨を浴びせ、観客席らしき場所で待機していた子供達を容赦なく排除するラスティ。辺り一面が血で染まり、子供の亡骸が無数に転がる。
その凄惨な光景に彼は眉を顰め、苦虫を噛み潰した様に顔を歪めた。
「...........」
着地を試みて減速したラスティへとISを纏った子供が二人襲い掛かって来る。その二人はラスティが奇襲を掛ける前に戦わされていた子供で二人はラスティに対して銃口を向けた。
彼が今更そんな事で狼狽える訳も無く、冷静に、冷淡に、冷酷に呟く。
「邪魔をするのなら致し方無い。こちらも引く訳にはいかないんでな」
冷たい声が広場に響き渡る。子供二人の銃撃が静寂を切り裂く。二人のコンビネーションによる飽和攻撃を難無く回避し、銃撃の隙間を縫って反撃。一人が体勢を崩した事を見逃す事無く、ブーストで距離を詰めて
ブーストでもう一人へ距離を詰めて蹴りをお見舞いすると続け様にもう一度
殲滅を終えたラスティは地面へ着地すると奥へと続く通路へ進む。通路は暗く、湿った空気が漂っている。そんな異様な空気を感じつつ彼は慎重に周囲を警戒しながら奥へと進んでいく。最奥まで到達したようで鋼鉄で出来ていると言わんばかりの扉が姿を表した。
まるでその扉は認められた者のみ通れと言わんばかりの重厚さで、ラスティは呆れに似た感情を抱きつつ、もう一度自分の得物である
「ここが施設の核心部という訳か......」
ラスティは右手の
そうして周りを警戒しながらも探索しているともう一つ扉を発見。今度の扉は破壊せずとも開けられた為、扉を開ける。
扉の向こうには巨大な実験室が広がっていた。そこには無数の実験装置と拘束された瀕死の子供達の姿。
「……やはり、どの世界であっても弱者を食い物にするのは変わらないらしい」
ラスティは目の前の光景にただそれだけを呟く。この惨状に胸を痛めたり、行き場の無い怒りを覚える程彼は青くない。自分の居る世界はそういう世界であると理解している。だからこそ一刻も早く子供達をこの場所ごと葬る事が被害者である子供達への手向けだと判断し、用意していたプラスチック爆薬をセットしていると一人の少女が息を吹き返すのが見えた。
「君はどうしたい?」
「......分かりません。私は目も見えないし、一人で生きていく事もきっとままならないと思います。......ただ出来る事ならば外の世界がどういうものなのか体験してみたかった」
「...........見捨てろ、という方が酷な話だな。生きているのは君だけか」
少女はラスティの言葉に頷く事も首を横に振る事もしなかった。それを言いたくないのだと判断したラスティは少女を抱えて施設から脱出する。
爆発に巻き込まれない場所まで避難すると爆薬の点火スイッチを押して施設を一瞬で解体した。
「束。今から帰投するんだが、暖かい飲み物と子供用の服を一着用意してくれ」
『別に構わないけど......どしたの』
「生き残った少女を一人保護した。見捨てるのも酷だったものでね」
『分かった。用意しとく。帰ってきたらいの一番にその子のメディカルチェックね』
そこで束の通信が切れる。彼女も頼んだ物を用意しに行ったという事だと察したラスティは少女を抱え、行きに乗っていたステルス航空偵察機に戻ると束の居るセーフハウスへと帰った。
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セーフハウスに戻ったラスティはすぐに少女を束に預けて自身はISの整備を行っていた。手持ち無沙汰で少女の結果が出てくるのをただぼーっと待っているのも性に合わないからこそのISの整備である。
数十分後。整備が終わり、整備室から出てきたラスティを待っていた束は出てきた直後の男についてくる様に告げるとそのまま一直線に医務室へ向かう。そこには保護した少女が安心した様子で眠っていた。
「バイタルは安定してる。特に目立った外傷は無し、内臓系にも異常は見られなかった」
「......君のその言い方、引っ掛かる。君が黙っている事が何か、当ててみせようか」
ラスティは束へとそう告げる。彼は既に少女から自分がどういう状態なのかを聞いていた。故に束が黙っている事が何かを答えられるのだ。
彼女はそれに対して特に何も言わずに彼の発言を促した。
「彼女は視覚障害を持っている。だろう?」
「知ってた癖に」
「私はただ、君が黙っている事が何かを言ったまでさ。それで、少女の目は治るものなのか?」
「治る......とは思う。こればっかりは分からない。分の悪い賭けだ」
束の自信無さそうな声音から放たれた答えに対してラスティはニヒルに笑って応える。
「分の悪い賭けは嫌いじゃない。と、言っても直接治療を施すのは君だ。私はただ君に雇われの身だからな。君の選択を尊重しよう」
「別にやらないとは言ってないからね。ただ治すのにデータが足りなさ過ぎてね。あ、そうだ言い忘れてた。君、来年度からIS学園の教師として学園に言って貰う事にしたから」
束の急な話題転換に慣れてきたものの、突拍子も無く飛びててきた言葉に驚きのあまりに一瞬目を見開いたラスティ。
「なんだって? 私がIS学園の教師? 人を教え導く事なんて出来ないぞ、私は」
「最初から出来る人なんていないよ。生徒と一緒に教師も成長していくものさ。って事で頼むね。仕事の詳しい内容は追って資料渡すからそれ確認してくれれば良いからさ」
束はそう言ってラスティを医務室から追い出す。追い出された彼、ラスティは長い溜め息を吐いて自室へと戻るのだった。
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