あの日   作:はまっち

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あの日(2)

 199▮年2月26日、東京都永田町

 

 

 

 日枝神社のすぐそば。かつて日本を騒がせた山王ホテルに隣接する、東急の一大ホテル。そのまた隣にそびえる古びたビルこそが、神祇庁庁舎である。

 高度経済成長の名残を未だに引きずり続ける官公庁の24時間勤務体制は未だ続き、彼の高柳事件を経た後ですらも煌々と灯り続ける蛍光灯は血と涙の不夜の城を築き上げる。

 しかし――今や。もはや。この建物に、人の気配はない。

「霊体反応なし。生存者はいないっす」

「居ても困るがな……居たとすれば、それは」

 憐れにも職務に忠実だった数名の神祇官と祓魔師の死体が転がる廊下を行く四人の神官は、雑面を被った3人を筆頭に執務室と研究室の扉を横目に歩んでいく。

 

 ふと。こつり。雪駄の硬い音が響いた。

 

「あら、あらあら? こんな夜遅くに退勤していない悪い子は誰かしら」

 死体を踏み越えて現れるのは、一人の老婆。神祇庁には似つかわしくない黒い僧衣に、赤く染まった袈裟。金色の柄香炉と路念仏の鈴。長く伸びた黒い髪を剃っていない事から“真衆”か、或いは堕落しきった日本仏教の一員か。

 ……いずれにせよ、神祇庁と言う省庁に現れるようなモノが、ただの木っ端であるはずがない。

「……神祇官室の手のものか。流石は“浄眼”――――」

「いやねぇ。おばさん、別に神祇庁からお給料もらってるわけじゃないの。そもそもこんな時間、こんなところにはもう、おばさんしかいないのよ? だからおばさんひとりだけ。こーんなご老体を捕まえて、剰え件の“浄眼”くんの手先だって言ってのけるのはいただけないわねぇ」

 

 老婆は飄々と言葉を重ね、袈裟を直すついでに曲がった背を伸ばす。黒い僧衣の裾を振る。

 その非常識な――この場においてありえないいでたちの神祇官を前に、雑面で顔を覆った女は、中臣唯祈(いのり)は腰の小刀を抜き放った。

「……ならば誰だ。荼毘に伏しに来た、流れの仏僧ではあるまい」

「うふふ!! こーんなおばあさんを尼さんだなんて失礼ねぇ! 私はねぇ……そうねぇ。非常勤で雇われちゃった、お掃除のおばさん。そうね、そうねぇ。それが一番近いわよねぇ」

「どこの手先かは、言わないつもりだな」

 苛立ち混じりに呟いた唯祈の言葉を半ば無視し、老僧が小さく肩をすくめた。

「お掃除のおばさんよぉ。でもそうねぇ、どうしても必要なら……伊藤特殊清掃か、河原石葬祭とでも名乗ろうかしら?」

「戯言を――」

 

 止めろ。雑面を被った老爺が小さく、冷たく言い放つ。

 中臣理仁(りひと)と呼ばれる神官は、勝手知ったるとばかりに、短く区切った言葉で彼女自身のことを言い表す。

「東雲燈聖(ひじり)。戦前から時代から祓魔に携わる怪物。戦後日本半世紀の立役者」

 東雲燈聖と呼ばれた老婆は、老僧は、ほほと上品に笑いながら雑面の男たちを見た。

「あらあら。おばさんのことを知ってるのねぇ。おばさんが引退して、もう10年くらいは経ってると思ったんだけど……ああ、逆ね。逆かしら。今の若い子は知らないのよねぇ、こんなおばあちゃんのことなんか」

「退け、小娘。我々は、過去幾度と肩を並べた。手の内は知り尽くしている」

「あら、あらあら……全部が全部、見せた覚えはないわよ? 理仁おじいちゃん?」

 舌打ち。太刀を佩いた老人は、かつて――10年と少し前に見た彼女の得物と戦い方から大きくかけ離れた今の装束を一瞥のみで眺め、呟いた。

「装いも新たに。仏僧に宗旨替えして、加護術式でも学んだか」

「あら、意地が悪い。知っているのでしょう? 東雲西行(さいぎょう)のこと――ああ、後はアレ。東雲夜半(よわ)のことも」

 語られる名前。祓魔師の誰もが知るものと、誰もが知らないもの。

 中臣理仁の口から、淡々としわがれたセンテンスが投じられる。

「東雲夜半、東雲家第十代当主。そうして」

 ――そうして。

 詰まった口を借りるように、老婆は、東雲燈聖は、謡い笑うように繰り返した。

「そうよねぇ。あなたたちが知らないはずがない、知らないはずがないもの! 彼の稀代の呪詛犯罪者、禰雅に討ち果たされた数多の祓魔師と神祇官の中の一人――そうして禰雅への如何なる暗殺も呪殺も必殺の効力を発揮できなかった禁術、“御頭の神”の逸話に範をとった形代術式『御供黒子(みどもくろこ)』のうちの1つを、見事討ち取って果てた東雲家の本物の英雄のことを!!」

 高笑いする老婆を嘲るように、中臣理仁は繰り返す。

「……知っている。陰陽寮から、莫大な弔慰金を得た事も」

 そんな安い挑発には乗らないとばかりに、東雲燈聖はもう一つおかし気に笑う。

「うふふ、あはははは!! そのくらいでおばさんを挑発してるつもりなのね? 東雲という家が、そんなに懐事情が危ないって思っているつもりなのね!? ああ、面白いお馬鹿さん! そーんな泡銭、浄土でも冥途でも使い道なんてないでしょうに!!

 あはは、ああおかしい。私が髪を剃ったのは、そおんなことじゃないわ! だいたい妹の分際でおばさんより先にお姉様とエスになった不埒者のためなんか、そおんなことみいんな忘れて勝手に戦後を謳歌した不貞者のためなんか、おばさんが好き好んで髪を剃るはずないじゃない!!」

 

 では。理仁の言葉を遮るように。

 老婆は胸を反らし、ふっと冷たい火葬場の煙のような無表情を。

 

「だけどね。似非(えせ)坊主で歌人(えんちゃんたぁ)なのか屍術師(ねくろまんさぁ)なのかわからない、家柄だけの盆暗(ぼんくら)男だって――――誰かが弔わないと、みいんな忘れてしまうじゃない。皆、死んでしまった大量の遺体の中の唯一人、たった一人の男すら知らないじゃないの」

 柄香炉を振りながら、線香の煙を撒き散らす。裾に入れた経典がかさりと鳴く。

 儀式にも見える動作をただの一呼吸で取り直し、咄嗟に武器を構えた中臣家の神官たちに向けて笑いかける。

「うふふ、嫌になるわよねぇ。家なんかは守る必要が無いとして、家庭も守れず夫も守れず。ただ守れそうなのはお仏壇だけ。ああ、畢竟。おばさんは、後から弔う事しか出来ないの。大事なことはみいんな手遅れ、なあんにも守り切れたことなんてない。ああ嫌になっちゃうわねぇ」

 

 ふと。雑面で顔を隠していない唯一人の神官が――中臣鹿波が、一歩前に出た。

 ハンドサインと目線だけで「“結界破り”」と伝えつつ、配下の神官たちを庇うように言葉を交わす。 

「……北穢炭夕張新鉱ガス火災事故の英雄。800余名全員が死に絶える占術予測を覆し、死者行方不明者を100人以内に収めた女傑が……ご謙遜を」

「うふふ、貶しても何も出ないわ」

「結局おばさんにはなーんにも出来なかったのよ? 獣も鍛冶も継げず、あるのは後付けの加護術式(クラシカル儀術)だけ――……嫌ねぇ。嫌よねぇ。出来損ないのおばあちゃんを持っちゃって。夜行ちゃんにも迷惑をかけちゃうわ」

「……東雲の家のことなど気にしないと言ったのに、子供には優しいんですね」

「ええ、おばさん。未来ある若者には優しいの。知らなかった?」

「初耳です」

「そうよね、言ってないもの」

 

 飄々と頷く東雲燈聖を尻目に、中臣鹿波はちらりと配下の若者二人を見る。小刀を握りしめた雑面の女が、小さく首を振る。

 それの意味するところは、「結界など存在しない」ということ。

 陰陽寮に属していてもいなくても、神祇官家であれば当然に起動させる相手に不利な術的空間(けっかい)を、自分に有利な術的空間――活性陣を、一切起動させずに着の身着のままで立っているということ。

 東雲燈聖は面白おかしいと言うように小さく笑うと、袈裟を直すついでに襟元へ差されている扇子を――中啓を直した。

 

「うふふ。そんなことやらないわよ。御安心なさい」

「……気づかれていたか」

「そりゃあねぇ。鹿波くんたちが攻める側、おばさんが守り側。なら、守る側は既存の防衛設備――例えば神祇庁庁舎の防護結界、そのほか色んな研究室や訓練室の結界装置を利用するのが道理でしょう?」

 

 ――本来、既存の結界の効果を塗り替えることは難しい。この庁舎一つを覆うような、或いは自身の周囲のこのフロアくらいの広さであれば、新たに作ったほうがよほど早い。そうしてそのような時間も隙も無かったことも、式神や手下を這わせて作業を進めていることなど有り得ないことも、雑面で顔を隠した神官の一人、中臣虚保が走査している。

 彼の賀茂神祇官家の伝説的な陰陽師と同じく――或いはより広い意味で結界術に秀でた神祇官が、結界を貼ることなく戦地に立つことは、よほど式法に自信がなくては即ち自殺行為に近しい。

 

 にも関わらず。老婆は、ただ、ここにいる。

 戦い留めるつもりで立ち塞がるにも関わらず、ただこの廊下に立っている。

 

「……気づいていて、何故?」

「うふふふふ! 面白いことを聞くのねぇ、鹿波くん! 貴方たちはそおんなこと気にしなくていいのに!!」

「……なるほど、それも道理ですね」

 

 中臣鹿波は、毒気を抜かれたように無表情で口元を歪める。その様がより面白おかしいというように、腹を抱えることもなくただ口先だけで老婆は笑った。

 

「うふふっ、ああ面白い。真面目なのねぇ貴方……中臣の理仁おじさんとは大違い! なんせそこで神妙な(つら)してる古老のおじいちゃん、昔は海軍きっての色男(いけめん)だったのよ? ああ、笑っちゃうよねぇ! 貴方、お姉様に粉かけようとして袖にされてたっていうのに、まだまだちっちゃかった孟徳くんにすら呆れられてたっていうのに、まあだ(けつ)追って千島から台湾まで走り回ってたのよ? 傑作ったらありゃしないじゃない!」

「掘り返すな」

 ドスを利かせた声で、顔を背けた中臣理仁が呻いた。

「うふふっ……ああ笑った笑った。……ああそうね、真面目で真面目で、思いつめすぎて心がねじ切れてしまいそうな鹿波くんに諫言(あどばいす)しちゃおうかしら」

 

 ふっ、と。冷静に言祝ぐ。

 今この時を見据え、再考するよう。

 

「おばさんね、こう見えてだいぶ強いの。だから時間稼ぎ位は出来るし――貴方たちとこうして好き勝手くっちゃべってる間にも、袴問おじさんが駒を差し向けてくるわ」

 そうだろうな。中臣鹿波は一つ頷き、返す。

「袴問神祇次官は、ここにはいないという事だな」

「ええ、ええ! そうよ。今更こおんな神祇庁長官(こえだめのおさ)なんてやらされてる、可哀想な可哀想な草津生まれの富雄くんと一緒に……まあ、大方どこかに隠れているに決まってるわ」

「ああ。そうだろう……が、織り込み済みです。山本神祇庁長官の位置は既に把握しています。不要な神祇官の血はながしたくなかったが――――仕方ない犠牲でしょう」

 

「どうかしら。もうやられちゃってるのかも?」

 

 にやりと口元だけを上げた東雲燈聖に、中臣鹿波は泰然と答えた。

 

「まさか」

「ええ。真逆(まさか)真逆(まさか)

 くつくつと細い首筋を上下させ、言葉を重ねる。

 ただの時間稼ぎ、ただの雑談などではない、純粋な呪いを。

「だからねぇ。中臣の鹿波くん。

 ――――これから年金暮らしのおばあちゃんに花を持たせると思って、諦めてくれないかしら」

 

 ぴり。無表情の仮面の下で表情筋が引きつったのを、東雲燈聖は見逃さない。

 獣のような視線を受けた男は、無精ひげが生えたままの顎をしゃくる。

「…………それで、僕の妹が返ってくるのか?」

「……まあ無理よねぇ。ええ、ええ。言ってみただけよ」

「逆に、貴女はどうか。東雲燈聖」

「うーん、無理ねぇ。おばさん、やりたいことがあるの」

 中臣鹿波の脳裏に、記憶している限りの現政権と神祇官家の主要人員、それにその背後関係の中に。東雲家が敢えてこの中臣の暴虐を止める筋合いはない。

 当然、それを察知する術も。たった一人だけを迎撃に回すような、豪胆さも。

 だが――現実として。彼女はここにいる。一人の僧侶がここにいる。

 祭具に身を包み、同じく祭具で武装した神官たちとの死線を越えないまま、のらりくらりと道をふさぐ。

 家と家の争いでも、陰陽寮と中臣家の暗闘からくるものでもない。どころか公安警察の女狐や、ミワシ部隊の亡霊からの刺客でもないならば。

 であれば。その動機は。思うに。

「…………司法取引か。前田法相は、死刑執行を躊躇わない」

 意を得たりとばかりに、東雲燈聖は頷いた。

「ええ、ええ。でもねぇ。東雲の家が生き残れるのは、これくらいしかないのよ。知ってるでしょう?」

 

 一拍。息を止め、呪詛を吐く。

 

「――――身内から呪詛犯罪者が出た家は、古い神祇官家として、多大な非難と悪影響を受けるのよ」

「……知っています」

「ええ。例えば陰陽寮からの支援停止。幕府からの直接的加害。神宮本社や“衆門”、果てはそこらの拝み屋風情からも有形無形の妨害が相次いで……ああ、いっぱいあるわ。大変よねぇ、呪詛犯罪者なんて産み落としちゃった家は」

「織り込み済みですよ。何のための『絶縁状』か――」

「でもね、貴方たち。あんまりにも新しすぎる格好の標的だもの。随分大昔だからこそ何とかなった、曲原なんかとは比べ物にならないわ」

 ばさりと切って捨て、続けた。

「錦司家、石薬師家、崇格坂本家……ああ、もう和解したんだっけね。なら件の賀茂家にしたって……どこもかしこも奇人変人犯罪者扱い。なあんにも知らない世間様(ますめでぃあ)に袋叩きにされたり、時には族滅まで有り得るものなのよ。陰湿よねぇ、真っ向からくればいいのに――まあ当然よね、誰も死にたくはないもの」

 

 馬鹿よねぇ。誰に呟くでもなく、正しく呪詛犯罪者へと堕ちた中臣家の若人たちへ。

 

「あんな子でも、私の子なの。あんな家でも、憎たらしい憎たらしい妹の血脈なのよ……嫌になっちゃうよねぇ。禰雅なんかに心を奪われた馬鹿息子に、こんな情をかけなきゃならないなんて。恵伏木特呪矯正センターから人を一人出すには、こういう手しか出来ないなんて。

 それにねぇ。おばさんが思うに、恵伏木にはこれから、もう少し人が増えるでしょう? 独房の一つでも開けておいた方がいいわよね、良いに決まってるわよねぇ……だから、おばさんも老骨に鞭をうってあげようかなって」

 

 そうして、鈴をチンと鳴らす。霊力の基盤、儀式の動作。

 臨戦態勢に入ったことを察知した中臣家の3人が武器を構える最中、中臣鹿波は末期とばかりに告げ落した。

 

「ならば……どちらかが、願いと縁が断たれることになる」

「ええ。どちらかが、希望を焼き切られることになる」

 

 張り詰めた空気を焼き落とすよう、東雲燈聖は笑う。先手の出方を潰すよう、あっけらかんと軽薄に。

 

「でも、でも。だけど。おばさんと中臣さんちの男の子女の子たち(あなたたち)の間で一つ、“制約”をしましょう?」

「……命までは取らない、か? それなら無理な話――――」

「天地神明に誓って、あなたとおばさんの神仏(かむほとけ)に誓って。人命以外を奪わないよう、現世とこれからの全ての“縁を切って”くれないかしら?」

 

 現世と人命以外との縁を切る――――逆を言えば、人命だけしか奪わない儀式。制約。

 決闘にも似た制約を提案する老婆に面食らいながらも、中臣鹿波は返答する。

 

「……敢えて不完全に調整した空間と因果の切り離し。そのような大それたことが出来るとでも」

「うふふ! ああ可愛い、可愛いわ。わざっとしらばっくれるのね! ――――出来ない、はずがないのに!」

 

 ちっと舌打ち。背後で薙刀を構える雑面の男――中臣虚保を、彼の“現世と周囲の縁を切る”加護を、最初から念頭に置いたような話しぶり。

 

「……これだから戦前生まれは困るな。こっちの利益と出来得る裏技まで考慮して、わざわざ提案するか」

「うふふ。おばさん、こう見えて昔は女学生だったの。優秀(えりいと)だったのよ?」

 

 警察を、公安を、霞が関と永田町に蔓延る闇を抹殺することが目的である中臣の決死隊は、逆に言えば、人命以外を奪い取る必要がない。東京都心を焼け野原にする程度ならば容易いが、それを行う合理性もない。

 むしろ――自らが結界を作るという一点において、その効果と範囲の先決権はこちらにある。

 ……例えば、東雲燈聖と自らのみならず、警察施設と警官たちをその結界の効力範囲に含める、等。

 

「……残念だが、その制約は取れない。貴女の思惑には乗らない」

「うふふ、残念。――――でもねぇ。中臣の鹿波くん」

 

 チン。鈴がもう一つ。仏教に根差した術理と儀式において、経文の始まりを意味する清浄の音。

 冷戦期、彼のポーランドの怪物“長老”ピオトル・マウォポルスキが為したように。極限まで短縮された陣地を張り巡らせる結界儀術の妙。

 瞬時に“術理との縁を切る”べく柏手を打ち鳴らした中臣鹿波の前で、平静そのままの老婆は笑う。

秘式(ひめしき)と儀式手順を使えば、こおんなおばさんでも――――」

 

 

「……境界再構成(特定の法則で満たされた空間を展開する)くらい、何とかできなくはないのよ?」

 

 

 ちり。煙る柄香炉。霊力の炎が熱を発す。熱の広がり、光の広がる空間を、一つの“賭場”へと作り変える秘式。修練と経験によって組み替えられし短縮式法(シングルアクション)

 意味するは――『六三目連(“運”だけを制約とした霊力爆発)()開帳(結界を用いた一対一の運試し)

 本来は何らかの既存の結界が無ければならないところ。彼女は、彼らは、クラシカル神祇官というものは。二六五〇年もの間日本の祓魔を担い続けてきた神官たちは――、

 

 より洗練された秘式という形において、詠唱も動作儀式も必要のないたったの一呼吸によって、この場へ逆説的に結界を構築する(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「――――『秘式:焼成・簡易開帳』」

「――っ、『秘式:縁成・簡易開帳』!」

 

 一拍早く、一拍遅れて。二つの似通った術理が、神祇庁庁舎の廊下を覆い尽くしていった。

 

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