正実モブくんは隠したい   作:おこげの

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深夜テンションと酒と寝不足で書きました。


僕の青春は理性で出来ている。

 

 なんで自分だけ皆とは違うんだろう。

物心ついた年頃からずっと、曖昧にだけど理解していた。成長していく中で、体の作りが生んだ心境は、より複雑に交錯していく。……みんなとの差異を強く感じるけど、僕は………──

 

 早朝6時頃、朝日が射した光に目が眩み、涙が僅かに零れそうになる。そんな羞明ながらダボダボした白のシャツを寝惚けながら留め具を外していく。そんな登校前の身支度中に、部屋の壁に立てかけてある鏡が目に映る。

 

全体的に細いが、僅かな骨格と筋肉が見て取れる体つき、そして少女ような顔つき。黒の制服を身に纏えばあっという間に女子生徒の外見に。最後に黒のベレー帽を頭に被せれば、トリニティの何処にでもいる、正義実現委員会の一部員の完成。

 

「横のくせ毛……直らないかな…」

 

ぴょんっとはねた横髪を押さえるが、ばねの様にはねて戻る。直る兆候がないくせ毛に溜息をついて、再び身だしなみの確認に戻る。くるりと背を向け、背中に生えた黒紫色のグラデーションがある羽を整え、最後に腰に生えた地べたに付くほど長い尾羽を確認する。

 

「よし……今日も目立たないように頑張らないと…ね」

 

少年こと青鷺アラエは、自分の翼と尾羽があまり好きではなかった。

大勢の部員と比べて、翼持ちの部員は少ない傾向がある。同じ見た目の部員の中で自分だけが翼を持っているとアラエは把握していた。特に尾羽を持つ生徒は珍しいからか、同級生だけでなく、先輩方からも何かと目を付けられることがしばしあった。

 

カバンとライフルを背負い、ローファーをコツコツ鳴らして踵を入れ、玄関のドアを開ける。

 

「ふぅー………いってきま~す」

 

気の抜けた声を誰も居ぬ空間に投げつけ、少しの憂鬱さと共に通学を始めた。

 

 

 


 

 

 

 広大な敷地には整えられた草木が並び、噴水から流れる水が道を作る。エレガントさを強く感じさせる場所であり、トリニティらしさを表している校庭だ。トリニティスクエアを歩く度に毎度そう思っている。周りからは「ごきげんよう」と上品な挨拶が聞こえる。入学してかなり日は経っているが、この上品さにはまだ慣れない。そんなひとりごつをしたところ、背後から黄色い声がかかる。

 

「おはよー!アラエちゃーん」

 

「おはよう。みんな」

 

「今日もしけた顔してるわね。アラエ」

 

「いつも通りだよ。平常運転で安全ですよー」

 

「なにそれ。そういうところはちょっと変」

 

「そ、そう?」

 

黒のセーラー服を身に纏った集団がアラエを取り囲む。その中の1人、下江コハルがツンッとした様子でアラエに話かける。

彼女達は同じ正義実現委員会の部員であり、気のいい友人だ。クラスも一緒で同時期に入部したことをきっかけに仲を深めた間柄だ。特にコハルとよく会話を交わしていることが多く、彼女のやや尊大な態度にも慣れ、逆に僕が煽り返すことも。そんな煽り煽られの関係、一緒に居て楽しい女の子だ。

 

彼女達とあれこれと会話をして、教室に入った後はそれぞれ席に分かれる。カバンを置き、一息ついた頃、隣から、柔らかな声色の声が耳にスッと入ってくる。

 

「おはようございます。アラエさん」

 

「おはよう。マリー。今日も早いね」

 

「はい、今日も聖堂で朝のお祈りをいたしました。少しでもシスターとして敬虔を深める為に」

 

「おぉ…マリーのその献身さは僕も見習うべきだね。今日の訓練はいつもより頑張ろうかな」

 

「大袈裟ですよ。ふふっ、でも少し嬉しいです」

 

僕の隣の席に居るのは伊落マリー。シスターフッドに所属している心優しく穏やかな女の子だ。

席が隣同士で、必然的に会話もよく交わす相手。気兼ねない関係を築けている1人だと思う。コハルと別れた後はマリーとお喋りをよくするので、2人の性質の緩急を強く感じる日々だ。コハルは少しマリーの様な冷静さを持つべきだよ、猫目のコハルを連想しながらそう思った。

 

マリーと暫くお喋りを続けていると、チャイムが鳴り響く。授業が開始されるので周りの皆は席に戻り始める。お上品な騒ぎがまだ残る教室、教科書を出し、退屈な授業が開始される。

 

「アラエさん。今日も一日頑張りましょうね」

 

「!?……う、うん。そうする…」

 

マリーは距離を少し詰めて、耳元でそう囁いた。授業がそろそろ始まるので周りに気を遣っての声量か。それ故に至近距離で彼女の声を受ける。穏やかさと共に良い香りが僕にふわりと舞う、最後に彼女が向けた笑顔が目に焼き付いて、惹かれてしまう。授業が開始されても僕の心臓の音は暫く止まらなかった。

 

 

 


 

 

 

 退屈で面倒な時間割を終えて、正義実現委員会の活動が始まる。

部室会館の正実用部室にて出席欄に丸を付け、スケジュールの確認と銃火器の点検を終えた後に、訓練場で各自訓練に取り組む流れだ。現在僕は自分の銃の点検をしている最中で、愛銃であるアサルトライフルとショットガンを丁寧に整備している。黒くて重厚な銃身を分解して、一つずつと組み立てるこの時間は嫌いじゃない。

 

他の皆はめんどくさいと言っていたけど、僕はかなり、いや、結構好きだ。使用感が見えたり、カスタムを施したり、普段から共にする相棒だからかな?兎に角この愛銃達を眺める時間が楽しい。内から湧く形容しがたい感情が僕の精神を満たしていく──この感覚は男故の……所謂男のロマンから来ている感情だろう。銃のカスタムはいいぞ……

 

「今日も丁寧に点検しているっすねー。手際も中々で関心っす」

 

「あっ!イ、イチカ先輩……お、お疲れ様です」

 

「おっと、作業中に急に話しかけてごめんなさいっす。気にせず続けてくさださいっす」

 

背後から声をかけてくれたのは、仲正イチカ先輩。上から覗く様に僕を見据える。急に声をかけられた僕は地べたから立ち上がり先輩に会釈をした。

 

「そんなに畏まらなくてもいいのにー……ふむ、よく見てみると色んなカスタムで組み込んでいるっすね」

 

「そ、そうですね。僕はこういうが好きでして……自分で色々と好きな様にカスタムしてます」

 

「トリニティでは結構珍しいっす。カスタムするにしても皆はかわいい感じにデコるのが多いですし、君は中々硬派な感じっすか?」

 

「まぁ装飾に戦術的優位性が何もなければ僕は素の方が好ましいですね」

 

「えっと、そ、そうっすか?」

 

「あっ、す、すみません!いきなり語り出して……今の通り僕は硬派な類に入ります、ね…」

 

「あっはは!熱があるのは良い事っすよ!」

 

そう笑って僕を撫でつけるイチカ先輩。とても面倒見が良く、他の部員から慕われている先輩で僕も好ましく思っている。だけど、正直僕は少し警戒している。日々お世話になっている先輩には失礼だけど、時折……イチカ先輩が僕を見据える時の目が、皆とは少し違う視線で見ている気がして……流石に自意識過剰かな…。

 

少し緊張で体をぎこちなくさせながら、イチカ先輩のスキンシップを受け入れる。

 

「ARとSGの2丁持ち…………なにか名前とか付けてるっすか?」

 

「えっと、恥ずかしいんですが……」

 

「別に笑ったりしないっすから、聞かせて欲しいっす」

 

「………分かりました」

 

高校に上がる前に新調した2丁の銃。僕はこの2丁にある想いを込めて名を付けた思い出を振り返る。

性別故の悩みで肩身の狭い生活を続けてきた僕が、それでも挫けずに生きる事を決心して名付けた。僕の相棒。アサルトライフとショットガンを持ち上げて、銃身を少し撫でる。

 

「このARは「ウェベン」と、そしてSGは「タテネン」と名付けました」

 

「ウェベンと、タテネン……すね。何か意味があったり?」

 

「はい……ウェベンは「立ち上がる者」という意味と、タテネンは「目覚めさせる者」…という意味を込めて名付けました……やっぱり恥ずかしいです…」

 

「いやいや、とても良いと思うっす。深い意味が込められていて、気に入っていることがよく分かったっすから。大事にしているんすね」

 

「はい。その、なんか…話聞いてくれてありがとうございます」

 

「私から聞いたことっすよ?こっちが礼を言うべきっす。ありがとうっす!作業中に悪いっすね!最後に君の名前を教えてもらってもいいっすか?」

 

「えっと、青鷺、アラエです…」

 

「青鷺……アラエ……っすね。覚えたっす。では私は訓練場で他の子を見てくるので、また後でよろしくっす。アラエさん」

 

イチカ先輩は手をヒラリとさせ、最後に目を開いて横目ながらに部室を後にした。

あの視線、まただ……。確かに銃2丁持ちはツルギ先輩以外に居ないからか、目に付けられる理由になるだろう。それは僕が悪いけど、どうしてもこの2丁の銃を使いたい欲は抑えられない。また変に注目されない様に静かにやり過ごすよう徹さなきゃ……!!

 

 

 


 

 

 

 入部した新入りの中で、ひと際目に付く子がいた。

新入生の素質を見定める訓練で、彼が見せた身のこなし、それに追従する美しく長い尾羽は、華麗なエフェクトかの様に彼の動きを彩っていたのが、忘れられずに記憶に残っている。服装と髪型を一律に揃えた後輩達の中で、チャームポイントがやたら多い彼女、アラエ。そのアラエさんを私は度々目を追っていた。

 

「ARとSGの2丁を同時に扱えるの子は中々いないっすよ。今年は優秀な子が多いっすね~」

 

最初のテストは好成績を収めていたのに、最近は減少傾向にある。疑問に思ったので、対話を試してみたっすけど、まぁ、少しミリタリーに詳しい子って印象……ってところっすね。後は全体的に黒い服装で、見る限り黒タイツとハイネックのインナーをいつも身に付けているくらいっすか。後は……くせ毛?

 

新入生調査書にアラエの情報を記入し、イチカはアラエの動向に興味をより抱くことになった。

 

「依怙贔屓するつもりはないっすけど、いつでも見ているっすよ。アラエさん?」

 

 

 


 

 

 

 日は沈み、帰宅する時刻になった。訓練後の疲労感で皆はくたくたになりながら「お疲れさまでした…」と消沈した声で部室を後にしていく。タオルやボトルなどをカバンに押し込み、僕も帰宅する為に地べたから立ち上がる。そこに同じくくたくたになったコハルがテクテクと歩いてきた。

 

「おつかれコハル。みっちりしごかれたみたいだね」

 

「えぇ……足がふらつくわ……」

 

「帰ったら速攻でお風呂入って寝た方がいいな。僕も今日はすごく疲れたし」

 

「あ、あんた……あんなに銃弾食らっておいて何でそんなにピンピンしてんのよ…」

 

「全然ピンピンしてないよ、痛かったし、今も結構辛い。暫くは筋肉痛が続く感じだね…」

 

僕はそう言って肩を抑える動作をする。実際に痛みは走ったから嘘ではない。一瞬だったけど。

 

「そう?何だか平気そうな顔してたわよ。嘘ついてないでしょうね?」

 

「………付いてないよ。もう遅いし帰ろう。明日も早いし」

 

「それもそうね。はぁ……ハスミ先輩の射撃凄かったな…」

 

コハルを支えながら帰路につく。月光と街灯が僕らを照らす。夜になってもトリニティの街並みはエレガントさを強く醸し出していた。その景色に目を奪われながら、今日の出来事を振り返る。

 

今日の訓練はツルギ先輩との実戦訓練。先輩1人に対し僕ら1年は3人で挑む形だった。障害物多く配置されたフィールドで、僕は前衛で、コハルは中衛、後衛は確か静山マシロさん、このポジションで実戦訓練を始めた。マシロさんのスナイパーによる索敵と、コハルの細々としたサポートもあり、良い感じに継戦できたと思う。最終的に後方が先に潰されて、コハルも続く様にノックアウト。3分くらいは粘ったけど、ツルギ先輩の驚異的な肉薄に耐えられなかった。訓練終了後に僕をジロリと見てたけど、やはり手を抜いていた事を見抜いている視線だと振り返る。

 

「……でも、なんで指摘しなかったんだろう……」

 

「何か言った~?」

 

「なんでも、ていうかコハル脚ガクガクしすぎね。そこまで辛いなら負ぶっていくよ?」

 

「ガ、ガクガクなんてしていないわよっ!?急にえ、エッチなこと言わないで!」

 

「はい??疲れで頭がおかしくなったみたいだね?だったら尚更その状態で歩かせる訳にはいかないよっと」

 

「きゃ、きゃああ!?ちょ、ちょっと!」

 

コハルの前で屈み、強制的におんぶを強行する。余りの軽さに驚愕の声を漏らしてしまい、コハルが「えっ?何その反応?も、もしかして汗くさい!?」と暴れかけ、咄嗟に「違う、寧ろいい匂いだよ」とセクハラをかましてしまい、頭部にたんこぶが複数できてしまったが、コハルも疲れてしまい、今は大人しくおぶられている状況だ。

 

「あんたの背中……な、だんだか、その……固いわね…」

 

「固くて悪いね………筋トレしてるからだよ。銃を2丁も扱うにはある程度の筋肉が必要なの」

 

「分かってるわよ……でも、これはなんだか…………」

 

まさか、気づかれたのか?コハルは肩に頭を垂れ、真横にコハルの桃色の髪が頬を撫でる。頭部の羽で目を覆いながらか細い声で呟く。

 

「凄く落ち着く……良い匂い…」

 

「………やはりコハルはえっちな子だな」

 

「……あっ、ち、違うわっ、これはっ、その…」

 

いい訳を始めようと猫目になった彼女を横目に、僕は彼女に心の中で謝罪をした。

 

ごめん……本当は僕の方がえっち……いや、変態なんだ。嘘をついて、君を騙す卑劣者なのに…

 

深層にあるのは恐怖。秘密が暴かれ、軽蔑される恐怖。もし最初から偽らずにありのままで居られたら、そんな後悔が胸の奥に混在している。だが今更後悔しても遅い。一度飛び立ったら後へは引き返せない。そんな心境でコハルを寮まで送り届ける。背中に残る彼女の感触にざわつく感情の波、そして理性的な部分がソレを嫌悪する。

 

一度、羽を休めないと……

 

僕は彼女の元に足を進めていく。一刻も早くと焦るように。

 

 

 


 

 

 

 目を眩む光が辺りを照らす。チカチカと光と影を出現させる光景が目に映る。目に悪いなと思いながらもその発生地に歩を進める。周りにはスケバンやチンピラなど、見るからに不良の見た目の生徒達が倒れ伏していた。

 

夜中は悪事が横行しやすい。だが逆も然り。それを見越して行動するある人物にとっては手堅く事件を防ぐことが可能だろう。なによりこの暗闇なら、光もより強く感じる筈だ。

 

「スズミさん。巡回お疲れ様です」

 

「おや?アラエ君。こんな遅くにどうしましたか?」

 

僕の事情を知っている数少ない人の1人。守月スズミさん。彼女の齎す光は、僕にとっては安心できる光だ。

 

トリニティは24時間営業している店が割と多い。疎らに光る店の光に吸い寄せられるように、僕たちはこじんまりとしたカフェに腰を据えることに。ホットなココアを飲んで一息つき、落ち着きを取り戻す。

 

「学校生活には慣れましたか?」

 

彼女が僕を見てやさしく微笑みながらそう切り出した。

 

「うん……日はかなり経ってるから流石に……委員会は少し大変だけど…」

 

「そうですか。まだ始まったばかりですから、焦らずに一歩ずつ進めれば、結果は自ずと付いてきます」

 

「友達も沢山ではないけど、数人常に一緒に居る友達ができて、まぁ、楽しい、です」

 

スズミさんは頷き、僕を肯定する仕草をする。

ずっと、僕の話を聞いてくれる。相槌を打って、時折興味深そうな反応もしてくれる。僕は不定期に、スズミさんとこうして雑談することがある。僕の事情を知ってる人だからか、何も気にせずに話すことができる相手。スズミさんからしたら、突然押しかけてくる迷惑な奴だと思われてるかもしれない。でも毎回応じてくれて、快く受け止めてくれる優しい人だった。

 

めんどくさいな、僕は、女々しい。本当に女になったみたいだ。

 

「アラエ君とって、今の環境は苦ではないですか?」

 

「全然、寧ろちょー楽しいっす」

 

「……そうですか。でしたら何故、そんなに辛そうな表情をしているんでしょうか」

 

「っ…………僕の、心の醜さに……」

 

ストレスが溜まっていたんだと思う。確かに彼女達とは仲がいいと思っている。大変だけど、楽しい学校。辛いけど、高め合える委員会活動。そんな輝かしい青春の様な日々を送っているのに、僕は心の何処かで、彼女達を、……………っ………け………汚す妄想をしていた。

 

みんな、とてもかわいい。綺麗な先輩もいる。このキヴォトスはだれもかれもが、みんな輝いている。

いいね。僕も見習って頑張らないと。みんな違ってみんな良いんだから。

 

でも、内から強く湧いて滲みでるこの感情は、年々成長と共に強固になっていく。何だこれは?俯瞰に徹して、そんな不快な思いが湧く。理解したよ。体の一部分が違うんだもん。下品な話。同じ性別の子はどこに行ったって見つからなかった。自分だけがおかしい存在だと理解せざる負えない。コハルが読んでいたえっちな本にでてくる「男性」って架空の生物なの?じゃあ僕が存在している理由は?

 

「僕は、最低な人間です。この異常な人間……いや、獣をどうかスズミさんに罰していただきたい」

 

「アラエ君。前にも言いましたが、それは至って健全な感情なんです。思春期特有の──」

 

「では、僕が今あなたを犯している妄想をしていたらどう思いますか?」

 

「っ!」

 

「いや、常日頃こんな下卑た妄想はしてませんよ……流石に…ですが、分かったでしょう?この醜い感情が。分かってます、ええ、確かに思春期特有の多感な年ごろだと。そういう友人近くにいますし、でも、僕には逃げ道がない。いつか暴かれて、騙していた事実が皆に晒されて、もうキヴォトスでは生きていけないけもしれない、怖い」

 

「………はい、はい。アラエ君の苦しみには本当の意味での共感はできません。男性と女性では、欲求の差異がありますから。ですから、前と同じように、私に吐き出してください。間違えそうになったら、私を思い浮かべてください」

 

手を握られる。やめてほしいけど嬉しい。

 

「もしもの時は私の閃光弾で思考をフラッシュさせます」

 

「…………………確かに、それなら何も目に映らないので有効な手段ですね」

 

数時間、会話を重ね、冷静さを取り戻した僕は、スズミさんと一緒に音楽を聴いた。少し古い曲調だったけど、僕にとっては穏やかでいられる貴重な時間になった。ローファイ?チル?とでもいうのかな、妙な心地よさがあった。

 

 

 


 

 

 

 時刻は22時頃、流石に明日に響くので、スズミさんにお礼を言って寮へと足早に帰る。その途中で、僕は今までで一番驚愕な光景を目撃してしまった。

 

「あら?まだ生徒残っていたとは……ふふっ♡」

 

「ぇ…………な……ぜ、水着……?」

 

「誰も居ない校舎で……ただ布1枚のみ、解放感で身が軽くなりますね♡」

 

ピンク髪の彼女はそう言いながら体を跳ねさせる。一言で言うなら、豊満な肢体。たゆんと揺れるソレは、僕の脳内を容易にピンクに染め上げる。ブレーキが壊れる音がした。

 

…………ダメだ。なに、この人。でも目が離せない。変態だ……僕も、あなたも…

 

「……?そんなにジロジロ見られると恥ずかしいですねぇ。ふふっ」

 

スカートをギュッと抑える。スカートの布は軽いから、パーカー脱いで腰に巻かないと、軽蔑される。早く早く早く!!

 

その後、どうやって寮に帰ったか覚えていない。ベットに項垂れて、自分の息切れだけしか聞こえてこない。暫くしたら、疲労からか、僕はそのまま眠りに落ちてしまった。

 

 早朝、最悪な目覚めで体を起こす。昨日シャワー浴びてなかったのが主な原因だ。

体は汗でべっとりしてるし、下腹部は別なものでべっとり汚していた。悲惨な状況を目覚めと共に脳が明確に把握し始める。だが意外と僕は冷静にこの事実を受け止め、そのまま朝シャワーを浴びる。

 

「さいてーすぎて笑えてくるな。もはや」

 

自分への失笑。よりクリアになった脳はその感情を弾き出した。

 

「……学校……行かないと…」

 

いつもと変わらない日常、だけど僕にとっては毎日が奮闘の日々。それでも、なんとか青春として片づけたい。僕は純粋じゃないけど、せめて皆の前では綺麗でありたい。そう映っていてほしい。そんな混濁した思いを込めて僕は玄関のドアを開いた。

 

 




設定やキャラクター、文章についておかしい所が有ればご指摘くださると幸いです。

修正は度々します。

キヴォトスは男にとって、生きにくい世界だと考えました。
まぁ私の想像力では測れない世界観ですけどね。

でも、みんな立派です。エデン条約とか、もっと突き詰めて考えたら、それはもう……ね

不眠症に苛まれながら書いたssです。正直記憶はあまり残ってないです。

主人公の青鷺アラエ君はほぼ正実モブの男の娘です。ここ重要。
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