挽歌の後は晩御飯   作:シカルニ

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4-3 天災

 居なくなりたい。

 だからきっと、私は隠行が得意なのだ。感情を殺す歌と一緒だ。前世から持つものは、単純に年季が違う。

 あるいは、本来この世界に存在しないはずの私は、消えてもこの世界の人から違和感を持たれにくいとか、そういうのも有るかもしれない。確かめようが無いから真偽は永遠に不明だけれども。

 

 まばらに人が居る通りを走って横切る。ドレス姿では目立つはずだし、足音も全く消せていないが、誰も私を気に掛けない。

 遮音ではやり過ぎて、相手によっては気付かれる。だから私が立てる音を起点に空気を振動させて、〝誰も居ない空間の音〟に改変するようにした。メフィストの歌を補助をした事が、この新たな呪文のヒントになった。

 リボン化してない呪文は長続きしない。でも空気を操れるのなら、音を消す事も、鳴らす事もできる。効果が薄れる前に、私にだけ聴こえるアラートを鳴らす仕様にして、早めにかけ直せばいい。

 

 

 原作では、Scoutを捕まえたヘドリーが「これ以上中枢に近付くな」的な事を言っていたと思う。

 中枢っていうのは、いかにもチェルノボーグの象徴的な感じの、あの大きなタワーの事だろう。アークナイツのログイン前の画面で死ぬほど見た。

 すぐに駆け付けられるように、できるだけ近くまで行っておく。警備に引っ掛からないとも言い切れないから、タワー周辺のエリアを囲む塀にはまだ近付かないでおこう。

 

 壁歩きの呪文で適当なビルの屋上に登って、住民が行き交う通りを見下ろしてみる。

 色とりどりの車、忙しそうなスーツ姿の男性、ニコニコしている老夫婦、ショーウィンドウを眺めるお洒落なお姉さん、小さな子供の手を引く母親。

 普通の街だ。初めての場所なのに、やっぱり少し懐かしい。

 

 今度こそ休憩しよう。栄養ブロックをかじり、水筒の水を飲み干して、水筒カバーに付けたリボンの呪文を発動。空気中の水分が集まって、じわじわと水が溜まっていく。

 いちいち呪文を書かずに繰り返し使用が可能と考えれば、元は苦肉の策だったこの呪文リボンも悪くない。しかもリボンの品質をケチるほど複数併用する必要が有るので、リボンが増えて可愛くなる。

 この水筒カバーはケチった上に清潔にする呪文とかも入れたので、リボンまみれである。

 ……お兄ちゃんなら一言で、一瞬で水筒がいっぱいになるんだろうな。

 

 

 Scoutの位置を意識しながら、頭の中でおさらい。Scoutはサルカズ傭兵のボスを倒して、イネスと遭遇して逃げて、ヘドリーに討ち取られる。それとScoutは意識を失ったGuardに手当てをして手紙を託してた。そのGuardが負傷したのはタルラに立ち向かったからで、そのタイミングだと既に天災が来てたはず。

 天災の時点では生きてる。じゃあそれ以外の時間を特定できそうな要素は……

 ……Scout隊のお守りの反応が消える時?

 ……やめよう、時間が分かった所で大した意味は無い。

 

 Scoutの手紙は結構長文だったから、多少落ち着いた状態で書いてる方が自然に思える。

 傭兵のボスを倒した後に一度追手を撒いて、Guardを見付けたから助けつつちょっと息を整えて、意識の無いGuardがサルカズ傭兵に見付からないように、捜索を打ち切らせるべくわざと捕まりに行った……って感じだろうか?

 

 でもレユニオン幹部やサルカズ傭兵には、管轄だか縄張りだか、そういうのが有るようだった。Guardが居るのはパトリオットの場所だろうから、仮にScoutがサルカズ傭兵を遠ざけなくてもGuardは安全なはず。

 それにヘドリーもイネスも、Scoutには逃げて欲しがってた。あの場面でScoutが死ぬ必要は無いんだ。

 

 っていうか、Scoutに会いたいならGuardの側に居れば良いじゃん! 鉢合わせないようにする事に意識が行ってて気付かなかった……

 いやでも、Guardの側はアーミヤの側でもある。アーミヤの感情を感じ取る力で私が居る事がバレる可能性も有るし、やっぱり近付かない方が良いかな。よく考えたらタルラとの遭遇リスクも上がるし。

 

 ヘドリーに捕まる前に私がScoutと接触できればいいけど、アーミヤが離れるのを待ってからGuardの位置まで移動してたら、素早いらしいScoutに先を越されるかもしれない。

 もしそうなったら、私じゃまず追い付けない。イネスでも追うのに苦労してたようだし。

 だからその時が来たら、まずヘドリー達の管轄エリアを探して、そこでScoutが近付いてくるのを待とう。闇雲にScoutを追うよりは、まだ現実的なはず。

 

 

 考えを整理していると、突如悲鳴が上がる。始まってしまった。

 竦む体を無理矢理動かして街を見渡す。

 民間人を追い回す、レユニオン構成員達。アークナイツで散々見た白服と白仮面。

 武器を振り上げた一人が、逃げ遅れた人に迫って──

 思わず目を閉じた。恐る恐る目を開けると、別の白服が別の民間人に武器を振り下ろす瞬間だった。

 白い服に赤が散る。

 ビルの上から見る人々は小さくて、どこか人形劇のようにも見える。血だって赤過ぎて、インクみたいで嘘っぽい。

 だけど視覚以外の全てが、これは現実だと訴えかけてくる。

 内臓を絞り上げるような息苦しさと気持ち悪さが押し寄せてきて、息の仕方を忘れそうになる。

 

 ダメだ、立ち尽くしてる場合じゃない。何をしに来たのか忘れるな。

 

 ……サルカズ傭兵は見当たらない。ここが白服の担当なら、ヘドリー達はまた別の場所だろうか?

 ビルの屋上から飛び出す。もう動かなくなった人達に気付かないふりをして、血を踏まないように駆け抜けて、タワーを囲む高い塀の上に登って走る。

 

 怒号と悲鳴に、破壊音。それら全てが、私をその場で蹲りたい気持ちにさせる。

 だけど一番恐ろしいのは、静かになった時だった。

 悲鳴を上げていた人達が、声の届かない所まで逃げただけかもしれない。でも、そうじゃないとしたら──

 

 考えるな。私が怖がる事に意味は無い。

 

 Scout隊のお守りの反応が、目まぐるしく動いて──消えていく。

 ……まだ分からない。お守りが壊れただけかもしれない。大丈夫。きっと大丈夫。

 彼らとScout自身、そしてGuardの位置から、Scoutが移動しそうな範囲に当たりを付けていく。まさか今から真逆のエリアまで大回りはしないだろう。

 

 血のように紅く染まる空を見上げる。……風も荒れてきたし、そろそろ天災が近いのかもしれない。

 風向きから塀の内側の方が安全だと判断して、誰も居ない事を確認して下に飛び降りようとした時だった。

 

「おねえちゃん! おねえちゃん!」

 

 塀の外側から、小さな女の子の泣き声が微かに聴こえる。

 崩れた建物の瓦礫の下からのようだ。

 「お父さん」や「お母さん」なら、気付かなかったフリができたかもしれない。でも、「お姉ちゃん」は……

 迷っている時間は無駄だ。この付近にはもう誰も居ないから、隠れる必要も無い。駆け寄りながら、骨筆で軽量化の呪文を練り上げる。

 

「今助ける! 動くでないぞ!」

 

 軽くした瓦礫を素手で掴んでどけていくと、尖った部分が掌に引っ掛かって血が出た。思ったよりザックリ行ったようでボタボタ落ちる。でも後でアーツで治せばいい。……グローブくらい持ってくれば良かったな。

 いや、待てよ? ちょっと閃いて、滴る血を筆先に付けて、瓦礫に直接呪文を書いてみる。

 ……やった、普通に書くより効果有る! 血の呪文とか滅茶苦茶呪術っぽいもんね!

 そういえばブレイズもアーツに血を使ってたっけ。わりと一般的な媒体なのかも。

 

 崩れそうな場所を呪文で固定しつつ、泣き声を頼りに最短距離で瓦礫を取り除く。すると4歳くらいの女の子と、意識の無い若い女性が現れた。

 随分年の差が有る。実の姉妹ではないのかもしれない。

 お姉さんが庇ったのと、本人が小さいお陰で、上手いこと瓦礫の隙間に入ったのだろう。女の子には大きな怪我は無さそうだ。引っ張り出してやると、しっかり自分の足で立っている。

 でも、お姉さんの方は……

 

「よしよし、もう大丈夫だ」

「おねえちゃんもたすけて……おねがい……」

「……うむ」

 

 ……血まみれのお姉さんに軽く触れてアーツで確認してみるものの、既に事切れていた。

 

 天災が迫っている。早くここを離れるべきだ。

 だけどこのままお姉さんを置いていったら、この子の心は生涯癒えない傷を負うだろう。

 更に瓦礫をどかして遺体を運び出すと、力無く垂れ下がるお姉さんの手に女の子が縋り付く。

 

「おねえちゃん、いたいいたい?」

「大丈夫だ、わらわが治そう」

 

 呪文でお姉さんの血を綺麗に落として、包帯を巻いて傷を隠しておく。

 この流れで女の子の擦り傷と私の掌も治しておいた。お陰でお姉さんの傷も治ったと信じてくれたようだ。

 

「おねえさん、ありがとー!」

「うむ。時にそなた、名はなんと言う?」

「マリヤ!」

「……良き名だ。マリヤよ、姉君は疲れておるようだ。安全な場所で休ませてやらねば。わらわについてくるのだ」

 

 前世の、私が死んだ後の事はあまり考えないようにしていた。

 だけど従妹の真梨奈と似た名に、少し二人を重ねてしまう。

 あの子はもう小さくないし、私とあの子の年の差は二つとかだったと思うけど。

 ……あの子は私が死んで泣いただろうか。

 

 お姉さんを抱えて、マリヤの足に合わせてゆっくり塀の前まで戻る。

 まだ小さいから、何が起きているのか分かっていないのだろう。マリヤは荒れた街の様子に不安そうにしているものの、パニックを起こすまでは行ってないようで、大人しくついてきてくれた。目に付く位置に死体や血痕が無いのも幸運だった。

 少し迷ったが、一度お姉さんを地面に寝かせて、先にマリヤを抱いて塀の向こうへ行く事にした。

 

「おねえちゃん!」

「大丈夫だ、そなたの次に姉君も連れて来る。小さい子から順番であるぞ」

 

 そのまま壁を歩くと変に興奮させるかもしれないから、前屈みになって手を使うフリだけしておく。こっちの方がしんどいけど、頑張るだけだから別にいい。

 登り切ったら同じようにして塀の内側に降りる。お姉さんと分断されたせいか、マリヤは落ち着かない様子だ。

 

「マリヤよ、わらわの鞄が盗まれぬよう見張っておいてくれ。姉君を連れてすぐ戻る」

「うん……はやくきてね……」

 

 小さい子は何をするか分からない。昔の真梨奈も、ダメだと言い聞かせても勝手に動き回って、迷子になって泣いていた。

 塀はかなり高いから、登るのに少しだけ時間がかかる。そしてほんの少しの時間でも消え失せるのが幼児。

 単なる「動くな」だと、逆に焦れて待てないかもしれないから、役割を与えてみる。

 

 リュックをその場に置いて、塀を越えて、お姉さんを抱えて戻る最中。

 後ろから破壊音がした。

 色んな音が入り乱れるレユニオンの暴動とは違う。何の感慨も無く無機質に叩き付けたような音。

 ──天災だ! 源石が降ってきたんだ!

 急いで塀の向こうに戻ると、マリヤはリュックを抱えて震えている。良かった、待っててくれた。

 

「おそらがへんだよ!」

「珍しい天気であるな。マリヤよ、わらわのアーツで傘を作るゆえ、近くへ来るのだ」

 

 お姉さんを壁際に寝かせて、その近くでマリヤを抱え込み、急いで防御のための呪文を書く。無いよりマシ程度の呪文でも、重ね掛けすれば多少は効果が期待できるはず。

 同時進行で歌って、周囲の風の流れを変えて防壁にする。今なら誰かに聴かれる前に天災の風に掻き消されるだろう。ついでに外で起きる破壊音も防げる。

 ……でも、地面や塀に伝わる振動までは消せない。建物が倒れでもしたのか、時折地震のような揺れを感じる。しがみついてくるマリヤを撫でてやりながら、呪文を書き続ける。

 塀の内側の別の場所に源石が落ちてきたり、塀の向こう側に何かが当たる音がしたりもする。

 怖い。怖いけど、大丈夫。大丈夫って思ってないと、心が大丈夫じゃなくなる。だから大丈夫。

 

 小さい頃に近くで天災が起きた時は一晩篭ったし、台風のようなイメージが有ったから、もっと長いのかと思っていた。しかし思いのほか早く、風が収まり始めて空も落ち着いてくる。

 嵐というよりは、爆撃に近いのかもしれない。戦争なんて知らないくせに、そんな事を思った。

 

 ……耐えるように留まっていた皆の反応も動き出した。そろそろ行かなきゃ。

 恐怖にぐずるマリヤを宥めて、お姉さんから少し離れた所に立たせる。

 本当はこんなに悠長にしてる場合じゃない。だけどやらなかったら、私はきっと生涯後悔する。

 

「マリヤよ。姉君はこれより遠い所へ行かねばならぬ」

「なんで? おうちに帰らないの?」

「斯様に深く眠ってしまった者は、地上では目覚める事は叶わぬ。ゆえに天から迎えが来て、空の国へ行くのだ。そこではふっかふかの白き雲に包まれて眠り、目覚めればふっわふわの甘い桃色の雲をパンに付けて食すのだ」

「マリヤもおねえちゃんといく!」

「残念ながら、迎えの順番は決まっておるのだ。わらわにもマリヤにもいずれ迎えが来るが、それがいつなのかは分からぬ」

「じゃあ、おねえちゃんのおむかえがくるまで、マリヤもいっしょにまってる!」

「それは──」

 

 不意にAce隊の反応が消し飛んだ。

 ……全部じゃない。それにお守りが壊れただけかもしれない。大丈夫。

 どの道先にScoutの所に行かないといけないから、今Ace隊の事を気にしても仕方ない。大丈夫。

 ヴェールとマスクをしていて良かった。声のコントロールも得意だから、動揺を悟られないように話せる。大丈夫。

 

「──それは姉君も喜ぶであろうな。迎えは近くまで来ておるようだが、彼らには地上の者に見られてはならぬという掟が有る。今の内に別れを済ませるが良い。眠っておるが、声は届く」

「うん。おねえちゃん、またね。バイバイ」

 

 マリヤは軽くそう言って、手をぶんぶん振った。私も一緒に手を振る。

 いつかこの子も、これが永遠の別れだと理解する時が来る。でもそれまでは、「またね」を信じてたっていいはすだ。

 

「別れが済んだのなら、あちらを向き目を閉じて、心の中で10数えてみるがよい」

「うん」

 

 マリヤが見てない隙に、お姉さんに隠行の呪文をかける。

 地味に外からかけるのは初めてだが、上手く行った。

 

「おむかえきてる!」

 

 数を数え終えたマリヤが驚きの声を上げて、お姉さんの遺体の位置目掛けて駆けていく。

 誤魔化したのは見た目だけ。流石に触れたら分かってしまう。

 

「マリヤよ、あの雲の塊が見えるか?」

 

 サッと抱き上げて、適当に空を指差して気を引く。

 天災の後で荒れた空には、該当しそうな雲がいくらでも有る。マリヤ自身が納得すればどれでもいい。

 なんか昔アエファニルにも似たようなことやったな。なんでだっけ。

 そうだ、私のお尻に敷かれたゴージャス刺繍スカーフの救出のためだ。あれ、多分ラケラマリン様の作だったんだろうな。

 ……帰りたい。河谷に、幸せなあの日に帰りたいな。

 

「あのくも?」

「うむ。あれが今、姉君の乗る雲である。空を漂う雲のうち、いくらかは雲で出来た移動都市であったり、乗り物であったりするのだ。他の人には秘密であるぞ」

「なんでおねえさんはしってるの?」

「わらわは実は、空の国から落ちてきてしまったのだ。帰りたいが、迎えの順番待ちだ。内緒であるぞ」

「はーい」

 

 マリヤは少し落ち着いたようだ。もう十分だろう。

 

「……疲れたであろう。しばし眠るがよい」

 

 呪文で深く眠らせて、大人用のおんぶハーネスをなんとかいい感じにして背負う。

 リュックはウエストポーチのベルトにぶら下げて、日傘も剣みたいに腰に差した。ちょっと邪魔だけど仕方ない、このままScoutの所へ行こう。

 

 塀に登る。

 塀の内側の建物は頑丈で、大して壊れはしなかった。

 だけど外側はさっきと同じ場所とは思えないほど荒れ果てている。

 家屋は潰れ、ビルは抉れて、大輪の花の如く源石クラスターが咲き誇る。

 マリヤを助けた辺りにもその黒い花は蔓延っていて……なんだか見ていたくなくて、逃げるように塀の上を駆けた。

 

 

 走っていると、サルカズ傭兵の管轄エリアまで来たようだ。アークナイツで見慣れた格好の傭兵達が居る。Scoutの現在地からしても、ヘドリーに捕まるのはこの付近の可能性が高そうだ。

 ScoutはとっくにGuardの位置に到達して、既にそこを離れた。ビルが倒れて──Scout隊のお守りの反応がひとつ消える。

 ビルの下敷きになったプータル。

 確か原作のイネスは、プータルの名を挙げた時「ついさっき」と言ってた気がする。それなら私もScoutに接近しよう。

 ……最悪のタイマーだ。こんな事のためにお守りを渡したわけじゃなかったのに。

 

 最初から分かってた事だ。全員は助からない。

 本当にこれで良かったんだろうか? 私がもっと上手くやれていたらと思ってしまう。

 もっと前から。アリーナを救えていたら。

 アリーナが死ぬのは原作通りなのに、生かしたかったと思う矛盾。私は本当は、原作を壊してでも皆に幸せになって欲しいのかもしれない。

 

 そうだ。力が有ればそうしたかった。

 こうやって物語の外側でこそこそと動いているのは、原作より悪い展開に陥ってしまったら、取り戻せる自信が無いからじゃないか?

 私はアーミヤの成長のためなんて言い訳して、あの子のせいにして、自分の無力さから目を逸らしていたんだ。そのくせあの子を守りたいと思ってたんだから最低だ。

 

 私には力が無い。なのに「私なら救えた」なんて、思い上がっていた。

 テレジアの時もそうだ。「見殺しにした」と思い上がっていた。自分なら何かできたはずだと、根拠も無く信じていた。

 どこかで都合良く考えてた。誰も死なないで、皆で帰れる道が有ると期待してた。

 現実はお守りの反応がどんどん消えている。救えるはずだと信じて、救おうとして、だけど零れ落ちていく。

 

 

 一人が一人を救えば、次は二人で二人を救える。

 でも、私が一人も救えなかったら?

 あるいは、救うべき相手が既に一人も残っていなかったら?

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