夢は天下無敵の大将軍   作:金匙

2 / 29
幼少期はさくさく進めていくつもりです。

感想・評価ありがとうございます!


02:別れ

 

 

 3年目:春

 

 気がついたら2年目が終わっていた件について。

 体作りも兼ねて本能の赴くままに寝てばかりだったので時差ボケしてるような感覚を受けたが、前よりも毛並みの整ったネコを見て否が応でも時の流れを実感させられた。

 

 父上は相変わらず騒動の中心におりイゾウから危機感が足りないと小言を受けていたが、とうとう海軍も無視できない脅威と認識されたことで見事賞金首となったとのこと。

 正直見事なのかは分からないが、父上や周りが喜んでいるから(イゾウを除いて)良いことなのだと思う。

 まぁ海賊として考えたら賞金首になるってことは箔がついたようなものだし、大海賊白ひげの弟と周知されてる父上からしてみればようやくという思いもあるだろう。

 初頭手配では異例の高額ということだったが詳しい金額は教えて貰えなかった。ただこの世界では億を超えれば一端の大物海賊と認知されるようで、白ひげがいるこの『新世界』と呼ばれる海域は億越えの海賊たちで溢れており、父上はそんな海賊たちを何人と斬り伏せて来たのだからかなりの高額手配なのは間違いない。

 ちなみに白ひげの懸賞金は軽く30億は超えてて新世界の海賊だろうと一捻りだとか……地震親父怖すぎるっぴ。

 

 しかしそれだけ名声轟く大海賊なら日に日に白ひげの船に船員が増えていくのも納得だ。

 行く先々で船に乗せてくれと頼み込む者は後を断たないし、白ひげは優しいからよっぽどの相手じゃなかったら快く受け入れるから最近では船室が足りなくて甲板で雑魚寝してる船員たちもいるくらいだ。

 中には俺を見て何で子供がいるんだと眼を飛ばしてくる人もいるが、そういう人たちは俺が話をつける前に大体イゾウやイヌネコに無礼だと張り倒されている。

 俺としてはもう体を動かせるようになったので一端の見習いくらいの仕事はしておきたいのだが、家臣たちの忠誠心が重すぎて許されないので日がなネコとゴロゴロしてることが多い。

 鍛錬しようにも4歳までは禁止と言われてしまっているので、あと2年はこの生活を送っていかなければならないと考えるとかなり憂鬱な気持ちになる。

 ネコはそんな俺の悩みにおでん様の息子らしいと笑っていたが、すぐにサボってるのがイヌにバレて船の掃除に連行されていった。哀れなりネコマムシ。

 

 

 

 3年目:夏

 

 妹が生まれた。

 名前は日和、母上によく似た可愛い女の子だ。

 髪の色も母と同じだし目元なんてそっくりである。

 俺は父上の因子を濃く受け継ぎすぎて母上の面影が皆無だったから、きっと俺の分は全て日和に譲渡されたのだろう。父上似の妹ってちょっと思うところがあるし母上そっくりの美形に生まれてくれて何よりだ。

 

 日和の育児で手一杯の母上からは、あんまり遊んであげられなくてごめんねと謝られたがとんでもない。

 身籠っていた時から船を駆け回る俺を気にかけてくれていたことは分かっていたし、夜には何をしていたのかと嫌な顔一つせず話し相手になってくれる、それだけでも母上からの愛情はひしひしと伝わって来るし、父上も交えて3人で布団を囲む時は俺の何よりも心安らぐ時間だ。

 それに遊び相手なら俺にはイヌネコがいるから寂しくはない。船の雑用を放り出してまで構ってくるのは玉に瑕だが、だから母上には日和のことを第一に考えて欲しいと伝えておいた。

 そのことを伝えたら母上が泣き出してしまい大焦りしたが、駆けつけた父上と一緒に慰めて事なきを得た。

 それからは3人で───日和も交えて4人で布団を囲って話をすることが増えたので、家族の絆がより強固になるのを感じた。

 

 しかし母上、子供とはいえ俺も心は一端の侍だから人前で甘やかすのは恥ずかしいので辞めていただきたい……嬉しいけどね?

 

 

 

 3年目:秋

 

 最近『声』がよく聞こえるようになった。

 耳がついてるんだから当然だろと言われるかもしれないがそういう普通の声ではなくて……言語化すると難しいんだが、相手が考えていることとか動物の声とかが頭の中によく響くようになった。動物って言ってもイヌネコみたいな言葉を介すミンク族ではなく、意思疎通が出来ない動物の声ね?

 ただ考えていることと言っても、楽しいなーとか悲しいなーとかその時の感情が声になって聞こえてくるだけで読心術の類ではない。

 頭の中に直接響くから気持ち悪いとまでとはいかないんだけど……ぶっちゃけ異物感が凄くて少しだけ不快ではある。

 

 何か原因の一つでも分かればいいなと思い最近よく話しているティーチに聞いてみると「そりゃ覇気なんじゃねぇか?」と言われたが……覇気とは何ぞや?

 間が悪くティーチはその後マルコに呼ばれて行ってしまったので、仕方なくイヌネコに聞いてみるが二人とも覇気? と首を傾げるばかりで心当たりはない様子だった。

 白ひげや父上に聞くのが一番手っ取り早いのだろうが、生憎と今は上陸した島で因縁ある海賊たちと抗争中のためそれも出来ない。

 

 帰って来てから聞けばいいか、そう結論付けて───三日経過した。

 幾ら何でも長すぎない? と思ったが、相手はゴール・D・ロジャーという白ひげに並ぶ大海賊で、片手間にあしらって島の探索でもしてるのかと考えていたがどうやら本当に三日三晩戦い続けているらしい。

 それを証明するように未だに白ひげの能力による轟音と振動の余波がここにも届いてるし、さっきなんて文字通り天が割れていたほどだ。

 滅多に見れない白ひげの本気に、戦いを間近で見たいという気持ちが湧かなかったと言えば嘘になるが、いつになく真剣な表情で船番をするイヌネコを見たら流石にそんな危険なことは出来ないかと自制せざるを得なかった。

 

 父上は無事だろうか、と泣いている日和を母上と一緒に宥めていると───一際大きな轟音と歓声と共に戦いの終わりが告げられた。

 

 

 

 3年目:秋part2

 

 船を移動することになった。

 

 1年だけという契約で父上がロジャーから引き抜かれ、母上や俺たちもそれについていくことになったのが事の次第。

 父を弟のように扱っていた白ひげがよくもそんなことを許したなと疑問に思っていたが、どうやら父上の方からもロジャーについていきたいと嘆願したようで、家族の頼みならばとすごく嫌そうな顔をしつつも承諾してくれたらしい。

 別れ際に体には気をつけろよと抱擁された時には思わず親父……! と言いそうになってしまった。

 

 三日三晩の死闘を繰り広げたとは思えない大宴会の後、ロジャーの船に移った俺は父上を介してロジャーと話をする機会を貰ったが……俺がまだ子供だからか予想に反して随分と気さくな態度の海賊で思わず肩の力が抜けてしまった。

 聞きたいことや困ったことがあれば何でも聞いてくれ、と言うのでティーチの言ってた覇気に関することを聞いてみるとロジャーと父上になぜ覇気を知ってるのかと驚かれたので『声』について悩んでいると打ち明け、それは見聞色と呼ばれる覇気の一つだと教えて貰った。

 ロジャーも父上も俺のように『声』に悩まされた経験があるのか、制御出来ない内は無差別に聞こえる『声』に気が休まらないだろうと理解を示してくれて、少しばかり早いが制御出来ない覇気は身を滅ぼすからと4歳まで禁止されていた鍛錬の許可も貰うことが出来た。

 その際に軽く覇気について教えて貰ったんだが、どうも父上たちワノ国の侍は覇気のことを『流桜』と呼んでいるらしく、流桜を使えるイヌネコが覇気について認知してなかったのも単に聞き馴染みがなかったかららしい。

 

 覇気は武装色と見聞色、そして覇王色と呼ばれる3つに分類されていて、この中でも武装色と見聞色は鍛えることが出来るが覇王色は生まれながらの素質故に鍛えることが出来ないとのこと。

 俺はまだ見聞色の覇気にしか目覚めていないが、この歳で周囲の『声』を聞けるのは稀有な才能だと褒めて貰った。

 見聞色は鍛えれば攻撃の予測なども出来るようで、ロジャーや白ひげレベルになってくると未来予知すら可能らしいなので俺もそのレベルになれるように頑張ろう。

 

 まずは『声』の悩みを解消するためにも見聞色の習得を第一に考え、余裕があれば武装色もという方針で明日からレイリー指導の元に覇気を習うことになった。

 父上とロジャーも教育係に立候補していたが、二人とも教えるのが致命的に向いてなかったのでお断りした。何だよがーとやってぐわーって、感覚派が過ぎるわ。

 

 

 

 3年目:秋part3

 

 白ひげのところに置いてきたはずのイヌネコが密航していることが発覚した。

 何してんの君たち? と聞いてみれば、おでん様が自由に生きろと言うから自由にしたとのことで、父上にしては珍しく頭を抱えて蹲っていた。

 ネコはモモの助様が寂しがると思ってとも言っていたが、イヌからの密告でそれが都合のいい理由付けだって言うのは判明済みだからな。まぁイヌネコがいなくて寂しかったのは事実だけども。

 

 当然ロジャーの一味からは猛反発を喰らったが、父上がお詫びにとワノ国の名物『おでん鍋』を振る舞ったことで何とか受け入れて貰えた。とは言え白ひげに断りもなく抜け出してきたのは不義理なのでイヌネコにはちゃんと反省するように言っておいた。

 ロジャーたちと囲ったおでん鍋は前世を彷彿とさせる味で、薄々思っていたがもしかしてワノ国って日本みたいな国なんだろうか。侍とか将軍とかいるし絶対そうだよね。

 

 覇気の方は順調……だと思う。

 と言うのも見聞色は心を落ち着かせることが習得の近道ということで、最近は瞑想ばっかりでイマイチ成果を感じられていないからだ。

 レイリー曰くいい感じとのことなので良くはなってきているらしい、実感はないけど。

 ついでに父上がうるさいのでおでん二刀流も習い始めた。

 相変わらずの感覚派指導ではあるが、こちらは実戦形式ということもあってまだ覚えやすかったから良かった。ただいきなり奥義伝授は早すぎるよ父上……あのロジャーが苦笑いしてるって相当だぞ?

 

 あとはシャンクスとバギーっていう友達が出来た。

 友達というか歳の差的には兄貴分? 二人ともロジャーとレイリーが気にかけてる父上の息子っていうことで前々から俺に興味があったらしく、父の流派に四苦八苦する俺を見てアドバイスをくれたことが切っ掛けだった。

 日頃から喧嘩の絶えない二人はアドバイス一つする度に大喧嘩するものの、アドバイス自体は的確なので正直かなり助かっている。

 それを見た父上がお前らもおでん二刀流を習いたいのかと勘違いして二人とも悲鳴を上げていたが、頼りになる兄貴分が出来てより航海が楽しくなったのは言うまでもない。

 

 

 

 3年目:冬

 

 空島、水の都、シャボンディ諸島に魚人島……たった数ヶ月で色んな島を巡ったものだと感心する。

 白ひげの時よりも遥かに航海のスピードが速いのは、やはり白ひげとの約束で1年間しか父上と一緒にいられないという理由からだろうか。

 ロジャー曰く『歴史の本文(ポーネグリフ)』と呼ばれる石碑の解読こそが最後の島の鍵で、父上はその石碑の文字を読める唯一の逸材。

 俺も一度空島の石碑まで連れて行って貰って実際に目にしたが、正直何て書いてあるのかサッパリだった。

 こんなの読める父上すげぇーと他人事のように考えていたら、どうやらウチの家系───光月家に代々伝わる一子相伝の技術があれば読み書きが可能とのことで、いずれ俺にも伝授される旨を父上から伝えられた……他人事じゃなかったよ。

 ただ、伝授自体は俺が大人になってからとのことなので一安心。日々の鍛錬で手一杯なのにここに勉学まで加わったら流石に過労で倒れる自信がある。

 ちょっと前まではイヌネコと戯れてるだけだったのにこの有り様だ、0か100じゃなくてもっとバランスのいい生活を送りたいと切に願う。

 

 最近は母上の体調も優れなくて、母上は父上に心配かけまいと隠そうとしてるが俺は勿論赤子の日和にすらバレバレである。日和の面倒を見たりして少しでも母上の負担を減らしてるものの体調は悪化するばかりだ。

 ロジャーが求めている赤い『歴史の本文』がワノ国とイヌネコの国にあることが判明して、より軌道に乗った航海の邪魔をしたくないという気持ちは痛いほど理解出来るが、俺にとっては航海よりも何よりも母上の身が一番大事だ。

 その思いはきっと父も同じだと思うし、何かある前に船医のクロッカスに容態を伝えるべきだろう。クロッカスは腕利きの船医だがそれでも船の上じゃ限界がある。

 母上には悪いけど、あまりに容態が悪そうなら近くの島に船を止めて貰えないか提案してみよう。仲間思いのロジャーならばきっと力になってくれるはずだ。

 

 

 

 3年目:冬part2

 

 故郷に帰ることになった。

 

 思っていたよりも悪かった母の容態を鑑みて、これ以上の航海は命に関わるとクロッカスからドクターストップがかかったのが切っ掛けだ。

 父上は自分も帰ると言ってくれたが、母上からの強い後押しとワノ国の地理に疎い俺たちのためにイヌネコが案内役を買って出てくれたことで後顧の憂いを断たれ、ロジャーの船に残り冒険を続けることになった。

 

 一緒に船を降りるなら離縁します、とまで言ってのけた母上には痺れたぜ……いつか日和も母上みたいな強い女性に育ってくれるといいな。実の兄に飛び蹴りをかましてくるじゃじゃ馬っぷりからは想像すら出来ないが。

 

 見聞色の覇気についてはまだまだ未熟と言わざるを得ない練度だが、レイリー曰く基礎は固まっているとのことなので、後は教えたことを欠かさず続ければ近いうちに覇気が発現するから心配いらないとお墨付きをもらった。

 瞑想とたまに目隠しして木刀避けることくらいしかやって来なかったが、確かに以前よりも『声』の頻度は少なくなったし聞こえてきてもそこまで苦に感じなくなったので、レイリーには感謝してもしきれない。

 おでん二刀流という父の流派に関しては、技を使うにはまだまだ土台が出来てないのでまずは素振りや走り込みをして筋力と体力をつけるところから始めようと思う。

 船の上ではどうしても体力作りは出来なかったから、これからは観光を兼ねてワノ国の地を存分に走り回るつもりだ。

 

 シャンクスとバギーとは折角仲良くなったのに別れる形になってしまい残念だが、今生の別れという訳でもないしお互い次に会う時はもっともっと強くなって再会しようと誓い合って別れた。

 侍とその兄貴分は涙を流さないから、別れる時は当然3人とも笑顔だったということは記しておく。

 

 

 

 3年目:冬part3

 

 本場の侍と出会った。

 カッコよすぎて昇天した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。