血縁者?誰が?…私?   作:狼黒

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第1話

親の顔は覚えていない

だって見たことがないから

 

 

子供の頃から、ずっと戦いに駆り出されていた

誰かが話しているのを聞いたけど、どうやら私の両親にあたる人間が私を売ったらしい

実際はどうなのか知らない、とうゆうか分からないし

MSというものに乗って、ただ殺して来いと

一人も殺せなかったら、『懲罰』だと言われて

その『懲罰』を受けて、その内容というのがわかってからは、とにかく必死だった

いくら出撃しても、どれだけ損傷しても必ず生きて帰ってくる私を見て、『疫病神』と言われた

ただでさえ酷かった扱いが、もっと酷くなった

休みなんてなかった、寝たのは何時だっただろうか

補給も満足に受けられない、酷いときには片腕と両足がなくなったにもかかわらず必要最低限の補給だけで再び出撃したこともあった

ビーム・サーベル一本で切り抜けた時の数は、30?くらいから数えるのをやめたから覚えていない

船にいても、常に狭くて暗い部屋に押し込められて、外出は許されなかった

部屋の外に出れるのは、出撃の時か、『暇だ』という理由で慰み者として犯される時だけだった

 

 

周りは『青き清浄なる世界のために』とか言って、目が正気のそれじゃなかった

 

 

 

 

ある日、このミサイルをコロニーに向かって撃てと言われた

どんなミサイルかも分からないまま撃ったら、眩い光と共にコロニーが吹き飛んだ

後で知ったが、『核ミサイル』と呼ばれるそれは、とんでもない破壊力を持つ兵器らしい

周りにいた皆は『万歳』や『コーディネーターに死を!』とか叫んでいた

私は、怖かった

知らなかったとはいえ、そんなミサイルを撃ってしまった自分が

 

 

 

その後も、私は核ミサイルを撃ち続けた

撃ちたくなかった、けど断ったら『懲罰』が待っていた

知らない男たちに犯されるのが、嫌だった

 

 

 

 

知らないMSを見たのは、そんな時だったか

『フリーダム』と皆が呼んでいたそれに、両腕両足、そしてヘッドをぶち抜かれた

綺麗だった

それと同時に、なぜか親近感を覚えた

 

 

 

 

 

戦争が終わった

生きるために必死で知らなかったが、どうやら戦争をしていたらしい

『盟主』が死んだとか騒いでいたが、私にはわからなかった

ただ、これでやっと、死に怯えることはなくなる

そう思っていた

 

 

 

だけど、そんな思いは眉唾だった

平和になったからといって、私の扱いが変わるわけではなく

ただ、毎日のように、船にいる男や他の船か組織のメンバーに慰み者として犯される日々だった

『懲罰』もキツかったけど、これももっとキツかった

出撃して戦うしかない私への『懲罰』だと言っていた

 

 

 

 

 

地獄のような『懲罰』の日々を過ごした後、再びMSに乗せられて出撃させられた

『ユニウスセブン』というコロニーを落とす支援をしろと言われた

何処に落とすのかと聞いたら『地球に決まっておろう』と言われた

…正気じゃなかった

メンバーのサトーという人も、それ以外の人たちも

『インパルス』と呼ばれているMSとやりあうのに、必死だった

部分的には成功したらしい

帰還してあの部屋に押し込まれたときにちらりと見たニュースで、そう書かれていた

…あんなことの手伝いをした自分が、怖かった

 

 

 

 

 

ベルリンで、『デストロイ』とかいうMAの護衛をしろと言われた

民間人もろとも吹き飛ばしていくのを見て、何でこんなことする必要があるのかと思った

でも言わなかった、いや、言えなかった

『懲罰』が、嫌だったから

 

 

 

 

 

『フリーダム』と再び出会ったのはその時だ

最初に見た時と同じで、やっぱり綺麗だった

『デストロイ』に向かっていこうとしてたから阻止しようとしたけど、三分もしたら両足を吹き飛ばされた

ビーム・ライフルが支給されなかったから、ビーム・サーベルだけで戦ったせいだろうか

それを確認した後、飛んでいく『フリーダム』を見て、やはり綺麗だと思った

そして、相変わらず親近感を覚えた

…帰還したら、任務失敗だと言われて、『懲罰』を受けたけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁ!貴様のせいでぇぇぇ‼」

 

過去のことを思い出していると、腹に蹴りが飛んでくる

痛む腹を抑えるように丸くなると、周りにいた全員から殴る蹴るを受ける

この組織もあれから、随分と見ずぼらしくなった

何でもこの組織の上層部が世間に公にされて、満足な活動が出来なくなったらしい

その上層部は、宇宙で全滅したと聞いた

それでも最近まではあちこちでテロを起こしてたけど、ついこの前に新しくなった上層部が『ファウンデーション』とやらの陰謀で全滅したらしい

私はというと、その上層部の護衛をしようと向かっている時に、その『ファウンデーション』とやらの連中が、自分達の国に向けて撃った核の爆発に巻き込まれて吹き飛ばされて、ほうぼうの体で帰還した

あの時に上層部も吹っ飛ばされたらしい

何とか帰還したかと思ったら、髪の毛を引っ張られて部屋に連れていかれ、今の状況になる

部屋と言っても、天然の洞窟だけど

『コンパス』という組織のおかげで侵攻作戦を起こしてもすぐに鎮圧される

いつの間にか『フリーダム』が新しくなっていた、綺麗だった

あの親近感は、変わらなかった

 

「すました顔しおってぇ‼」

 

そう言ったかと思うと、もうぼろきれと言っても差し支えない布をびりびりと破いてくる

すまし顔をしているわけでない

ただ、もう表情を表すのに疲れただけであって

そう思いながら布をビリビリにしてくれた本人を見れば、気持ち悪い顔をして、ズボンを下ろしてその汚い物を露出させている

もうMSもミサイルもない、人員だってごくわずか、そして上層部は全滅

そんな状態で破れかぶれになったのだろう

今のこの組織に、まともな奴なんて存在しない

周りをちらりと見てみると、前の人間と同じく気持ち悪い顔をしていた

だけど、その中で一人知らない顔を見つけた

こんな人見たことないなと思いながらも、そういえば常に部屋に押し込まれているからわかる筈もないかと言うことに気付く

そんな事を考えながら視線を逸らそうとすると、その人が何かサインらしきものを出しているの気づく

ハンドサインをそのまま捉えるのであれば、『目を閉じろ』

何でそんなサインを出すのかと疑問に覚えながらも、元々この状況に対して諦めて目を閉じようとしていたからその通りにした

 

 

 

 

 

バァン‼

 

 

 

 

「突入!」

 

何かが爆発する音がして、声が聞こえる

その声が聞こえると同時に、大勢の人間が一斉に入ってくる足音がした

 

「なんだ貴様らぁ!」

 

「我らを誰だと思って!」

 

「抵抗をやめろ!」

 

「大人しくお縄につけ!」

 

声の応酬と共に、銃声が響く

静かになった時に目を開ければ、さっきまで私を犯そうとしていた連中はフル装備の隊員によって拘束されているか、銃を突き付けられて両手を頭の後ろにおいて膝をついているか、口から血を流して倒れ伏しているか、追われながら奥の方へ逃げていくかのどれかだった

何が起こったのか分からないが、取り敢えず犯されなかったのだろうか

フル装備をした誰かがこちらに近づいてかがんできたかと思うと、腰に手を回して抱き起してくれる

と、同時にサインを出していた知らない人が、何も纏っていない私の体に毛布を巻いてくれる

初めて身を包まれるそれは、暖かく感じる

 

「もう大丈夫だ」

 

そう言って頭を撫でてくる知らない誰か

その感触が何かよく分からなくて

でも、何か途端に眠くなってきて

知らない誰かが何かを話している間に、視界が真っ暗になった

 

 

 

 

 

 

「君は、オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハの血縁者だ…つまりは、妹だな」

 

「…誰?」

 

目が覚めて、そう告げられたのは、かなり後の事だ

…本当に、誰なのだろうか




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