調子に乗って特殊タグを使いまくったので読み難かったらすみません……ここまでやるのは今回限りにします。
流れ星の落ちる先
ロドス本艦 購買部スタッフルーム
茶碗を借りるとしよう。共にチュロスを食そうではないか。
……む? これは我が妹の茶碗だな。見よ、この絵が我らの故郷に似ておると気に入っておった。
使いたいという顔をしておるな? 今日の所は見るだけだ。我はまだうぬを認めておらぬゆえ。
そう身構えずとも良い。存ぜぬ相手を認める事はできぬ。さあらば知れば良いのだ。
あの子のどこを好いておるのか聞かせてくれぬか。
然り、あの子は心優しく感染者への偏見も無い。
然り、あの羽のなんと愛らしい事か。
ふむ、その仕草は我は見た事が無いな……兄として寂しく思うが、うぬに気を許しておるのやもしれぬな。
かつてのあの子は常に我の背後を付いて回っておったが、近頃は──
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うぬは中々分かっておる。
あの子と共に生きるには困難が多いが、うぬのような勇敢なる男が現れて嬉しく思うぞ。
……む? 我が妹は弔鐘の王庭において、我が母上に次いで高貴なる女性である。
サルカズ十王庭が一つ、バンシーだ。我はバンシーの主である。
チュロスは我の血縁ではないが、我が妹として共に育った。彼女はすなわちバンシーの姫と言える。
なんと、うぬはあの子をリーベリと認識しておったのか。
知らずに接しておったのだな。立場ではなく、あの子を愛してくれたのだな。
されど残念だ。覚悟有ってのものと思っておったが……うぬには荷が重いやもしれぬ。
……あの子の婿となるならば、他の王庭と渡り合える力が必要となる。
サルカズは複雑な状況にあり、我もいずれ戦争に身を投じる事となろう。我にもしもの事有らば、次に敵の標的となるのは我が妹とその伴侶である。
他の王庭……リッチは比較的温厚であるが、死を克服し、その長き命で日々アーツの研究に明け暮れておる。我は王庭の中でも若く、未熟だ。もしも老獪なあやつらが敵に回れば、我では太刀打ちできぬやもしれぬ。
ナハツェーラーも危険だ。非常に好戦的ゆえ、遭遇すれば戦闘は避けられぬと心得よ。あやつらは死しても蘇り、決して退かず、その身が腐敗しようと戦い続ける。殺し切る事は容易ではない。
ブラッドブルードの大君は殊更残忍である。あの不死不滅のサルカズは、たった一人で軍団に匹敵する力を持つ。あの子がかの大君に目を付けられぬよう、我は常に気を配っておる。
残念ながら全てまことである。御伽噺であれば良かったのだがな。
うぬの感じた通りのまま、〝出鱈目〟としか思えぬような連中なのだ。
……他の種族からすれば、バンシーも似たようなものであろうがな。
……顔色が悪いな。すまぬ、脅したいわけではないのだ。
されどあの子と生きるならば、王庭との接触は避けられぬ。
既に複数の王庭が結託する中、そこへ加わらぬバンシーの立場はあまり良くない……
いずれ接触を図ってくる。
そうか……うぬを巻き込むわけにはいかぬ。目眩ましが必要だ。
敵を騙すにはまず味方からと言う。当分はあの子と距離を置き、我とあの子が婚約者であると噂を流すがよい。
あの子は我の妃となるべく育てられたゆえ、嘘ではない。あの子の虫除けにもなる。
あの子を狙う輩は多くてな……
我らの幼少のみぎりに、母上が定めただけの事だ。
我もあの子も、そのつもりであった事など無い。妃とするならば、疾うにしておる。
む? それはおそらく我が友Mechanistだな。
あやつはあの子に何か有れば我が全身全霊で呪う事を存じておるゆえ、逢引きではないと思う……が、後程確かめておこう。報告感謝する。
あやつは友としては申し分無いが、あの子の伴侶としては認められぬ。確実に仕事を優先して妻を疎かにするタイプゆえ──
──しまった、我は仕事が有るのだった。すまぬ、これ以上ケルシー医師を待たせる前に行かねばならぬ。
うぬの義兄となれぬのは残念だ。
されど友となる事はできよう。何か有れば我を頼るがいい。感染者の同胞を支えるのも、エリートオペレーターの役目ゆえな。
ロドス本艦 バー
呼び立ててすまぬな、あの子の誕生会の礼を伝えたかったのだ。
うぬの尽力により、我が妹も満足する宴となった。あの子の兄として感謝するぞ。
されどうぬを直接参加させてやれなかった事、まことに申し訳無く思う……せめて今宵は我に奢らせてくれ。
遠慮はいらぬ。チュロスも有るぞ、一本どうだ?
それと、これはあの子からの礼状だ。
宛名は後方支援部となっておるが、あの子が我に託したのならば、うぬに渡せという事であろう。
我が妹の筆跡は美しかろう? あの子は三つの頃には既に字も四則演算も身に着けておった。聡明な子なのだ。
小さき妹だと思っておったが、来年には成人してしまうのだな……寂しいものよ。
……そう見えるか? ふむ、恋敵の目は誤魔化せぬな……
然り、我はあの子を愛しておるよ。
されど我は、あの子には自由に生きて欲しいのだ。我はあの子を置いて逝くやもしれぬ身ゆえ。
儘ならぬものだな。
ロドス本艦 バー
うぬか、久しいな。スイーツ店での事を噂として流したのはうぬか?
やはりそうか。あの子を狙う無作法者がおったのだが、あの噂が切っ掛けとなり諦めさせる事が叶った。感謝するぞ。
うぬにはいつも助けられておるな。
やはり我が妹にはうぬのような男こそ──
──何? あの子とうぬが相思相愛であるのは……うぬの勘違いだと?
ふむ……言われてみれば、あの子からは、うぬへの未練のようなものをさほど感じぬ気が……
我こそすまぬ。我も遂にあの子を純粋に想うてくれる男が現れたと思い、舞い上がっておったようだ。
あの時のあの子は……うぬの顔に泥を塗らぬよう、咄嗟に話を合わせたのであろうな。
然り、心優しき子だ。
されどあの子に教えねばならぬな……時には毅然と振る事の方が、優しさであるのだと。
一度きつく仕置きを──
……あの子を恨んでおらぬのか?
そう恥じるでない。何も悪い事ばかりではない。
あの事が切っ掛けで、我とうぬは友となれたゆえな。
こういう時は酒に限る。同じ勘違いを共有した者同士、今宵はただ飲み明かそうではないか。
チュロスも有るが──
うむ、我もそう思うておった。
今ばかりは、あの子の事は忘れよう。
今はまだ未来の話。