NEED FOR SPEED × Blue Archive   作:アキ・レーシング

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相変わらずノリと勢いで完成していますが...

今回もぜひぜひ~!


5.あの車に乗りたいアリスと先生。

「先生、アリス、先生のM3が欲しいです!」

 

「いきなりだねぇ...」

 

 

 

ヒナたちとの講習会という名の一斉取り締まりから数週間後。シャーレからすぐ近くにある事務所兼チューニングショップ「ブリットオートワークス」の店内、商談用のソファに座っているアリスは先生にそう宣言をする。

 

ゲーム開発部のモモイ、ミドリはNCロードスター、ユズはGRコペン、C&Cのメンバーやユウカなども皆がマイカーを持っているのに、自分だけ持っていない。それが不満らしい。だが先生はため息をつくと静かに言った。

 

 

 

「アリス、あの一件を忘れたとは言わせないよ?」

 

「あれはモナリザの挙動が上手くつかめなかっただけです!」

 

「ホントに誰なんだろあのS15をモナリザなんて言い始めたの...」

 

 

 

アリスのいうモナリザが絡む一件というのは、つい数日前の出来事だ。先生の元に集まったゲーム開発部のメンバーにC-WESTのフルエアロを装備し、濃いめのブルーにリアフェンダーに向かってオレンジのラインが広がるようなバイナルグラフィックを纏い、エンジンをSR20からRB26に換装したS15シルビアを貸し出したのだが、「アリスもモモイみたいに走りたいです!」と言いだしてレースに出たところ、ドリフトしようとして壁にヒットさせまくったため、エアロはボロボロ、塗装も剥げ、窓ガラスやライト類もバキバキ...と見るも無残に大破させて帰ってきたのだ。

 

 

先生は「まぁ初レースなんてそんなもんだよ...ユウカもWRXをこうしてくるかもと思ってたし...」とは口では言ったものも、ここまで大破されるとは思ってなかったし、直すにしても多額の金がかかるため、部品取りにした方がいいか...?

 

なんて思いながら現在はカバーをかけられている。

 

そしてあの一件から話す機会がなかった、気になっていたことを彼女に問いかけてみた。

 

 

 

「そもそもなんで借り物の車でドリフトしようと思ったの?」

 

「レースゲームでやっていたので...出来ると思ったんです! ですがモナリザが言うことを聞きませんでした!」

 

「...一つ聞くけどそのレースゲームってゲームセンターでモモイたちとやってたやつ?」

 

「はい! そうです!」

 

「...マジかぁ」

 

 

 

この手の子は危ないんだよなぁ...と先生は思う。レースゲームをきっかけに車の世界に入ってくるのは別に悪い事ではない。

だが、レースゲーム、特にアーケードライクのレースゲームのイメージに引っ張られたまま本物の車を運転するとその違いを痛感する。ドリフトなんて簡単に出来る芸当ではないし、MT車ならそもそも安定した発進も難しいだろう。雑にギアを入れてアクセルを踏もうもんならエンストするのがオチだ。

 

 

 

「アリスならできます! モモイたちに運転も教わってます! そしていつかは先生の持っているあのM3を運転したいんです!!」

 

 

 

どこからその自信が出てくるのか分からないが、とにかく自信たっぷりにそう言いながら1台の車を指差す。ALMS用のワイドボディを身に着け、一度見たら忘れないシルバーと青のツートンカラー、先生のかつての愛車として様々な町を制覇し、その名を轟かせた車両。E46型のBMW M3 GTRだ。

 

キヴォトスに来る前にフルレストアを済ませた逸品で、このM3 GTRでやってきた事は誰にも話したことはない。

絶対生徒たちに引かれるし、ヴァルキューレに危険人物扱いをされかねない。

 

あのM3を運転したい、あわよくば自分のマシンにしたいというアリスの熱意に負けたのか、先生はやれやれ...という素振りを見せ、アリスにある提案をした。

 

 

 

「分かった分かった...それじゃあ」

 

「いいんですか!」

 

「テストしようか。」

 

「テスト...ですか?」

 

 

 

そう言われたアリスは、目を丸くしていた。

 

先生はその反応を予想していたかのようににやり、と笑って言葉をつづけた。

 

 

 

「そ。今はただカッコいい車だから、みたいな理由で選んでるかもしれないからね。この車の真の姿を見てからのほうがいいだろうし、アリスの覚悟がどれ程のものか見るためのテストだよ」

 

「分かりました! そのクエスト、受けて立ちます!」

 

「分かった。それじゃ今日の夜。座標を送るからそこに行ってね。モモイ、うちのデモカーのR34...は単座だから~、私のFD3S貸すから、アリス乗っけてレース会場に来てくれない? ついでにレースの時にM3についてきてほしいんだけど、頼める?」

 

「FD3Sってあのフォーチュン仕様の? やったー! いいよ~!」

 

「それじゃ、よろしくね。」

 

 

 

そして時は過ぎ、夜になった。安全に寮のガレージまで向かっていく者、気分転換にドライブに行く者など、いろんな人たちが車を運転しているなか、先生が指定したレース会場では改造車やそれを見に来るギャラリーで溢れ、その中にアリスとモモイも来ていた。

 

 

 

「すっごいねアリス...夜なのにこんなに明るいなんて...」

 

「アリス知っています!これが眠らない町ですね!!」

 

「多分違うと思うよ...?」

 

 

 

人混みは凄いがそこにM3 GTRを見つけられない二人はあのマシンを探して彷徨っていた。ガラの悪い、いかにもなチンピラな人に睨まれたり、屋台のジャンクフードを食べたりして時間を過ごしている内に、目当ての場所に辿り着いた。

 

 

 

「モモイ、見つけました! M3です!」

 

「凄い...ポルシェの911GT3 RSにアストンマーチンのDBS、フェラーリのFXXKまでいる...」

 

 

 

モモイが思わず口にした車の他にもフォードGTやマクラーレンのP1など、ハイチューンに仕上げられたスーパーカーやスポーツカーの中で最後尾に止められているM3 GTRは、レースの始まるまで、静かにその時を待っていた。

 

 

 

「よし、そろそろ始めるぞ! スターター! 合図を出す準備をしろ!」

 

 

 

レースの主催者らしきオートマタがスターターを務めるらしいバニーガールの服をした女性に声をかける。それとほぼ同タイミングでレーサーたちはエンジンをかけ、回転数をベストの場所まで持っていくためにエンジンを吹かす。

 

 

 

「モモイ! アリスたちも車に乗りましょう!」

 

「そうだね! 速く行こう!」

 

 

 

2人はレーサーたちの車がかなりの轟音を立てており、まもなくレースが始まると本格的に気づいたようで、急いで乗ってきた車に戻り、シートに滑り込んでエンジンをかける。

 

追いかけはするけど、このレースを走るレーサーではないと分かるようにハザードを焚きながらゆっくりと進んでいく。そしてなんとかすぐに追いかけられるように出口近くの場所に着くことが出来た。

 

 

 

「それじゃ皆、これだけは覚えて! この前は大規模な追跡があったからね! ヴァルキューレ警察やクソッタレな風紀委員会たちには絶対に捕まっちゃダメよ~。それじゃ、レディー! ゴー!!!」

 

 

スターターの声に合わせてホイールスピンをしながらレーサーたちの車両がスタートラインを越えていく。

 

 

M3 GTRは他の車に比べてスムーズにスタートしたようで既に集団の前方を走っている。その様子をなんとか追いかけるモモイはいつも乗っているNCよりもかなりパワーの出ているFD3Sの運転に苦労しながらもなんとか運転していた。

 

 

 

「憧れの車だったけど、やっぱり運転するのは話が変わるね...絶対に強化クラッチ入ってるよこれ!」

 

「モモイ! もっとスピード出してください! このままじゃ追いつけません!」

 

「そんな事したら私たちが警察に捕まっちゃうよ~...ほら、あそこ見なよ。もう追跡が始まってるじゃん!」

 

 

 

モモイが指差す場所には風紀委員会のフォードエクスプローラーとヴァルキューレのクラウンがレーサーたちを追いかけていた。

アリスたちの乗るFD3Sはモモイがスピードを程々に下げて走っているため、追跡の対象とはなっていないようだが、今よりも少しでも速いスピード域で走り始めたら、もうどうなるかは見えている。

 

その頃、レース開始前から白いフルフェイスのヘルメットをかぶり周りに悟られないようにしてM3のステアを握る人物―――まぁ先生だが、彼女はかなり落ち着いた、というかほぼ死んだような目でレースを走っていた。

 

 

 

「この車...こんなに過激なチューニングにしてたっけ...? もうトップのFXXK追い抜いちゃったし...アレだってドライバーが1500馬力出てるって言ってたし、ショップもちゃんとしてたとこなのに...はぁ...警察も来ちゃってるし...なんでこの車はホントに周りの注目を得ちゃうんだろ...」

 

 

それはその車が悪いのでは? というツッコミをする人も彼女の過去を知っている人なら思うことだろう。だがそんな人はキヴォトスにおいてはゼロに等しい、はずだ。

追い抜かれた車に対して「えぇ...」という反応をしつつも、ギアを5速に上げ、さらにその差を引き延ばしていく。

 

前方に出されたスパイクベルトを綺麗に避けて後ろを走るDBSに引っ掛けさせたり、一般車をまるで静止しているパイロンの如くスピードを出しているのにも関わらずすり抜けていく。その様子を見ていたアリスは、嫌いになるどころか、逆に魅入られていた。

 

モモイはその様子を横で見ていることしかできなかったが、「あぁはなってほしくないな...」とは思っている。だが言っても止まらないんだろうなぁ...なんてため息をつきながらレースのルートから逸れ、FDを置きにショップまで車を走らせたのだった。

 

 

 

「やっぱりヒナみたいなのがいないとこっちもなんだか悪い気がしてくるね...あんな車体じゃ追いつけすらしないよ...」

 

 

 

後続の車両はおろか、警察の車すらもう周りにはおらず、この前のアレはなんだったのか...とため息をついてしまう。例えるならベンチュラベイの警察。とにかく張り合いがない。1台だけやたらと速いNSXが途中から追跡に加わっていた気がするが、それすらももう見えなくなってしまっていた。

 

 

 

「アリスは絶対に乗りたいっていうんだろうなぁ...この車は危険だって、伝わってればいいんだけど...」

 

 

 

モモイたちがFD3Sを置いて寮に戻った数時間後。彼女はM3とともにショップに到着し、シャワーを浴びてさっさと眠りについたという。




今回は某カーアクションの車がちょこちょこ出てきましたが、あれは「なんかよさげじゃね?」と思った作者の謎の遊び心です()


それではまた次回!
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