NEED FOR SPEED × Blue Archive 作:アキ・レーシング
「時にノア、あのラリーファイターって誰が乗ってるの?」
コース上に置かれたカメラから中継されている映像を見ながらノアに問いかけてみる。
今回ユウカが走っているこのレースはまだ走り慣れない人や、レース経験が無い人が殆どだという。
ウタハは本来このレースじゃなくてもよかったのだがF1LMをメイン車種として乗るため、まだ完成していないF1LMを使うわけにもいかずエンジニア部がかつてイジったAZ-1をレースに持ってきたらしい。
「それはあまり言わないお約束です。いつもレース前後にドライバーがマシンから乗り降りしているときを見るか、表彰式の時に紹介されますので。動画配信サービスなどで配信されているものを見て、学校名と部活名は出るので、SNSでのレーサー考察などもかなり流行っている印象ですね。」
「それ個人情報特定にならない? 大丈夫?」
それはもう考察というか晒し行為なのでは...? と思わず思った事を言ってしまう先生。自分がレースをしていたときは、名前がバレると警察に調べ上げられ、最終的にとっ捕まってしまう。そういうレーサーを何人も見てきた彼女だからこそである。
だがそんな先生の心配とは正反対にノアは穏やかな声で言った。
「そこは問題ありません。各学校は情報保護の徹底を行っています。基本的にレーサーの考察をされる方々は当てずっぽう言っているため当たりませんし、レースで好成績を出して、名前を出されるような生徒たちは既に名前が知られているような生徒ばかりですので、気にすることはありません」
「そ、そっかぁ...」
「おっと、ここでWRXがラリーファイターがサイドバイサイド! 後ろにはどんどんゲーム開発部のNCロードスターたちが迫ってきています!」
「ユウカあそこでNOS吹かすのはかなりギャンブルだね...よく使おうと思うよ」
自分が走っていた時よりも治安はいいらしい。そう感心しているとマシンたちはホームストレートに向かうコーナーを駆け抜けていく。
レースも終わり際のコーナーでゲーム開発部のNCロードスターがラリーファイターとWRXの後ろに詰めてきており、「これは熱い!」など「これが現代版の頭文字Bか!?」などのコメントで配信のコメ欄は大盛り上がりを見せていた。
先頭になり、少しずつ2位との差を開いていくWRX。だがラリーファイターのドライバーを驚かせたのはその後ろの2台のNCロードスターたちだった。
WRXの後ろにぴったりとくっつき、スリップストリームを使って速度を伸ばしにかかる。
最終ストレート、NOSで加速していくWRXの後ろを走るNCロードスター。だがラリーファイターもただ追い抜かれているだけではない。持ち前の加速で2台並ぶロードスターの後方車両に追いついていく。
そのままホームストレートを駆け抜けていく。トップ3は
1位. 早瀬 ユウカ
2位. 才羽 ミドリ
3位. 角楯 カリン
ギリギリのタイミングで追い抜きをかけ、逃げ切りを果たしたユウカが1位になり、2位はレースゲームの知識を使いつつも、ちゃんと勝負を見極めたミドリが2位。序盤から2位の位置につき、1位も走っていたがユウカに最後の最後で2人に追い抜かれてしまったカリンが3位となった。
「いやぁ、凄いレースでしたね、先生?」
「そうだね、ユウカは最初にしてはかなり上手かったと思う。カリンは終始安定した走りこそしていたけど勝負に出なかったのは敗因だと思うよ。レースっていうのは結局のところ勝負だからねぇ...」
「そうですね。それでは解説は私、生塩ノア、そして解説は輪堂 レンカ先生でした。ミレニアムスプリント、これにて閉幕です。皆さんありがとうございました」
ノアの言葉で配信は終了し、2人はホッと息をついた。
「先生、お疲れ様でした。どうでしたか?」
「んー、良かったと思うけど、やっぱ刺激が足りないかなぁ...」
「刺激、ですか?」
ノアは先生の言葉に、はてなマークを頭に浮かべて先生の言葉の続きを待っていた。
「そ。私が先生になる前はちょっと荒れた世界に身を置いててさ~。車もここで走っていたヤツよりも過激で、危険極まりない。そんな場所だよ。」
「そうなんですか...そんな世界にいた先生を私は一目見てみたいですね。」
「いやいや...ほぼ黒歴史だから忘れさせて...あ。ゴメンねノア、ちょっと席外すよ」
ノアにそういうと席を立ち、外に出て会場まで乗ってきた、ベンソープラのフルエアロを纏った青いR35 GT-Rのフロントフェンダーに寄りかかって電話に出た。
「お疲れさま、先生。配信は垂れ流しで聞いてたわ。所で今、時間はある?」
「やぁヒナ。どうしたんだい?」
電話をかけてきたのは、ゲヘナの風紀委員会の委員長、空碕ヒナその人だった。いつも仕事に追われている彼女もレースの配信を聴いてたと思うと意外だった。
「今日の夜、時間はあるかしら。私たち風紀委員会、トリニティの正義実現委員会とヴァルキューレの公安局と生活安全局で取り締まりの強化のために一斉でやる講習会をするのだけれど、先生も来ない?」
「あー、そうだったんだ。予定は無いし、分かったよ」
先生の言葉にヒナはどこか嬉しさを隠せていないようだった。そんなに嬉しいんだねぇ...。
「それと先生、出来るだけ速い車を準備してきて。座標は送っておくわ。それじゃ」
「え?あぁ...分かったよ。それじゃ...」
電話が終わると「何をするんだ...?」と思うしか出来ない先生だった。
ノアと軽く会話をすると、シャーレに戻ってきて、夜まで、かつて先生になる前に乗っていたある車の手入れをしてその時を待っていた。
そして夜。車に乗り込み、ヒナから送られてきた座標のポイントに向かう途中、そこには彼女が、思わず懐かしいと思うような景色が広がっていた。
「そういえばリンちゃんも言ってたっけ。違法なストリートレースも横行してるって」
派手にカスタムされた車、露出の大きい服を着てバイクに跨り、後ろタイヤをバーンアウトさせながら煙をまき散らす集団。ワンボックスカーのトランクを大改造して、重低音を響かせる車がいたりと、かつてのストリートシーンを体現したような場所がそこにはあった。
「先生、待ってたわよ」
「やぁヒナ。お待たせ。イオリたちもやっほ~」
「ゲ...先生...。」
ヒナたちが待っていたのはさっき通り過ぎた場所の少し奥の場所にある駐車場。ヒナのブガッティ シロンとイオリのNC1型NSXの間に車を止めた先生は、車を降りると。ヒナたちに軽く挨拶をした。
そしてその声を聴くなりトリニティとヴァルキューレの生徒たちもそこに近づいていく。それぞれだけだと溝はあるかもしれないが、先生が潤滑油の様に間に入ることでそれは緩和されていた。
「レンカ先生も来たんっすね。お疲れ様っす」
「やぁイチカ。70スープラの調子はどう?」
「それが最近犯人を追いかけていたら勢い余っちゃったうちの生徒たちにぶつけられちゃって...80スープラに乗り換えたっす」
「...それはご愁傷様...」
まず話しかけてきたのは正義実現委員会の仲正 イチカ。彼女の車は先生がずっとチューニングしてきた。物足りないからと言われエンジンを2JZ-GTEに載せ替え、気づけばデモカーともいえるようなレベルまで完成されたそれが廃車になってしまった、と言われると手をかけていた側からしても思うところはかなりある。
「また先生のお世話になるっすね。エンジンは前のスープラから継いだんすけど...エアロをBOMEXあたりに変えたいんすよね~」
「分かった。探しておくよ。色も前回みたいなのでいい?」
「おっけーっす。それじゃ『それじゃあ今回のプランについて話すからみんな集まって頂戴』...続きはシャーレで」
ヒナに途中で会話を遮られるとムスッとした表情を浮かべたイチカ。やれやれ...といった感じでヒナやツルギが集まっているところに歩いていく。
「それじゃ軽く説明するわ。ターゲットの集団は皆もさっき通ってきたあの駐車場からこっち側に通ってきて山海経方面に向かって走っていくわ。私たちはこの駐車場を通り過ぎて行ったタイミングで追跡する」
「質問なのですが、ユニットの使用許可はおりますか?」
「えぇ、問題ないわ。ただし一般車には当てないように気を付けて」
「承知いたしました」
話はどんどんと進んでいく。だが聞けば聞くほど、これは講習会ではなく、実戦練習兼、違法ストリートレーサーの一斉摘発に他ならないのでは...?と思っている先生。
「先生には私たちと一緒に追跡に参加してほしいのだけれど...いいかしら?」
「いや...いいけどさ、あれで大丈夫かな?」
先生が指差すのは今回先生が乗ってきた車で、かつて自分がレッドビューカウンティで暴れていた頃に乗っていたケーニングセグ アゲーラRの警察仕様なのだが、警察のロゴがペイントで塗りつぶされ、「Zypher」と入れられている。
これには苦笑いが隠せない一同だった。
そして、ついに時は来る。
次がいつかになるかは分かりませんが...
また次回!