インフィニット・ストラトス ─蒼狼と黒鉄の霞─   作:ダブスタ親父

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 皆さん、ゴールデンウィークは如何お過ごしでしょうか?ってもう今日で終わりなんですけどもね。
どうでしょうか。充実したゴールデンウィークは過ごせましたでしょうか。中の人はね、広島に旅行に行って色々と実りのある体験をさせて頂きました。

 それでは、どうぞ!


IS学園と蒼い狼
ラスティ、学園へ


 ラスティ、学園へ

 

 初めて降り立つ日本という国。雇い主である束の生まれ故郷にどんなものかと思っていたラスティだが、その異様さに驚く。

 自分の生まれ故郷であるルビコンとは打って変わって貧困に喘いでいる人は見た感じ居ないし、サービスというサービスが行き届いており、不便な事は無い。店員も皆が礼儀正しく接客している。全てがラスティにとって新鮮に見えた。

 束から聞いていた日本という国がどれだけ穿った見方をしていたのかと思い知らされたラスティ。

 そんなラスティはIS学園への赴任手続きを済ませて終わりかと思っていたが学園長が話をしたいという事で学園長室へと連れて行かれた。

 学園長室に入ると待っていたのは初老の男性。人相は朗らかそうな人物で、特に裏がある様な人物にも見えない。そんな彼は椅子から立ち上がってラスティへと手を差し出す。

 

「君がラスティ君か。初めまして、私はこの学園の運営を担当している轡木十蔵です。君とは個人的に話がしたくてね、申し訳無いが少し時間を頂いたんだ」

「いえ、よろしくお願いします。自己紹介は......不要ですね」

 

 ラスティも頷きながら轡木の手を取って固く握手を交わすと学園長はもう一度椅子に座る。ラスティには来客用のソファに座るように促してラスティもそれに従って座った。

 

「あぁ。君の素性は束君から聞いているよ。新興の複合企業アーキバスで傭兵をしていた、とね。その経験を是非ともこれから活かしていただければと思っている。そしてISの適正もお在りの様で」

「え、えぇ。この日本でIS適正を持った男が居ると何処かから聴きつけた弊社の技術担当が我々傭兵に検査を実施しましてね。そこで発覚したんですよ」

 

 束と事前に擦り合わせていた自身の過去の捏造。アーキバスについては束が自身の隠れ蓑として会社を設立。ラスティのISも束が造ったものではあるが、アーキバス傘下のシュナイダーとして製造したという事になっている。

 良くもまぁこんなにスラスラと嘘が吐けるなと思いつつも、真実の中に一つの嘘が混ざっているだけで信憑性が増すのもまた事実。嘘が見破られていない事を確認したラスティは時計を見て入学式が終わる時間である事を確認した。

 

「もう入学式も終わりのようだ。私は教室に向かいます」

「もうそんな時間ですか。これからの活躍期待していますよ、ラスティ君」

 

 ラスティは轡木に頭を下げて学園長室を出ると肩の力を抜きながら長く息を吐くとキツく締めていたネクタイを少し緩める。

 

 ......全く、束にも困ったものだ。嘘を吐くこちらの身にもなって貰いたい。バレてはいないだろうが、分からんな......

 

 内心で束の無茶振りに悪態を吐きながら廊下を進む。そこで束から写真付きで説明を受けていた人物とばったり遭遇した。

 

「む。貴様が噂の......」

「恐らくそうだろう。本日付けでIS学園の教師として働く事になったラスティだ。よろしく頼む」

「丁寧にどうも。私は織斑千冬だ。こちらこそ、よろしく頼む。貴様と共に一年一組を担当する。私が担任で、貴様が副担任だ。私はこのまま教室に向かうが、貴様はどうする? 私の紹介の後に入って来るか?」

「いや、ご一緒しよう。揃っていた方が時間も無駄にはならないだろう」

 

 千冬の言葉に首を小さく振り、ラスティは千冬の隣を歩く。廊下を並んで歩きながら、ラスティは隣を歩く織斑千冬の横顔を観察していた。映像や写真で見るよりも遥かに威圧感がある。容姿も束が認める程の美貌を持っている。そして纏う雰囲気は鋭利な刃物のようだ。傭兵として数多の修羅場を潜り抜けてきたラスティでさえ、僅かな緊張感を覚える。

 

「......貴様、何か言いたげな顔をしているな」

 

 不意に千冬が口を開く。射抜くような視線がラスティに向けられた。彼女の言葉にラスティは思っていた事を告げる。

 

「いや、ただ想像していたよりも、随分と威圧感があると思っただけだ」

 

 ラスティが正直に答えると千冬はその言葉を鼻で笑った。

 

「ふん、貴様も只者ではないと束から聞いている。傭兵上がりの教師など、前代未聞だろうからな」

「私もまさか自分が学園の教師になるとは思ってもいなかった」

 

 ラスティは肩を竦めてみせた。嘘ではない。束にこの話を持ちかけられた時、心底驚いたのだから。

 

「教師としての経験はない、と言っても良いだろうな」

「あぁ。全くの素人だ。人に物を教えた事なんて無い。迷惑を掛けるだろうが、その時は指導をして貰えると助かる」

 

 慇懃無礼にならない程度に頭を下げると、千冬は特に気にした様子もなく頷いた。

 

「構わん。私も教師としての歴は短い。互いに協力するとしよう」

 

 千冬からの以外な言葉にラスティは少し安心して息を吐く。これほどの人物が担任ならば、副担任として動く上でも心強い。

 一年一組の教室に近づくにつれて、騒がしい生徒たちの声が聞こえてきた。扉の前で千冬が足を止め、ラスティを一瞥する。

 

「入るぞ」

 

 低い声で告げると、千冬は躊躇なく教室の扉を開ける。瞬間、騒がしかった教室は水を打ったように静まり返った。生徒たちの視線が一斉に扉口に立つ二人に注がれる。

 千冬はゆっくりと教壇へと歩み寄り、そこに立った。その姿だけで、教室の空気が引き締まるのが分かる。

 

「静かにしろ。今日から諸君らの担任を務める、織斑千冬だ」

 

 短く、しかし有無を言わせぬ威圧感のある声が教室に響く。生徒たちは息を呑んで千冬を見つめている。千冬が目線でこちらに催促している事を察したラスティは一歩前に出た。

 

「そして今日から一年一組の副担任となるラスティだ。科目はIS基礎学の戦術概論を担当する。よろしく頼むよ」

 

 ラスティも軽く頭を下げて挨拶をする。生徒たちの間には、訝しむような視線や、興味深そうな視線が入り混じっている。女子生徒のみの学園ではラスティという見慣れない男の存在に戸惑っているようだ。

 

「詳細は後で説明する。今は着席しろ」

 

 千冬の指示に従い、立ち上がっていた数名の生徒たちは大人しく席に着いた。ざわめきは完全に消え、教室には静寂が訪れた。

 これが織斑千冬の手腕かとラスティは感嘆の眼差しで見詰める。

 千冬は教壇の中央に立ち、生徒たちをゆっくりと見渡した。その鋭い眼光は、一人ひとりの生徒の表情を捉えているようだ。

 

「諸君らは今日からIS学園の生徒になる。ここでは、世界各国から集められた選ばれた諸君らが、ISの操縦技術と、それに関わる知識、そして国際社会における役割を学ぶ」

 

 千冬の声は低く重い。その言葉一つひとつに、この学園の重要性と、生徒たちに課せられた責任の重さが滲み出ている。

 

「ISはこれからの国際社会において、その重要性を増すばかりだ。諸君らは、その力を正しく理解し、平和のために使う義務がある。決して、私的な感情や、軽率な行動でその力を誤ってはならない。そうならない為に私達教師が居る。出来ないなどと言う泣き言は聞かん。私達の言う事には『はい』か『YES』で答えろ。良いな?」

 

 厳しい言葉だが、生徒たちは真剣な表情で聞き入っていた。特に女子生徒たちは、憧れの眼差しで千冬を見つめている。

 一方、数名の生徒はラスティの存在が気になっている様子。IS学園は基本的に女子しか入学できない。その例外であるラスティが、なぜここにいるのか、訝しんでいるのだろう。

 千冬は一通り学園の概要を説明すると、視線をラスティに向けた。

 

「副担任のラスティからも、何か話はあるか」

 

 突然話を振られ、ラスティは一瞬戸惑ったが、すぐに表情を引き締めた。教壇の横に立ち、生徒たちに向き直る。

 

「君達が疑問に思っている事に答えよう。何故私が男であるにも関わらずIS学園にいるのか。それはこれまで主に紛争地域で活動する傭兵として生きてきたから、そしてそこに居る少年と同じくIS適正を持っているからだ」

 

 ラスティの言葉教室には小さなざわめきが起こった。「傭兵?」という声がいくつか聞こえる。

 ざわめきを静めるだけの力量を持たないラスティはそのまま言葉を続けた。

 

「教師としての経験はないが、君達がISを安全に、そして有効に活用できる様に私なりにサポートしていきたいと思っている。困ったことや相談したいことがあれば遠慮なく声を掛けてくれ。私で良ければ答えよう」

 

 出来るだけ穏やかな口調で話したが、傭兵という言葉のインパクトは大きかったようで、生徒たちの好奇心と警戒心が入り混じった視線がラスティに突き刺さっている。

 千冬は、ざわつく教室を一瞥すると、再び口を開いた。

 

「ラスティはISの操縦においてもトップクラスの実力を持っている。実技の授業などでは、私も含めて指導にあたることになるだろう」

 

 千冬の言葉に、生徒たちの驚きはさらに大きくなったようだ。ISを操縦できる男性教師など前代未聞。

 若干一名、ラスティに対して親の仇の様に睨み付ける生徒が居る。彼は分かった上で敢えて放置している。学園に来ればそういう女尊男卑(思想)に染まった人間が居る事は想定している。

 

「これからの一年間、諸君らには様々な試練が待ち受けているだろう。だが、それを乗り越えることで、諸君らは必ず成長できる。私とラスティはその成長を全力でサポートするつもりだ。心して学ぶように」

 

 千冬の言葉には確固たる自信と生徒たちへの期待が込められている。ラスティは、その横で静かに頷いた。

 入学式の喧騒から一転、教室には独特の緊張感が漂っている。ラスティは、この雰囲気の中で自分がどのような役割を果たすべきなのか、改めて考え始めていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その後、授業ガイダンスという事で各教室へと授業の軽い説明をして周り、最後に自身が副担任を勤める一組へと戻る。すると誰かが揉めている様子で千冬もその状況を静観していた。

 ラスティは彼女の視線が向いている先へと自身の視線も向ける。そこでは彼女の弟である織斑一夏と国家代表候補生のセシリア・オルコットが渦中に居た。

 

「織斑先生、このトラブルは?」

「私の弟がクラス代表決めで代表候補生とトラブってな。この学園の育成理念でもある自主を尊重している所だ」

「解決に向かっている様には見えないんだが、本当に良いのか? 初日にトラブルで揉め事は流石によろしく無いと思うが。......体裁というのも一応はあるんだろう?」

 

 ラスティの言葉に千冬も思う所があるのか面倒だなぁみたいな感じで肩を落としながら溜め息を吐いて渦中へと進んでいく。

 

「お前達、いい加減辞めないか。これ以上のトラブルは我々教師も見過ごすつもりは無いぞ」

 

 千冬の制止の一言にバツが悪そうに引き下がったのは一夏の方で、セシリアは未だにヒートアップしている様子。

 彼女も彼女で女尊男卑を尊重しているからISを動かせたとしても男であるというだけで腹立たしいのだろう。それは教師でも関係無い。先程までラスティを親の仇かの様に睨み付けていたのだから。彼はここで間に入るのは悪手だと考えて、他の生徒を誘導して席に座らせつつ、教卓の前でトラブルが解決するのを待っていた。

 しかしトラブルは解決する事無く、ラスティにまで飛び火していく。

 

「そこの男もですわ!! 男の癖にこの学園の教師など務まる筈がありませんわ! 傭兵だが何だか知りませんが所詮、この国家代表候補生のセシリア・オルコットには遠く及びません。そんな相手に教えを乞うつもりなど毛頭ありません!」

 

 セシリアの言葉に同じ思想を持つ生徒も同調している様子。一夏は一夏でクールダウンしたのか大人しく席に座っていた。千冬はいつの間にか彼の隣にまで戻っている。彼女は彼女でラスティがどうやってこのトラブルを乗り越えるのか期待して見ている。

 ラスティはさも当たり前と言いたげに淡々と答えた。

 

「ならば君は授業に出なければ良いだろう。この学園の教育理念は自主性を重んじる事。嫌ならば出なければ良い。ただ、君は進級出来ないがね」

「はぁ!? どういう意味ですか!」

「当たり前だろう? 私が担当する戦術概論はIS基礎学の中でも必須科目となっている。授業に出ずに単位を与える方法など無いからな。落単と言うヤツだ。そして進級の条件としてIS基礎学全ての単位を取得している事が最低条件。後は言わずとも分かるな?」

 

 激昂するセシリアへラスティは諭す様に説明する。その場に居たセシリア以外の誰もが納得せざるを得ない説得力があった。嫌なら出るな、出なければ単位は取得出来ないから進級も出来ない。当然の事ではあるが、だからこそ説得力が増している。

 ラスティの説明を聞いたセシリアは怒髪天に到達した様で、机を思い切り叩いて更に声を上げた。

 

「冗談じゃありませんわ! 日本などと言う国に来る事自体苦痛だったにも関わらず、あまつさえ男の教師から教えを乞うだなんて! 屈辱以外の何物でもありません! 決闘ですわ! 私が勝ったら無条件で単位を与えなさい!」

「おい、オルコット。いい加減に......」

 

 セシリアの横暴な発言を諌めようとした千冬を小さく手で制すラスティ。彼女は彼が何をしているのか疑問に思ったが彼はまたしても目を瞑りながら小さく重く頷いて任せて欲しいと合図を出す。

 

「良いだろう。そこまで私の実力に疑問を持つのであれば、その疑問を解決させるのも教師の務めというものだ。ただし、私が勝った場合は今回のトラブル、そして教師に対する横暴な発言の数々。それらを鑑みて反省文十枚と一週間の謹慎処分を君に科す。その期間内で自分の言動を鑑みる事だ」

 

 ラスティの発言に未だヒートアップしているセシリアは二つ返事で了承。そして追加で千冬が宣言する。

 

「ならば織斑、お前もその決闘に参加しろ。トラブルの元を辿ればお前とオルコットがクラス代表決めで揉めた事が発端だ。織斑とオルコット、勝った方がクラス代表になれば良い。ラスティ先生との対戦はその後だ。良いな」

 

 聞き返すものの、千冬の言葉には有無を言わせぬ威圧感がある。一夏もセシリアも黙ってただ頷く。今回のトラブルはそれで手打ちとして今日の所は解散となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 放課後。職員室で翌日からの授業用の資料を作成していたラスティの元へ千冬が缶コーヒーを彼に手渡して隣の椅子に座った。

 

「今日は助かった。お前が仲裁を提案しなければもっと大事になっていたかもしれない」

「そうかな。君も止める方法で悩んでいただけだろう?」

 

 コーヒーを受け取ったラスティは一口飲んで答える。実際、ラスティから見た千冬は止めるかどうかで迷っていた訳では無い。止めるのは前提として、どうやって止めるかで悩んでいた様に見えたからだ。

 

「買い被らないでくれ。私はそこまで優秀な人間じゃない」

「それは済まない」

「謝られてもな......。お前と話しているとどうも調子が狂う」

 

 恥ずかしそうに頭を搔く千冬。そんな千冬に対してラスティが質問を投げ掛ける。

 

「君は束と幼馴染みだと聞いた。君から見た彼女はどんな風に見える?」

「藪から棒だな。そうだな...アイツは私と見ている世界が違う、と思っている。そう思うからこそ、私はアイツの隣に居てやらないといけない。アイツを独りにはさせない。お前もそう思うからアイツの私兵をやっているんじゃないのか?」

 

 千冬にそう言われてラスティは腑に落ちた気がした。自分は彼女の私兵であるにも関わらず、突っかかって言い争いをした意味。

 それはきっと彼女を無視出来なかったからだ。自分と彼女の見える世界が違うのでは無いかと心のどこかでそう感じていたからこそ、衝突したのだと千冬の言葉で納得した。

 

「そうか。君は私に似ているな」

「気持ちの悪い事を言うな。会ってまだ一日だぞ。そういう事はもう少し親睦を深めてから言う事だ」

 

 千冬はそう言って早々と隣から去っていく。ラスティはそんな彼女を見送ってから再度資料作りを再開しようとした所で職員室の入口から見覚えのある生徒がこちらへやって来る。

 

「君は......千冬の弟の......」

「はい。織斑一夏です。先生と同じ、ISを動かせる男ってヤツで」

 

 どこか不安そうな表情でそう答えた一夏。対するラスティは何かを求めてやって来ているのだと瞬時に察して、試すように問う。

 

「一夏、君は私に何を求めてここに来た? まさか雑談する為だけに来た訳じゃ無いんだろ? 大方予想は出来るが、本人の口から聞きたい」

「俺をオルコットに勝たせて欲しい!」

「ほう......面白い事を言うな、少年」

 

 ラスティは一夏の答えにゆっくりと小さく笑って答えた。

 




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