インフィニット・ストラトス ─蒼狼と黒鉄の霞─   作:ダブスタ親父

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 梅雨時期の筈なのに雨が降らず暑い日が続いて嫌になってきますね......

 熱中症に気を付けてお過ごしください

 それではどうぞ!


決着の時

 決着の時

 

 「なっ!? この土壇場で二次移行!? そんな訳が......まさか、貴方、一次移行もせずに戦っていたと!?」

 

 セシリアは目の前で一夏のISが姿を変えた事に狼狽えていた。一夏はそれと一緒に動きを止めるなんて事はしない。BT兵器は制御下を離れてただ浮遊している。その瞬間を見逃す訳が無い。それが恩師の教えである。

 ただ真っ直ぐに加速した。それだけなのだ。だが、その速度は今までの比ではない。一夏の姿が消える。姿を見失ったと思えば彼女の背後から現れ、雪片の攻撃を食らわせた。

 一夏の攻撃を受けてから体勢を立て直したセシリアに一夏は更に距離を詰める。彼女も一夏が一次移行を終えた事を受け止め、目の前に立つ男をただ一方的にやられるだけの弱者では無いと認識を改めて相対する。

 

「奇跡は一度だけでしてよ。ここから先、二度と私の背後は取れません。先程の好機を逃し、最大出力の攻撃を繰り出さなかった事を後悔して負けなさい」

「そうかよ」

 

 一夏はセシリアのBT兵器の攻撃を高速移動で回避していく。先程までの防戦を強いられていた時から打って変わり、高速移動によって優位を取っている様に見える。

 対するセシリアは回避する一夏を追うのがやっとで追い付けない。

 

 ......近接武器しか持たないあの男は攻撃する為に距離を詰める。その瞬間を逃さずに仕留めるだけですわ......

 

 セシリアは追う足を止め、自身の武器であるレーザーライフル『スターライトMark.lll』を構えて一夏の接近を待つ。目の前に出てきた瞬間に一撃で動きを止め、BT兵器の飽和攻撃でトドメを刺す。彼女の中で自分の勝利への道筋は完成した。後は実行するだけ。そう思った瞬間の事だ。

 あの男が居ない事に気付く。先程までアリーナを飛び回っていた男は不自然な程に静かだった。男の居場所を探して首を振る。

 そこでセシリアはハイパーセンサーが接近を知らせていた事を知った。接近しているのに目の前に居ない。あの男はどこにいるのかと思考を巡らせた時には既に遅かった。一夏は彼女の背後を取っていたからだ。

 

「奇跡は一度......だったよな。じゃあ二度目は何だ?」

「なっ!? いつの間に!」

「お前が足を止めた瞬間だ。何を狙ってるのか良く分かったぜ」

 

 一夏は彼女を袈裟斬りに。衝撃で体勢を崩した時、一夏の様子が一変する。

 

「......零落白夜発動」

 

 黄金の輝きを放ち、得物である雪片弐型の刀身が伸びる。そして付与された能力はエネルギー無効化能力。エネルギー兵器を切り伏せ、シールドバリアを切り裂く事が出来る唯一無二の力。姉である織斑千冬も使用していた単一仕様能力(ワンオフアビリティ)であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 同時刻。ピットで試合を観戦していたラスティ達は一夏の単一仕様能力(ワンオフアビリティ)を見て驚きを隠せなかった。

 

「あれは私と同じ......」

 

 千冬はかつてを懐かしむ様に小さく呟く。それを見ていたラスティは千冬へと問い掛ける。

 

「君と同じ? どういう事だ? 単一仕様能力(ワンオフアビリティ)は一人として同じ能力は発現しない筈だろう? 姉弟だからとしてもそれは例外では無い筈だが」

 

 ラスティの問いに、千冬は静かに首を縦に振る。

 

「確かにワンオフアビリティは個々人で異なる。だが一夏が今使っているあれは私の物と同じ系統のものだろう」

 

 千冬の視線が、アリーナで舞う一夏のISへと向けられた。一夏のISである『白式』が放つ光の剣はかつて千冬自身が振るった『零落白夜』の輝きと酷似していた。

 しかし一夏のそれは千冬が経験してきたような起動時の不安定さやその後の制御の難しさを感じさせない、流れるような動きを見せている。

 

「もしも今、一夏が使っている能力が私の物と同じものであるのなら一夏は『最強』になれる」

 

 千冬の言葉にラスティは何も答える事無く、試合映像を映すモニターを眺めていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 BT兵器のレーザーを尽く切り伏せ、加速して更に距離を詰める。刀身がセシリアの身を守るはずだったエネルギーフィールドを切り裂く。

 

「そんな......私のシールドが!?」

 

 信じられないといった表情でセシリアは叫んだ。スターライトMark.lllを構え直そうとするが、一夏の動きはそれを許さない。

 

「悪いな、オルコット。俺を弱いから、男だからって侮ったのが運の尽きだぜ」

 

 低い声と共に雪片弐型で彼女の武器である『スターライトMark.lll』を切り裂く。彼女は悲鳴を上げることすら出来ず、爆発による衝撃が彼女を襲う。

 体勢を崩した彼女へと迫る一夏だが彼女の目を見た瞬間、体が強ばった感覚を覚えた。

 

「まだ負けた訳ではありませんわ!」

 

 彼女がそう言って背後から展開したのは二門の砲身。そこから放たれたのはBT兵器をミサイルに転用した物であった。一夏の見た映像では一度も使用した事が無い未知の武装。これが彼女が隠し続けていた奥の手という事だろう。

 一夏は初めて見る武装に反応が遅れ、ミサイルの直撃を食らう。爆炎に包まれると黒い煙が彼を覆う。

 

「確かに認めましょう、貴方は強かった。......けれど今日勝つのは私だったようですわね」

「────まだだッ!」

 

 爆煙を振り払り、加速して彼女へと接近する。彼の目にはもうセシリアへ攻撃する事しか見えていない。視覚は目の前に居る彼女だけを捉え、聴覚はただ自分が加速していく風切り音だけを拾う。加速を加えた強烈な突き。これが決まれば一夏の勝利である。

 

「な......なんでッ!!」

 

 だが、勝利の女神が彼に微笑む事は無かった。

 

「あと少しなんだ!! 頼む、動いてくれ!」

 

 零落白夜は機能を止め、エネルギーを纏っていたブレードはただの高周波ブレードへと戻る。

 彼の纏う白式はエネルギー残量が残り僅かである事を告げる表示を出していた。一夏はそれに気付かなかったのだ。それは単に見落としていた訳では無い。

 彼の本能が不必要だと判断し、認知する事をしなかったのだ。今必要なのは勝つ事。エネルギーが切れるから負けるとか一度引くという選択肢を考えないようにした結果だった。

 エネルギー切れを知らせるアラートが鳴り響く中で一夏の負けが確定する。

 

「待てよ......俺はまだやれるのに! 何で!!」

 

 声を荒らげる一夏とは対照的に自分が勝利したという事を未だに理解出来ずに呆気にとられているセシリア。

 彼女も彼女で自分は負けるのだと察していたのだろう。回避するには判断が遅かった。もう既に彼の剣の切っ先は目の前まで迫っていたから。

 反撃するにも武器は不慣れなショートソードのみ。大人しく負けを受け入れるつもりであった。

 だが実際負けたのは目の前の男。そんな男を見て、セシリアはやっと思考が現実に追い付いたのだ。

 再戦を申し立てている一夏を尻目に自分が待機していたピットへと戻っていく。一夏は一夏で千冬やラスティに注意されて渋々ピットへ戻るのだった。

 

 こうして織斑一夏の初の実戦は後味の悪い黒星で終えた。




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