TCG逆行主人公モノ 【World fall 】 作:鳥ささみ@パインコン
あたり一面のひび割れた大地。
見るだけでも水分を含んでいないのが分かる程にひび割れており、文明も栄華の跡は残さずその骸を残している。
永遠と思える程時間をかけて歩くと山岳地帯が見えてきた、後1時間と少しで到着出来る距離に入ったと認識した少女は自身の脚力を魔力で強化して走り出した。
「親父さん!卵、干し肉を1つ、芋と卵のやつを2つくれ!」
「あいよ 少しまってくれや」
キャンプ地の商業地区の飲食街。
日も沈み切ったその時間帯は朝から夕方まで働いてた人たちの憩いの場であり空腹を満たす至福の時間である。
食材をまな板で刻む音が聞こえるその店からは人々の喧騒が鳴り止む事はなく繁盛してる事が伺えて、鉄板で焼かれる食材の香りが空腹を感じる人に香りの暴力をただひたすらに浴びせる。
先程親父と呼ばれた筋肉質な身体を持つ頭に布をつけた男は煮えたぎる鉄製の鍋に麺を掴みながら入れて茹でていく。
店の調理場は最も混む時間帯である故に店で働いてる人員は皆がまるで戦場に出てるかの様な気迫で客に出す為の料理を作っている。
「パスタが茹で上がった、付け合わせは?」
「肉串とカボチャの仕込み終わりました!」
「芋は後もう少しで焼き上がりです!」
「追加注文、燻製肉と卵3つです!」
今がまさに掻き入れどきといった所でスタッフの一人が走ってくる。
「お、親方!」
「なんだぁ?」
「食糧庫の燻製肉が全て消えてます!」
「⁈ どういう事だ!」
店主が自分の部下に確認をする。
「昼時にはあったはずですが、先程食材を取りに行く際に見たら無くなっていました!」
部下の説明更に聞くと鍵が無理やり開けられた痕があるとの事で盗人の類いだと考えた。
「チッ、なるほど…おい、クライネ!燻製肉は後何皿分だ?」
「麺料理に使う分だけなら…だいたい20皿分ぐらいかな?」
クライネと呼ばれた橙髪を束ねた女性が厨房に吊るされた肉塊を確認しながら答えた
「干し肉を盗んだやつをとっちめるのは後だ!今はお客さんに出す料理に集中しろ!」
「「「「了解!」」」」
ひとまず窃盗犯の捕縛を後回しにしてお客への提供を優先する為に仕切り直しと言った所で。
「おっちゃんやってる?」
肩幅あたりまで伸びた銀髪を揺らしながら、ローブを着込んだ少女が天幕を広げて入店する。
「あら、ライカちゃんじゃない今日も無事に帰って来て良かったよ〜」
クライネは声が聞こえた方を振り向くと先程の凛々しい声とは違い柔らかい声を出す。
「クライネ、仕事中でしょ?真面目にやらないとおっちゃんにぶたれるよ」
「ウゲ…あーでももう少しで多分私上がるから大丈夫だよ」
「なんかあったの?」
「実はね…」
クライネが今来たばかりのライカに今起きた事を話す。
「あーそれなら…おっちゃん」
「親方と呼べと毎度毎度言ってるだろ、懲りないねぇ…それでなんだ?ライカ」
「燻製肉を盗られたんでしょ?これでなんとかなると思うよ」
そう言ってライカが取り出したのは猪の魔獣が描かれたカードを5枚見せる。
「こいつぁ!『ギガント・ボア』じゃ無いか⁈ しかも5体もか!!」
「このカードの換金をお願いするわ」
ライカがしたのはごく単純なカードの取引、この世界においてカードの存在であるユニットは様々な利用価値があり、ライカは普段移動手段として運用している。
「はいょ!」
親方として願ってもいない追加分の肉、しかも保存用に燻したものではなく捌きたてのものが用意できる。
「クライネ!鍋はしばらく任せた、俺はこれを解体するからな あ、あと麺を一皿分余分に茹でてくれ」
「ちょっと⁈ 私焼き串の提供もあるんだけど〜」
クライネが文句を呟くが親方は気に求めず腕にディスクを装着している。
「問題ねぇ、それは5分後に俺がやる暫く持たせてくれ」
「そんな無茶な〜………りょーかい賄い豪華にしてもらうからね!」
「応とも」
親方はのポケットにあるデッキケースから一枚のカードを抜き取ると…
「さぁ出ろ!『厨房戦士 ガルド』解体作業手伝ってくれや」
親方がディスクの魔法陣にカードを重ねた。
【実数召喚 error ーーシステム承認 補助術式 展開 対象 召喚します】
女性の機械音声が流れ、親方の目の前に出現した赤の魔法陣が光り輝き一瞬だけ強く光ると目の前には料理人を思わせる服を纏った狼男が立っており、その腰にはダガーのように解体用の包丁を装備していた。
「『ガルド』猪肉の解体手伝ってくれ」
親方がそう言うとガルドと呼ばれた狼男はコクリと頷き、腰の包丁を抜き取る。
そして親方は先程と同じ挙動で『ギガント・ボア』のカードを召喚する。
【実数召喚 error ーーシステム承認 補助術式展開 対象 拘束状態で召喚します】
そうして現れた全長4.5メートルはある猪は解体用の調理場に魔術の鎖で拘束された状態で召喚され、鳴き声を鳴らしながら暴れても拘束されているため無害である。
そうして召喚された猪を『ガルド』は見事な包丁捌きで猪を解体していく、まず動脈部分を切ったあとに吊るし心臓の鼓動を利用して血抜きをする、本来なら時間がかかるが親方が魔術を用いて血の流れを加速させハイスピードで血を抜く。
これを3回繰り返した後『ガルド』は吊るされた肉塊の毛皮を剥ぎ取り肉を切り落とす。
そして魔術で生成された水で余分な血を洗浄された肉を持って親方は厨房へ持ち運ぶと…
「野郎ども、新鮮な肉が切れた今からメニューの干し肉、燻製肉を一部捌きたての生肉にするとお客に売り込め!」
親方がそう言えば厨房のスタッフは口を揃えて了解と言う。
親方が指示したことによりスタッフにより捌きたての肉の話は思ったより早く広まっており店には早速人が並んでいる。
「おっと、こりゃ忙しくなるな…クライネ麺をくれ」
「はいはい〜」
親方が早速解体した肉を複数焼きながらお湯で温めている皿を一枚取り、それを布でふくとそこにぶつ切りににした肉を入れた後あらかじめ割って溶いていた卵を流し込むとそこに麺をあえて混ぜ始め残りの卵を流し、チーズを擦りおろして最後の仕上げに香料の葉を刻んだものを散らした。
「はいよ、肉と卵のパスタだ」
「おっちゃんいつもありがとう」
「親方と言え」
皿を出した親方にいつもと変わらない返答をしながらライカは皿にフォークを持ち口に運ぼうとしたその時…
「ライカ!俺と勝負だ!!」
オレンジ色の髪をした2、3歳下の男の子がそう叫ぶとライカは不愉快そうな顔をする。
表情自体はあまり変化してないが微かに目元の表示筋が嫌な顔をする人のそれだった。
「…クライネさん」
「何かなライ…ってアル⁈もう〜留守番しててって言ったじゃん」
「でもお姉ちゃん俺はライカと勝負するって約束が…「そんな約束してません」えー⁈」
まだ声変わりも来ていないソプラノ寄りの男の子の声の発言に対して即座に否定をするライカと落胆した表情をするアルと言う男の子に対してのいつも通りの返答を見てクライネはいつも通りの光景と微笑む。
結局、ライカとアルは食事を済ませた後に決闘の練習をすると約束をして、アルは注文を始める、クライネはそんな二人の喧騒を聞きながら仕事に戻る。
尚、支払いはライカが掛け持った。